命改変プログラム
823
戦いは始まった。本当の意味での戦いが。さっきまでのお遊びとは違うガチな奴。セラ・シルフィングをもった僕の写し身みたいな奴がどうやらこの人達の狙いだったようだ。確かに考えて見れば、こいつ事態を狙う奴が出てきてもおかしくはない時期に入ったのかもしれない。あいつに関しては色んな噂が飛び交ってる。大体恐ろしい程に強いとかだけど、ここはLROだ。
だからどうやってか倒せると考える奴等は居るだろう。そして強い奴ほどに何か重要なイベントやアイテムの鍵になってることはどんなゲームでも常。多分彼等もそんな口なんだろう。敵の筈だった奴、味方だった筈の奴……どちらからも同時に魔法がスキルが放たれる。赤、青、緑……それぞれの光が奴に向かう。吹き荒れる爆炎。草原の草や花が無残に散った。
「よし!」
「やったぜ!!」
そんな声が聴こえる。けどその時、爆煙が揺らめいたのが見えた。あんな程度で奴がやられる訳がない。
「くるぞ!」
僕は咄嗟にそう声を出した。けどその声が伝わる前に数人が切り飛ばされてた。既に奴は背後に回ってる。周囲の風が黒く染め上げられて、奴のセラ・シルフィングの周りに集ってる。イクシード……風のうねりを向けてくる。地面をえぐりながらそれは迫る。後衛が障壁を展開。その間に散り散りに動き出す。一箇所に集まってると叩き伏せられるからな。
僕と一心も動き出す。このまま、なにもせずにやられる訳にはいかない。実際あいつに迷惑被ってるのは事実だし、出来れば倒したいって思いはある。いままでは戦闘中にいきなり現れて、その場をかき乱しての襲撃だったが、今回はこちらが待ち構えてた形。それならそうと教えてほしかったが、こっちに混乱はない。まあ、こいつらは奴を舐めてる感じがあるからそこまで期待もできないかもだけど、いつもとは違う感じにイケるかも……その期待は少しはある。
「うおおおおおおおおお!!」
「どりゃああああしああ!!」
それぞれが声を上げてその武器を奴に向ける。だがそれが当たる事はない。けど遠距離からの援護もあってそれなりにやりあえてはいる。まあ危ない所で僕が出てるのもあるけどね。てか前衛のレベルがそこまで高くない。システムに頼り過ぎだろ。なんでもかんでも全力で振って走って跳んでって少しは緩急つけろと言いたい。そりゃあ奴は速い。
皆はそれに付いて行こうとするから自然とそうなるんだろう。けどヤツだってずっと同じ速さな訳じゃない。見極めれば、そこまで早くなくても対処出来るはずだ。実際オウラさんとかはそうしてた。けど、あの人のレベルを求めるのは間違いか。
「僕が前に出る。皆は隙きを突け!」
そう言ってフラングランを振りかぶる。互いの剣閃が軌跡を描く。でもやはりというか……向こうの方が風を支配する力が強い。けどそれでも……フラングランなら斬れる筈だ。
「俺も居ること忘れるな!!」
一心が背後からその刀で一太刀を浴びせる。その隙きをついての魔法攻撃が襲いかかる。だけどその爆煙は直ぐにはらされた。黒い風の鎧……それを奴がまとってる。
「風帝武装か……」
まだこっちはそこまで出来ないってのに……地面を蹴った瞬間に目の前に来る。振りかぶるフラングランは宙を切り、背中を攻撃された。けど僕へはそれだけ。風帝武装で動きに世界の法則が適用されなくなった事で、予測できない動きで前衛を一気に超えて後衛の魔術師組を奴は切り伏せた。これで回復はアイテムにたよるしかなくなった……でもまだそれなりの人数は居る。
けど……誰かがこう言ったよ。
「これまでか……今回はこんな物だな。降参! 降参で~す!」
「は?」
ちょっとよく分からない事を言いだしたぞ。それに呼応する様に武器をしまいだす面々。おいおいどういうことだよ……
「何やってる! まだ戦いは終わってないぞ!!」
うんうん、一心の言うとおりだ。奴はやる気満々だぞ。けどリーダー格のそいつはへらへらとしてこう言うよ。
「いやー後衛やられちゃったし今回はこんなものですよ。今度はもっと作戦詰めてやるんで、今回で消耗しすぎるのもアレなんすよ。最初から勝つ必要なんて無いんすから。本当に死ぬわけじゃないじゃないですからね。だからそんな必死に――ちょっとは痛いけど」
話してる途中でそいつの胸から剣が突き出た。そして色が落ちて地面に倒れる。残ったのは僕と一心だけ……確かにこれはゲームなんだ。僕が……それを実感出来てないだけで、これがゲームの楽しみ方としては普通なのかも知れない。死ぬわけじゃない……何度だってチャンスはある。それなら一つの戦いに拘る事もない。そんな事を……僕はそういえば考えたこと無かった。
けど……なんだろうな。それは……やっぱりなんか嫌だ。何度でもある……それを享受するのは別にいいけど、こいつらは諦めるのが早すぎるんじゃないか? 与えられた権利、それに甘えてるだけだ。そんなんじゃ、幾らやったってきっとこいつは倒せない。超えられない壁ってのはきっとある。この世界はレベルを上げて、物理で殴るが最強な訳じゃない。
そもそもレベルの概念ないし――
「一心……お前はどうする?」
「はっ、バカ言うな。俺があいつらと同じとでも?」
僕たちは武器を収めたりしない。たった二人で無謀な戦いに挑む。例え今、ここで勝てなくても、死力を尽くすことでしか次に繋がる経験なんて得られないと知ってるから。だから僕たちは足掻くんだ。
だからどうやってか倒せると考える奴等は居るだろう。そして強い奴ほどに何か重要なイベントやアイテムの鍵になってることはどんなゲームでも常。多分彼等もそんな口なんだろう。敵の筈だった奴、味方だった筈の奴……どちらからも同時に魔法がスキルが放たれる。赤、青、緑……それぞれの光が奴に向かう。吹き荒れる爆炎。草原の草や花が無残に散った。
「よし!」
「やったぜ!!」
そんな声が聴こえる。けどその時、爆煙が揺らめいたのが見えた。あんな程度で奴がやられる訳がない。
「くるぞ!」
僕は咄嗟にそう声を出した。けどその声が伝わる前に数人が切り飛ばされてた。既に奴は背後に回ってる。周囲の風が黒く染め上げられて、奴のセラ・シルフィングの周りに集ってる。イクシード……風のうねりを向けてくる。地面をえぐりながらそれは迫る。後衛が障壁を展開。その間に散り散りに動き出す。一箇所に集まってると叩き伏せられるからな。
僕と一心も動き出す。このまま、なにもせずにやられる訳にはいかない。実際あいつに迷惑被ってるのは事実だし、出来れば倒したいって思いはある。いままでは戦闘中にいきなり現れて、その場をかき乱しての襲撃だったが、今回はこちらが待ち構えてた形。それならそうと教えてほしかったが、こっちに混乱はない。まあ、こいつらは奴を舐めてる感じがあるからそこまで期待もできないかもだけど、いつもとは違う感じにイケるかも……その期待は少しはある。
「うおおおおおおおおお!!」
「どりゃああああしああ!!」
それぞれが声を上げてその武器を奴に向ける。だがそれが当たる事はない。けど遠距離からの援護もあってそれなりにやりあえてはいる。まあ危ない所で僕が出てるのもあるけどね。てか前衛のレベルがそこまで高くない。システムに頼り過ぎだろ。なんでもかんでも全力で振って走って跳んでって少しは緩急つけろと言いたい。そりゃあ奴は速い。
皆はそれに付いて行こうとするから自然とそうなるんだろう。けどヤツだってずっと同じ速さな訳じゃない。見極めれば、そこまで早くなくても対処出来るはずだ。実際オウラさんとかはそうしてた。けど、あの人のレベルを求めるのは間違いか。
「僕が前に出る。皆は隙きを突け!」
そう言ってフラングランを振りかぶる。互いの剣閃が軌跡を描く。でもやはりというか……向こうの方が風を支配する力が強い。けどそれでも……フラングランなら斬れる筈だ。
「俺も居ること忘れるな!!」
一心が背後からその刀で一太刀を浴びせる。その隙きをついての魔法攻撃が襲いかかる。だけどその爆煙は直ぐにはらされた。黒い風の鎧……それを奴がまとってる。
「風帝武装か……」
まだこっちはそこまで出来ないってのに……地面を蹴った瞬間に目の前に来る。振りかぶるフラングランは宙を切り、背中を攻撃された。けど僕へはそれだけ。風帝武装で動きに世界の法則が適用されなくなった事で、予測できない動きで前衛を一気に超えて後衛の魔術師組を奴は切り伏せた。これで回復はアイテムにたよるしかなくなった……でもまだそれなりの人数は居る。
けど……誰かがこう言ったよ。
「これまでか……今回はこんな物だな。降参! 降参で~す!」
「は?」
ちょっとよく分からない事を言いだしたぞ。それに呼応する様に武器をしまいだす面々。おいおいどういうことだよ……
「何やってる! まだ戦いは終わってないぞ!!」
うんうん、一心の言うとおりだ。奴はやる気満々だぞ。けどリーダー格のそいつはへらへらとしてこう言うよ。
「いやー後衛やられちゃったし今回はこんなものですよ。今度はもっと作戦詰めてやるんで、今回で消耗しすぎるのもアレなんすよ。最初から勝つ必要なんて無いんすから。本当に死ぬわけじゃないじゃないですからね。だからそんな必死に――ちょっとは痛いけど」
話してる途中でそいつの胸から剣が突き出た。そして色が落ちて地面に倒れる。残ったのは僕と一心だけ……確かにこれはゲームなんだ。僕が……それを実感出来てないだけで、これがゲームの楽しみ方としては普通なのかも知れない。死ぬわけじゃない……何度だってチャンスはある。それなら一つの戦いに拘る事もない。そんな事を……僕はそういえば考えたこと無かった。
けど……なんだろうな。それは……やっぱりなんか嫌だ。何度でもある……それを享受するのは別にいいけど、こいつらは諦めるのが早すぎるんじゃないか? 与えられた権利、それに甘えてるだけだ。そんなんじゃ、幾らやったってきっとこいつは倒せない。超えられない壁ってのはきっとある。この世界はレベルを上げて、物理で殴るが最強な訳じゃない。
そもそもレベルの概念ないし――
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「はっ、バカ言うな。俺があいつらと同じとでも?」
僕たちは武器を収めたりしない。たった二人で無謀な戦いに挑む。例え今、ここで勝てなくても、死力を尽くすことでしか次に繋がる経験なんて得られないと知ってるから。だから僕たちは足掻くんだ。
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