声の神に顔はいらない。
158 大きな子供の、大きな夢 15
「ダメだ! これじゃあ全然使えねーぞ!!」
そんな罵声を飛ばしてるだろう団長。言葉はわからないが、怒ってるって事は十分に伝わってくる。そしてそれはきっと自分にだ。なにせ他の団員達に怒られる要素なんてものはない。自分が見てる限りでもちゃんとしてて、ミスってたのは自分だけだ。なんとかそれっぽく出来たとは思うが……やっぱり演劇の本場で団長をやってる人の目は誤魔化せないか。
いや、誤魔化す気なんてものはない。僕は今の自分に出来る精一杯をありのままに魅せた。長く舞台から遠ざかったてんだ。至らない所は自分が思う以上にあるだろう。
「すみません!!」
僕はそう言って頭を下げる。勿論頭を下げるなんて事は何の解決にもならない。なにせ舞台の開場時間は延びてはくれないからだ。こうやってる間にも、開演時間は迫っていく。だからこそ、一分一秒を無駄になんてしてはいけない。だから頭を下げるとしても少しだけだ。
直ぐに顔を上げてこういうよ。
「もう一度お願いします!」
この間にも脳内で自分のダメだった所を振り返る。タイミングが早すぎたかもしれない。それにもうちょっとコンパクトにしない、バックダンサーなのに目立ちすぎるのかも。なにせ自分には身長がある。それをもっとこうりょしないと。だが、ヘタに縮こまったダンスでは見栄えが悪くなる。
(バックダンサーも大変だ)
自分はこれまで舞台の中央にしか立ってなかったんだなって思い知った。誰かを引き立てる……ということがわかってないんだ。きっと団長もそれを――
「おめえじゃねえ!」
――そういって団長が持ってた台本を床にたたきつけた。「え?」って感じだ。自分じゃない? そう思ってる、厳しい視線を周囲に向ける。すると蛇に睨まれた蛙の様に同じバックダンサーの人たちが固まる。
「てめぇら、全員あいつに食われてるぞ!! いいや、てめぇらだけじゃねえ! ここに居る全員だ!! わかってるよな?」
何やら、凄い勢いで口を回してまくし立ててる団長。あいにくと何を言ってるのかはわからない。けど皆の視線が何故かこっちに集まった。それはとても複雑な表情だ。何やらアウェー感を感じる。今更だが。
「お前、とんでもねえな」
それは英語だったから聞き取れた。とんでもねえなってそこまで酷かったって事か? ガクブルだ。けど団長は僕を手招きする。そして台本を渡してきた。
「てめぇに後ろは似合ってねえみたいだ。舞台の真ん中にでもいろ」
「ええ?」
意味がわからない。てか、既に台詞がある役は全部埋まってるだろう。それなのに、台本を渡してきたって事は……この中のどれかの役を奪い取れって事か? バックダンサー達とは違う、ちょっと離れた位置で色々と確認してた人たちがとてもメラメラと燃える目でこっちをみてる。
その目がいってるよ。彼等にも意地とプライドがあると。そして明け渡す気なんて微塵もないと。でもそれでも、台本を手に取った時、僕はワクワクした。舞台に上がるだけじゃない。その中心で居られるかも知れない期待に、さっきの比じゃない胸の高鳴りを感じる。
そして僕が真っ先に見つめたのはこの中で一番のオーラを放つその人。彼が主役だといやでもわかる。だから僕は彼を見ながら「はい!!」と叫んだ。
きっとこれは宣戦布告と取られただろう。でもそれでも引くなんて選択肢はなかった。だって、舞台が僕を呼んでるからだ。まあ、台本開いた瞬間、全部フランス語で嘆いたけどね。そりゃそうだ。
そんな罵声を飛ばしてるだろう団長。言葉はわからないが、怒ってるって事は十分に伝わってくる。そしてそれはきっと自分にだ。なにせ他の団員達に怒られる要素なんてものはない。自分が見てる限りでもちゃんとしてて、ミスってたのは自分だけだ。なんとかそれっぽく出来たとは思うが……やっぱり演劇の本場で団長をやってる人の目は誤魔化せないか。
いや、誤魔化す気なんてものはない。僕は今の自分に出来る精一杯をありのままに魅せた。長く舞台から遠ざかったてんだ。至らない所は自分が思う以上にあるだろう。
「すみません!!」
僕はそう言って頭を下げる。勿論頭を下げるなんて事は何の解決にもならない。なにせ舞台の開場時間は延びてはくれないからだ。こうやってる間にも、開演時間は迫っていく。だからこそ、一分一秒を無駄になんてしてはいけない。だから頭を下げるとしても少しだけだ。
直ぐに顔を上げてこういうよ。
「もう一度お願いします!」
この間にも脳内で自分のダメだった所を振り返る。タイミングが早すぎたかもしれない。それにもうちょっとコンパクトにしない、バックダンサーなのに目立ちすぎるのかも。なにせ自分には身長がある。それをもっとこうりょしないと。だが、ヘタに縮こまったダンスでは見栄えが悪くなる。
(バックダンサーも大変だ)
自分はこれまで舞台の中央にしか立ってなかったんだなって思い知った。誰かを引き立てる……ということがわかってないんだ。きっと団長もそれを――
「おめえじゃねえ!」
――そういって団長が持ってた台本を床にたたきつけた。「え?」って感じだ。自分じゃない? そう思ってる、厳しい視線を周囲に向ける。すると蛇に睨まれた蛙の様に同じバックダンサーの人たちが固まる。
「てめぇら、全員あいつに食われてるぞ!! いいや、てめぇらだけじゃねえ! ここに居る全員だ!! わかってるよな?」
何やら、凄い勢いで口を回してまくし立ててる団長。あいにくと何を言ってるのかはわからない。けど皆の視線が何故かこっちに集まった。それはとても複雑な表情だ。何やらアウェー感を感じる。今更だが。
「お前、とんでもねえな」
それは英語だったから聞き取れた。とんでもねえなってそこまで酷かったって事か? ガクブルだ。けど団長は僕を手招きする。そして台本を渡してきた。
「てめぇに後ろは似合ってねえみたいだ。舞台の真ん中にでもいろ」
「ええ?」
意味がわからない。てか、既に台詞がある役は全部埋まってるだろう。それなのに、台本を渡してきたって事は……この中のどれかの役を奪い取れって事か? バックダンサー達とは違う、ちょっと離れた位置で色々と確認してた人たちがとてもメラメラと燃える目でこっちをみてる。
その目がいってるよ。彼等にも意地とプライドがあると。そして明け渡す気なんて微塵もないと。でもそれでも、台本を手に取った時、僕はワクワクした。舞台に上がるだけじゃない。その中心で居られるかも知れない期待に、さっきの比じゃない胸の高鳴りを感じる。
そして僕が真っ先に見つめたのはこの中で一番のオーラを放つその人。彼が主役だといやでもわかる。だから僕は彼を見ながら「はい!!」と叫んだ。
きっとこれは宣戦布告と取られただろう。でもそれでも引くなんて選択肢はなかった。だって、舞台が僕を呼んでるからだ。まあ、台本開いた瞬間、全部フランス語で嘆いたけどね。そりゃそうだ。
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