命改変プログラム

ファーストなサイコロ

907

 転送陣に乗って外に出た。やっぱり外の空気は美味しい。墳墓は常に湿っぽかったからね。解放感も段違いだ。これでブシさんとの契約は終了だ。まああんまり話は出来なかったけど、間近で彼の力を見ることが出来たのは大きい。
 こういうことも出来るんだって……そういう知識を得れたし。常に動き回る僕では有用性ないんし、使えるとも思えないが、何が自分の力になるかってわからないものだし、知ってて損なんてない筈だ。

「それでは拙者はこれで――」

 そういって帰ろうとするブシさん。あっさりだ。けど、傭兵なんてこんな物なのかもしれない。そう思ってると一心の奴が声を張る。

「ちょっと待ったあああ!」

 一心はそういって武器の切っ先を一心さんに向けてる。そこまでは聞いてないぞ……って感じで僕はみる。今回は一緒に冒険してそれで終わりの筈だった。一心だってブシさんの強さには納得したはず。いくらなんでも今挑むのは無謀というものだ。

(ん?)

 そこで僕は気づく、なにやら一心の武器が違う。なんかさっきのアンデッドが使ってた偃月刀の様な? てか突き出してないもう片方の手にも同じもの持ってるから多分さっきのボスが持ってた武器で間違いない。あの宝箱に入ってた武器はどうやらこれの様。
 いい武器手に入って、気が大きくなったのかもしれないな。

「まだ何か?」
「決闘を申し込む!」

 ノリノリでそういう一心。流石に初めての武器で勝てるような相手じゃないと思うが……てかそもそもブシさんは受けないか?

「何ゆえに?」
「強い奴と戦いたい! それだけだ」

 一心の発言は、戦闘狂みたいだな。折角協力してくれたのに、いきなり武器出して戦えって……失礼だとか思わないんだろうか? 

「その武器は……修練も積んでない様な武器で拙者に挑むと? 強い武器がそれだけでは強い訳ではない」

 暗にブシさんは武器が強くなったところでかなわないといってる。同感だ。確かに武器は重要だ。けど今までのテレビゲームと違ってボタンを押して僕たちはこの体を動かしてるわけではないし、勝手に体が武器に合わせたモーションをしてくれるわけでもない。

 それは一部の決まった技に適用されるくらいだ。それに慣れてる人はそんな決まった動きしかしないような技は対人戦では使わない。まあようは初めて使う武器なんてここでは碌に練習もしてないと使い物にならないってわけだ。
 それにいきなり二刀流はね。なんか左右の剣を同時に振るだけになるのが目に見える。最初は僕だってそんなんだった。技の中に連撃とかがあるから、それで二刀流の動きを掴んでいけば、左右の剣の扱い方とかがわかってくる。
 いきなり武器二本持ったから強くなるわけじゃない。こいつわかってるそこらへん?

「確かにな。けど、新しい武器って使いたいだろ?」
「ふう……これも依頼に入るとあらば断わることは出来ぬ」

 ええ? なんかブシさん共感できる部分でもあったのだろうか? なんか急に態度軟化したぞ。そもそも決闘なんて依頼に入ってるわけないし。新しい武器は使ってみたくなる男心に共感したのかな?

「そうか、なら始めようぜ!」

 一心はウインドウを操作して決闘の申し込みをブシさんに送った。そしてそれをブシさんも承諾する。こうなったらもう外野は止めることはできない。決闘は受けた側にルールを決める権利がある。どうやら一本勝負でHPを七割減らした方が勝利するみたい。
 受けたはしたが、早く終わらせたいって気持ちが伝わるね。

 僕は二人から距離をとり、決闘を見守る事にした。

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