命改変プログラム

ファーストなサイコロ

1613 校内三分の計編 223

「やっぱりないよね……私が日鞠ちゃんにできることなんて……」

 そうやって日鞠は下を向いてしまう。クリス的にはここはもっと自信あふれる感じで摂理には『任せて! 私やってみる!!』程度でいいから言ってほしかったんじゃないだろうか?
 当てが外れたか? と思って僕はクリスの方を見てみるが、クリスは別に普通だった。ジュースをストローで飲んでる。摂理があんなに苦悩してる感じなのにのんきな奴だ。まあこういう奴だけど……

「そんなことないよ。摂理ちゃんには摂理ちゃんだけができることがあるよ」

 日鞠の奴がおもむろにそんな事を言う。それに摂理が顔をバッと上げて『ほんと?』と問いかける。これは摂理の奴期待したまなざしを向けてるぞ。日鞠の奴……これでなんかミスしたら摂理に恨まれそうな……大丈夫? ちゃんと摂理が納得する答えを持ってるのか? まあ日鞠だから大丈夫だと思うけど。

「うん、私が望むとしたら、摂理ちゃんはもっと堂々と、自信満々でいてくれたらいいかな?」
「…………私は無能だからせめて空元気であれって事かな……だよね」

 ネガティブな方向へと受け取って落ち込む摂理。まあ摂理の受け取り方は極端だとは思うが、結局の所日鞠が言ったことは心の持ちよう的なメンタル面の事だから、自分に期待する能力って奴がない――と摂理が受け取ってもおかしくはないと思う。

「そうじゃないよ摂理ちゃん。私と違って、摂理ちゃんには小細工が必要ないってだけだよ」
「どういうこと?」

 なんか日鞠が摂理をフォローしようとしてるけど、なぜか僕の隣のクリスは日鞠の言いたいことがわかってるかのように一人首を縦に振って頷いてる。なんかその仕草イラっと来るな。

「摂理ちゃんはそれだけ魅力的ってことだよ。今だって下ばかり見てないで、ただまっすぐに背筋を伸ばしてるだけできっと違うよ? それだけ摂理ちゃんは特別だから」
「それだけで何かかわる……の?」
「やってみたらいいんじゃないかな。きっとみんな反応してくれるよ」

 日鞠にそういわれて、摂理は鈴鹿と目を合わせた。実際僕だってそんなただ背筋伸ばしてまっすぐに二人と向き合って今現在存在感が最も薄い摂理に変化があるか? とは思う。
 でもどうやらそれは間違いだったようだ。やっぱり日鞠の奴は正しいらしい。物は試しと、摂理は大きく息を何回か吸って椅子に対する腰の位置を調整して、そして背筋を伸ばして迷いがちだった視線をまっすぐに向ける。

 別に何か特別な事はしてない。確かにさっきまでよりも堂々と座ってるだけだ。けど……摂理は容姿がいい。はっきり言ってテレビとかでも通用するくらいにめっちゃ容姿がいい。

 その摂理がちょっとした態度の変化で雰囲気を変えると、なんか場が引き締まったように感じた。さっきまで一番弱い感じが摂理だったけど、今は二人に渡り合えそうな……そんな感じがする。

 たぶんだけどさ……きっと最初から……心で負けてちゃダメなんだよな

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