声の神に顔はいらない。
142 本物の輝き
「監督……」
「なんだ?」
プラム・コデッチさんがバッシュ・バレルに声を掛けるなん初めてだ。彼女の場合、バッシュ・バレルが声を掛けてもいつも頷くだけだったからね。なかなか声を出さないんだよね。しかも舞台上と違って普段はとても声が小さい。小さいけど、よく聞こえるんだけどね。
多分元来の声の良さがそれを成してるんだと思う。そう思うと彼女……『匙川ととの』は役になると声がガラッとかわる。元来の声は別段そんな良くないのだろうか? 匙川さんは普段プラム・コデッチさんみたいに小さな声で喋ってる。それも相まってなかなかに聞き取りづらい。あれってもしかしてわざと?
彼女は自由自在に声を使い分ける事が出来る筈だ。でもそれにはやっぱり元来の声の良さって物はあると思う。喉が強いのかわからないが、彼女は声だけには自信があるようだし、だからこそ声優になったんだろう。なら技術的な事はあの業界にはいって身につけたとしても、元来声を好きになるって事は、その声にポジティブな事が無いといけないわけで、そう考えると、やっぱり匙川さんもプラム・コデッチさんみたいに本当なら小さな声でも通る様な良い声してるんでは?
「ちょっとこのままじゃダメ」
「ん?」
「だから役のイメージを変える」
「はあ!?」
そう言うとプラム・コデッチさんは徐に靴を踏み出した。勿論それはキラキラしたアリスに相応しい真っ赤な靴だ。それを汚すようにして踏みつける。
「おいおい……どうした?」
バッシュ・バレルが困惑するのもわかる。何しだした? どうやら踏みつける程度では気に入らないのか、メイク担当の所にいっていくつか口紅とかなにやらを貰ってきた。そしてそれを靴に塗りたくってる。そしてそれをまた綺麗なアリスに相応しいふわふわした服で強引にゴシゴシと――
「うきゃああああああああああああああああ!?」
そう叫んだのは衣装担当の人である。それだけじゃなく、それを手配したバッシュ・バレルのチームの人もパクパク口を動かしてますね。一度頬をぬぐったせいで綺麗な顔まで汚れてるが、そんなことプラム・コデッチさんは気にしない。そして満足いったのか、いったん靴は放り投げる。ゴミかな? そして今度は自分の汚れた服をみて、何のためらいもなく服を脱ぎだした。
あまりの潔さに皆一瞬呆けてた位だ。彼女の真っ白な肌と意外とセクシーな下着が見えて我に返った。
「ななな! 何やってるのプラム!!」
慌てて女性達が彼女に駆け寄る。けど彼女は我関せずと服を脱いで、その生地をひっばってる。あれは破ろうとしてるのか? でも出来なくてぷるぷる腕がしてる。可愛い。いや、見ちゃダメだろう……そう思って顔をそらすと、ここが劇場前だと気付いた。いや、朝が早いからそんなに人は居ない。がらんとしてる。けどまばらに居た人はぼうーと呆けてプラム・コデッチさんを見てた。
わかる……けど、流石にスマホを取り出すのはダメだろう。自分たち男共は周囲の人たちに注意して回った。流石に公共の場だから追い払うなんて事は出来ない。だからお願いするだけだ。まあバッシュ・バレルは脅してたけど。
それからしばらくして、奇行を終えたプラム・コデッチさんが新生アリスをお披露目した。どうやら、言っても聞かない彼女にスタッフが折れたらしい。協力してアリスを頭お花畑のただの少女から、なんかちょっとワイルドで苦労も知ってそうな見た目の少女にしてきた。
けどそれでも服も破れてるし、汚れてる。靴下もやぶれてるし、わざと体も汚してあるようだ。たぶんメイクだろうけど。けど……なんだろうか……それでも、彼女は美しかった。
「やろっか」
この場の誰もがその言葉に反論しない。自分のイメージを壊されたバッシュ・バレルでさえも……だ。
「なんだ?」
プラム・コデッチさんがバッシュ・バレルに声を掛けるなん初めてだ。彼女の場合、バッシュ・バレルが声を掛けてもいつも頷くだけだったからね。なかなか声を出さないんだよね。しかも舞台上と違って普段はとても声が小さい。小さいけど、よく聞こえるんだけどね。
多分元来の声の良さがそれを成してるんだと思う。そう思うと彼女……『匙川ととの』は役になると声がガラッとかわる。元来の声は別段そんな良くないのだろうか? 匙川さんは普段プラム・コデッチさんみたいに小さな声で喋ってる。それも相まってなかなかに聞き取りづらい。あれってもしかしてわざと?
彼女は自由自在に声を使い分ける事が出来る筈だ。でもそれにはやっぱり元来の声の良さって物はあると思う。喉が強いのかわからないが、彼女は声だけには自信があるようだし、だからこそ声優になったんだろう。なら技術的な事はあの業界にはいって身につけたとしても、元来声を好きになるって事は、その声にポジティブな事が無いといけないわけで、そう考えると、やっぱり匙川さんもプラム・コデッチさんみたいに本当なら小さな声でも通る様な良い声してるんでは?
「ちょっとこのままじゃダメ」
「ん?」
「だから役のイメージを変える」
「はあ!?」
そう言うとプラム・コデッチさんは徐に靴を踏み出した。勿論それはキラキラしたアリスに相応しい真っ赤な靴だ。それを汚すようにして踏みつける。
「おいおい……どうした?」
バッシュ・バレルが困惑するのもわかる。何しだした? どうやら踏みつける程度では気に入らないのか、メイク担当の所にいっていくつか口紅とかなにやらを貰ってきた。そしてそれを靴に塗りたくってる。そしてそれをまた綺麗なアリスに相応しいふわふわした服で強引にゴシゴシと――
「うきゃああああああああああああああああ!?」
そう叫んだのは衣装担当の人である。それだけじゃなく、それを手配したバッシュ・バレルのチームの人もパクパク口を動かしてますね。一度頬をぬぐったせいで綺麗な顔まで汚れてるが、そんなことプラム・コデッチさんは気にしない。そして満足いったのか、いったん靴は放り投げる。ゴミかな? そして今度は自分の汚れた服をみて、何のためらいもなく服を脱ぎだした。
あまりの潔さに皆一瞬呆けてた位だ。彼女の真っ白な肌と意外とセクシーな下着が見えて我に返った。
「ななな! 何やってるのプラム!!」
慌てて女性達が彼女に駆け寄る。けど彼女は我関せずと服を脱いで、その生地をひっばってる。あれは破ろうとしてるのか? でも出来なくてぷるぷる腕がしてる。可愛い。いや、見ちゃダメだろう……そう思って顔をそらすと、ここが劇場前だと気付いた。いや、朝が早いからそんなに人は居ない。がらんとしてる。けどまばらに居た人はぼうーと呆けてプラム・コデッチさんを見てた。
わかる……けど、流石にスマホを取り出すのはダメだろう。自分たち男共は周囲の人たちに注意して回った。流石に公共の場だから追い払うなんて事は出来ない。だからお願いするだけだ。まあバッシュ・バレルは脅してたけど。
それからしばらくして、奇行を終えたプラム・コデッチさんが新生アリスをお披露目した。どうやら、言っても聞かない彼女にスタッフが折れたらしい。協力してアリスを頭お花畑のただの少女から、なんかちょっとワイルドで苦労も知ってそうな見た目の少女にしてきた。
けどそれでも服も破れてるし、汚れてる。靴下もやぶれてるし、わざと体も汚してあるようだ。たぶんメイクだろうけど。けど……なんだろうか……それでも、彼女は美しかった。
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