命改変プログラム
繋がりの錬金術
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」
「やあああああああああああああああああああああ!!」
四方から飛び出して来たのはテトラ、リルフィン、所長、そしてフランさんの四人。だけど蘭の奴に慌てる様子はない。視線を動かし四人を確認。けど結局こっちに戻ってくる視線。どうやら天叢雲剣を他に向ける気は無いようだ。
こうなったらまたラプラスの簡易使用で乗り切るか。二度使った位相相違を使えばなんとか––って思ったけどアレは横に薙ぐ感じだから行けたのかも知れない。一瞬だ。一瞬だけ自分の体の位相を置き換えることで攻撃をすりぬかせてる様に見せてる。
でもあれは結構無茶な技だ。だからこそ、一瞬で、それに範囲は限定的。刹那の瞬間だから出来る荒業だと行っていい。横に薙ぐのなら一瞬で体を通り過ぎるから、大丈夫な訳だけど、突きと成れば話は別だ。体を抉ってその刀身は一瞬で体を貫くだろうけど、その後体を離れる訳じゃない。位相相違の誤魔化しは通じない。
周囲の炎の勢いが増す。どうやら蘭が放つ色とりどりの炎で四人は燃やそうと、そういう事らしい。
「舐めるなよ小娘!!」
その瞬間黒い影が目の間に揺れて、テトラの奴が僕の前に現れた。そしてテトラは腕を前に突き出し、力を収束、天叢雲剣を受け止める。
「ぐっ––ぬうう!!」
「テトラ!」
なんとか受け止めれてる。流石は神なだけある。でも蘭達は既にテトラのコードも得てる。長くは持たない。するとこの色違いの炎のせいでわかりづらかったけど、なんだか周囲にキラキラした粒子が散ってるのに気付いた。そして炎の中から聞こえる声。
「コード解析完了。魔鏡強啓零・粉衣甲天山茶花––リルフィンさん!!」
「–––––––––––––––!!!!!」
それは声にならない声。聞こえる音は無くても、その音波は周囲に響きわたった。音波に反応してか、周囲に撒き散らせてあった粒子が激しく振動を繰り返したかの様に見えたら、爆発的に分裂仕出して僕達を包み込んでしまう。
だけどそれは水の様に呼吸を奪う物ではなくて、けどましてや存在があるわけでもないのか、体に違和感を感じる事もない。ただこの粒子の中で変わったのは炎だ。蘭の炎だけがその猛りを沈められて動きを止めてる。
炎の動きを止めるなんてどういう事なのか僕にはよく分からないけど、その御蔭かテトラの受け止めてる天叢雲剣の勢いも多少は落ちたようだ。けどだからって押し戻すに至る訳じゃない。でも炎が停止したことに蘭は多少なりとも反応した。その眉を少し寄せたのを僕は見逃さなかった。
「ふん、何をしようが、同じだ。滑稽な神事貫いてやろう!」
蘭の奴は片手で持ってた天叢雲剣の柄を両手で握り直し、更に地面に足を着いて踏ん張りを効かせる。一気に押されだすテトラ。僕とクリエは後ろからテトラを一生懸命支えるよ。炎なんて無くたって天叢雲剣だけで反則だな。
多分炎の特性は天叢雲剣には無いんだろう。アレはきっと蘭の持つ力。だから天叢雲剣の特性は……
「「––っづ!?」」
僕とテトラは気付く。押し負けないようにと踏ん張ってるけど、それだけじゃない。これは押してるというか押されてる部分もある。感じる……体が前へと進もうとする感覚を。引力––天叢雲剣はその刃に全てを引き寄せて無慈悲に切り裂く。
僕達はもう、その力に捕まってる。このままじゃ前の力と後ろの力に板挟みされて、グッサリと行ってしまう。いつかはそうなるのはわかってたけど、こうなったらその時間は早い。後ろに下がるって事はそれだけ力を流してるって事でもあるからな。でも今は力に挟まれてる状態。無理矢理にグイグイと押されてるんだ。
両側から力を加えると中心でその力はぶつかり合って……最後には中央がブシャアア……だ。
「引力とは存在だ。貴様等は天叢雲剣という存在その物に引き寄せられてる。逃れる術はない」
蘭の言葉……よく分からないが、ハッキリとしてるのはこのままじゃ僕達は貫かれるということだ。必ずしも引き寄せられる訳でもないし、何をキッカケにしてるのかはよく分からないんだが、発動した限り、逃れる術はない。
だけど何故かテトラの奴は動こうとしない。こいつなら力を使ってここからだって攻撃しようとすれば出来なくもないような気がするけど……全部のリソースを使って防御してるって事だろうか? まあ天叢雲剣にはそれでも足りないからこそ、動けないって事なんだろう。つまりは絶体絶命。
てかその結論にしかたどり着かないな最近。引力に引かれ、天叢雲剣は次第に食い込んできてる。体が押し合って既に苦しいくらい。なんとかしないと。テトラが防御に必死なら、後は僕がどうにかするしかない。ラプラスを使ってせめてこの引力をどうにか出来ないか?
単純に自分達の周りに斥力の力場を展開させるとか……そのくらいなら複雑な命令をしなくても願いとして受け取ってくれるかもしれない。
(ラプラ––)
「ちょっと所長、まだなの!? 次行くわよ!」
響くフランさんの声。そういえば飛び出したのは四人で、その中には所長も確かに居たな。マッドサイエンティストの肩書も第一の統括に取られた感じだし、キャラが弱くなって忘れてたよ。そもそも炎に囲まれた時点で一人だけ出てこないから、怖気づいたのかと……所長ならある意味考えられる––とおもったんだけど、そうじゃない?
てか、さっきフランさんは魔鏡強啓零って言ってたような? フランさん達も魔鏡強啓零を得てるのか? でも……どうやって? 統括達第一は分かる。扉の向こうに言ったんだから当然だろう。僕は苦十の奴を通して得た。でもフランさんや所長は人間再生で復活した側だ。
魔鏡強啓零を得られる時間なんて無いはず。でも……この短い間の事を思い返すと、それしか無いとも思える。所長は蘭の作った炎の塊を消して見せて、フランさんもさっき魔鏡強啓零を口にして、リルフィンと連携してだけど、今まさに蘭の力を削ってる。
こんな事普通の錬金では出来ないだろう。蘭に対向するにはシステムレベルにまで干渉できる魔鏡強啓零でないと……もし本当に二人が魔鏡強啓零を手にしてるのなら……その狙いはなんだ? 所長はどこに?
「慌てるな助手よ。ヒーローとはピンチに駆けつける物だろう?」
何処かから聞こえてくる声。それは上からも下からも横からも聞こえるようで、位置を把握させない様にしてあるようだ。だけど残念、蘭の奴は興味無いように一歩を踏み込む。どうでもいい奴に気を取られるよりも、こっちをさっさと殺してしまおうと言う事らしい。
まっすぐブレない精神だ。僕を殺す––その事だけを見てる。なんという熱視線……けど全然嬉しくない! そんな事を思ってると、一歩を踏み込んだから圧力が更に強まって、今にもテトラを貫いて僕達全員串刺しにされそうだった。
「ちょっ! おまっ! 俺の声を聞けえええええ!」
響き渡る所長のそんな声。いいからホントさっさと出てこいよ。こっちはもう死にそうだっての! 結局蘭はこっちに熱視線を向けたままだしな。そんな態度にカチンと来たのか、さっきの咆哮よりもおとなしく、だけど声のトーンを落として所長は言葉を紡いだ。
「ふん、余裕だな。引力……それは全ての物体に影響する力の筈。貴様がその影響を受けないのは、その状態だからか? それなら、落としてやるよ。俺が貴様をな!」
その瞬間、ブワッと白衣が広がる。しかもそれは蘭の奴のすぐ後ろでだ。その存在を感じ取った蘭は流石に後方に顔を向ける。けどそれはつまりその瞬間まで気付かれる事なかったと言うこと……あり得るか? あの蘭だぞ。規格外チート野郎どもだぞ。
姿を消しただけじゃ多分ムリだろう。そう思って視線を集中させると、あの白衣に見え隠れする記号というか文字というか、そういうのが見える。何か特別な処置を施してるのかも。振り返った蘭に手をかざす所長。するとその腕には何かある? リングの様な……そんな感じの。それは自身でその構造を解いていくと視界から消え去った。そして二人の足元にいくつかの円が重なったような陣が出現する。
「俺は既に貴様を理解してる。対象指定、その力の流れを組み替える!!」
陣が回りだし、光が強まる。すると異変は直ぐに出始めた。明らかに蘭の表情が芳しくなくなっていった。そしてこっちへずっと向かってた意識がようやく所長へ向いたようだった。引力はそのままだけど、向かい合う剣の押し込みは緩くなる。
「づっ……貴様……何をしたあ!!」
蘭の怒りに呼応するように所長を包み込むカラフルな炎。その炎は天を突く程に荒々しく燃え盛ってる。
「しょ……ちょう……」
圧迫される中、苦しげにもなんとか声を絞り出す。けど今の僕達は動くこともままならない。フランさんやリルフィンが頼みだけど、二人共動けてない。このままじゃ所長は黒焦げ……最悪灰に成ってるかも知れない。
だけどその時、炎の中から白い布が飛び出てくる。そしてそれは強制的に炎を抑えこんで鎮火させていく。まさか……そんな……自然に燃えてる炎じゃないんだぞ。特別な、特別特別強力な炎だ。それを……一体所長に何があったんだ?
そしてそんな驚愕を感じてるのは多分僕だけじゃない。
「あ……りえん! 我が炎が貴様などに!!」
「言ったはずだぞ。俺は既に貴様を理解したと。錬金術師をなめる––ぐはっ!!」
普通にパンチングを横っ面に食らった所長は吹っ飛んで建物にめり込んでった。どうやら単純な物理攻撃には滅法弱いらしい。まあ戦闘に慣れてるって訳じゃないからな。だけどこれはチャンスだ。
完全に意識が向こうに行って、こっちが疎かに成ってる。さっきまでの圧力もないし……これなら!!
(ラプラス!!)
僕は単純な物を願う。すると空中が歪みそれが形成されていく。それは数メートル級の鉄骨。それを蘭の奴の真上に創りだした。そしてその鉄骨は重力のままに真下に居る蘭目掛けて落ちていく。直接的な攻撃が出来ないのはラプラス時でも同じ。それなら直接じゃなければいいだけだ。それに一個なんてケチ臭い事はしない。
(いっけええええ!!)
僕は次々と同じサイズの鉄骨を作り出して落とす。鉄骨が地面に落ちる音と振動。そして鉄骨同士のぶつかる甲高く鈍い音が周囲に響いて砂埃が視界を覆った。
「ぐはぁ! はぁはぁ……」
「なんとか生き残ったな。助かったよテトラ」
「ふん、お前に今死なれては困るから––って大丈夫か?」
「?」
前と後ろから挟まれた状態から開放された僕たちはその場にへたり込んでた。テトラの奴は何やらこちらを見て目を丸くしてるんだげと……一体何やら。そう思ってるとクリエの奴が慌てた様にこういった。
「ススススオウ! お目目から血が……血がぁ!」
「血……」
クリエにそう言われて手で拭ってみると、確かに底には血がベタッとついてた。だけどそこまで驚きはないな。血が流れ出る事は別段、よくある事だ。まあ目から流れでるってのはそこまでよくある事でもないけど、今の僕の状態ならそこまで驚くことじゃない。
法の書は介してない筈だけど、脳への負担はやっぱりあるんだろう。それよりも気になるのは、感覚がないっぽい事だ。
普通、頬を伝えば伝った感触が肌に残る筈なんだけど……その感覚がないような。手に着いた血の感覚もあったのかどうか……今はもう見てるから……血だなこれ––って感じてるんだけど……拭った時に何か感じただろうか?
僕は意識して手を強く握ってみる。そこには確かに感触がある。
(何も感じない……訳じゃない)
「スオウ?」
不安気な声に我に帰り、僕は取り敢えず大丈夫な事を伝えるよ。
「心配するな。こんなのどうってことないさ」
「そっか、良かった」
「……まあ大丈夫ならいいさ。それよりも奴は……」
「あれでやれた––とは誰も思ってないだろうからな。それに所長も心配だ」
攻撃もろに食らってたけど大丈夫だったのだろうか? 素手パンチだったけど、蘭の素手パンチだからな。そこらのモンスターの攻撃よりも強そうじゃん。そう思ってると、広がった埃の向こうから三人の姿が見えた。
「無事か?」
「そっちは……酷い有様だな」
「ほっとけ!」
リルフィンに担がれた所長の左頬は大きく腫れ上がってる。ギャグみたいな顔だ。多分普通そこまで腫れるのなら骨砕かれてるんじゃね? って思うほど。でも案外元気そうだから大丈夫って事なんだろう。
「よくもまあ、アイツの攻撃を受けて無事だったな」
「流石に素手だったしな。それに奴は今弱体化してる。弱体化と言える程ではないかも知れないが、さっきの状態では無いだろう」
「それってどういう……」
するとその時、埃を吹き飛ばす突風が吹き荒れた。そして地面に突き刺さった鉄骨に片足乗せて姿を見せた蘭。だけどその姿は……さっきまでのコードリリース状態の姿じゃない。炎は鳴りを潜めて、人間体に成ってる。黒髪ポニーにサラシの胸、そして袴で覆われた下半身。普通だ。それにどうやら天叢雲剣も一段階状態が戻って刀身が姿を表してた。
そしてなんだか肩で息をする様が……炎を纏ってたからなのか火照った様になってる肌が妙につやつやして見えるせいでなんか変に色っぽくみえる。
「貴様––」
キッと所長を睨みつける蘭。何をどうやったかはわからないが、コードリリースが解かれたのは間違いなく所長のせいだろうから、その怒りが彼に向かってる。そしてそんなキツイ視線を受けた所長は、一瞬背筋を伸ばして震えたけど、手元のリングに視線を落とすと気を持ち直したのかリルフィンの肩から自立して蘭に向かい合う。
「みくびるな––そう言った筈だ」
格好良くそう決めた所長。だけど後ろから見てる僕達には足が貧乏揺すりしてるのがモロバレだ。でもそれが所長らしいって思える。なんだか随分と凄い事をやってくれるから、別人かと疑いたくなってたけど、こういうのを見るとやっぱり所長だなって思えて安心するよ。
「確かに見くびってたようだ。そうだなこの状態を見るになにかが起こった事は明白。流れが変わったのかもしれない。だがその言葉……そのまま返してやろう。みくびるなよ……我等が力を!」
そう言った蘭は一気に僕達目掛けて飛んでくる。けどその時辺りに響く声と共に蘭を閉じ込めるように光の壁が現れた。
「範囲固定、出力最大! 奴の動きをとめるんじゃああああ!!」
周りを見ると研究員っぽい人達が蘭に向けて手のひらを向けてる。そして全員が全員、同じような手袋をはめてた。手の甲に赤い球体が埋め込まれてて、そこから五本の指に伸びる血管の様な線。あれは錬金アイテムなのだろうか?
「こざかしいわ!!」
天叢雲剣を一閃する蘭。すると蘭を囲ってた壁は安々と破壊されてしまう。けど––
「まだまだじゃ! 怯むな皆の者!!」
その声と共に、周りの手袋をはめた人達が手を合わせる。そして素早く手をかざすと再び壁が蘭の周囲に出来上がる。なんと! どの作品の錬金術師だよお前等! って思ったけど、まあ一応錬金術師なのは変わりないし、あのアイテムがそれを成してると考えれば可能なのか?
零を得たから……って事だろうか? でも元々魔鏡強啓零用にあんな物を作ってた訳じゃないよな?
「何度しようがこんな物では!」
そう言って再び蘭は天叢雲剣を振るう。けど今度はその刃を壁は受け止めた。
「何!?」
そして僕達は気付くよ。さっきまで遠巻きに僕達を見てた一般の人達までその手をかざしてる。どうやら研究者達があの手袋を配ってるみたいだ。そして同時にブリームス中に響く様な放送が聞こえてきた。
『聞くである愛すべきブリームスの皆よ! 今この街にはかつての者と今の者達が入り乱れておる。だがそれこそが長年我等が求めてきた境地に辿り着いた証明。恐るることはない! 立ち上がるのだ自分達で!! その為の武器を我等が皆に配ろう。だから今まで頑張ってくれた者達を助けてやってくれである! 今度は我等がこの街を守る番だ!!』
熱い演説は、怯えきってた街の雰囲気を変えていく。困惑と混乱が充満してた人々に、目的を与える事で一つの方向に流れを向かわせる。集う力がより強固にその壁をしてく。
「さあ、どう料理してくれようかのう!」
そういうのは先代だっけ? 先々代だっけの統括。小さくて怪しい格好してるから先々代か? そいつが上機嫌になってる。天叢雲剣でも貫けない位の強度になった壁の中で、さぞかし蘭も歯噛みしてるかと思ったけど、蘭の奴はその目を閉じて静かに一呼吸。そしてふと上を見た。それにつられて僕も上を見る。すると何か見えた。
そして同時に元気ハツラツな声が空から響いてくる。
「蘭姐!! いっまいっくよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! コードリリース!! えっと……え〜と……まあなんでもいいやあああああああああああああああああ!!」
いいのかよ!! っと突っ込み入れる前に地面が激しく揺れて周囲に埃が立ち込める。更に遠くの方から聞こえる獣の叫びの大合唱のような声。嫌な予感がヒシヒシと伝わってくる。埃が晴れてく中、派手に登場したそいつは地面にへたり込んで笑ってた。
元気に活発に、その名のままの様な眩しい笑顔。
「あっははははは! 失敗失敗」
「ヒマワリ、お前はもう少し考えて行動しろ。まあ助かったがな」
「えっへへ、蘭姐に褒められた。ようし! やる気出てきたぞおおお! ヒマワリちゃん参上だ!!」
そう言って気合一発吠えるだけでビリビリと伝わる空気の振動。不味いな……二人の目の姉妹。けどそうじゃなかった。パチンと小さいけど、忘れることない音色が耳に届く。空を見るとヒマワリが派手だったせいで見落としてた奴がもう一人。
幼い見た目に、かなり大きめな派手な和装はヒマワリとは対照的。背中からは氷の羽が四本伸び、そしてその手には粉雪を散らす扇が一つ。
「スオウ……再戦の時だよ」
「柊……」
三人目の姉妹。絶望を塗り重ねるような状況だけど、まだ後数回はきっとある。その度にいちいち打ちひしがれてなんか居られない。それに今は、状況が違うんだ。昔の統括の叫びが響く。錬金の光は各地で光、僕とこいつらの戦いじゃない事を物語る。ブリームス––この街の人達が居てくれる。
「やあああああああああああああああああああああ!!」
四方から飛び出して来たのはテトラ、リルフィン、所長、そしてフランさんの四人。だけど蘭の奴に慌てる様子はない。視線を動かし四人を確認。けど結局こっちに戻ってくる視線。どうやら天叢雲剣を他に向ける気は無いようだ。
こうなったらまたラプラスの簡易使用で乗り切るか。二度使った位相相違を使えばなんとか––って思ったけどアレは横に薙ぐ感じだから行けたのかも知れない。一瞬だ。一瞬だけ自分の体の位相を置き換えることで攻撃をすりぬかせてる様に見せてる。
でもあれは結構無茶な技だ。だからこそ、一瞬で、それに範囲は限定的。刹那の瞬間だから出来る荒業だと行っていい。横に薙ぐのなら一瞬で体を通り過ぎるから、大丈夫な訳だけど、突きと成れば話は別だ。体を抉ってその刀身は一瞬で体を貫くだろうけど、その後体を離れる訳じゃない。位相相違の誤魔化しは通じない。
周囲の炎の勢いが増す。どうやら蘭が放つ色とりどりの炎で四人は燃やそうと、そういう事らしい。
「舐めるなよ小娘!!」
その瞬間黒い影が目の間に揺れて、テトラの奴が僕の前に現れた。そしてテトラは腕を前に突き出し、力を収束、天叢雲剣を受け止める。
「ぐっ––ぬうう!!」
「テトラ!」
なんとか受け止めれてる。流石は神なだけある。でも蘭達は既にテトラのコードも得てる。長くは持たない。するとこの色違いの炎のせいでわかりづらかったけど、なんだか周囲にキラキラした粒子が散ってるのに気付いた。そして炎の中から聞こえる声。
「コード解析完了。魔鏡強啓零・粉衣甲天山茶花––リルフィンさん!!」
「–––––––––––––––!!!!!」
それは声にならない声。聞こえる音は無くても、その音波は周囲に響きわたった。音波に反応してか、周囲に撒き散らせてあった粒子が激しく振動を繰り返したかの様に見えたら、爆発的に分裂仕出して僕達を包み込んでしまう。
だけどそれは水の様に呼吸を奪う物ではなくて、けどましてや存在があるわけでもないのか、体に違和感を感じる事もない。ただこの粒子の中で変わったのは炎だ。蘭の炎だけがその猛りを沈められて動きを止めてる。
炎の動きを止めるなんてどういう事なのか僕にはよく分からないけど、その御蔭かテトラの受け止めてる天叢雲剣の勢いも多少は落ちたようだ。けどだからって押し戻すに至る訳じゃない。でも炎が停止したことに蘭は多少なりとも反応した。その眉を少し寄せたのを僕は見逃さなかった。
「ふん、何をしようが、同じだ。滑稽な神事貫いてやろう!」
蘭の奴は片手で持ってた天叢雲剣の柄を両手で握り直し、更に地面に足を着いて踏ん張りを効かせる。一気に押されだすテトラ。僕とクリエは後ろからテトラを一生懸命支えるよ。炎なんて無くたって天叢雲剣だけで反則だな。
多分炎の特性は天叢雲剣には無いんだろう。アレはきっと蘭の持つ力。だから天叢雲剣の特性は……
「「––っづ!?」」
僕とテトラは気付く。押し負けないようにと踏ん張ってるけど、それだけじゃない。これは押してるというか押されてる部分もある。感じる……体が前へと進もうとする感覚を。引力––天叢雲剣はその刃に全てを引き寄せて無慈悲に切り裂く。
僕達はもう、その力に捕まってる。このままじゃ前の力と後ろの力に板挟みされて、グッサリと行ってしまう。いつかはそうなるのはわかってたけど、こうなったらその時間は早い。後ろに下がるって事はそれだけ力を流してるって事でもあるからな。でも今は力に挟まれてる状態。無理矢理にグイグイと押されてるんだ。
両側から力を加えると中心でその力はぶつかり合って……最後には中央がブシャアア……だ。
「引力とは存在だ。貴様等は天叢雲剣という存在その物に引き寄せられてる。逃れる術はない」
蘭の言葉……よく分からないが、ハッキリとしてるのはこのままじゃ僕達は貫かれるということだ。必ずしも引き寄せられる訳でもないし、何をキッカケにしてるのかはよく分からないんだが、発動した限り、逃れる術はない。
だけど何故かテトラの奴は動こうとしない。こいつなら力を使ってここからだって攻撃しようとすれば出来なくもないような気がするけど……全部のリソースを使って防御してるって事だろうか? まあ天叢雲剣にはそれでも足りないからこそ、動けないって事なんだろう。つまりは絶体絶命。
てかその結論にしかたどり着かないな最近。引力に引かれ、天叢雲剣は次第に食い込んできてる。体が押し合って既に苦しいくらい。なんとかしないと。テトラが防御に必死なら、後は僕がどうにかするしかない。ラプラスを使ってせめてこの引力をどうにか出来ないか?
単純に自分達の周りに斥力の力場を展開させるとか……そのくらいなら複雑な命令をしなくても願いとして受け取ってくれるかもしれない。
(ラプラ––)
「ちょっと所長、まだなの!? 次行くわよ!」
響くフランさんの声。そういえば飛び出したのは四人で、その中には所長も確かに居たな。マッドサイエンティストの肩書も第一の統括に取られた感じだし、キャラが弱くなって忘れてたよ。そもそも炎に囲まれた時点で一人だけ出てこないから、怖気づいたのかと……所長ならある意味考えられる––とおもったんだけど、そうじゃない?
てか、さっきフランさんは魔鏡強啓零って言ってたような? フランさん達も魔鏡強啓零を得てるのか? でも……どうやって? 統括達第一は分かる。扉の向こうに言ったんだから当然だろう。僕は苦十の奴を通して得た。でもフランさんや所長は人間再生で復活した側だ。
魔鏡強啓零を得られる時間なんて無いはず。でも……この短い間の事を思い返すと、それしか無いとも思える。所長は蘭の作った炎の塊を消して見せて、フランさんもさっき魔鏡強啓零を口にして、リルフィンと連携してだけど、今まさに蘭の力を削ってる。
こんな事普通の錬金では出来ないだろう。蘭に対向するにはシステムレベルにまで干渉できる魔鏡強啓零でないと……もし本当に二人が魔鏡強啓零を手にしてるのなら……その狙いはなんだ? 所長はどこに?
「慌てるな助手よ。ヒーローとはピンチに駆けつける物だろう?」
何処かから聞こえてくる声。それは上からも下からも横からも聞こえるようで、位置を把握させない様にしてあるようだ。だけど残念、蘭の奴は興味無いように一歩を踏み込む。どうでもいい奴に気を取られるよりも、こっちをさっさと殺してしまおうと言う事らしい。
まっすぐブレない精神だ。僕を殺す––その事だけを見てる。なんという熱視線……けど全然嬉しくない! そんな事を思ってると、一歩を踏み込んだから圧力が更に強まって、今にもテトラを貫いて僕達全員串刺しにされそうだった。
「ちょっ! おまっ! 俺の声を聞けえええええ!」
響き渡る所長のそんな声。いいからホントさっさと出てこいよ。こっちはもう死にそうだっての! 結局蘭はこっちに熱視線を向けたままだしな。そんな態度にカチンと来たのか、さっきの咆哮よりもおとなしく、だけど声のトーンを落として所長は言葉を紡いだ。
「ふん、余裕だな。引力……それは全ての物体に影響する力の筈。貴様がその影響を受けないのは、その状態だからか? それなら、落としてやるよ。俺が貴様をな!」
その瞬間、ブワッと白衣が広がる。しかもそれは蘭の奴のすぐ後ろでだ。その存在を感じ取った蘭は流石に後方に顔を向ける。けどそれはつまりその瞬間まで気付かれる事なかったと言うこと……あり得るか? あの蘭だぞ。規格外チート野郎どもだぞ。
姿を消しただけじゃ多分ムリだろう。そう思って視線を集中させると、あの白衣に見え隠れする記号というか文字というか、そういうのが見える。何か特別な処置を施してるのかも。振り返った蘭に手をかざす所長。するとその腕には何かある? リングの様な……そんな感じの。それは自身でその構造を解いていくと視界から消え去った。そして二人の足元にいくつかの円が重なったような陣が出現する。
「俺は既に貴様を理解してる。対象指定、その力の流れを組み替える!!」
陣が回りだし、光が強まる。すると異変は直ぐに出始めた。明らかに蘭の表情が芳しくなくなっていった。そしてこっちへずっと向かってた意識がようやく所長へ向いたようだった。引力はそのままだけど、向かい合う剣の押し込みは緩くなる。
「づっ……貴様……何をしたあ!!」
蘭の怒りに呼応するように所長を包み込むカラフルな炎。その炎は天を突く程に荒々しく燃え盛ってる。
「しょ……ちょう……」
圧迫される中、苦しげにもなんとか声を絞り出す。けど今の僕達は動くこともままならない。フランさんやリルフィンが頼みだけど、二人共動けてない。このままじゃ所長は黒焦げ……最悪灰に成ってるかも知れない。
だけどその時、炎の中から白い布が飛び出てくる。そしてそれは強制的に炎を抑えこんで鎮火させていく。まさか……そんな……自然に燃えてる炎じゃないんだぞ。特別な、特別特別強力な炎だ。それを……一体所長に何があったんだ?
そしてそんな驚愕を感じてるのは多分僕だけじゃない。
「あ……りえん! 我が炎が貴様などに!!」
「言ったはずだぞ。俺は既に貴様を理解したと。錬金術師をなめる––ぐはっ!!」
普通にパンチングを横っ面に食らった所長は吹っ飛んで建物にめり込んでった。どうやら単純な物理攻撃には滅法弱いらしい。まあ戦闘に慣れてるって訳じゃないからな。だけどこれはチャンスだ。
完全に意識が向こうに行って、こっちが疎かに成ってる。さっきまでの圧力もないし……これなら!!
(ラプラス!!)
僕は単純な物を願う。すると空中が歪みそれが形成されていく。それは数メートル級の鉄骨。それを蘭の奴の真上に創りだした。そしてその鉄骨は重力のままに真下に居る蘭目掛けて落ちていく。直接的な攻撃が出来ないのはラプラス時でも同じ。それなら直接じゃなければいいだけだ。それに一個なんてケチ臭い事はしない。
(いっけええええ!!)
僕は次々と同じサイズの鉄骨を作り出して落とす。鉄骨が地面に落ちる音と振動。そして鉄骨同士のぶつかる甲高く鈍い音が周囲に響いて砂埃が視界を覆った。
「ぐはぁ! はぁはぁ……」
「なんとか生き残ったな。助かったよテトラ」
「ふん、お前に今死なれては困るから––って大丈夫か?」
「?」
前と後ろから挟まれた状態から開放された僕たちはその場にへたり込んでた。テトラの奴は何やらこちらを見て目を丸くしてるんだげと……一体何やら。そう思ってるとクリエの奴が慌てた様にこういった。
「ススススオウ! お目目から血が……血がぁ!」
「血……」
クリエにそう言われて手で拭ってみると、確かに底には血がベタッとついてた。だけどそこまで驚きはないな。血が流れ出る事は別段、よくある事だ。まあ目から流れでるってのはそこまでよくある事でもないけど、今の僕の状態ならそこまで驚くことじゃない。
法の書は介してない筈だけど、脳への負担はやっぱりあるんだろう。それよりも気になるのは、感覚がないっぽい事だ。
普通、頬を伝えば伝った感触が肌に残る筈なんだけど……その感覚がないような。手に着いた血の感覚もあったのかどうか……今はもう見てるから……血だなこれ––って感じてるんだけど……拭った時に何か感じただろうか?
僕は意識して手を強く握ってみる。そこには確かに感触がある。
(何も感じない……訳じゃない)
「スオウ?」
不安気な声に我に帰り、僕は取り敢えず大丈夫な事を伝えるよ。
「心配するな。こんなのどうってことないさ」
「そっか、良かった」
「……まあ大丈夫ならいいさ。それよりも奴は……」
「あれでやれた––とは誰も思ってないだろうからな。それに所長も心配だ」
攻撃もろに食らってたけど大丈夫だったのだろうか? 素手パンチだったけど、蘭の素手パンチだからな。そこらのモンスターの攻撃よりも強そうじゃん。そう思ってると、広がった埃の向こうから三人の姿が見えた。
「無事か?」
「そっちは……酷い有様だな」
「ほっとけ!」
リルフィンに担がれた所長の左頬は大きく腫れ上がってる。ギャグみたいな顔だ。多分普通そこまで腫れるのなら骨砕かれてるんじゃね? って思うほど。でも案外元気そうだから大丈夫って事なんだろう。
「よくもまあ、アイツの攻撃を受けて無事だったな」
「流石に素手だったしな。それに奴は今弱体化してる。弱体化と言える程ではないかも知れないが、さっきの状態では無いだろう」
「それってどういう……」
するとその時、埃を吹き飛ばす突風が吹き荒れた。そして地面に突き刺さった鉄骨に片足乗せて姿を見せた蘭。だけどその姿は……さっきまでのコードリリース状態の姿じゃない。炎は鳴りを潜めて、人間体に成ってる。黒髪ポニーにサラシの胸、そして袴で覆われた下半身。普通だ。それにどうやら天叢雲剣も一段階状態が戻って刀身が姿を表してた。
そしてなんだか肩で息をする様が……炎を纏ってたからなのか火照った様になってる肌が妙につやつやして見えるせいでなんか変に色っぽくみえる。
「貴様––」
キッと所長を睨みつける蘭。何をどうやったかはわからないが、コードリリースが解かれたのは間違いなく所長のせいだろうから、その怒りが彼に向かってる。そしてそんなキツイ視線を受けた所長は、一瞬背筋を伸ばして震えたけど、手元のリングに視線を落とすと気を持ち直したのかリルフィンの肩から自立して蘭に向かい合う。
「みくびるな––そう言った筈だ」
格好良くそう決めた所長。だけど後ろから見てる僕達には足が貧乏揺すりしてるのがモロバレだ。でもそれが所長らしいって思える。なんだか随分と凄い事をやってくれるから、別人かと疑いたくなってたけど、こういうのを見るとやっぱり所長だなって思えて安心するよ。
「確かに見くびってたようだ。そうだなこの状態を見るになにかが起こった事は明白。流れが変わったのかもしれない。だがその言葉……そのまま返してやろう。みくびるなよ……我等が力を!」
そう言った蘭は一気に僕達目掛けて飛んでくる。けどその時辺りに響く声と共に蘭を閉じ込めるように光の壁が現れた。
「範囲固定、出力最大! 奴の動きをとめるんじゃああああ!!」
周りを見ると研究員っぽい人達が蘭に向けて手のひらを向けてる。そして全員が全員、同じような手袋をはめてた。手の甲に赤い球体が埋め込まれてて、そこから五本の指に伸びる血管の様な線。あれは錬金アイテムなのだろうか?
「こざかしいわ!!」
天叢雲剣を一閃する蘭。すると蘭を囲ってた壁は安々と破壊されてしまう。けど––
「まだまだじゃ! 怯むな皆の者!!」
その声と共に、周りの手袋をはめた人達が手を合わせる。そして素早く手をかざすと再び壁が蘭の周囲に出来上がる。なんと! どの作品の錬金術師だよお前等! って思ったけど、まあ一応錬金術師なのは変わりないし、あのアイテムがそれを成してると考えれば可能なのか?
零を得たから……って事だろうか? でも元々魔鏡強啓零用にあんな物を作ってた訳じゃないよな?
「何度しようがこんな物では!」
そう言って再び蘭は天叢雲剣を振るう。けど今度はその刃を壁は受け止めた。
「何!?」
そして僕達は気付くよ。さっきまで遠巻きに僕達を見てた一般の人達までその手をかざしてる。どうやら研究者達があの手袋を配ってるみたいだ。そして同時にブリームス中に響く様な放送が聞こえてきた。
『聞くである愛すべきブリームスの皆よ! 今この街にはかつての者と今の者達が入り乱れておる。だがそれこそが長年我等が求めてきた境地に辿り着いた証明。恐るることはない! 立ち上がるのだ自分達で!! その為の武器を我等が皆に配ろう。だから今まで頑張ってくれた者達を助けてやってくれである! 今度は我等がこの街を守る番だ!!』
熱い演説は、怯えきってた街の雰囲気を変えていく。困惑と混乱が充満してた人々に、目的を与える事で一つの方向に流れを向かわせる。集う力がより強固にその壁をしてく。
「さあ、どう料理してくれようかのう!」
そういうのは先代だっけ? 先々代だっけの統括。小さくて怪しい格好してるから先々代か? そいつが上機嫌になってる。天叢雲剣でも貫けない位の強度になった壁の中で、さぞかし蘭も歯噛みしてるかと思ったけど、蘭の奴はその目を閉じて静かに一呼吸。そしてふと上を見た。それにつられて僕も上を見る。すると何か見えた。
そして同時に元気ハツラツな声が空から響いてくる。
「蘭姐!! いっまいっくよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお! コードリリース!! えっと……え〜と……まあなんでもいいやあああああああああああああああああ!!」
いいのかよ!! っと突っ込み入れる前に地面が激しく揺れて周囲に埃が立ち込める。更に遠くの方から聞こえる獣の叫びの大合唱のような声。嫌な予感がヒシヒシと伝わってくる。埃が晴れてく中、派手に登場したそいつは地面にへたり込んで笑ってた。
元気に活発に、その名のままの様な眩しい笑顔。
「あっははははは! 失敗失敗」
「ヒマワリ、お前はもう少し考えて行動しろ。まあ助かったがな」
「えっへへ、蘭姐に褒められた。ようし! やる気出てきたぞおおお! ヒマワリちゃん参上だ!!」
そう言って気合一発吠えるだけでビリビリと伝わる空気の振動。不味いな……二人の目の姉妹。けどそうじゃなかった。パチンと小さいけど、忘れることない音色が耳に届く。空を見るとヒマワリが派手だったせいで見落としてた奴がもう一人。
幼い見た目に、かなり大きめな派手な和装はヒマワリとは対照的。背中からは氷の羽が四本伸び、そしてその手には粉雪を散らす扇が一つ。
「スオウ……再戦の時だよ」
「柊……」
三人目の姉妹。絶望を塗り重ねるような状況だけど、まだ後数回はきっとある。その度にいちいち打ちひしがれてなんか居られない。それに今は、状況が違うんだ。昔の統括の叫びが響く。錬金の光は各地で光、僕とこいつらの戦いじゃない事を物語る。ブリームス––この街の人達が居てくれる。
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