命改変プログラム

ファーストなサイコロ

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 春うららの穏やかな日差しが心地よい。撫でる風はまるで肌を優しくなでる様に気持ちよく、そして香る花の香りは心を穏やかにしてくれる。本当に春は素晴らしい。目に映る景色はどこも鮮やかで、僕たちを楽しませてくれる。

 素晴らしい景色春。勿論どこの季節にもいい所はあるよ。けど春は一番欠点がない季節だと思う。秋も近いけどね。夏と冬はそれぞれ暑いと寒いが弱点であり、そして特徴だからね。仕方ない。

 春の城は花畑の中にある華やかな城だ。僕たちはそんな花畑の中で手を縛られ、ひざまずかされてる。結界の中に閉じ込められた僕たちを囲うようにいるのは四季の騎士とそして姫だ。四つの季節の姫がここに今そろってる。何やら春の姫が言ってる。僕には理解できないが、計画は今の所順調だ。

 何故に僕たちが捕まってるのかというと……それはこれがそういう作戦だからだ。僕たちのせいで春と夏、そして秋と冬に分かれて戦端が開かれるなんてのは嫌じゃん。僕たちは結局の所が異分子で、目的を果たしたらここから去る存在だ。

 ここは、ここだけで完結してる世界だ。LROの中にあるもう一つの小さな世界。そんな場所に自分たちが戦争をもたらすなんて……そんなのは嫌だと思った。勿論、自分たちへの利点もあるんだけどね。どっちもウインウインなんて事はそうそう起きないと僕だって青臭いガキだが知ってる。

 でも、こんな小さな世界でお互いを憎んで戦争を続けるようなそんな状況に自分たちがかかわってそれをただ単に放置して目的だけ遂げるって……そんなの……ねえ。最悪じゃん。きっと僕たち以外でこれから万が一ここでこの小さな世界の住人達に会う人たちが現れたとしても、きっとその時僕たちとの経験で協力なんて望めなくなると思うんだ。

 これはゲームだ。ゲームなら、そんな事は関係なく全ての人が同じ条件で変わらないゲーム体験を享受できる――なんてのはこのLROでは通用しない。なぜならこのゲームが掲げるポリシーが自分だけの冒険だから。同じクエストは確かにある。

 でもそのクリアの仕方はとても千差万別。世界はずっと流れと共に続いてる。NPCは一度起きた事を忘れてなんかくれない。ずっと同じ言葉を繰り返す喋るただのゲームの一部じゃなくて、世界で生きる僕たちと同じ存在だ。それこそ僕がやったようなリセットでもしない限りは……世界は途切れる事無く続いてく。

 だから僕たちの影響は後々まで残ってく。実際はそれを気にする奴なんてそういない。僕だってそこはまあ、一応の理由付け程度だ。結局はこの方法が一番早く終わらせられるなんじゃないかって思っただけ。流石とか会長は言ったけど、違うよ。自分の事しか考えてないのだ。

 でもそれで皆がウインウインになったらいいって思ってるのは本当だ。恨まれるのが僕たちだけなら、別にいいだろう。僕たちが犠牲になる事で、この小さな世界に戦争という名の愚かな行為を止める事が出来る。そしてついでに僕たちは目的を達する。完璧である。

(とりあえずここまでは予定通りだね。秋と冬が困ってたから、きっと春と夏にも何か問題がある筈なんだ。それはきっと僕たちじゃないとなんとか出来ない。その為に彼女達は僕達に頼ざる得ない筈!)

 秋と冬の姫には一芝居売ってもらってる。彼女たちも僕たちについたのではなく、利用されてたって事にして僕たちという共通の敵を作ってその不和を強制的にこちらだけに向けてもらった。だからあの小さな姫たちがこちらに笑いかけてくれる事はもうないだろう。可愛かったのに……とはおもうがしかたない。

 四季の戦争を止めて、更に僕たちが目的を達するにはこれが一番丁度いい。春と夏も、僕たちを今直面してる問題にぶつける筈だ。それを解決してコードを得る。その場で得られたらそれが一番いいが、姫が授ける形式だと、僕たちはもう一段階悪役にならざる得ない。その時は……今後のプレイヤーの為にも、秋か冬から接触するうまを掲示板にでも情報提供しておこうと思う。

 姫四人の魔法で僕たちの首に大きな首輪がつけられる。どうやら、何やら反抗的な事をしたらこの首輪が締まったする感じかな? 結構厄介だ。けどこれだって想定してる。会長ならコードを暴けばこういうのは無効化できる。
 だから今は従順にしたがって目的を達するのだ。僕たちは案の定、騎士たちに連れられてその原因場所まで連れてかれた。

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