命改変プログラム

ファーストなサイコロ

1881 前に進むためのXの問い編 254

三周目に突入して、常に前に敵がいる状態になってる。前? 後ろ? いや、周回的には後ろ何だけど、物理的には前なんだよね。色々とプレイヤーごとに目的もはっきりしてくるっていうか……ね。このレースも終盤ともなるとレースを純粋に楽しむ時間は終わって、自分が何をするべきなのか……ってことになるらしい。

 もちろん個人で出場してる人たちはそんなしがらみに縛られることはないと思う。でもそれなりにウァレル・ワンのパーツを集めるのは大変だったし、それにこの前はエリアバトルが盛り上がってた。つまりは誰しもが何かしらのチームに所属してるということだ。

  なら本当にソロで純粋に参加してるやつって少ないかもしれない。そうなると、仲間のために……と妨害してくる奴らが半数以上っていうね。待ち構えてる奴らは、なんか僕を素通りさせた。海岸抜けて岩場地帯に入ったわけだけど、何台かのウァレル・ワンの音が聞こえてる。近くにいるのは数台だけど……時々岩の隙間とかから他のウァレル・ワンも見える。並走してきて、なにかするわけでもないけど……いや、違うね。

 なんか寄せてきてる。そして寄せられると、ぶつからないようにするわけじゃん。そうなると目の前に岩が……まさかそうやって事故させる気か? でもやり方がぬるいと思う。だって僕以外のウァレル・ワンにはだいたい武装が積んである。つまりは攻撃手段がいっぱいあるわけだ。それなのにわざわざ寄せて逃げさせて岩にぶつけようとするなんて……まどろっこしいにも程がある。それにだよ……

(流石にこんなのでは僕はぶつかんないよ)

 なにせ僕のウァレル・ワンは自由自在というほどじゃないにしても、そこらのウァレル・ワンよりはかなり操作性が高い。なにせ本体の操作系だけじゃなく、風によっても動かせるからね。結構アクロバティックなことだってできる。さすがにそんなアクロバティックな事が必要なことは早々ないけどね。岩なんてのはサッサッと良ければそれで済む。だからこれで僕をどうにかしようなんてのは無理だと寄せてきてる奴らだってわかってるだろう。

「む……」

 そう思ってると、姿を見せないようにしてた他のプレイヤーが姿を表した。けどそいつらも別に武装をむけてくるわけではない。どうやら何回か岩にぶつけようとしてきたのは、それ自体が目的ではなかったらしい。

 いやわかってたけどね。どうやらコイツ等が確かめたかったのは、僕が押し返してこないかの方だったらしい。つまりは普通のウァレル・ワンなら、対抗して少しはぶつけ合うってことだ。なにせ普通のウァレル・ワンにはシールドがある。だから少しぐらい触れ合う程度はよくある。てかこのレースの中何度も観た。ガンガンと機体同士をぶつけ合うのね。でも僕は一切それをやらなかった。だからだろう……

 なんか前と後ろ、そして左右がプレイヤーによって包囲された。そしてそいつらは次第に僕との距離を徐々に縮めてくる。こいつら……なるほどそれは確かにレース的には花はないやり方だけど、僕を封じるにはとても有効な手段だよ。

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