命改変プログラム

ファーストなサイコロ

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「来るぞ! とりあえずこの突進を弾き返す! それで自分の憶測を確かめる!」


 再びHPがある程度減ったスカルドラゴンが突進してきてる。いつもなら緊急回避に遠目から攻撃を叩き込んでるわけだが、今度はそんな事はしない。自分の考えを確かめるためにも、奴を地面に到達させないようにするんだ。僕はイクシードを真似た風のうねりを正面からスカルドラゴンへと叩き込む。けど、奴は止まらない。この時だけはスカルドラゴンは完全に猪突猛進。
 その質量と多分魔法で強化した身体で全身全霊の突撃をしてるんだ。だからまだまだ不完全なイクシードを模しただけの風のうねりでは全然止まらない。風はスカルドラゴンにあたった傍から拡散してく。


「駄目か……この程度じゃ」


 けど雷のほうの宝石はまだ色褪せたまま。最大攻撃は撃てない。ならもう一つの風の方を使うか。これを使えば、風量をアップする事が出来る。けど……これで生み出した風はとてもシステム的なんだよね。ようは雷の宝石で最大攻撃が打てるというフラングランの技が一つ。そして風の方でも同じような技があるわけで、つまりはそれ用の風が生み出されてる感じ。
 だからその風は今の僕では掴めない。完全に既に風がそれ用にチェーンされてるから。でも掴めたら、それは大きな進歩だ。だってそれだけでかい風量が生み出されるわけだしね。


 それにメリットはもう一つある。大体一撃必殺の技の為に雷も風もフラングランから生み出される。だからそれはその技を使ったら消え去る。雷は……まあ今の自分じゃどうしようもないから放つ以外にない。実はローレの所で雷の操作も出来ないか精霊と共にやってるんだけど……いかんせん成果はない。けど風は可能性があると思う。
 一発で消え去るはずの大量の風を自身で使えるようになれば、それは大きな切り札になり得る。


(やってみるか?)


 今ここで。どうせスカルドラゴンはビクともしてないし、そろそろ血気盛んな他のプレイヤーが来るだろう。多分ここが何か出来る最後の時間。せめてスカルドラゴンがエリアを食べる事で回復してるのかどうか……それを知りたい。


「私だって少しくらい役にたって見せるから!」


 そう言ってセツリの奴が剣に光をまとわせて突進した。けど狙いが甘いし、余りにも直線的なその攻撃は首を振ったスカルドラゴンに簡単に弾かれる。


「わ……私だって役に立ちたいのに……」


 そういいつつ、なんとか立ち上がろうとするセツリ。セツリは戦闘経験が少ないから……どうしても……ね。


「うおおおおおおおおおおお!!」


 小さな身体で大きな声を出すのはテッケンさんだ。彼はその両の手に嵌めた、自身の身体程もあるグローブでスカルドラゴンの横っ面をぶん殴る。その衝撃で大きく軌道がそれた。小さいのになんてパワー。流石はテッケンさん。


「セツリはもっとよく見る。いつも言ってる筈ですよ。ヤケになるのは死を招くだけ。いいですか、どんな時も冷静に……です!」


 オウラさんはそういうと、水を足場に空へと昇る。それはそういう使い方をするものなのかわからない。けど多分違うだろう。あの人だから出来る事。そしてスカルドラゴンの顎を強烈に蹴り上げた。そしてそこに皆がスキルを駆使して攻撃を叩き込んでいく。


(このタイミングなら行ける!)


 僕は風の宝石を開放する。一気にフラングランから風が溢れてきて、それが僕が集めてた風を弾き飛ばす。


(やっぱり、システムの仕様が強い!)


 僅かに風帝武装っぽくもあるみたいに風が自身の周囲にまとわりつく。やっぱり風はこういう感じになるんだなって感じ。誰が考えても速度と威力の底上げが風の使い方なんだろう。見た目は違うが……結局全然、掴めなかった。こうなってしまうと、もう外の風を掴むのも無理なんだ。自身の周りをこのシステムの風が覆ってるからね。
 これはもしかしたらスカルドラゴンよりも強敵かもしれない。でももうしょうがない! 僕は風の如く移動して、スカルドラゴンに連撃を叩き込み、更に空に押し戻す。そして最後に透明な風を刀身に集めて、巨大な風の刃を放つ。それは周囲を巻き込みながらも狙った相手を追尾までしてくれる便利機能つきの必殺技だ。それによってようやくスカルドラゴンの突進は阻まれた。


(HPは?)


 僕は素早く目を凝らす。


「よし、回復してないぞ!」
「これなら……いけるな!」


 僕のその言葉にアギトが意気揚々と答える。まあそんな単純な事でも無いだろうけどね。そもそも一回の突進に今は賭けれたから止められたような物だ。本当にスカルドラゴンを倒す気なら、もっと考えないといけない。そう思ってると、スカルドラゴンは急に空中で踵を返した。そしてどこかへ飛んでいってしまう。どうやらシルクちゃんの結界は意味をなさなかったようだ。
 その直後に何人かのプレイヤーが来た。やっぱり規定の数以外での戦闘は難しいようだ。まだまだ僕たちは強くならないといけない。それを今回の戦闘で思い知ったよ。

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