声の神に顔はいらない。

ファーストなサイコロ

188 定めた道を突き進む

 プロデューサーやら監督、更にゲスト的に出演してる大御所と呼ばれる人達の中に私はいる。私の名前は『静川秋華』 今やNo.1声優と呼び声高い大人気声優だ。その自覚はある。なにせ私がイベント行くとキモオタ達が殺到して凄い事になる。

 まあけど、それは声優界隈では珍しくない。なにせ声優の顔面偏差値は昔から比べると上がったが、それでも一般的な女優やモデルと呼ばれる人達とは低いのは明らかだ。それでもキモオタ達は持ち上げてくれる。だから実際、そこら辺で比較は出来ないのかなって思ってる。

 なら何をもって私が自己をNo.1だと思ってるのか……それは仕事の数とかかな。なにせ私はそこらのやつらとちがって仕事が途切れることがない。それに私は声優という仕事だけじゃなく、歌やドラマとか映画にだって出てる。本当はやりたくないが……事務所にどうしてもといわれちゃってるからね。

 でもただ泣きつかれたからってわけじゃない。私はそんな泣き落としに屈するようなお人好しじゃないからね。条件をちゃんと出したのだ。それは引退時期はこっちの行こうに従うこと。それも無条件でね。まあ事務所はそれでもそんなことありえないなんて思ってその条件をのんだんだろう。

 けど私はそれを目指してる。私は先生のお嫁さんになるのだ。

「このままの勢いを保てれば良いですね」
「何を言ってますか。この勢いを更に加速させるんですよ! 第二クールはもっとイベントとかを開催していきましょう」
「それはいいいですね。やはりファンとの交流は声優としても活力に成りますからね。ねえ静川さん」
「――そうですね」

 むむ……この牝狐め。私がイベント嫌いだって知ってるでしょあんた。いや、正確には嫌いではない。チヤホヤされるのは好きだ。でもそこまで興味があるわけでもない。必要ならやるけど、率先してやりたいことじゃない。私は主人公だし、このアニメのイベントではかかせなぽ存在だ。それこそ私が出るとそうじゃないのではイベントの埋まる数が違ってくる。

「あら、あんまり乗り気じゃないのかしら?」
「そんなぁ~静川さんがやってくれないと困りますよ~」
「そんな、私がいなくてもきっと大丈夫ですよ」
「それで本当に大丈夫だったなら怒る癖に」
 
 なんか大御所女性声優さんがそんなことをボソッと言った。聞こえてるから。いや、彼女は聞こえる様に言ってると思うけどね。まあ彼女の言うことは尤もだ。だって私、嫉妬深いもん。でも誰だってそうでしょう。皆自分が一番で、自分の一番の幸せを探してる。

 私はそれを見つけてるからただそこに歩いてるだけ。声優という職業はただの通過点でしかない。先生のお嫁さんになに通過点だ。だからその為にはいっぱいいっぱい我慢する。楽しくもあるけど、我慢もある。今はちょっと我慢が大きい。

 なぜなら先生に会えてないから。そろそろ限界かもしれないよ。

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