命改変プログラム

ファーストなサイコロ

958

「海を解放ですか……」

 一体どうすればいいのか――とシルクちゃんが顎に手をあてて考える。僕もテッケンさんも同じだ。海を解放とか抽象的に過ぎる。

「風と同じように操れるって事かな?」

 僕は手を向けて目を瞑って意識を集中する。(動け~動け~)と必死に念じてみた。けど、どうやらやり方が違うらしい。海はただ静かに波を押しては引いてるだけだ。

「どうですか?」

 少し目を開けてひょこっと顔を覗かせるシルクちゃんを見る。こんな可愛い子に「無理でした」というのは男のプライド的に情けなくて嫌なんだけど……けどいつまでもこうやってても海の制御権は得られそうな事ない気がする。

「うーん、手ごたえはないですね」

 正直に僕は言った。シルクちゃんはそれで僕に落胆するような子じゃない。そしてその予想はあたりで、シルクちゃんは「自分もやってみます」と言って同じようにし始めた。

(うん、可愛いな)

 素直にそう思う。テッケンさんも短い腕を伸ばしてる。けど二人がやっても別段変化は起こらない。まあ思うだけで操れるんなら、苦労なんてない。それだと全ての人が操れちゃうしな。そもそもが海を操れるようになることが祝福の条件なのかわからないし。

でも風はそうだったからな……多分他のも同じだとおもうんだけど……でもそれなら時の精霊とか時間を操ることになるんだけどな。それは流石に……ないよね? ならこの海を解放ってのも操るとかとは違うかも……でも他におもいつかない。

 何か倒すのなら、単純明快なんだけど……リヴァイアサンとの戦闘は普通に精霊との契約になるだろうしな。

「えい!」

 そんな気軽な声が聞こえた。すると狭い海から水柱が上がる。それをやってるのは当然会長だ。既に操ってるよあいつ。水柱は幾つか立ち上がり、それらがぶつかり合っていく。そしてそれが集まっていき、海の様な球体が出来上がった。そしてそれは会長の元へと飛んでいき、受け皿のようにした手に収まる。

「会長さん、それは?」
「海の塊だそうです」

 シルクちゃんの言葉に会長はそう答える。海の塊……つまり、それを解放するのだろう。

「海の中で開放すればリヴァイアサンの課題は達成できそうです」

 海の中で海の塊を解放するんだ……まあそれはいい。僕は会長にこういうよ。

「やっぱりそのペンで……か?」
「うん。私、感じるとか向いてないしね」

 向いてないからって裏技すぎじゃね? 寧ろそのペンあるならわざわざ正攻法でやろうと思えない。

「そうだ、中に入ってスオウ達はやってみた方がいいかね」

 なんだそれ? ヒントか? 会長のそんな言葉がなんか怪しいが、海を操る過程で何か見つけたのだろうか? それなら……僕はゆっくりと海に入ってく。腰くらいまでつかると、何やら、自分から出てる気がした。

 てか明らかに出てる。キラキラしたのが波に乗ってるもん。なにだ? と思ってステータスを見たけどわからない。でも何かは出てる。

(もしかして……)

 僕はそう思って再び目を閉じる。そして意識を集中した。

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