命改変プログラム

ファーストなサイコロ

1460 校内三分の計編 120

「なるほど、君があのテア・レス・テレスに喧嘩を売ったという。なかなの豪胆さ。そうは見えないが……そういうのキライじゃないぜ」
「いや、だから別に喧嘩売った訳じゃ……」
「いやいや、誰にだって出来ることじゃねーんだぞ! やったことに意味があると俺は思うぜ!」

 そう言って僕の言葉を遮って顔はイケメンなのに、体がムキムキでアンバランスなボディビルダーみたいな体になってるその人がその腕を首に絡めてくる。いやいや、筋肉あり過ぎて苦しいんですけど!?

「僕の事……嫌わないんですか?」

 僕は苦しいのを我慢しつつ、そんな言葉を紡ぐ。僕がレスティアで色々と酷い事をされてるってのは、まあ大体のプレイヤーなら知ってる筈。だから全てを言わずに「あなた達は他の人達とは違うのか?」という問いかけをしてみたのだ。定番だろ?

「嫌う? そもそもが好きか嫌いかを断じる断じる程、俺達仲良くねーよ。そうだろ?」
「そ、そうですね」

 ちょっと意外だった。コイツラは僕の懐にさっさと入り込みたいはずだ。だからこそ、さっさと僕の心の隙間に入り込むうとしてくるだろうと思ってた。具体的には、ここで僕の言葉を肯定してくれると――そう思ってた。でもそうじゃないと……なかなかにやるね。確かにいきなり会った奴に全肯定されるのも怪しい。ここはまあ、テンションで乗り切れるかもしれないが、後になったらなんか都合が良かった……とか思われる可能性はある。
 なにせここは誰もが何かを演じてたりする。それが普通だし。それに酔ってるの奴らはいっぱいいる。気が大きく鳴ってる奴らだっていっぱいた。なにせ新しい人生を送ってるんだからね。こいつらもなにか企んでるみたいだけど、リアルでは超真面目で、LROで発散してるだけなのかもしれない。

「だから、ほらもっとお互いに知ったほうがいいんじゃないか? 何があったんだよ? 俺は他人のクソみたいな評価だけを鵜呑みにしたりしないぜ」

 格好いいセリフだ。本当に僕が周囲の偏見に押しつぶされそうなときにそんな事を言ってもらえたら、コロッと落ちたかもしれない。でも……

(こいつらマッチポンプなんだよな〰)

 僕は裏側を知ってる。だからまあ、コロッといくことはない。なんか表情を作る……とかは難しい。涙を感情に任せて流すのもなんか難しい。だからここは自分にしか出来ないやり方で、うつむいて一筋の涙を流した。つまりはコードだ。涙を流すみたいなコード書いてみた。

「うお!? どうした!!」

 するとなんとどこか間違ってたのか、蛇口かっくらいの涙が僕から流れ出した。ヤバい……これじゃあギャグじゃないか。でもこうなったらわんわん泣くしかねえ!恥をかき捨てろ僕!!

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