命改変プログラム

ファーストなサイコロ

1297

 会長はここで決めに来てる。どこまでこのエリアが指定されてるのかはわからないが、きっとこの空に地上はないだろう。一定高度を下回ったら、ステージ上に復帰なんて優しさはきっとない。そのまま死……あるのみだろう。そもそもが今まで落ちた奴が戻って来てないし。

 ならこれはもう決めに来てるとした思えない。飛べる私とかが有利に思えるが、テア・レス・テレスの奴らはいつだって足場を作れる紙を用意してる。ステージをひっくり返す……これだけでテア・レス・テレスは戦況を文字通りひっくり返したんだ。

 これならどれだけ人数差があったって関係ない。落ちる奴と落ちない奴……ここで生き残る奴で勝負は決まる。てかテア・レス・テレスは大抵大丈夫だろう。その準備をしてたんだから。その前提から覆さないとチャンスさえなさそう。

 私には仲間を支える術はないし……ここはもう会長だけに焦点を絞ってる場合じゃない。エアリーロが居たらまだ槍用はあった。けど……それかメノウが前と同じだけの力を行使できれば、全体の時間を遅くしたりできたけど、今は無理だ。実際の時間は操作できないからね。

 体感時間だけ操作しても落ちてる事実は変わらないからね。ならもうやれる事はない。いやあるけど……どっちに振るか……だ。そして迷ってる時間はない。なら――

「全員落とす」

 ――それを選ぶ。シャランと錫杖を揺らす。するとそれが分裂して再び錫杖が複数化した。そしてそれぞれから、魔法が放たれる。光の魔法だ。一番早いし、気付いたら着弾してるんだから足場を崩すのに便利だからね。

 流石にある程度距離があくと、私へと攻撃が通る事は無くなったようだ。一気に吹っ飛ばしたのは正解だったね。私は超高速詠唱絶え間なく続けて、メノウの力によって次々と魔法をストックする。一気にテア・レス・テレスの奴らの足場は崩した。

 でも奴らがどれだけの紙を持ってるかは不透明だし、二十人全員に私一人で対応するんだ。いくら超高速詠唱だとしても、見てから詠唱しだしたんじゃ、間に合わなくなるのは必至。だから発動する筈の魔法をメノウの力で止めてる。本当は微妙に動いてる訳だけど、周囲からは私の周りに次々と光の球が貯まって言ってる様にみえるだろう。

 勿論テア・レス・テレスの奴らが足場を作る度に発動はしてるから、過剰な程に貯まる事はない。せいぜい貯まってる魔法は五つくらいだ。これから増える事も減ることもない。


「この!」
「つあ!?」
「だめだ!!」
「このっ! 近づけねえ!!」

 こちら側のプレイヤー達と違って、テア・レス・テレス達はかなり粘ってるが、その高度はどんどんと落ちてる。そのまま臨界点まで落ちろ!! そう思ってると、下の方からスキルの光が輝く。テア・レス・テレスの抵抗? とか思ったが、奴らよりも低い場所だ。つまりそれはこちら側のプレイヤーのさいごっぺ? 

(いや違う?)

 何か……来る。吹いて……来る。


「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」

 風と共に、全てのプレイヤーが再び私の所まで上がってきた。

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