命改変プログラム

ファーストなサイコロ

879

「「お姉ちゃーーーん!!」」

 そういって数人の子供たちがメカブの奴へと飛び込んでく。なんか一人の子がみぞおちらへんにタックルして「ぐえっ」ってな声が出てた気がするが、メカブはなんとか耐えてた。ここはスカルロードドラゴンと戦った街にある孤児院だ。

 あの後、街に人が戻った。領主から解放された人達は全員無事だったようだ。けど、流石に建物とかは元には戻らなかった。そこら辺はLROは不親切だよね。かなり高難度のクエストを達成して訳だし、街を回復させるくらいしてくれてもいいと思うんだ。お陰で、こっちは別段ここの人達から感謝とかないからね。

 寧ろあの後、この街の惨状を見て絶望する人たちを見てなんかこっちが悪い事をしたみたいな気持ちになったよ。どうやら皆さん、領主に生贄にされてた時の記憶はないらしく、気を失ってる間にこうなったと思ってる。

 そんな中、これこれこういう事情で皆さんを救ったと言って、よしんばそれが信じて貰えたとしよう。そして一言「ありがとう」が貰えるかもしれないが、「この惨状はどういうこと?」といわれると返す言葉もない。いや、仕方なかったとは言える。

 でもさ……彼らはスカルロードドラゴンも何も見てない訳で……どんな困難があったかなんて知らないのだ。過剰に街を崩壊させたとか言われて賠償金を請求されてもかなわないじゃん。なので、僕達は何も知らない体でとおしてる。

 他の場所の人達は何やら知ってるが、それも程度によるしね。今の所、僕達の所に賠償請求が来てないからこの判断は間違ってなかった筈だ。そういえば領主も変わった。まあスカルロードドラゴンになった奴は消滅したからね。
 奴だけは戻っては来なかったんた。一応僕達で墓くらいは立ててやったよ。街から少し離れた丘の上にね。

 今は街は復興に追われてる。魔法もある世界だから、復興はなかなかに早い。資材さえあれば、レシピがある建物なら数秒である。だから前よりも個性無い街になってるが、住めればなんでもいいんだろう。ついでに孤児院は大きくなったし、なかなか立派になった。

 どうやら今度の領主はなかなかに良心的な人のようだ。一度だけ、演説してる所をみたが、かなり若い奴だった。まだ二十代くらいの新興貴族らしい。こんなボロボロの領を任せられるなんて確実に貧乏くじなんだろうに、彼はとてもやる気に満ち溢れるみたいだ。

 子供たちの話では良く街中まできて住民とコミュニケーションをとってるらしい。子供たちは相変わらず元気だ。これもスカルロードドラゴンに飲まれた記憶がないからだろう。だってオルガトの世界で見た彼らはなかなかに酷かった。あの記憶があったら、トラウマになって精神に異常が残っててもおかしくない筈だ。

 けど皆そんな様子はなくいつも賑やかだ。

「みなさーーーん、御飯ですよ!」

 そういってごつい腕にデカい大皿を二つほど抱えてオウラさんが出てきた。長机にその皿を置くともうほんとあほかってくらい大きいのが分かる。二つの皿で長机からはみ出てますが? まあ子供たちはお腹いっぱい食えたらなんでもいいから、テンションたかいけどね。

 皆が席に着いたら、メカブが代表してお祈りを捧げる。お祈りをして食事に入るのはLROの普通だが、聴いてるとそのお祈りは多分にメカブの脚色が入ってる。いうなればもう宗教変わってるよね? って感じだ。他の所であの子達がこれやったら絶対に厄介な事になりそうだけど……皆素直に従ってるから止められない。メカブの唯一のお姉さんらしい姿なのかもしれない。

 そんな事もあったが食事は始まった。皆我先にと大皿の料理に手を伸ばす。ここではあんまりマナーなんてきにしない。なのでにぎやかだ。僕はそんな光景を温かく見守ってたけど、なんか場違い感があったから外に出た。いや、皆知ってるけどさ……僕はメカブやオウラさんやセツリ程に関わってた訳じゃないからね。

 外に出て星空を見る。復興中の街は夜でも明るいが、それでもリアル程じゃない。空の星は夜見える。星を見ながら夜風に当たる僕。すると、馬の音と数人の足音が聞こえてきた。視線を向けると、甲冑に身を包んだ騎士の両脇に従えた好青年が見えた。アレは……ここの新領主だ。

 彼はそのイケメン面を見せつけるかのように爽やかに笑顔を見せた。

コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品