命改変プログラム

ファーストなサイコロ

997

 とりあえず前の応用に次ぐ応用だ。戦端は既に開かれてる。なるべく早く両軍を止める必要もあるし、ある程度強力で、だが互いに死者を出さないような……そんな微妙な調整が必要だ。やはりここは風が一番。奴らを止めるにはその乗り物を無力化するが一番簡単だからだ。

 蜂やトンボは飛んでる以上風の影響からは逃れられない。だからこそ風が一番有効だ。僕は体の内で全部の祝福を合わせて大きくする。そしてそれを今度は風として外に出す。大きくするとそれだけ制御も難しくなる。弱すぎてもなかなかに難しかったが、実質今は持ってる祝福全てを合計してるから、こっちの方が大変だ。

 風だからなんとかなる感じだが、他の力をこの状態で外にだすのはまだ無理かもしれない。

(ううー)

 そんな声が頭に聞こえる。僕はフラングランの緑の宝石をみる。

(辛いか?)
(大丈夫……よゆーだし)

 まだ呻くよう声が聞こえるが……本人が大丈夫と言ってるのなら大丈夫なんだろう。折角要請が風と雷にはいるんだからこいつらを介した方が制御が格段に楽になるんだよね。しかも更に威力も上がる気がする。まあ今回は威力はそこまで上げる必要もない。
 外にだしてわかったが、格段に自分の中から出る風が強くなった事で周囲の風を掴むのがとても楽だ。周囲百メートル範囲は掌握できる気がする。
 これは……なかなかに使えそうだ。

 僕は奴らの抗争範囲に風を乱したドームをイメージして作り上げる。すると面白い様に小さな騎士たちが落ちていく。彼等は何が起こってるのかわからないだろう。いきなり自分たちの制御してた筈の乗り物が制御を失って落ちて行くんだからね。

 僕のその力を見て冬と秋のお姫様がなんか言ったが、僕には聞き取れない。けどなにやら関心されたのはわかった。尊敬の眼差しを感じるよ。戦場がいったん落ち着いた所で僕たちは近づく。先頭はお姫様達がその姿を威厳を込めて見せて進んでる。
 攻撃されるかも……という懸念はあったが、僕たちが前で出てくと、更に誤解を生むかもしれないから、まずはお姫様達が姿を見せて、僕たちが悪い存在じゃないと夏と春の軍勢にもわからせる狙いがあるようだ。

 それに何かあれば、僕たちが何とかするだろうという打算もあるんだろう。とりあえず僕たちは戦場に近づく。地に落ちた騎士たちは二人の姫に注目してる。僕たちの事も見てるが、話しをしてる二人の姫に注目は言ってる。そして二人の姫の言葉が終わると、夏と春の陣営からも誰かが出てきた。ここでお姫様が揃うのか? と思ったが、お姫様が戦場まで出張ってくるわけなかった。

 なんだか他よりも立派で大きな鉢にまたがった奴が出てきた。そいつは何やら激しい口調で言ってる。何を言ってるのかわからないのは不便だな。多分僕たちの事? なのかな? ちらちらと視線を感じるし。けどそれに秋と冬のお姫様は落ち着いて対応してる。

 僕たちの事を理解して貰おうとしてくれてるのだろう。まあだからって戦争吹っ掛けてきたのは消えないだろうけど。春と夏もここまでしたからすごすごとあっさりと帰る訳にもいかないのかもしれない。分が悪いのは理解したのか、向こうの勢いは落ちている。でもなかなかひいてはくれない。

「なあ会長、ちょっといいか?」
「うん? なにスオウ?」

 僕は会長の耳にごにょごにょと耳打ちする。すると会長は一つ頷いてこういうよ。

「いいねそれ。面白そう」
 
 そういって話し合ってる姫様達の所へと会長はいく。すると後ろからセラがくる。

「何するつもり?」
「別に、皆にメリットある事だよ」

 僕はそういって笑った。

コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品