命改変プログラム

ファーストなサイコロ

1849 前に進む為のXの問い編 222

僕はスピードを上げる。キィィィィィィンという甲高くもあり、内臓に響くような音がヴァレル・ワンから漏れる。僕は目に力をいれて、状況把握を更に密にすることにする。僕の目は特殊で、かなりよく見える。動いてる物なら遅く見えるしね。だからこそ、速く動いてもなんとかなる筈だ。

 風を使っての移動ならヴァレル・ワンにだって負けない速さで動けるしね。もちろんからだ一つと機械のヴァレル・ワンでは動きやすさが違う。速く動けば動くほどに、その体の制御は難しい。だからこそ、最初はやきもきした物だ。

 速く走れても、それにともなって操縦性はどうしても落ちてしまうから。からだ一つの時もそうではあった。今は速く動いてもかなり自由に動ける。風帝武装でも『アウラ』が標準くらいまでに高まってるからだ。

 だから最初からそこまでを望むのはやめてもっと地道にやることにした。色々と改造をすることはそうだけど、内部システムにまで手を加えたのは早々いないだろう。僕のヴァレル・ワンはかなり軽量化されてる。内部はけっこうスッカスカだ。穴とかもいっぱい開けてるしね。けどその穴は別に軽量化だけの為に開けてるわけじゃ無い。風の為だ。

 ハッキリ言って、普通のヴァレル・ワンの操縦システムでは小回りとかなんとかどうしたって限界がある。けど限界を超えるために、この穴が必要なのだ。ヴァレル・ワンはそれこそ操縦の仕方は色々と用意されてる。難しいのから簡単な物までね。

 ハンドルが一般的だろうが、クラシックなゲームコントローラーみたいなのでだって操縦できるし、変則的な操縦方法もいくらでも用意されてる。僕は普段は普通のハンドル型を採用してる……が、今はハンドルを握っては無い。アクセルとブレーキだけに脚を置いて、腕はだらんと横に投げ出してる。そこは風が通ってる。その風を掴んでヴァレル・ワン全体を自分の風で包む。

 そして組み替えたシステムによって、風での操縦を実現してるのだ。これはかなり大変だった。一杯祝福の勉強をした。でもそのおかげで、僕のヴァレル・ワンは普通では実現できない程の機動性を手に入れた。

 滑るように加速するヴァレル・ワン。そして岩礁地帯らしく沢山の岩が鎮座してるが、今までは一生懸命ハンドルを左右に回転させて更にはアクセルとブレーキを細かく踏んだりしてやってたが、もうハッキリ言って、アクセルは踏みっぱなしだ。一応ブレーキにも脚を置いてるが、それは緊急の時の為。それだけだ。アクセルはべた踏みである。

 トップスピードのまま、岩が密集してる所に突っ込む。このスピードでは本来なら避けること何て出来ない。でも――

(この状態ならいける!)

 僕のヴァレル・ワンは岩と岩のギリギリを縫うようにして流れるように進む。後方の集団に追いつかれること無く岩を抜けた先は、ボコボコと何かが噴き出す沼が広がっていた。

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