命改変プログラム

ファーストなサイコロ

832

「瀬戸内盛り上げ隊ってなんかお前らしくないチーム名じゃね? そんなに地元愛溢れてる訳?」


 はっきりいってローレのイメージと合致しないというか……こいつは寧ろ進んで田舎なんて捨てそうなイメージがあるというかね。だって僕の中でのローレのイメージなら、逆にこうだよ。


『私にはこんな田舎、収まりきらないわ! もっともっと都会こそが相応しい!』


 こんなんだ。うんうんこっちの方がよほどしっくりくるよね。それなのに何なのこの地元愛? 偽物か? 


「アンタは私をどんな奴だと思ってるのよ?」
「目的の為ならなんだって利用するボッチ?」
「ボッチじゃないわよ!」


 そう叫んだローレは「たくっ」と呟いて僕を突き飛ばして離れた。自分から抱きついて来たくせにこの仕打ち……酷いやつである。僕のドキドキが一気に下降線辿ったよ。別にローレが気になるとか無いけど、やっぱり可愛い女の子に抱きつかれると男としてはどうしても胸の鼓動は抑えきれないじゃん。それなのに拒絶するかの様に突き飛ばすんだもん。萎えるって物だ。
 もっと男心って物を考えてほしい。


「スオウ何? いやなの? いずれテア・レス・テレスも抜いて私が天辺取るのよ?」
「あんまり興味ないし」


 興味あったらもっと積極的にエリアバトルしてるっての。そもそも僕は自身のエリアにだって手をつけてないし。


「アンタとテア・レス・テレスの会長はただならぬ関係何でしょ?」
「その言い方やめてくれない?」


 なんかやましい関係みたいじゃん。そんなんじゃないから。


「とにかく、知り合いがトップにいるのにアンタは腑抜けてて言い訳? 見返そうと思わないの?」
「見返すも何も……あいつは僕なんかより、ずっと凄い奴だしな。そこら辺、もう認めてるから」


 いまさら積極的に敵対する理由なんてない。僕たちはもうそんな段階はとっくに過ぎて、認めあってるから。


「それに見返すなら、ほら、今度二位以下のチームでテア・レス・テレスに挑むんだろ? 何故か既に僕も組み込まれてるし……そこは納得できないが、それで対決できるじゃん? わざわざお前のチームに入らなくても問題ない」
「まあそうね。けど、少しでも勝率を上げたいなら私のチームに入るべきなのも確か。知ってる? デカイチームにはステータスやスキルに固有のボーナス値がつくのよ?」
「え? マジ?」


 それは初耳。でもあり得ない話ではないな。色々と頑張ってエリアってのは育ててる訳で、そしてそれを大きくするのはとても大変で……なによりもこんな風に自分達だけの小さな箱庭を作るなんて凄い事だ。ここまでやれたら何かボーナスがあって然るべきとも思うね。


「条件は完璧にはわかってないけどね。大きくてもボーナス無い所は無かったりするみたい。けど、私のチームにはあるわ。多分、テア・レス・テレスにもあるでしょうね」
「だろうな……」


 日鞠からそんな話し聞いたことないけど、無いなんて事は思えない。多分僕が聞かなかったから教えなかっただけだろう。だってテア・レス・テレスはLROで一番のチームだよ? そして唯一、LRO自身と繋がったエリアでもある。ここがそのボーナスないなんて考えられない。


「ちなみにそのボーナスってどんなものなんだ?」
「そうね。他は知らないけど……ただ教えるのなんだかな〰?」


 くっこの守銭奴め。その位タダで教えてくれてもって……よくよく考えたらかなり重要な情報か。出来れば隠しときたい物の筈だよな。


「いっとくけど、お前の欲しがる物なんて僕は持ってないぞ」
「会長の情報とか持ってるじゃない」
「それはリアルでの情報はな。けど、LROでの姿『会長』としての情報は知らない。聞いてないし」
「なら聞きなさいよ。アンタにならなんだって教えてくれるんでしょ?」
「どこ情報だよそれ」


 それになんだって教えてくれるって訳でもない。まあ大抵の事は教えてくれると思うけど、それでも多分それには日鞠なりのルールがある。例えば勉強とかは分かりやすく教えてくれるけど、それは答えまでの道筋であって、答えじゃない……的な? それにアイツは既に二位以下のチームの共闘を察知してたし、僕がそれに関わってるのもわかってた。
 つまりは手の内を明かすみたいな事はしなさそうって事だ。


「てか、そんな事して勝って嬉しいのか? もっと正々堂々とかないのか?」
「は? 何いってんの? 勝てば官軍でしょ」


 こいつに正々堂々とか求めた僕が間違ってたな。そもそもがリアレーゼの時だって自分は巫女とかで信者どもを操って暗躍してるみたいなやつだったしな。こいつは勝利だけを見てるんだろう。


「それに、戦闘に卑怯なんて私はないって思ってる。負けるのは出しきらない方が負けるのよ。なら、何を遠慮する必要があるのよ? 勝つためにやれることはなんだってやるし、利用できる物は全部利用する。スオウも利用する物の一つ」
「お前な……」


 普通それ言うか? それも本人に堂々と。僕たちは互いに視線から火花飛ばす。ローレの奴は引く気配はない。てかすっごい真っ直ぐな瞳してる。寧ろ曇りなんてない感じで……迷いも躊躇いもなく、こいつは自分自身に自信を持ってるんだろう。僕は視線を外して、息をはいた。


「お前って最初からそういう奴だったよ」
「知ってる。だってこれが私だもん。惚れた? ならチームに入りなさい」
「いや、惚れねーし。しかもなんでそうなる」


 てか、そもそもこんなに僕がほしいとも思えないんだが? いや、こいつの事だから、何か暗躍してるのかもだけど。そんな危ない想像してる僕だけど、ローレの奴は既に険悪な雰囲気なんてどこ吹く風でこういった。


「何よ、そんなに私の地元愛が信じられない訳?」
「まあな。アレだろ? その名前にしとけば、四国民を取り込んで自動的に四国で優勢になれるんじゃないかって思惑とかあるんだろ?」


 まだチームとか組んでない四国民を取り込むのに一役買いそうなチーム名じゃね? そもそもがネットのなかで故郷とかを思うやつがどれだけ居るかわかんないが、少なからず惹かれる奴が居てもおかしくはない。


「それもなくはない」


 やっぱり。こいつ打算的だもんね。


「けど、地元が好きなのも本当よ。私のこのエリア見て、嫌いになんてなれないでしょ?」
「うぐ……」


 それを言われると反論出来ないな。確かにこのエリアには愛があると思う。てか愛がないとここまで出来ないな。それをこのエリアは証明してるって事か……こいつとはあんまり関わるのもどうかと思うんだけど……今はなんだか少しだけ、もうちょっとだけ関わっても良いかなっ思えてる。だから僕はこう言うよ。


「わかったよ。お前のチームに入ってやる。けど、スカルドラゴンの件、協力しろよ」
「了解。任せなさない」


 そうやってローレは子供の顔に似合わない妖艶な笑みを見せた。その瞬間背中がゾクッとしたよ。早まったかもしれない。けど、ローレがいればきっと役にたつ。だから今は喜ぼう。とりあえず僕はローレの協力が得られた事をアギトの奴にメールで伝えた。

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