命改変プログラム

ファーストなサイコロ

1688 前に進む為のXの問い編 50

「あっ……うぇ……」

 つぼみの幼女は僕という存在を認識はした。でもどういうことか全くもってわかってない。何で自分が寝てる間にすぐ近くにまで僕がいて、そしてどうして目の前でひざまずいてるのか……全くもってわかってない。

(まあそれはそうだろうね。だって僕自身わかってないし……)

 ノープランなんだよ。一応ひざまずいて視線の高さでも合わせておこうかなって? そのくらいの気持ちでしかなかった。てか何を言えば良いのか全くもってわかんない。でも……混乱してるつぼみの幼女の目には、大きな雫が貯まりつつある。このままでは駄目だって想う。決壊したら、きっと彼女は逃げ出すだろう。

(どうする……どうしたらいい?)

 ここは恥ずかしいが、一つ役になりきるしかないのかも。こういうときは勢いだって大事、ここでは観てる人なんてのはいない。なら、ちょっとの恥ずかしさなんて我慢出来る。

「お……おぉ~、なんと愛らしい方なんだ。よ、妖精達に惑わされてきてみれば、こんな場所に眠る貴女に出会えるなんて……」

 とりあえずなんか演劇とかなんとかを思い出し、こういうシチュエーションでそれっぽい感じのことを必死に並べたてる。そしてそんな風に言ってると、何でか知らないが、風帝武装の羽衣が勝手にふわりとなびき、何か勝手に演出をしてくれてる。
 絶対に近くに居る小さな光達の影響だろう。多分だけど、光達はいたずら好きっぽいからな、何やら面白そうなことをやってる――とか想われてるんだろう。でも一応興味は引いてる。そして流れ出す風も色づいて、優しく周囲に流れるそれはきっと良い演出になってる。

 彼らが協力することで僕が危険な奴じゃない……それにある意味で特殊な状態になってるこの場で、この場ののり……的な物が加速してるかもしれない。

(そうだ、ここまでやったらもっといけ!)

 そういう歩き出しちゃったら止まれない精神で、僕は突き進むことにする。

「僕はただ風に誘われるままに現れた者。風の使いのような者です。どうか怯えないでください。きっと自分をここに呼んだのは小さな妖精達のいたずらなのかもしれない。
 でも――」

 僕はそう言いつつ、自分の右手をゆっくりと前に差し出す。

「――僕はこの出会いをとても光栄だとそう思ってます」

 うん……めっちゃ恥ずかしい。でもなるべく真剣な顔を維持する。もうめっちゃ真面目です……的な顔で、この場の雰囲気を作ってるのだ。さながらおとぎ話の王子様と姫様の出会いのような……そんな感じに想定してやってるからね。
 誰かに観られたら恥ずかしくて死ねるよ僕。てか、何か反応してくれないかな? とか想ってるんだけど……つぼみの幼女はポケーッとしてる。何を彼女は想ってるんだろうか? 涙は引っ込んでるみたいだけど……そう思ってると、彼女は立ち上がって、こっちにむかってきた。恐る恐る時間をかけて……僕は指しだした手をそのままに、彼女を待つ。

 手がぷるぷるしてこの場の雰囲気を壊さないようするのが大変だ。密かに風で支えてる。でもおかげで、周囲にきらめく風がさらなる幻想感を演出してたかもしれない。

 そしてついにつぼみの幼女は目の前にきた。そして恐る恐る僕の手を両手で掴む。

「※※※※」

 彼女の言葉は僕には理解出来なかった。LROは勝手に翻訳して頭に届けてくれる筈だけと、そういう翻訳はなかった。でもとりあえず僕は彼女の目を見て笑ってあげる。ここで敵対心を見せては駄目だと思う。

 するともう一言、幼女は何かを呟く。するとなんだか、腰のあたりが熱くなった。更に幼女が光り出す。何か起きてる。コードが沢山流れてるような……流れだしてるような……そして色々と終わったとき、幼女は成長して綺麗な女の子になってた。

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