命改変プログラム

ファーストなサイコロ

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 黒い鎧たちの後方から更に戦力がやってくる。まさか援軍が来るとは思ってなかったのか、追い詰められてた男色艦隊の面々が息を吹き返し始めた。元々自力ではこっちの戦力では厳しいからね。まあ何人か渡り合える人達はいるけど、全てここに投入する訳にもいかない。

 いや、そもそもこっちにはそこまで戦闘得意な面々はいない。けど男色艦隊の皆さんは意外そうにしてるけど、私的にはこれは想定通りだ。私達は集めた自分たちの玉を餌的にも使ってるんだ。だって私達のここに集まってる玉は元々守りづらい、向こうからしたら取りやすい場所にはあった玉ばかり。そして残ってる所にある玉は比較的には防御有利な場所だ。

 頑張っても実入りが少ない所を狙うよりは、確実に複数個あるここを狙うのは自然な事だ。そして男色艦隊は向こうの最強戦力。ここはこの人たちに任せてもう一方を同時攻撃するって選択もあったはずだけど、どうやら最高戦力と合わせて確実に取る事を向こうの指揮官は選んだらしい。

 正しい判断だと思う。戦力の分散は確実性を損なうしね。それに向こうは改造結界張ってるし。こっちは誘い込む為にわざわざ玉を身く見える位置に配置してる。まあ私達には動かせないから、その場所を土魔法で祭壇みたいにしてるだけだけど。

「バカ野郎が……だが、助かる!!」

 敗北を覚悟してた男色艦隊の団長さんが再び攻撃を仕掛けてくる。けど、私にはそこまでのダメージはない。まあ、あの剣でそこそこのダメージを出しちゃうこの人もおかしいけどね。けどどうやら、仕掛けにはきづいてないみたい。

 サブ武器にでも切り替えれば、一瞬で私なんか吹き飛ばせるんだけどね。やっぱり育てた武器とかは愛着があるんだろう。手に馴染む武器ってのはどうしてもあるしね。それに耐久力とか攻撃力とかを考えたらってかんじかな? 

 自慢の武器で微々たるダメージなんだ。サブの武器がメインの武器よりも強力なんて事はそうそうないだろうから、変えようなんて思わない。てか思わせてないんだけど。でも当初はもっと苦労すると思ってた。だって私って結構駆け足で駆け上がっちゃったから、ランキング上位のチームとの接点ってなくて、一位になってからは警戒されてたからね。

 情報は皆さん有名だから集めるのに苦労はしなかったけど、やっぱり他人の総評と本人とは乖離がある。集めた情報では団長さんは豪快で男気に溢れてて、猪突猛進でそれを諌める役目を担ってるのが副団長であるイケメンな人らしいって事だった。

 けど、実際こうやって戦うと団長さんは本能のままに突っこむ事はあんまりやらない。いや、本能に従ってる勘はあるけど、決して猪突猛進ではない。野生の勘に人の狡猾さを合わせた感じでかなり厄介。今回は私に有利に働いたけど、次は正面からは戦わずに勝てる様にしたい所だ。

 とりあえずそろそろ選手交代だね。上手い事戦力をここに集中できてるし、私は全体を把握しておきたい。特にスオウね。ここに来る可能性もあったんだけど……来てないという事は、遊撃に回ったのかな? 確かにスオウのスピードならその運用が正しいけど、

 スオウについていける人がいない限り、単独で姿を現す事はどうしたってリスクが高い。スオウは強いけど、これまでの戦いでアイテムのストックもだいぶ減ってる筈だ。

「ごめんなさい団長さん。本当は私が相手をしてあげたいんですけど、私では貴方に勝てませんからここで失礼しますね」
「逃がすと思ってるのか!!」
「逃げますよ」

 私はインベントリ内からアイテムを出して小さな炎をそのアイテムから出す。それらに文字を書いた紙を燃やさせる。すると一気に炎は赤からオレンジになって膨らんだ。それを団長さんは切ろうとするが……粘性を加えた炎は団長さんの剣にまとわりついてる。

 祝福とコードを使って新たな特性を現象に付与できる。これで無理に突破は出来ない。私は団長さんに背中を向けるよ。

「もういいのか?」
「ええ、なかなか使えると判明したし、状況は既に終盤に入りだしたので私は指揮に行きます」
「哀れだな。これで万の一つも奴らに勝利なんてなくなる」
「それは分からないですよ」

 私はそういってここを彼に任せた。

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