命改変プログラム

ファーストなサイコロ

911

 とりあえず組織への対策はクリス達とラオウさんに任せることに。ちなみにクリス達への圧力もかけておいてもらう。確かに僕はクリス達に助けられた。けどあいつらを信頼した訳じゃない。国が抱える秘密組織とか怖いじゃん。ラオウさんは貴重なそんな組織に一目置かれるような個人だ。

 流石に戦いあったりしたら流石のラオウさんも殺されるんだろうけど……どんなにラオウさん個人が強くても限界ってのはある。集団はそれをつける。けどラオウさんはラオウさんで色々なつながりがあるみたいだし、牽制くらいにはなるだろう。
 とりあえず日が落ちてからはあんまり出歩かないようにしないと。そこら辺注意されたし。まあ既に暗いんだけど……電車から降りると、予想外の奴に出くわした。

「スオウ偶然だね」
「偶然……か?」

 それは日鞠の奴だった。日鞠の奴は偶然を装ってるが……僕は怪しいと思った。だってタイミングがね。こいつならこのタイミングで狙って現れてもおかしくない。

「一緒に帰ろうか」

 そういって僕の言葉は無視する日鞠。今日は休日だから日鞠も私服だ。派手な感じは一切ない、黒系の服に深い緑のコートしてる。うん……なんか印象が重い。見た目も重いが。

 僕たちは二人でそろって改札を出た。それから人もいて、駅ビルの光で照らされてる駅周辺を少し距離を開けて歩く。日鞠が前で僕が後ろを歩いてる。

(なんか……変だな?)

 僕はそう思う。日鞠はいつも僕の横に来ようとする。ここが自分の定位置だと言わんばかりに。けど今日はそれがない。別に隣に来たからと言ってベタベタしてくるなんてこともなくて、あくまで自然に僕と日鞠の距離がそこなだけ。

 だからそんな自然をあえてしない日鞠は……やっぱり何かおもう事があるんだろう。

(やっぱりあの事を知ってる?)

 あの事ってのは誘拐されたことだ。けどあのことは、家ではうまくクリスに誤魔化してもらった。口から直接話したのはラオウさんだけだ。日鞠は翌日もなんか意味深だった。

(いや……あれは……)

 あの時の事を頭を振るう僕。いつのまにか僕たちは暗い道を歩いてた。駅から離れたから頼れるのは点在する街灯と自販機の明かりとかしかない。車が後ろから通りすぎる。それに僕はビクッと反応する。案外トラウマってるみたい。
 夜道で車来るとどうしても……ね。

「スオウ」

 そう呟く日鞠が傍にいた。ちょっと前にいたはずなのに……日鞠のまっすぐな瞳。僕は心配かけまいとその目から顔をそらす。すると日鞠が大胆にも胸に飛び込んできた。

「ちょっ!? バカ何やっ――」
「ドキドキしてるね」

 そういって僕の背中に手を回す日鞠。ゆっくりと背中をさするその手を感じてると、鼓動は徐々に落ち着いてきた。

「スオウ、大丈夫だよ」
「何が……だ?」
「スオウには誰も手だしなんかさせない。大丈夫、私が――」

 その言葉はその時傍をとったバスの停車音にかき消されて聞こえなかった。もう一度聞こうと思ったけど、その時バスから降りてくる乗客達の視線に気づいてそれどころじゃなかった。その後は普通に日鞠は僕の隣を歩いた。

 いつもの日鞠だった。けど……

(一体なんていったんだ?)

 それが胸にささやいでた。

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