声の神に顔はいらない。
31 波2
「しししっししししっししししししし」
「ちょっと殿ちゃんどうしたの!? 大丈夫?」
私のあまりにおかしな様子にハコさんが心配気にそういった。いや、私も自分が大丈夫か疑わしい。私は何とか息を整えて、心を落ち着かせる事にする。息を整えながら、私はハコさんをみる。
「ちょっとは落ち着いてきた?」
「すーはー、なんとか……同じブスを見てると安心してきました」
「おいこら、ちょっとアニメに出れる様になったからって調子乗ってるな」
私の言葉にハコさんが私のバイト服を襟元を握って絞めてくる。やめてやめて、お客さんの目もあるから。
「けほっこほっ」
「全く、あんまりふざけないでよね」
別にふざけてあんな事を言った訳じゃない。本当に同じブスを見ると安心するから……とかいったら今度こそ絞殺されそうだから言わないでおこう。
絞められてちょっと落ちかけたおかげで分けわからないテンションは解除出来た。そこでもう一度私はメールを確認してるみる。そこには簡潔に『アニメの仕事決まりました』という文字が。スタンプも絵文字もなく、ただの黒い文字がそこにはある。
今時こんな硬派なのも珍しいが、私のマネージャーはそういう人だ。余計な事なんて文章にはしない。マネージャーに必要なのはいつだってほうれん草だって言ってるからね。
直ぐに確認したいから、返信を今すぐしたいが、今はバイト中だ。チラッと画面を見るぐらいなら、いいけど操作までしたらなんかさぼってる感じに受け取られる。まあハコさんは見逃がしてくれるだろうけどさ……私は声優でもバイトでも、仕事には真摯に取り組む質だ。
それにマネージャーも私がこの時間バイトしてるの知ってるし、既読無視でも大丈夫だろう。でもまさか本当に? と思うが、あの人は嘘をいうような人じゃない。落ちた時は落ちたってズバリというし、事実を突きつけてくる人だからね。
ならこれは本当の事なんだろう。
「なんか殿ちゃんにやにやしててキモいよ。鏡見る?」
これはさっきの仕返しですか? いいよ、どうせキモい事わかってるから。まあだけど、これはアレだね。正当な理由が出来ちゃったね。ハコさんには悪いがちょっと彼女の依頼は受けれそうにない。
「すみませんハコさん。例の件、難しくなりました」
「そんなことないよ!」
「そのセリフおかしいですよね!?」
なんでこの人がそれ言うの!? 私の予定知らないでしょ。どれだけ私にエロいセリフを言わせたい訳。いや、作品の売り上げとかの為なんだろうけどさ。
「なんかもう一つ仕事が決まったみたいなんです。なので今回はちょっと……」
「ま……まさか、殿ちゃんに波が来るなんて」
おいこらこいつ、私がずっと売れない事を願ってたのか? 確かにそれなら私はずっとエロ声優やってたかもしれないけど、それもここまでだ。私は正統派声優路線に回帰するのだ!
「そっか……ついに殿ちゃんにもその時が来たんだね」
「ハコさん?」
「皆そう……売れないときはありがたがるんだよ。けどね、売れちゃうとこういう仕事、隠すの。恥なんだよ。わかってるよ。けどね、殿ちゃんもそうなっちゃうのかなって思ったらなんか寂しくて」
うう……なんか心に来ることを言ってくるね。確かにお世話にはなった。実際、ハコさんからもらった売上金の一部は結構な額だった。そのおかげでちょっとは余裕が出来たのは事実だ。売れてない声優なんていつだってカツカツギリギリで生きてるんだ。
そんな私に、いやハコさんの口ぶりから、私達みたいな声優を使って来たんだろう。そして、彼女たちの飛躍を見て来たに違いない。確かに売れちゃったらエロい声つけてましたなんて……本当にそれでいいのか? 私は恥ずべき事をしてしまったのか?
そう問いかけると、自然と心の底から声が聞こえる。
『否!!』
と。そう私自身は確かにはずかしかった。けど、あの仕事に恥ずべきことなんて何もないんだ。私は全力でエロい声をだしてそして売れたのだ。なら、私はちゃんと仕事ができたってことだ。それがたとえ同人活動だとしても……私の声で心を体の一部分を震わせた人達が確かにいたのだ。
私は声優として間違ってなんかない。そしてハコさんも恥ずかしい事をやってる訳じゃ……いや、彼女の作品自体は……うん、けっこう恥ずかしいかな?
まあでも私はあの仕事を恥とは思ってないって事だ。これは伝えよう。
「ハコさん、今回は無理ですけど、私はあの仕事楽しかったですよ。恥だなんて思いません」
「殿ちゃん……ありがとう。無理言っちゃいけないよね! なんせこれから売れっ子になるかもだし」
いやーそれはどうだろうか? わかんないと思うけど、同時に二つの仕事なんて初めてだ。もしかしたら本当に、今私には波が来てるのかもしれない。
「ちょっと殿ちゃんどうしたの!? 大丈夫?」
私のあまりにおかしな様子にハコさんが心配気にそういった。いや、私も自分が大丈夫か疑わしい。私は何とか息を整えて、心を落ち着かせる事にする。息を整えながら、私はハコさんをみる。
「ちょっとは落ち着いてきた?」
「すーはー、なんとか……同じブスを見てると安心してきました」
「おいこら、ちょっとアニメに出れる様になったからって調子乗ってるな」
私の言葉にハコさんが私のバイト服を襟元を握って絞めてくる。やめてやめて、お客さんの目もあるから。
「けほっこほっ」
「全く、あんまりふざけないでよね」
別にふざけてあんな事を言った訳じゃない。本当に同じブスを見ると安心するから……とかいったら今度こそ絞殺されそうだから言わないでおこう。
絞められてちょっと落ちかけたおかげで分けわからないテンションは解除出来た。そこでもう一度私はメールを確認してるみる。そこには簡潔に『アニメの仕事決まりました』という文字が。スタンプも絵文字もなく、ただの黒い文字がそこにはある。
今時こんな硬派なのも珍しいが、私のマネージャーはそういう人だ。余計な事なんて文章にはしない。マネージャーに必要なのはいつだってほうれん草だって言ってるからね。
直ぐに確認したいから、返信を今すぐしたいが、今はバイト中だ。チラッと画面を見るぐらいなら、いいけど操作までしたらなんかさぼってる感じに受け取られる。まあハコさんは見逃がしてくれるだろうけどさ……私は声優でもバイトでも、仕事には真摯に取り組む質だ。
それにマネージャーも私がこの時間バイトしてるの知ってるし、既読無視でも大丈夫だろう。でもまさか本当に? と思うが、あの人は嘘をいうような人じゃない。落ちた時は落ちたってズバリというし、事実を突きつけてくる人だからね。
ならこれは本当の事なんだろう。
「なんか殿ちゃんにやにやしててキモいよ。鏡見る?」
これはさっきの仕返しですか? いいよ、どうせキモい事わかってるから。まあだけど、これはアレだね。正当な理由が出来ちゃったね。ハコさんには悪いがちょっと彼女の依頼は受けれそうにない。
「すみませんハコさん。例の件、難しくなりました」
「そんなことないよ!」
「そのセリフおかしいですよね!?」
なんでこの人がそれ言うの!? 私の予定知らないでしょ。どれだけ私にエロいセリフを言わせたい訳。いや、作品の売り上げとかの為なんだろうけどさ。
「なんかもう一つ仕事が決まったみたいなんです。なので今回はちょっと……」
「ま……まさか、殿ちゃんに波が来るなんて」
おいこらこいつ、私がずっと売れない事を願ってたのか? 確かにそれなら私はずっとエロ声優やってたかもしれないけど、それもここまでだ。私は正統派声優路線に回帰するのだ!
「そっか……ついに殿ちゃんにもその時が来たんだね」
「ハコさん?」
「皆そう……売れないときはありがたがるんだよ。けどね、売れちゃうとこういう仕事、隠すの。恥なんだよ。わかってるよ。けどね、殿ちゃんもそうなっちゃうのかなって思ったらなんか寂しくて」
うう……なんか心に来ることを言ってくるね。確かにお世話にはなった。実際、ハコさんからもらった売上金の一部は結構な額だった。そのおかげでちょっとは余裕が出来たのは事実だ。売れてない声優なんていつだってカツカツギリギリで生きてるんだ。
そんな私に、いやハコさんの口ぶりから、私達みたいな声優を使って来たんだろう。そして、彼女たちの飛躍を見て来たに違いない。確かに売れちゃったらエロい声つけてましたなんて……本当にそれでいいのか? 私は恥ずべき事をしてしまったのか?
そう問いかけると、自然と心の底から声が聞こえる。
『否!!』
と。そう私自身は確かにはずかしかった。けど、あの仕事に恥ずべきことなんて何もないんだ。私は全力でエロい声をだしてそして売れたのだ。なら、私はちゃんと仕事ができたってことだ。それがたとえ同人活動だとしても……私の声で心を体の一部分を震わせた人達が確かにいたのだ。
私は声優として間違ってなんかない。そしてハコさんも恥ずかしい事をやってる訳じゃ……いや、彼女の作品自体は……うん、けっこう恥ずかしいかな?
まあでも私はあの仕事を恥とは思ってないって事だ。これは伝えよう。
「ハコさん、今回は無理ですけど、私はあの仕事楽しかったですよ。恥だなんて思いません」
「殿ちゃん……ありがとう。無理言っちゃいけないよね! なんせこれから売れっ子になるかもだし」
いやーそれはどうだろうか? わかんないと思うけど、同時に二つの仕事なんて初めてだ。もしかしたら本当に、今私には波が来てるのかもしれない。
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