命改変プログラム

ファーストなサイコロ

990

「ふう……なんとか生き残った」

 僕はHPがレッドゾーンに突入してたが、なんとか生き残った。危なかった。まさかアブラムシたちのせいでHPまで弱体化してたのに気づかなかった。周りを見ると、アブラムシ達の残骸が消えていってた。どうやら全滅させることは出来たみたいだ。

 一人に集中させて高火力の攻撃で一掃させるってのが、あの敵への最適解だったんだろう。けどトンボの騎士達にはそれができない。小さいから僕達ほどの耐久力がないんだろう。アブラムシに丸呑みされそうだからね。けど僕達は奴らよりも大きくて一飲みなんて流石に出来ない。

 だから向こうも大群で押し寄せるしかできなかった。トンボの騎士達が苦戦してたのはやっぱりその小ささが原因だよね。アブラムシ達はトンボの騎士達相手には時間をかけずに相手に出来たんだろう。てか寧ろ逆? トンボの騎士達なら、アブラムシ一体に数人がかりは必要だ。

 一体に集中すれば倒せるかもだけど、他がその間に突破されたら、どんどんと陣形は崩れてくだろう。そして最終的には……そうやってまけていったのかもしれない。

「セラ、お前な……結構危なかったぞ」
「ちょっと近づかないでくれる? 汚い」

 酷い。確かに今の僕はアブラムシの液で汚いけど! 戦闘してたんだからしょうがないじゃん。まあセラの奴は殆ど汚れてないけどさ。しょうがないじゃん。僕は近接主体なんだ。

「とりあえずHP回復して……てかこのステータス低下の効果……消えてない」

 アブラムシ達を倒すと消えるかと思ってたが、どうやらそうじゃないらしい。これじゃあ、全快まで体力を回復させない方がいいか。HPも減ってる状態だし、この効果が切れたらどうせもう一度回復薬を飲むことになる。その時にのんだ方がお得じゃん。

 今、無理して全快にしても効率が悪い。なのでレッドゾーンを出て黄色から白に戻る程度のところまででとどめておいた。

 大丈夫大丈夫、不意打ちを食らいさえしなければ、これだけあれば一撃でやられるってことはない……はず。そもそも僕はなかなかに察知能力が高いのだ。そうそう不意打ちなんて食らわない。

 そんな事を考えてると、トンボの騎士達の一番近くにいた会長が何やら手を口の傍にあてて声を出してきた。

「まだ大きいのがいるって!」

 すると急に地面が揺れだした。まさかまだ親玉が? 僕とセラは奴らの巣を見る。出てくるとしたらあそこだろうと思ったからだ。けどどうやらそれは間違いだったようだ。急に影が落ちた。それに嫌な予感がした。虫の知らせというよりも、僕の場合は風の知らせ。

 セラの腰に手をまわして抱えてその場を離れる。その瞬間、何かが降ってきた。その緑色の液体は触れた物を溶かしてる。それにやられたのか、聖典が爆発してセラの手に小さなクナイとなって戻った。

「嘘だろ? スケール感間違ってない?」

 思わずそんな言葉がでるくらいにはそのアブラムシはでかかった。この小さな箱庭には大きすぎるサイズだ。家かよというサイズ感のアブラムシがそこにはいた。

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