命改変プログラム

ファーストなサイコロ

1061

「どうやら檻に閉じ込められたみたいだな」

 とりあえず向かってくるプレイヤーを速さで無視してさっきの散った魔法の柱の外に出ようと端まで来てみたが……外に出る事はかなわなそうだ。簡単にコードを読み取ってみたが、コードが頻繁に更新されてる。会長が何か対策を? とか思ったが、多分違う。

 これは合唱魔法なんだろう。そして術を発動しても維持の為に術者を縛るタイプの結界魔法と考えればこのコードの更新にも納得がいく。なぜなら、ローレと検証した時に同じようなコードの羅列を見た。ローレは一人でも合唱魔法を唱える事が出来たりするアホな奴だから役に立ったな。
 あいつは本当にどこまでチートなのかと……まあコードをいじれるようになった僕が言えることではないけど。

「でも……ここまでするか?」

 どうやら八百メートル四方を囲まれたみたいだ。大体ここら辺にいるだろうと予想立てて術を撃ってきたのか? 多分撃ってきたんだろうな。会長なら、マップを見ながら玉を盗られた順番とかを計算すれば僕の次の行動くらいわかっておかしくない。
 後は範囲魔法なら誤差があっても多少はどうにかなるだろう。そのおかげでまんまとこんな風になってるしな。でもここまで戦力を投入するとは思ってなかった。

 だって合唱魔法は一人で普通は一人では出来ないから合唱魔法な訳で、最低でも二人……けどこの規模の合唱魔法を二人なんて事はないだろう。四・五人は導入してるだろう。そしてその範囲に入ってる敵は視界をコードにして確認した限り、三十はいる。この視界は情報過多だが、便利ではある。風情なんか何にもなくなるが、視覚とか五感を惑わす系の妨害が意味をなさなくなるからね。

 だから数は正確な筈。一対三十って……確実に殺しに来てるな。これで自分の所まで来ることを望んでるって会長も無理を言う奴だ。まあ復活できるし、ここで死んでも行くだけならどうにかなるだろう。けど、死ぬとステータス低下を受ける。
 会長と戦う事を考えると、ステータス低下なんてハンデを受けた状態であいつとやり合いたくはない。どうやら仲間はこの中にいないみたいだし……完全に狙われたな。

「全員倒せるか?」

 いや、そもそも全員倒したからってこの檻が解除されるか? 見た限り、術者は中にはいない。なら僕をずっと閉じ込めておくことも出来るだろう。でもそれはどうだろうか? 流石にずっと僕を閉じ込めておくことはないと思う。無駄だし。

 僕をどれだけ脅威として見てるかって事になるが、会長は個人戦よりも集団戦が得意なタイプだ。あいつは根っからの指揮官であり頂点だからな。どんな強力な個も、個では限界がある。集団は、数はそれだけで力だ。そしてそれを使う奴が優秀ならそれだけ集団の脅威は増す。

 だからいつまでもここに縛る事はしないだろう。僕みたいな個が何人かいてもそれでも勝てる戦略を立てるのがあいつだ。僕は今は会長の出方よりもこちらの味方の出方を祈った方がいいかもしれない。僕にこれだけ戦力を裂いててくれてるんだ。
 なにせ双方定員百人だから三分の一の戦力だ。それをここに集中してるのなら、他が手薄の筈だ。そこを味方が突いてくれる事を期待して、僕は目の前のプレイヤー達を屠る事に意識を集中しよう。

 炎の弾が飛んでくる。それを避けると、矢が色々と光を宿して向かってきた。風帝武装アウラなら空中で向きを変えるなんて造作もない。だから直線的な矢を避けるなんて簡単……とおもってたら避けた矢が戻ってきた。ホーミングか。厄介だから叩ききる。

 眼下に向かって風の刃を飛ばす。数が多いからとりあえずこれで攪乱しよう。なんか下からヤジが飛んでくるが、気にしない。だってこれは戦いだ。勝てる方法を僕だって取る。当たり前だろ。

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