命改変プログラム

ファーストなサイコロ

1670 前に進む為のXの問い編 62

「あんの鹿野郎!!」

 僕はそう言ってすぐさま鹿を追いかけた。アーシアを背中に乗せた鹿はかなりのでかさで、この森ではそんな速く走れるわけ無い……とかふんでた。
 なにせ僕はスピード重視型だからね。スピードだけは誰にも負けない自信がある。てかこれが負けたら僕の取り柄ないし……ってな訳で速攻で追いつけると思った。

「あの鹿……速いな」

 あれだけデカいのに木に当たらないどころか……

「うわっ!? うぷっ!? この!!」

 何かさっきから枝とかなんかによくぶつかる。そのせいでスピードが乗らない。でもそれがおかしい。だって僕の方かあの鹿よりも小さいんだよ。
 それなのにあの鹿はめっちゃまっすぐに……うん? まっすぐに何であの鹿走れてるんだよ? ここは森の中だぞ。色々とおかしいことが起きてる。

 まるで僕を妨害して、あの鹿には通りやすい道を用意してるかのようだ。そう……

「まるでこの森自身が僕を邪魔してるような……」

 ような……じゃない。確実に僕はこの森に邪魔されてる。そりゃああの鹿、速いはずだ。いくら速くても流石に僕よりも速いなんてあり得ない。それは自信を持って言える。僕が追いつけないのなら,それは外的要因があるから。そしてそれはこの森自身だったと言うことだ。僕のことは妨害して、鹿のことは全力で支援してるんだ。

 僕の前には枝や木々をもってきて、まっすぐに走れないように……逆に鹿の逃走ルートからは木々をのけて更に地面まで走りやすいようにやってるみたい。
 別に木々を引っこ抜いたり、差し替えたりしてるわけじゃない。どう見ても地面がうごめいてる。つまりは、この森が一つの生命のように動いてるって事だ。
 そんなことあり得るか? ともおもうが、あり得ないなんて事が無いって事を僕はよく知ってる。LROならなんだって起きる。だから僕はそれを受け止めて、どうやれば良いかを考える。

「ようは、そんな妨害さえも乗り越えるだけのスピードと柔軟性があれば良いって事だろ!!」

 僕は更に高密度に風を集めていく。そして色づいていく風が僕の周りに集まってそしてそれは完成する。

「風帝武装」

 風帝武装ならスピードを落とさずに縦横無尽に全ての空間を柔軟に移動することが出来る。これならどんな棒が生きたってより早く反応出来て意味ないものに出来てしまうのだ。
 そして風帝武装にしてから、僕はあっという間に鹿に追いつく。

「止まれ! じゃないと容赦しないぞ!」

 鹿が言葉わかるのかわかんないが、多分この森の支配者的な奴はきっと僕たちのことを見てるはずだろうから、そいつへと暗に警告を出す。でもどうやら止まる気はないらしい。それならしょうがない……な。

コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品