命改変プログラム

ファーストなサイコロ

929

 黒い空間を抜ける。するといきなり肌を焼く熱気が肌に刺さってきた。それは夏の直射日光よりも激しい。オリジンの力がのったセラ・シルフィングに受けた傷が疼く気がする。一応会長にアイテムもらってHPは回復したはずなんだが……なぜだか僕の傷は治ってない。
 けど一応HPは全快してる……今は気にする事はしない。今は……奴を倒す事を考えよう。

「ここは……」

 僕は驚く。レスティア……というか、テア・レス・テレスのエリアにはこんなところもあったのかと。だがおかしくはない。だってテア・レス・テレスのエリアは関東という一帯だ。ハッキリ言ってめちゃくちゃ広い。そして空があって地下だって……

 僕達の眼下には真っ赤に沸き立つマグマがあった。そして僕達が立ってるのは、そんなマグマの海に聳える岩礁の一つ。そしていくつもある岩礁にはテア・レス・テレスのメンバーたちがいる。きっとここにいる奴らはテア・レス・テレスの中心メンバーだろう。生徒会の奴らもいる。
 あの野郎はどこに行ったのか……ぱっと見は姿が見えない。けど、皆の視線を辿れば、その場所はわかるというもの。皆こちらを見ずにマグマの方を見てる。

 それはそうだよな……わざわざ僕達と同じような場所に送る必要なんてない。ここを決戦の場に選んだのなら、この場所を最大限活用すべき。僕も皆と同じようにマグマに視線を送る。ハッキリ言って、視線を落とすだけで目がきつい。熱いから目が直ぐに乾いてしまうんだろう。

 ボコボコと煮え立つマグマ。けどマグマに異変が起きる。大きく盛り上がってきたのだ。奴だ。間違いない。けどそこでテア・レス・テレスの面々が動く。魔法が放たれたのがみえた。数人態勢でのシンクロ魔法。膨れ上がるマグマの直上に白い……というか灰色の魔法陣が重なり合って展開された。
 いくつかの声が重なる。

「「「グラビティスタンプ!!!」」」

 次の瞬間、マグマの盛り上がりを逆に凹ませた。どうやらテア・レス・テレスは奴をマグマから出さずに倒しきる計画の様。なんという残酷非道な行い。けど、悪い事はない。そもそもここだってそういう為に作ったんじゃないだろうか? 
 ここはテア・レス・テレスのエリアだ。エリアは自由。なんだって作れる。ただ自然を再現したかっただけかもしれないが……折角作って使えるのなら、使わない手はないだろう。こんな凄い空間だ。しかも確かにここなら、ほかに被害が広がる事はなさそうだし。

 でもオリジンはエリアを破壊できるはず。マグマというエリアその物を破壊してないんだろうか? それを奴がしないなんておかしい。

(いや、してるのか……)

 多分そうだ。奴はオリジンは使ってる。僕は隣の会長を見る。黒い髪が白い肌に少し張り付いてる。暑いからな……ちょっとエロいとかは思ってない。今は戦いの最中だしな。会長はいくつかの紙を展開してる。会長の視線はその紙とマグマを世話しなく移動してる。そして別の所が盛り上がりだすと同時に、魔法が放たれる。

(こいつ……)

 更に今度は別々の場所でマグマが盛り上がりだす。確かに奴なら出来るだろう。あのくらい。けど、それすらも予期してた様に魔法が放たれる。テア・レス・テレスは許さない。奴がマグマから上がってくるのを。

「壊す力というのなら……壊しなさい。でも私たちの作り上げたものを壊しきれるというのなら……ね」

 会長は静かにそう呟いた。会長の目には既に勝利が見えている。会長は……こいつは、たった少ししか奴に接触してないにも限らず、絶対的な勝利を組み上げたということだ。すでに奴の会長の手の中。一糸乱れぬテア・レス・テレスの動き。

 その全てを指揮する会長……事、日鞠。僕は喉を鳴らす。

(やっぱり来る必要ななかったかもな)

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