命改変プログラム

ファーストなサイコロ

914

 あれから先頭を僕が歩くようになった。いや正確には僕と、もう一人だ。それは斥候系スキルを多く取ってる人で流石に二十人もいると(今や十七人だが)数人はそういう系統に秀でた伸ばし方をしてる人がいるものだ。だから彼らには先頭と、真ん中と最後尾で警戒してもらってる。

 こういう敵の腹の中ではどこから攻撃されるかなんてわからないんだからね。僕は斥候系のスキルなんて全くと言っていいほどに持ってないが、僕の目はなかなかに特別だ。罠があれば、僕は違和感を感じれるようだ。視覚情報のおおさがなせる事なのかもしれない。
 だから僕も前にいる。警戒を厳にしたおかげか、そこらに仕掛けてあるよくある罠――つまりは仕掛けをふんだら飛んでくる矢やら、落とし穴やら、通路を塞いで迫ってくる岩の塊やらは回避できた。

ピーーーー!

 そんな折、甲高い笛の音が響いた。後ろの方からだ。僕は前を斥候の人に任せて、後方へと走る。集団の真ん中、一番守りの厚い場所で予定通り後衛の皆さんが魔法を詠唱してる。けど、彼らの魔法が発動するよりも早く、僕は後方にいる敵を視認出来てた。
 後方の警戒担当の人は武器を構えて警戒しながらジリジリと下がってる。彼はスキルで敵を感じてはいるんだろうが見えてはないんだ。そうこのエリアの奴らはとにかく搦め手が多い。真正面からぶつかる事はしなく、エリアに張り巡らされた罠。そしてその罠に紛れての奇襲が基本戦法みたいだ。

 そしてその奇襲も透明化してだから念の入りようだ。でもズルいなんて言わないさ。だってこれも立派な戦術だ。真正面からやり合うだけが、バトルじゃない。まあ搦め手を用いるだけあって、そこまで直接戦闘は得意でない人たちばかりだろうから、こうやって襲われる前に気づくことが出来ればどうにかなる。
 やっぱり斥候系のスキルを持ってる人を前だけじゃなく、満遍なく配置したのは正解だった。こんなエリアを用意する奴らだからね。前だけからくるなんて事はないと思ってた。

 後衛の皆さんの魔法が発動すれば、インビシブル系の魔法かアイテムかスキルかわからない方法で透明化してても皆が見破れる。でもその頃には奴らは逃げる。これまでもそうだった。奴らは慎重だ。臆病と言ってもいいくらいに。

 このまま正面からいってもきっと逃げられる。まずは奴らの意識外から攻撃したい。逆に罠を利用する……なんてことも考えるのは定番。策士策に溺れるなんて諺をあるくらいだしね。けどどうやらここの罠はあっち側の奴らには効果がないようだ。
 フレンドリーファイアは無い仕様ということだ。それはちょっと前に確認済みだから僕は側面の壁を走って天井から迫る事にした。もちろん罠は踏まないように気を付ける。

 奴らはどうやら飛び道具でこっちにダメージを与えるつもりのようだ。既に前回で失敗したから、警戒されるのは織り込み済みなんだろう。きっとこっちの魔法が発動したらその時点で撤退してしまう。その前に一人くらいは……いや、これなら!

 素早く、風のように移動した僕に奴らはどうやら気づいてない。僕は天井から飛ぶ。まずは風のフラングランを振るって暴風を奴らの周囲に吹かせる。奴らは突然の暴風に態勢を崩したりしてる。その隙をついて、僕は雷のフラングランを振るう。

 最初にこいつを使うと流石にそのエフェクトでばれてしまうだろうと思って風を放った。予想通り、敵には僅かな混乱が生まれ、そのおかげでこっちの本命が向こうへと届く。

 奴らの中央へと、フラングランを振り下ろした僕は、そこに運悪くいた奴を切り裂いて更に周囲に電撃の柱が広がった。これで少しは一矢報えたかな? 

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