命改変プログラム

ファーストなサイコロ

1184

 見下げるは活気ある街の姿。そこの者たちは皆が一様に着物を着て、その景観はまさに古き日本の光景だった。ただし走る馬は何か違う。黒光りしてるようで、更にとてつもなく速い。ついでにいうと足がない。皆は着物だが、別にちょんまげではない。

 それどころかとてもカラフルな髪の色がいっぱいだ。そして街行く人々はみな美男美女。それもそのはず、なにせここにいるのはプレイヤーだけだ。大体、プレイヤーは美男美女に自身をつくるからだ。後はネタ的なやつくらい。この町にもちらほら見えるが……

「歴史って素晴らしいですね」

 天守から、このエリアの街を見てそういう極彩色の目をした少女。

「くるくる~」

 そういうと彼女の学生服の様な服が着物……いやもっと豪華なものへと変わる。それは十二単だ。

「どうですか? 私にも~似合います?」
「よう似おうてますよ、デジタルの悪魔はん」
「ありがとう~」

 重いはずのその格好で、十二単を来た彼女はフリフリと踊りだす。広い畳の部屋だ。ゆうに五十畳はありそうなそこの中央少し後ろには籠があった。豪華な籠だ。金色に光、そこかしこに宝石がちりばめられてて、籠の上には宝石で出来た猫みたいなものが置かれてる。

 そしてその籠の中にも誰かがいた。彼女はシルエットしかみえない。

「所で、そろそろでおまへんか? どうするおつもりやす?」
「なにがー?」
「何がとはけったいな。例の戦でしょうが」
「知ってまーすよ。勿論、行こうと思ってますよ。だって気になる子達がいっぱいですからね」
「ふふふ、せいぜい搔き乱してくだはりませ」
「いいのかなー? このままじゃ、テア・レス・テレスが盤石の体制を整えることになるとおもいすまけど~?」

 そう言っていつの間にか極彩色の少女が籠の前にいた。まるで、コマが途切れた瞬間に移動したかのような……そんな移動だった。

「あっしの意識のコードに介入するのはやめなはれ」
「でも大丈夫じゃないですか~。使える相手、あんまりいないですよね~。誰も気づいてくれないし」
「それなら、あんさんのお気に入りに存分に使えばよろしい」
「そのつもりです。たくさんの思惑が交錯してますから、いっぱい乱して、そして食べちゃいますよ。そうやってますます状況は混迷に……混濁に……そしてきっとその先に――」
「こほん」

 いつの間にか天井に向けて伸ばしてた手に気づいたそれを彼女は十二単の中に隠した。

「まあ、好きになはれ」
「しますよ。私を縛る事は誰にもできませんから」

 そう言って極彩色の彼女は消える。十二単だけを残して。

 パチン

 そんな音がするとともに、その十二単が青い炎で燃える。

「ふん、欲張りは身を滅ぼしまっせ」

 彼女はそうつぶやいた。

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