命改変プログラム

ファーストなサイコロ

本当のマッドサイエンティスト

 奴等が消えて数時間、僕達はこのブリームスの全てを決めてる政府中枢に召還されてた。この街で一際……というか、一番高く聳える建物にはなんとエレベーターもあって、ほんとリアルと近い感じがする街だ。
 僕達––まあ僕とクリエと孫ちゃんだけどさ––が通された場所は法廷みたいなところなのか、中央に押しやられると、僕達にだけライトが当てられた。まるで被告人を見定めるためのかの様に……こっちはそのライトのせいであまり良く見えないけど、周りにはかなりの人数が居ることが雰囲気でわかる。てかどんだけ広いんだよって位に天井高い。
 そして多分床に立たされてるの僕達だけだな。視線が全部上の方から向けられてる気がするもん。しかも……僕は自分達の指に付けられた指輪を見る。これ、見た目的には所長やフランさん、その他の住人がしてるのと同じに見えるけど、多分同じ物じゃない様な気がする。
 いや、なんとなくだけどさ……同じ物与える意味無さそうだし。何か有りそうだよなこれ。イキナリ爆発して指吹き飛ばすとか……流石にそれはないか。指輪に目をやると自然と包帯が巻かれた部分に目が行く。
 いや、部分って言ってもほぼ全身なんだけど……まさかLROで包帯巻くことに成るとはね。でもただの包帯じゃ勿論無い。これもれっきとした錬金アイテムだ。即効性は無いけど、この包帯自体が傷を塞いでくれるらしい。
 なんか周囲の力をどうとか言ってたけど、そこら辺はよく分からないな。


「静粛に。外からの客人にみっともない姿は見せれぬぞ皆の衆」


 年季を重ねた様な荘厳な声が響く。その声で周りに漂ってた喧騒が落ち着いた。どうやら一番偉い人が現れた様だ。それに今客人とか言ったし、もしかした僕達が考えてた程、毛嫌いされてるわけじゃないのかも。まあ一応僕達も奴等の撃退に貢献したしな。
 全部第一が持っていった感が現場では漂ってたけど、アレも僕達の時間稼ぎあってこそだよ。そこら辺わかってくれてるのかも。


「さて客人よ。そなた等ならあの者達の正体を知っておると聞いた。簡潔に答えよ。奴等はなんぞや?」


 漂う静寂。集まる視線。なんか知らないけど、指輪がいきなりピッピッピッとなりだし、その音に合わせる様に指輪の外周に赤い光が時間を刻むように灯り出す。これってグルっと一周したらどうなるんだ? 
 カウントダウンにしか思えないんですけど……でも誰もこれに感しては何も言わない。心臓に悪いな全く。さて、奴等の事、システムの外側の存在とか言うわけにも行かないよな。普通のNPCは自分達をゲーム上の存在だと思ってないし……プレイヤーである僕達を異世界人みたいな認識はある程度してるようだけど、自分達の存在を疑ってる奴は居ないよな。
 自分を道化とわかってるのはテトラくらいだ。そんな奴等に世界の真実を伝えても、きっと意味は無い。だから僕は端的にこういう事にした。


「奴等はこの世界に縛られない存在です。この世界のどんな常識も奴等なら覆せるでしょう」


 僕のその言葉に沈黙してた周りがざわめき出す。だけど一番偉いであろう、その人は声に動揺など表さずにこういった。


「今の言葉、直接相まみえたお主はどう思う?」


 すると僕達とは違う場所がライトで照らされる。そこにはなんとセスさんが。なるほど、この人も召還されてたのな。まあ確かに現場をその目で直接見て、あの黒い奴と直接対峙した数少ない人物だしな。
 呼ばれるのは納得だ。彼は一瞬チラリとこちらを見る。だけどそれだけで、別段なにか伝えてくれることはせずに斜め上の方によく通る声で言葉を紡ぐ。


「はっ、治安部第三部隊隊長セス•ケイニッヒです。私達は奴がこのブリームスに侵入した直後に接触。それから戦闘を開始しました。その時、私は感じました。奴等の圧倒的とも言える力をです。
 彼の言葉は間違ってないと思います。あの者達はこの街の目指す錬金の到達点に至ってるのかも知れません」


 その最後の言葉に更にざわめく周囲。そして一番偉い声がこう言ってきた。


「それはあの者達の力も錬金術だということか?」
「それは違います。あの者達の力は錬金術では無いでしょう。ですが普通の魔法とも違うようです。ただ、わけが分からなくて凄い力を私達は目の当たりにしたんです。だからこそ皆、どうすればいいのかわからなくなってる」
「その対策を今話してるのだよ」


 確かにその通りだな。誰もがどうしたらいいのか分からない。だからどうしたらいいかをこの人達は決めるために話し合ってる。答えが出るかは知らないけど、それに例えでたとしても、僕達にとってそれがいいものとも限らないよな。
 奴等は襲撃を予告してる。それを回避する手段があるとすれば、僕の持つ法の書を差し出す事。僕達を生贄にすればこの街は救われる。それは一番簡単な方法だ。この人達にとっては、街の住人を犠牲にせずに済むんだからな。
 まああの黒い奴がただ暴れてくれたお陰で、その事実知らてないけど。でもこの街の事を思うなら申告すべき……なのか。でも法の書やバンドロームの箱、後愚者の祭典がこの場にあるって言っても信じて貰えないよな。てか余計な争いが生まれそうでもある。なんてたってその三つは錬金の三種の神器らしいからな。


「対策と言う観点から外せない存在である第一研究所はどうお考えですかな?」


 その言葉と共に対面にライトがあたって現れたのはボッサボサの長い白髪、片目が機械化して笑うと金歯が見える……そんなイッちゃってる感じの科学者の姿。あれこそまさにマッドサイエンティストだろ。てかそうとしか見えないし……


「我等第一研究所は既に対策を進めておるである。ここにおられる方々もお分かりかと思いますが、奴等に対抗するには我等のアイテムしか有効ではない。そうであろう?」


 この喋り方……やっぱりあの人が第一の統括か。第二の方はまだマトモな爺さんだったけど、アイツはどう見てもまともそうには見えない。大丈夫なのか? まあ言ってることは最もだけどな。
 奴等に対抗するには第一の力が必要だ。でもなんとなくざわめいてるな……全面的に信頼にされてるのかと思いきや、そうでもないのかな?


「だがしかし、お前達のアイテムも破られた。それも事実じゃ」
「それはそうであるが、有効ではあった。その証明は出来たはず。次はもっと強力なのを使う。奴等が二人とわかっておればより確実である」
「強力……どれだけの被害を出す気じゃお主?」


 その言葉に統括はイヤ~な笑い声をだす。喉で突っ掛かって変に甲高く成ったような声。そして片目の機械がレンズでも調節してるのかキュインキュインと動いてる。不気味だ。


「被害? 何を言い出すかと思えば、それであるか。今この街は滅ぼされようとしておる!! 我等は我等こそがこの街を守れる唯一の方法を知っておるのであるぞ! 何も出来ぬ奴等は黙って我等に縋ってればいい。
 それとも我等以外に、あの存在に有効な手立てを講じる事が出来る者がここにいるのであるか? それなら名乗り出ろ!」


 統括の言葉が反響して響いてく。その言葉に反論できる者達はいない。それを確認して更に統括は言葉を紡いだ。


「これが真実である。グダグダ言ってないで死にたくないのなら我等に投資しろ。これはチャンスでもある」
「チャンスとはどういうことじゃ?」
「危機とは転じてチャンスへとなるということである。我等の錬金が停滞し魔鏡強啓の扉が閉じつつあったのは危機が足りなかったからだと思わんか? 外は魔物という脅威に常に晒されておるのに、この街は安全が約束されておるのである。
 脅威が無くては人は……いや、遺伝子は進化を促さない。それは歴史が証明しておる事だ。我等はぬるま湯に浸かり過ぎてたのである」


 するとその言葉には反論する言葉がチラホラと出てきた。まあそれも「不謹慎だ!」とか「錬金を兵器とするのは間違いだ!」とかこの状況の打破ってか、統括の考え方への不満が大半。
 だからそんなの気にしてる風はない。


「お主等は忘れてるのかもしれないであるが、我等第一研究所は魔鏡強啓の探求が義務付けられておる。そこにこの街の未来があると昔からそう考えられてるおるからなのだ。自分達の快適な暮らしが、誰のお陰で享受出来ておるのかわかっておれば、我等のやることに不満など漏れるあろうはずもないである。
 お主達は我等が新たに開く魔鏡強啓の扉の先で、どれだけ楽できるかを楽しみにしておればいい」
「この街にまだ未来はあると、そう言い切れるのであるな?」


 重く荘厳な響きの声にそう尋ねられた統括は自信を見せてこう言い切る。


「勿論である。錬金の可能性が広がる限り、我等の未来は輝かしい物に成ることを約束しよう!」
「……では、この件は第一を全面サポートし、その行動に制限を掛ける事はなくそう。全ての組織もお主等の好きな様に使うといい。異論がある者はおるか?」


 その言葉に返ってくる声は一つもない。それはそうだろうな……いくらこのマッドサイエンティストみたいな奴がとんでもない提案をしたとしても、それを受け入れるしかここの人達は出来ないだろう。
 だって何も出来ないんだからな。幾ら言葉では大層な事を言えても、この街を守れないと意味は無い。そしてそんな彼等だって自分の身は惜しいんだ。他に策を講じれない以上、第一研究所に頼るしか無い。
 何なんだろうな……なんか妙に第一の存在を恐れてる感じ? まあ統括はハッキリ言って見た目アレだから恐れるのも無理は無いと思うけど……でもそういう事じゃない様な気がする。
 昔第一の実験でブリームス消えかけたし、それがトラウマにでも成ってるのかな? でも伝え聞く程度で、その現場に立ち会った奴は居ないだろう……もしかしたらなんかちょくちょくやってきたのかも知れないな。
 ありえる……ぶっ飛んだ天才集団とか、手が付けれなさそうだしね。


「さて、第一に後は任せるとして、お主達はどうするか?」


 第一の方に向いてた意識がこっちに戻ってきた。すると統括の奴がいらん情報を開示しやがった。


「その者達は我等で預かる事に成ってるである。なんせ第一に忍び込み情報を盗もうとしたのだからな。その罪は色々と協力する事で償って貰おう。その者達はただ迷い込んで、我等の為に戦ってくれた者達ではない。
 敵の事をしり、敵もその者達を知ってたである。まだまだ色々と聞きたいこともやって貰わなねばならぬ事もある。だから我等が預かろう。お主達も第四に付いてくよりも、我等とともに居たほうが錬金の事が良くわかると思うが?」


 疑問形で問いかけてるけどさ、僕達に拒否権とか無いだろ。元々そう言う約束だったしな。てか錬金の事なんか教える気あるのか? 無いだろ。さっさと逮捕しろとか喚いてた癖に……多分利用価値が無くなったらポイってされるか、刑務所に入れられる気がする。
 周りから反対の意見筈はない……僕達が第一に忍び込んだって言われた時にはざわついたけど、それもそこまでじゃなかった。
 本来ならかなりの罪っぽかった筈だけど、今は状況が状況だからか。それに当の第一の統括が言ってるんならって事だろう。さっき全部一任されたからな。反対した所で、それがこの街を守る為に必要だと言われれば、どうしようもないもんな。
 ってな訳で僕達の身柄は第一研究所預かりみたいな感じになった。それでこの場は解散。明かりが全体に灯ると、沢山居たはずの気配はどこかに消え去ってた。上を見ても誰も居ない。沢山の席はあるけど、誰一人座ってなどいないんだ。退散早いなおい。てかそもそも居なかったとか? 今この街は危機的状況だからな。保身に走りそうな上層部がわざわざ出向くか? という疑問もある。
 錬金の街なんだし、遠くから参加する術があってもおかしくないよな。


「さて、お主達には一緒に来てもらおうかである」


 こちらに向かって来てそう言う統括。やっぱり近くで見ると余計に不気味だな。僕は取り敢えず伝える事がある。


「それはしょうがないけど、下に仲間いるから合流してからで良いかな?」
「勿論である。お前の仲間も興味深いであるからな」


 いや〜な顔して笑う統括。マジで不気味。さっきの戦闘でこいつ、テトラやリルフィンにでも目をつけたのかしれないな。二人共特別な存在だし、ありえる。


「ちょっとアンタ、錬金術師なら等価交換って知ってるわよね? 何を私達は得るのかしら?」
「今、その存在を許されてるではないか。命が助かっただけでもありがたいと思えである」


 孫ちゃんの言葉に統括は当たり前のようにそう答えた。まあ元からそう言ってたからな。そんな事を言ってくる統括が怖いのか、見た目に抵抗があるのか知らないけど、クリエの奴が僕の足元でぎゅっと密着してくる。
 するとそんなクリエに話しかけてくる奴が……


「やあクリエちゃん。それに皆さん、その方の言うことはごもっともですよ。命が助かっただけでもありがたい。第一研究所の研究は機密です。それを盗もうとしたと知られれば普通は極刑か、投獄です」
「そうなの? その割にあんまり信頼されてない様に見えたけど」


 そういう孫ちゃんは近づいてきたセスさんを見て統括に目を向ける。クリエは知らない人にいきなり話しかけられたから更に縮こまる。まあ初めて見たわけじゃないけど、クリエにとっては離したこと無い存在だからな。
 彼と話してたのは中身が僕の時だったから……クリエにとっては「何この馴れ馴れしい人」だろう。


「第一研究所に関する事は関与が出来ないのです。自由な研究も莫大な予算の投入も、先人の意向で決められた物で、しかもその変更は許されないのが伝統として受け継がれてきてる。
 平和が続いたからこそ、それをよく思ってない者も居るんですよ。まあ理解ある人達が多いからこそ、受け継がれてきた事だとは思いますが」
「その通りである。誰もが知っておる。街の発展に必要なのは錬金の研究でそれを牽引してるのは我等第一研究所なのだと。文句を垂れるのがおかしいのだ。君は流石よくわかっておる。惜しい存在である。今からでも第一へ来ても良いぞ」
「はは……自分にはそんな資格は無いですよ」


 やんわりとそう断るセスさん。第一へ誘われるなんてそれってやっぱりかなり優秀だったって事だよな? なんで研究から身を引いてるんだろう? やっぱり所長達と何かあったから……だけどそれを突っ込んで聞くのもな……無粋な気がする。
 そんな場合でもないし。


「残念である。だが今回でその考えも変わるであろうがな。我等は遠き日の扉を開くつもりである。魔鏡強啓第零へと至る扉をな」
「第零……それは一体?」
「詳しくは追って連絡を各所に送るのである。さて、では仲間の元へ行こうか」


 僕達は統括と共にエレベーターを降りて外が望めるラウンジっぽい所に来た。そこで皆待ってたからね。


「ふむ、お主が邪神テトラにそこの奴が精霊であるか。興味深い」


 真っ先に統括がズカズカと近づいて行ってそう言った。やっぱりさっきの戦闘で目をつけてたのはその二人か。だけどリルフィンはともかくだ、テトラの事良くわかったな。邪神テトラとか、言われたって普通は信じないぞ。


「なんなんだ貴様?」
「そいつは第一研究所の統括だよ。僕達の預かり役だ。ここからは第一とやってくことになる。どうやらこいつらには奴等に対抗する術があるらしいからな」
「とうとう俺達もここまで来たか……」


 なんか一人噛み締めてる奴が一人……それはやっぱり第四の所長であるマッドサイエンティストだ。既にマッドサイエンティスト度で統括に負けてるからその肩書もどうかと思うけどな。


「よろしく頼む。これからは第一と第四の共同戦線だな!」
「お主等はいらんから帰ってよいであるぞ」
「はっは〜またまた〜マジ邪魔しませんからたのんます!!」


 土下座までが早い! 流石所長だぜ! 恥も外聞も捨て去ってる奴の行動は潔い。プライドは高いはずだったんだけど、第一の方が格上ってのは認めてるんだろう。


「う〜んじゃがのお……」


 だけどやっぱりその程度じゃ乗り気にはなれないらしい統括。するとそこにため息吐いたフランさんが行動を開始した。


「統括様、どうかお願いします」
「うむよかろう」


 早い! こっちも相当早かったな。フランさんの色仕掛けに一瞬で陥落したぞ。少し服をはだけさせてお願いしたらイチコロだった。研究者って案外チョロいのかも知れない。


「それでアンタ達、どうする気なの?」
「そうじゃな、お主達にも協力してもらって地下の扉を開ける。そして第一•第二•第三の研究所の真の役割を果たすである」


 真の役割? それに今地下って言ったよな? それって僕達が孫ちゃんやセスさんと見つけたアレか? なんでこいつがそれを知ってるんだ? 確か昔の調査とかでもあのゴーレム一杯の部屋まではいけなかったんじゃ……それに孫ちゃんも気付いたのか、訝しんでこう聞くよ。


「なんでアンタがその事を知ってるのよ?」
「我等第一研究所は独自に調査していたのである。あの地下に置き忘れた錬金の秘密があるのは明白であるからな。だが鍵が無かった。我等にはな。じゃがお主達なら鍵を持っとる。魔鏡強啓の次の扉を開けれる鍵をである」
「だけどその魔鏡強啓の扉を開けただけで何か出来る物なの? 錬金ってアイテムとして使うものでしょ?」


 確かにそうだな。全てが物に落とし込められてるというか……そんな感じだ。魔法の様に、詠唱とかで何も無いところから炎や水を出したりはしない。まあそう言うアイテムがあれば出来るんだろうけどさ。


「問題ないのである。魔鏡強啓の零が開けば、三つの研究所が役割を模倣する。零の産物のな。それは世界の理さえ曲げる力を持つアイテムである。世界から外れた奴等にもきっと有効であろう」


 その言葉を聞いて僕は自分の腕にあるはずの鍵を見る。それってつまりは三種の神器だよな? 零を開けばみっつの研究所が役割を模倣する……つまりは同じ事が出来るのか? だからこそ第一はバンドロームの箱で第二は多分愚者の祭典……そして残りの第三が法の書か。
 確かにそれなら……どうにか出来る?


「まあ貴様達には分からぬ事であろう。時間もないのであるし、さっさと働いて貰うぞ」


 そう言って僕達を引き連れて地上まで出る。この建物周りには避難所とかがあるから沢山の人でごったがえしてる。そこで異彩を放つ集団……周りからもなんか距離を開けられてるのが第一研究所の研究員達だと直ぐにわかった。


「さて皆の衆、ここからは我等の時間である。思う存分暴れて良い。その頭を限界まで酷使せよ!!」


 その宣言は虚しく響く。なんせ誰も反応しない。だけどそれでいいのか、皆各々の行動を介してバラけてく。するとその中の一人がこっちに来る。セグウェイみたいなのに乗ってるその子供にしか見えない奴は僕達とすれ違うときこういった。


「ばかやろう」


 と。一体何なんだ? でもアイツが目玉の主の筈だよな。追いかけて話しを聞きたいところであるけど、あからさまには出来ない。すると孫ちゃんが僧兵を狩りだした。


「あれが目玉の開発者何でしょ? それなら僧兵行って」
「はぁ? なんで俺が……ですか?」
「アンタ一番存在感無いから、バレないでしょ。それに居ても居なくても一緒だし」
「それはそれは頼りなくてすみませんね」


 孫ちゃんの言葉に酷くご立腹な僧兵は、文句言いつつ走りだす。まあ僧兵には悪いけど、孫ちゃんの言葉は間違ってないな。僧兵ならばれないだろ。確かに存在感無いからな。


「あっ、スオウ」
「ん?」


 クリエの声に視線を向けると、クリエが指差す方向には第二の人達が居た。第一まで一緒に行ってどうなったのかと思いきや、僕達との関与は疑われてないようだな。こっちと目が合うと、気持ち悪いウインク一つしてくれた。
 疑われてないのなら、下手に接触は出来ないからしょうがない。でもなんとか情報を得たこととかは伝えた方がいいよな。彼等にも世話になったし。だけどどうやって……


「第二の皆さんにはいつも通りサポートに回ってもらうである。儂とこいつらと共に、班を分けて地下に潜ってもらうであるぞ」
「了解です。私達第二の役目は第一の皆さんの手伝いですからね」


 成り行きとはいえ、丁度いい。これで彼等に目玉の事を伝えれるな。てかアンダーソン側はどうすれば……でも下手に目玉が出てきてその存在と情報が第一に知られると困るし、森の方で大人しくしてもらった方がいいか。
 それにそうしてた方が解析の時間が稼げるしな。


 僕達は動き出す。まだこの街を諦めない為に、それぞれが協力しあって出来る事をやるんだ。

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