命改変プログラム

ファーストなサイコロ

1310

「いく――」
「ちょっと待ちなさい。あんた」
「はえ?」

 私はここまで頑張った初心者の女の子に二つの光の球を授ける。流石にもうクラクラしてそうでこれ以上の魔法はうてないだろし、ただの初心者がその身一つで何が出来るかなんて……何も出来る筈がない。なら私の魔法を授けようって事だ。
 何か起こるかわからないが……彼女は初心者でここまで残ったのだ。何かが起きるかもしれない。そんな思いがある。

「あんたがこれの発射を制御しなさい。いつもの魔法の様に打てばいいから。
「はい、ありがとうございます」
「じ、自分には?」
「ギョクリにはいらないでしょ。いくらでも仕込んでるでしょあんたは」
「そ、そんなことはないぞよよ……」

 こいつは私達とは比べものにならないくらいの容量のアイテムボックスを持ってる。それこそラノベでよく見る容量∞のアイテムボックスなのではないかと思う位だ。それだけのアイテムボックスを持ってるギョクリに私の魔法が必要なんて思えない。
 ギョクリは戦闘タイプではないが、強かな奴だ。商人が強かで無い訳がない。それにここまでチームを大きくした奴は色々とやってきたはず。そんな奴はどんなときの対策だって用意してるだろう。

「いいか? なら後は任せるぞ」
「あんたにそんなことを言われる日が来るなんてね」
「ふん、貴様なぞに託すしかないとは、まだまだだな」

 そう言って三人は会長へと向かっていく。その間、会長はこっちを見てた。何もしてはこない。これがアニメならコメントで「動けよ」とか言われてる所だ。いや、この戦いは中継されてるし、今や映してるのはここだけだろう。なら、多分同じような事が書かれてるに違いない。

 逆にこっちは不気味でたまらないってのにね。強者の余裕か……けど私は違う可能性を探ってる。

(私達が残ったのは偶然? いや、そうじゃないんじゃない? 会長は偶然を極力排除しようとしてる。いくら会長でもそれを完璧に成すことなんか出来ないけど、きっとほかの誰がやるよりも誰よりも完璧に近い形には出来るだろう。

 ――と、言うことはだ。私達が残ったのには理由がある。とにかく先に消えていってたのは前衛の奴らだ。それは別に普通の事だ。なにせ近くで敵と相対してるんだから、先に消えていくことは当然。ても流石の会長でも何もせずに敵を消すなんて出来ない筈。
 私達が知り得ない何かをやってたはずだ。そしてそれはきっと祝福だろう。私達はそれを知ることは出来ないんだから。祝福は、私達には理解できない力だ。でも――

(会長は本当に何もして無かったんだよね)

 会長はただこちらの攻撃を受け入れていた。それだけで、ペンでも何も書いてなかった。祝福には少なくとも書く――と言う行為は必要なはず。其れすらないのは……

「一か八かね」

 私は一つの賭けにかけて魔法を準備する。

コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品