命改変プログラム

ファーストなサイコロ

858

 僕たちはあの街へと集まってる。やれることをそれぞれやってアイテムをそろえれるだけ揃えて僕たちはこの戦いに臨む。後は……スカルドラゴンをまつだけだ。本当は僕たちが引っ張ってこなきゃいけないんだろうけど……そこはテア・レス・テレスがやってくれることになってる。全てを自分達でやるのは流石に難しそうだったんだよね。どうやらテア・レス・テレスのエリアはスカルドラゴンにとって美味しい場所だったようでずっととどまってくれていた。


 多分プレイヤーが美味しかったんだろう。手を出すなとお触れが出てたけど、欲に駆られた奴らがそれを守るなんて事はなかったのだ。四六時中見張ってる訳にもいかないしね。だから多分、獲物が絶えず来てくれるあのエリアから離れなかったんだろう。まあもっとこの街の近くに戻ってきてくれれば……と思わなくもないけど、あそこから出てってもこの近くにいたかはわからない。寧ろあの場所に居たからこそ、ほかの国からちょっかい出されずに今日まで位置を把握できたと思えば……まあよかったんだろう。


 この街の探索できるところは全て探索した。領主が地下で何やらやってた所も全部ね。あの仕掛けがスカルドラゴンを倒すのに必要になるかもしれない。生と死は表裏一体っていうしね。あのスカルドラゴンはここで生まれた。そしてこの街全体を使った陣がそれを成した事は確定してるわけで、この陣を逆に利用することで、あのスカルドラゴンを倒せるかもしれない。というか、それに賭けてる所がある。


「もうそろそろだな」


 そう言ってくるのはアギトの奴だ。既に二日前くらいからテア・レス・テレスは行動を開始してる。レスティアからここまでは距離があるからね。会長の指示のもと彼らが交代で引っ張ってきてる。そしてその状況は逐一メッセージでこちらにわかる様になってる。彼らも大変だったろう。その頑張りを無駄にしないためにも、僕たちは負けるわけにはいかない。


「皆、準備はいいか?」


 僕は集まってるメンバーにそう声を掛ける。そんな声掛けに皆頷いてくれる。それぞれ準備は万端なんだろう。けどそんな中、一人だけここに居ちゃいけない奴がいる。


「セツリ、そろそろ」
「でも……やっぱり私も……」


 セツリはこの戦いには参加できない。なぜなら、スカルドラゴンと戦う事ができる人数は決まってるからだ。調べた所、八人が限界。僕とアギトとセラ、テッケンさんにシルクちゃん、メカブにオウラさん……そしてローレ。これが限界。戦いに参加できないのはセツリだけじゃない。アイリも今回は不参加だ。メカブなんかよりも実際はアイリの方が役に立つんだけど、今回はメカブやオウラさんの方が当事者でアイリやセラは協力者だ。


 そしてアイリじゃなくてセラが入ってるのは、アイリはもうカーテナないし、一応アイリはアギトたちのチームの代表だし、そんな奴を危険には晒せないらしいから自分がでるとセラが言った。あとは一応ノウイの奴もいる。けどまあ、こいつは戦闘よりも諜報員とかそんな位置だからね。戦闘に参加しなくていいって聞くと喜んだくらいだ。だからセツリだけじゃない。けど、理由とかわかかっても、納得できないことなのかも。


 今回の事はセツリたちのチームにとっては大切な事だ。けど、チームの中で自分だけ何も出来ないってのは嫌なんだろう。わかる……それはわかるよ。ぼくだって出来ればセツリを外したくは……いや、出来れば危険な事はしてほしくはない。だから今回は僕的にはよかったともおもってる節がある。


「スオウは私を役立たずって思ってるんだ!」


 そんな事を言って走ってくセツリ。出来れば参加させたくないって思ってるの、きっとセツリにはわかってるんだと思う。もしも八人以上でやれるのなら、僕はセツリを外したかどうかはわからない。その時は、しょうがないって諦めたかもしれないけど、戦闘よりもセツリの方に気を取られるかもしれない。大丈夫だって、僕以外の皆はわかってる。もう、セツリはそこまでLROに囚われてない。


 けどね……


「私が追いかけます。スオウ君達は先頭に向けて集中しててください」


 そう言ってアイリさんがセツリの事を追いかけてく。そんなセツリとアイリさんを見てたセラがノウイに向けて顎をくいっとした。それを見て慌てて二人を追いかけてくノウイ。


「スオウ」


 ローレの奴が名前を呼んで近づいてくる。そしてちょいちょいと少し屈むように指示してきた。僕は屈んでローレには顔を近づける。ローレの幼いながらも、意志の強い瞳と目が合う。ちょっとドキッとするな。こいつなんか神秘的だからね。


「アレはどうしようもなくなった時以外は使わない。良いわね?」
「わかってる。最初からそのつもりだよ」


 アレがなんなのか……具体的にローレはいわない。けどわかる。僕たちの間なら、アレと言えばあれしかない。ローレだけじゃなく、僕もオルガトと契約した。そして現れた一つのスキル。それをローレのエリアで試してみた。その時居たのはローレしかいない。
 そしてあれを見たのも……ローレは実は結構怒ってるかとも思ってたけど、今はもう普通だ。まあ直後は青ざめて震えて涙目になってたけどね。そんなローレは初めて見たから、笑ったら怒られた。そして色々ね……まあいろいろとあった。


「わかってればいいのよ。私が契約促した所もあるし、その時は責任取ってあげる」
「……ああ、頼む」


 アレはローレクラスがいないと手におえない。そもそも使う気はないけど……戦いは何が起きるのかわからない物だ。特にここでは……それに相手もなぞが多い。色々とオルガトに聞いたりもしたし、色んな情報を集めての予想とかできる限りの対策はしてる。でもどこまでやれば万全なんてわからない訳で……常に僕たちは不安なんだ。でもやらなきゃいけない。誰か……を待ってる事なんてできなくて……だから自分たちで。


 僕たちは街中でスカルドラゴンを待ってる。スカルドラゴンは飛んでるからね。立体的な建物がある街の中の方がいいかな……と。それとやっぱり陣の中でことを運びたいってのもある。けどここで問題発生。街の外まで引っ張ってきたテア・レス・テレスからの連絡でスカルドラゴンが街に近づかないとのことだった。やっぱりわかってるのかもしれない。ここが自分の弱点だって。このままだとスカルドラゴンがこの街を通り過ぎてどこかに行ってしまうかもしれない。それは困る。


「スオウ君!」


 そういうのはオウラさんだ。それだけで、僕たちは頷いて走り出す。ここで何もせずに逃がすなんてできない。なら、こっちから打って出るしかない。街の外に出て、僕たちは周囲を見回す。その時、空に赤い光が昇った。多分テア・レス・テレスの誰かの魔法か、道具だろう。僕たちは光に向かって走りだす。皆いつもよりも速く走れる。けど、やっぱり僕が一番だ。でもだからって今回は一人で先行して突っ込むなんて馬鹿な真似はしない。


 先行はするけど、それはあくまで皆と足並みを揃える為だ。スカルドラゴンは僕一人が突っ走ったってどうにかなる相手なんかじゃない。だから焦る必要はないんだ。今ここには頼りになる皆がいる。このメンバーは今のベストの筈。ちゃんと連携を取って、互い互いにフォローしつついけば絶対にいける。


 そう信じて進む僕の視界にスカルドラゴンの姿が映る。奴はテア・レス・テレスのメンバーを見つつ、大きく上空を旋回してる。獲物は得たいけど、この街には近づきたくないというのがありありとみて取れた。テア・レス・テレスの奴らは手を出すような事はしてない。彼らが手を出してそして僕たちの接近に気づかれると、一目散に逃げられる可能性があるからだ。


 彼らの役目はスカルドラゴンをここまで誘導すること。その役目は十分に果たされてる。確かに街の中に誘い込むことはできなかったけど、十分だ。僕のことに気づいたテア・レス・テレスの人たちは頭を下げてこの場から離れてく。それと同時に皆も追いついてきた。テア・レス・テレスの方を追おうとするスカルドラゴンに向かって、まずはメカブの奴が奴に向かって開幕の回復魔法を打ち込んだ。


 ほんの僅かなHPの減少が見て取れる。けどそれは雀の涙程の量だ。それと引き換えにスカルドラゴンのターゲットは僕たちへと向く。さあここからだ。僕たちは一斉に動き出す。スカルドラゴンが大きなボロボロの羽をはためかせて向かってくる。僕とオウラさん、それにセラにアギトが前に出る。それぞれ隣り合って走って、ある程度距離を詰めると僕たちは互いに視線を交わして一人が前に出る。
 こっちの場合はオウラさん。向こうはアギトだ。そして振りかぶったオウラさんの槍に勢いをつけて乗って飛ぶ。セラは身軽なのか、筋力強化したアギトと連携とって同じ高さまでくる。そこでセラはクナイを手一杯に取り出す。それをググっと体を逸らせて投げ放つ。


 放たれた六本のクナイは手から離れたのになぜか加速するわ、軌道を変えるわ、やりたい放題である。まあゲームだし、そういうスキルだと言われれば、物理法則なんていくらでも無視出来る。スカルドラゴンを翻弄してクナイはスカルドラゴンの鼻先の一店集中して命中した。


「狙い成さない!!」
「おう!!」


 フラングランの雷の宝石が輝く。雷の力をまとった刀身を遠慮なくクナイにぶち当てた。鋭い閃光が走る。スカルドラゴンの顔が砕け散った。けどスカルドラゴン体自体は止まらない。それにHPだって微々たる変化しかない。やっぱり僕たちの攻撃程度ではダメージの通りが悪い。スカルドラゴンは僕の剣の衝撃で落下しそうになりながらもなんとか地面すれすれを飛んでる。そしてその進路の先は後衛のメカブたち。不味い! そう思ったけど、流石にここからじゃ間に合わな――


「うおおおおおおおおお!」


 なんとオウラさんがスカルドラゴンの尻尾を握って止めようとしてる。流石に止まりはしないが、勢いは確実に落ちた。そこにアギトが側面から炎の剣で切りつける。更に正面からテッケンさんがその拳を叩きつけた。完全に止まった勢い。、そこに後衛二人の魔法が発動する。二人で一つの魔法を重ねがけるシンクロ魔法という奴だ。同じ魔法でも、威力が倍になるらしい。それに元の消費魔力のまま威力は倍だから燃費もいいという事だ。


 シルクちゃんとメカブの奴が使ったのは回復魔法だ。しかも中位くらいの。だけど、シンクロ魔法の効果でそれは上位くらいには効果がアップしてる筈。その効果か、スカルドラゴンのHPは目に見えて減った。いくら僕たちが自分達の持てるすべてを込めた攻撃でも微々としか減らなかったHPが一気に三割減と言った所だ。


「おお!」
「回復される。あれをやるわよ!」


 セラの奴がいきなり駆け出したと思ったらスカルドラゴンの頭に向かってた。どうやら、体と頭を離して再生させることで、僕たちの意識を体の方へ持っていく気だったようだ。けど、戦場全体を見てるセラにはバレてたようだ。いや、僕だってわかってたよ。うん、いやマジで。僕の目は特別だし……そんないいわけを心で呟きながら顔へと向かう。もう一度砕いてやる! けどそんな僕たちを察してか、スカルドラゴンが手を打つ。奴の怪しく光る眼がぎらついたと思ったら、地面に無数の魔法陣が現れる。そしてそこからボコボコと這い出して来るのはスカル共だ。


「奴の兵隊ってとこか」
「どうせ倒しきれないから最低限邪魔な奴だけを潰してくわよ!」
「おう!」


 僕とセラは足を止めない。スカル共は数こそいるけど、そんな脅威ではない。フラングランなら一撃でその体を壊せる。セラは流石にそこまでの攻撃力は……とかおもってたら、あいつなんかグローブみたいなのをして、その指の先端から出てる糸でめっちゃスパスパとスカル共切ってた。おっそろしい奴だ。僕の目じゃなかったら、視認できないくらいの細い糸だ。太陽の光に当たって時々キラキラ光ってるけどさ、こんなの何やられたのかもわからずにやられてるみたいなものだよ。


 絶対に対人では相手にしたくないな。まあ敵には容赦なくやってもらっていいけど。けどこうやってる間にも、スカルドラゴンの頭はそこらの地面とか何やら諸々を取り込んて回復を図ってる。あの体質……性質? はほんと厄介だ。全ての物を対象に捕食してエネルギーに変えれるとか、どんだけ暴食なんだよ。しかも回復量がえげつない。既に全快近くに持っててる。このままじゃ……せっかくのせんせい攻撃が意味のないものに……


 キィィイン


 ――背後からとても神聖な空気が流れる。それだけでスカル共は形を保てずに崩れさっていく。視線を向けると、そこには輝くローレ。正確には輝く杖をローレの奴が掲げてる。


「あんた達がいくら無駄を積み重ねても、私が全部削りきってやるわよ」


 そんな声が多分皆に聞こえた筈だ。そしてローレはその杖を地面へと刺す。


「サウザンドシャイン」


 次の瞬間、地面に無数の光り輝く魔法陣が広がってく。そしてその魔法陣が呼び込む様に、天から幾重にも重なった光の柱が降り注ぐ。それはさながら天の怒り。ここに本当のチート野郎がいた。



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