命改変プログラム

ファーストなサイコロ

1032

「幾らですか?」
「いきなりそこか……」

 声をかけられて速攻で報酬の交渉に入ったらマイオさんにそう言われた。しまった、がめつい女と思われたか? けど別にいっか。マイオさんにどう思われても別に何ともないや。いい報酬が出るなら乗ってあげてもいいよって感じだからね。

「いきなりも何も大事ですよ。今の私はお金を欲してるのです」
「はは、確かにお金は大事だね。けど今はなかなかね……いや一介の冒険者に払えるくらいはもちろんあるよ。けど色々とうるさい奴がいてね」
「では私たちの関係はこれまでですね」

 その言葉を発した瞬間、周囲の騎士達がざわっとした。あれ? ちょっとからかった感じなんだけど……なんか「やっぱり」とか「凄い場面に――」とか「羨ましい」とか「立候補したい」とか聞こえてくるよ。うん、私は結構人の機微には敏感だ。
 何を思われてるのか理解した。

「ち、違います! そういう関係じゃないですから! 今のはただ単にお友達もこれまでって意味です!」
「お前たちが想像してる事はわかるが、悪いがその期待には応えられんぞ」

 私とマイオさんは同時に否定するようなことを言った。私はそれなりに焦ってるのに、マイオさんは案外冷静だ。これが大人の余裕という奴か? 負けた気がしてちょっと悔しい。でも二人してそんな否定に入ったら人は勘ぐってしまうもの。

 騎士の人達はとりあえず直属の上司であるマイオさんがそういうと一応は納得した様な雰囲気を出すけど、私たちの関係に興味津々という感じなのは隠せてない。やっぱり私が可愛いからだろうか? けどこの世界、大体美男美女ばかりだからね。

 まあNPCにはもちろん特徴的な容姿な人達もいるけどね。でもまあやっぱり作り物の世界だけにリアルよりも平均は高いと思う。

 だから彼らが私をマイオさんの何? その……彼女とか、愛人とか思ってもおかしくはないけど、私的には心外だよ。貧乏領主なんて眼中にないです。寧ろ私はスオウしかみてないし。でも口で言ったところで信じてはくれないだろう。

 無駄に否定すれば、どんどん怪しくなるという物。ここは話を戻した方がいいだろう。

「それで報酬は?」
「あ、ああ。それは色を乗せてだそう」
「ならやります」
「いいのか? まだ内容を言ってないが」
「別にいいですよ。私にも出来るから声をかけてくれたんでしょ?」
「まあそうだが、だが依頼も見ずに受けるのは、問題の元だぞ?」
「マイオさん以外の持ってきた話はちゃんと確認しますよ」
「そうだな、そうしろ」

 なんかそんな会話をしてたら周りの騎士の人達がにやにやしてる。それにとても生暖かい目だ。これって……私たちは完全に墓穴を掘ったのでは? 私とマイオさんは一度視線を交差させて周囲の騎士に抗議する。
「違うぞ!」
「違うから!」

 けどそれはきっと逆効果だっただろう。

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