命改変プログラム

ファーストなサイコロ

構造迷路の中で

 自身の爆発に、自身が放ってた攻撃が重なりあってその激しさは倍増どころの騒ぎじゃなくなってた。恐竜型の大型ロボットは自身の最後にこの研究所全体を巻き込まんばかりの爆発を起こしてたんだ。
 後ろから迫る熱気を感じながらも、でも僕達は振り返らずに小型のロボットの背にしがみつきその炎から逃げた。実際問題、幾らなんでも爆発で生まれた衝撃波や炎からただ走るだけで逃げれるとかありえる訳もないと思うんだけど、そこは多分この研究所に設置された安全装置みたいなのが働いたんだと思う。
 僕達を追いかけながら広がりまくろうとしてた爆発の衝撃波が突如何かに阻まれる様に押し返されたからな。まあ殆ど危機一髪のタイミングだったけどね。僕達を飲み込もうとしてた炎は服の先とか髪の毛の先っぽとかを僅かにだけど確実に焦がしてたはずだ。
 それを何かが阻んでくれたから、僕達は無事に通路の先へと進むことが出来た。待ち伏せされてたであろうルートも外れてなんとか一安心……はまだ速いだろうけど、だけど取り敢えずの危機は逃れたはずだ。


「これからどうするんだリーダー?」
「これからか……それを俺に聞くか……」


 リルフィンの言葉に顔を声をつまらせてそう言う所長。そりゃあ聞くだろう。だって自分がリーダーって自慢気に言ってたじゃないか。リーダーは偉そうに出来る代わりに、責任だってつきまとうんだからな。
 引っ張るつもりなら最後まで引っ張ってくれないとだろ。


「まあ確かにリーダーは俺だ。だが参謀は俺の右腕たる助手だ。助手に聞け」
「ちょっと、それどうなのよ……」
「裏のリーダーはフランさんて事だよね」
「なるほど、お飾りか」


 僕はボソッとクリエの言葉に同意してそう言った。すると所長は鼻息荒くしてこう言ってくる。


「お飾りではない! 役割分担だ。適材適所と言う言葉を知らんのか? 俺は決断を下すべき人間で、助手は様々なサポートをしてくれる人間だ!」
「それってやっぱりただの都合の良い奴って事? 別に私は一歩引かなくてもいいんだけど。私がリーダーで全部決定したって誰も文句言わないわ」


 そう言って僕達の方に視線を向けるフランさん。それに応えるように僕達は頷くよ。実際その通りだしな。フランさんリーダーで問題ない。所長だと「んん?」と思うけど、フランさんならまあ納得できるよな。
 実際何も考えられない奴が決断下すとか……不安でしか無いっていうか。そもそも所長はフランさん頼りだから、ワンクッション挟むのは無駄だよな。その分フランさん自身が決定まで下すのなら、余分な時間を割かなくていいよな。うんうん。


「くっ……お前たちまで助手側か……」


 誰も自分の味方が居ないことに憤る所長。でもこればっかりはしょうがないっていうか……それにフランさんをただの便利な奴って言うのはやっぱりね。ちょっといけないと思うんだ。実際はそんな気で言ったんじゃないのかもしれないけどさ、今の言い方は駄目だと思う。
 リーダーを自称してるからって慢心は行けないな。だけど所長の奴はリーダーを譲る気はないらしい。もうそこにしかアイデンティティーないもんな。


「だが違うぞ助手!」
「何が違うの? 私は結局、アンタのお手伝いさん的な存在何でしょ? ここらで私がいつまでも都合の良いやつだって認識改めさせてやるわ。下克上よ!」
「止めろ助手! 俺はお前の事をそんなに風に思ってなどいない!」


 必死こいて今更何を言うつもりなのか。フランさんの事もっと危機感煽った方がいいから、彼女には丸め込まれない事に期待しておこう。なんだかんだ言って所長の奴は口だけはうまいしな。そしてフランさんは結局の所、所長には甘いというね……そんな関係だから、ずっと付かず離れずのこの距離を維持してきたんだろうしな。


「じゃあ私の事、一体なんだと思ってるのよ? 幼馴染程度の印象でしょ? いつまでもいてやる必要性なんかそもそも無いのよ」
「それは困る! 本当にどうやって生きていけばいいんだ!」


 おい、何を堂々と言ってるんだこの人は? なんかめっちゃかっこ悪い事を堂々と言っちゃったよ。ここまで力強く宛てにされるってある意味で新しいな。だけど流石のフランさんもこんな口説き文句じゃ許さないよな?


「おっ、大人なんだからそこら辺はなんとかしなさいよ。私に一生頼る気なの?」
「悪いのか!」


 悪いわ!! って僕が叫びそうに成った。だって……ね。叫ぶだろそこは普通。だけどフランさんは叫ばないんだなコレが。逆にちょっと顔を赤らめて背ける始末だ。う〜ん、ああいう頼られ方が嬉しいのかな? 女って分からない。
 いや、フランさんが所長にお熱なだけなのかな。惚れたほうが負けっていうしな……普段は強気で要られてもいざって時はその弱みを握られてるほうが分が悪い。


「なんだかドキドキだね。でも所長さんは最低だね」
「確かに所長は最低だよな」
「フランはそれで良いのか?」


 僕達三人はそれぞれの言葉を二人に掛けるよ。だってね……このままじゃいつまでもこの二人はこの状況の様な……いや、発展はしてる感じだけど、このままじゃフランさんが割り食うことになりそうじゃん。
 一番頑張ってるのにそれは可哀想だし、上手いことハマればいいんだけど……でも相手がこの所長だからな。それに今の第四研究所の有様のままでもな……そもそもこの所長に花開く芽がるのかどうか僕にはまだ分からない。
 実力がハッキリと見えないんだよな。あのなんとか銃は凄かったけど、エネルギー重鎮に五分じゃ実用性が無くてガラクタ行きだよ。今回はたまたま役に立ったけど、即効性を持たせてくれないと駄目だなあれ。
 余計なお世話なんだろうけど、所長と一緒になって果たしてフランさんは幸せになれるのか……少々というか多大な不安があるよな。アギトみたいに愛に相応しい男になる! とか言うのならまだいいんだけど……マッドサイエンティストだからな。
 将来に不安しか無い。マッドサイエンティストの行き着く先って一体どこだよ……少なくとも希望に満ち溢れてたりしそうになくないだろうか?


「私は……このままでいいなんて思ってない。私はそろそろハッキリさせたいのよ」
「助手……」


 あやふやにされそうになりながらもなんとか持ち直したフランさん。うんうん、今このタイミングじゃないとね。今、二人の関係はきっと動いてる。フランさんは仮にも所長との別の道も見えてきてるし、その気に成れば実際二人はここまでかも知れない。
 別に二人を別々にしたいわけでもないけどさ、ここで頑張らないといけないのは所長なんだろうと思うんだ。所長は示さないと行けない。結果じゃなくてももしかしたら良いのかも知れないけど、可能性を見せないとだろう。
 その後にどう判断するのかは、フランさん次第だ。所長と歩むことを選ぶのか、一旦別れてしまうのか……それはどうしようもないよな。所長が本当にフランさんを……フランさんだから傍に置いておきたいって言うのなら……もう今までの様にただなんとなくって段階じゃない。
 はっきりさせたい……それはフランさんの切実な願いだろう。だけどそれは所長の気持ちなのか……それとも自分の気持ちなのか……それとも両方か……まあどちらにせよ、このまま行けば確実に二人に変化は起きそうな気はするからな。
 どこかではきっと答えは出るんじゃないだろうか? そう思ってると、所長は力を込めて噛んでた歯を広げてこういった。


「俺は……俺にも譲れんものがある!」
「それは私が都合の良い奴って事実の事?」


 そうだとしたらやっぱ最悪最低だな所長。僕達は全員で所長を見る。すると罰が悪そうに前方を向いた所長が何かブツブツ言いながら腕を振り上げる。


「…………それも違う!」


 発した言葉と同時に降り下ろされた腕。するとスピードに乗って走ってたロボットの勢いが急にガクンと落ちた。いったい何が? そう思って所長の方を注視すると、ウインドウっぽいのが出てる。


「何するの? オートなんだからわざわざ止めなくても会話出来るのに……」
「確かにな。だが、それじゃあ駄目なんだ。走ってると言葉も思いも後ろに流されて行くようじゃないか」
「だが、なるべく距離を取らないと、また変なのに追われる事になるぞ」


 リルフィンの奴が最後に釘を指すようにそう言った。確かに正論だな。動いてないと……というか、なるべく罠を張ってたであろう場所から遠ざかりたいからな。でないと、追いつかれる。
 あの爆発で僕達がこっちへの通路を突破したことは多分バレてるはずだ。それだと、もう既に追撃隊が出ててもおかしくはないからな。止まってたらあっという間に追いつかれるかもしれない。
 それなのにここで止まるのは……でもそこら辺は所長だってちゃんとわかってるようだ。


「心配するな。直ぐに終わらせる。助手よ」
「何? 今はこんな事やってる場合じゃないんでしょうけど……リーダーか所長の座でも明け渡す気になった?」


 あれ? 所長の座なんてそんなの会話に出てたっけ? リーダーはあったけどさ、第四研究所の所長の座なんて欲しかったのか? って感じだ。まあそもそもリーダーって称号も別に欲しそうじゃないけど、この状況だと所長よりも適任って感じだからそんな話しが持ち上がったわけだよな。
 でも所長はね……しかも第四研究所の所長ってマッドサイエンティストって称号も継ぐんだろ? 正直いらない……かな。だけどそんな万人はいらないと思うような称号も所長にとっては大切な物らしい。
 ハッキリとこう言ったからな。


「それは出来ないな。お前にその責任を負わせることなど俺には出来ない。お前に頼ってばかりの俺だからこそ、全ての責を負うしかない! そうだろ! だからお前には何も譲れん助手! 
 これは俺が背負わないと行けないことだから……お前には俺は何も背負わせたくなど無い」
「––んん! アンタは本当に……ずるい」


 最後の声はかなり小さかったな。所長には聞こえてないかも。だけど今のはやられたかも知れない。実際フランさんの求めてた答えとは思えないんだけど、大切に思われてるって事は感じてしまったようだ。
 フランさんは赤く顔を染めながらこういう。


「分かったわよ。リーダーも所長もアンタでいい。しょうがないからもう少しは付き合ってあげる」
「すまんな助手。まあ見てろ、俺は必ず大成するぞ。それを間近で見せてやる」
「……ふふ、でもそんなに長くは待ってられないからね」
「問題ない」


 そう言って何故かこっちを見る所長。なんで「問題ない」の後にこっちに視線が来るんだよ? 絶対何か宛てにされてるよな? 魔鏡強啓最終項零を手に出来れば、そりゃあ大成に成るんだろうけど……危険な事は全部こっちに任せるつもりじゃないだろうな? 
 案外腑抜けだからなこのマッドサイエンティスト……ありえる。


「めでたしめでたしなのかな?」
「それはどうだか……」


 なんだかやっぱり誤魔化された感があるんだが、フランさんが納得した以上は僕達がどうこう口挟む事でもないよな。取り敢えず今言える事は––


「おいリーダー。結局今からどうするんだよ? 責任負うんだろ? ぜひ良いアイデアを頼む」


 ––これしかない。だって状況は案外切迫してるぞ。内部の地図も更新できなくなって、このロボット達はオフライン状況下だ。手元に残ってるのは改竄された地図だけ。これじゃあ使い物にならないからな。
 表記が違うとかなんとかいってただけだから、もしかしたら構図は使えるのかもしれないけど……向こうから改竄出来る事実が分かった以上、このロボットに更新された地図に頼るのは危険だ。
 だから僕達はこれからこの全く内部構造が分からない建物内を散策して出口を目指すことに……絶望的だろ。何か突破口が必要だ。リーダーとしてそこら辺の事を所長には期待したい。
 まあ多分フランさんに丸投げするんだろうけどな。


「助手!」
「はいはい」


 マジで速攻で投げやがったよ。ある意味清々しいな! 自分には出来そうもない事は出来そうな奴に投げる。出来そうで出来ない事だよな。それこそリーダーとかトップを張りたがるような奴はプライドも高いだろうし、所長だってそれには漏れないのに変な所で割り切ってるよな。
 そしてそんな投げられたフランさんは指輪から地図やらを表示させて思案顔。


「取り敢えず、ここから一旦離れましょう。それにこの地図と照合しながら走れば、この地図がまだ使えるかどうかも判断できるわ」
「確かにそうかもだけど……どこを目指すんだ?」
「そうね……どうにかして脱出したい所だけど……きっとこの地図に記されてる脱出ルートは全てダミーかも知れないわよね」


 確かにその可能性は大きいな。でも窓からドパンと飛び出すって手も無いわけじゃ……


「あんた今までこの建物内で窓なんて見た? どうしてこんなに薄暗いのかわかるでしょ」
「ああ、そういえばそうだな」


 確かに考えてみれば窓なんて一度も見てないな。それにこの薄暗さは外光がないからか。窓からドッパンってのは無理なのね。それなら壁をぶち破るってのはどうだろう? イクシード3なら出来ないことも無いだろう。


「今のアンタじゃそれは使えないでしょう。それともクリエちゃんにそんな事させる気?」
「クリエ頑張れるよ! イクシードも使えたんだもん! 3だって!」
「止めたほうがいいな。アレは普段使ってる物とは匂いが違う。そうだろうスオウ?」


 匂いって……リルフィンの奴が何を嗅いで感じたのか知らないが、確かに普通のイクシードと3は違うな。単純にイクシードの派生系ってわけでもないのかも。それに肉体へのダメージもデカイからな。その負担をクリエに負わせるのは酷かも知れない。
 でも今は、イクシード3以上の火力があるか? まあ僕とクリエが元に戻ればその問題も解決できるはずだけど……


「そうなんだが……なあフランさん。やっぱりここはあの研究者を追うべきじゃないか? 脱出も協力者が居たほうが良いし」
「それはその人が協力者に成ってくれたらの話でしょ?」
「それはそうだけど……」


 だけど今のままじゃ追い詰められるだけの様な……確かにあの研究者がこちら側に付く保証はないけどさ……完全につかないとも言えなくないか? そう思ってると止まってたロボット達が再び動き出す。
 一体どこを目指してるのか分からないけど、地図と照合するための移動かな? そこまでスピードも出してないしね。


「取り敢えずそうね、手がないわけじゃないと思う」
「よし、それで行くぞ助手」


 まだ何もいってない。それなのに乗るの早過ぎだろ所長は。取り敢えずその手ってのを聞いてからじゃないとな。するとフランさんは僕の胸元にいつまでも食いついてる目玉を見やる。


「そいつよ」
「この変態をどうするんだ? 折檻か?」
『嬢ちゃん、それは自分にとってはご褒美やで』


 この目玉、とうとうMに目覚めたことを堂々と言いやがったぞ。もう取り返しつかないな。


「折檻とかじゃなくて、その目玉がこのロボット達のセキュリティを抜いてくれたから私たちは内部に侵入してこのロボット達のシステムを掌握出来た。それならこの建物の大物のシステムだって同じようにできない? ってことよ」
「なるほど、この建物事態を掌握しようって事か……」


 確かにそれが出来るのなら一番いいな。この建物、構造をランダムに入れ替えてるようだけど、それもきっとシステム側の処理だろ。それなら大元を抑えれば、こっちに都合がいい様に作り替えれるのかもしれない。
 そうなら出口に繋がる一本道に作り替えれば、誰にも邪魔されずにこの第一研究所からの脱出が可能になるな。いい方法かも。


「おいインテグ」
『駄目やな。それは却下や』
「何でだよ!」


 この目玉ここに来てワガママ言うとは、やっぱ折檻してやるか? だけどご褒美じゃ効果がないか。


「どうしたの?」
「なんかこの目玉、それは駄目だって……」
「どうして?」
「それは……」


 僕は取り敢えず目玉だから目潰しをすることに。一番効果的じゃね? するとフワフワと離れていき、こう言ってきた。


『やめいや! ホント嬢ちゃんはえげつないで。九割方お目目の自分に目潰しとか畜生やな』
「そこまで言うか?」
『ふん、まあ理由は簡単や。自分はここのネットワーク上に接続などしたくないからや。このロボット達には直にアクセス出来たんやけど、この建物の大元にアクセスするってなると、その場所に行くかネットワーク上からって事になるやろ。
 実際、この建物を制御してる基幹の場所はわかってないんや。それならネットにもぐるしかなくなる。だからそれは嫌や』


 ワガママな目玉だな。良いからさっさとチャンネル開けよ。このままじゃ僕達はどこにも進めないんだぞ。


『駄目や。それだけは出来ん。自分の中のデータだけは知られるわけにはいかんのや』
「それって……」


 ここのネットワークに接続するとそのリスクが起きるって事か。でもただアクセスするだけでそこまで公開されるものじゃないだろう。


『今は非常事態やで。きっと多攻撃型のえげつないソフトウェアでも走らせとる筈や。そんな所にアクセスしたら一気にウイルスガボガボやで!』
「なるほどな……確かにそれは困る」
「どうしたの? なんて言ってるのよ?」


 僕は目玉が言ったことをフランさん達に伝える。この理由なら確かにしょうがないと諦めるしか……目玉の情報は特別だからな。僕達にとってもそして向こうにとってもだ。こいつのデータの存在が知られれば、血眼変えてきっと追いかけてくる。それは困る。
 でも、このままじゃどっちみち詰みそうな雰囲気なんだよな。


「確かに目玉のデータを知られるのは不味いわね。だけどこのままじゃ……場所がわからないって検討もつかないの?」
「どうなんだ目玉?」
『そうやな〜諸説ある。だが自分等もわかってる通り、ここは構造変化するさかい。迷宮みたいなもんや。それにそもそも構造変化の際に出てきてるのかさえ分からへん。捜索は何回も行われてるんやけどな。たどり着いた者はおらんのや』


 確かにこの構造変化はそこらの迷宮よりも厄介そうだよな。だけど一回変われば外からの訪問者が無い限り変わらないのなら、出さえしなければその内辿り着きそうな……そうでもないのか。
 取り敢えず今この状況で見つけるのは絶望的って事は確かなんだろう。


「取り敢えずはこの地図を宛てにするしか無いわ。表記が違うだけで内部の道順は間違ってない様だし、惑わされなければいいだけよ」
「だけどそれも問題あるよな? もしも、もう一度構造変化が起きたら––––っ!?」


 するといきなり床や天井や壁が波の様にうねり出す。これはまさか!!


「構造変化!?」
「このタイミングでか!!」


 フランさんの声に所長が続いた。そしてクリエの悲鳴が響く。うねりと混沌を持ってパズルの様に離されてく内部のパーツ。これって最初に僕達が落ちた時と一緒じゃ? 


『おかしいで! 構造変化なんか内部に居たら気付けへんもんなんや。それなのにこれはおかしい!』
「そうなのか? だけど最初もこんな感じに––イツッ!?」


 バチッと手に走る電流みたいな感覚に襲われた。そしてそのせいでしがみついてた自分の体から手を離してしまう。


「ああ! スオウ!」


 クリエが手を延ばすけど、僕達は再び繋がる事は出来なかった。何故なら皆は落ちていくのに僕の周りだけ、何故かバチバチと放電が繰り返されて、それが変な領域を作ってたからだ。


『嬢ちゃんの力と錬金の力が衝突してるんかも知れん! なんとかしいや! このままじゃどうなるか分からへんで!』
「んな事言ったって……」


 僕はクリエの力を使う術なんて知らないんだよ! 周囲のスパークは激しさを増していく。それはまるで錬金が僕……というかクリエの力を拒絶して排出したがってるような……視界が真っ白に染まってく。そして目を閉じた瞬間、ボテッと僕の尻が床に落ちた感覚がした。
 なんだか周囲から喧騒の音が聞こえる。それに体に温かい何かがあたってるような……目を開けると今まで薄暗い中に居たからその光に思わずもう一度目をとじる。少ししてもう一度目を開くと、今度はハッキリと見えた。
 澄んだ青空、聳え立つ建物。そして自身を暖かく照らす太陽。間違いない……ここは第一研究所の外だ。

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