命改変プログラム

ファーストなサイコロ

背中で語る

 都会の中で癒しを与える様に緑を多く配してる病院の敷地内に車はゆっくりと進入する。エンジン音を静かに鳴らし、滑る様に駐車場へと向かう折、俺はふと思った。


(なんか人気がない? いや、希薄みたいな?)


 都内でも有数の大病院で最新鋭の設備に優秀な医者が揃ってる筈の場所だぞ。何回か来ただけだけどさ、いつだって駐車場はチラッと見ただけでも溢れかえってて、この駐車場に続く道だって渋滞気味だった記憶がある。
 それなのに今はどうだ? なんだかまるで自分達の専用レーンを走ってるかのようにススーと進めてるぞ。おかしいだろ。これじゃあまるで営業してないみたい……何の苦もなく進んだ車はガラ〜〜ンとした駐車場にポツンと止まった。


 車のドアを俺たちはそれぞれ開いて強烈な日差しと絶え間なく響くセミの声が押し寄せる外界にその身を晒す。外に出てみると更に実感するな……人のいなさをさ。別に車がそんな止まってなくても、歩道の方にまだ人が居ればいいんだが、今日はそれも居ないからな。
 ちょっと前にこの病院からスオウ達を強制的に連れ出した時は、あんな朝早くだったのに人が一杯だった。勿論野次馬的連中も一杯だったろうけど、病院を利用してる人達だって沢山居たからあんな騒ぎに成ってたはずだろう。それなのにこの閑散とした感じは何なんだ?


 まさか閉まってたり? でも遠くに見える建物の窓には人影とかは見える気はする。てかそれは当然か。外来を受け入れてないだけなのかも。そもそもこれだけの規模の大病院だからな……入院してる患者を移動させるなんて簡単に出来る訳ないもんな。
 どう考えても誰も居ない訳じゃない––って事だよな。それならまあ安心か。


「空いてそうで良かったわね」


 最後に鍵を閉めて出てきた天道さんが脳天気にそう言った。空いてそうって、空き過ぎなのが異常なんだがな。まあ人がごった返してないのはいいけどな。あんまり忙しく無いのなら、色々と聴きやすい。
 大体病院って大変そうなイメージあるから個人的な事を聞いて回るとか気が引けそうじゃん。なんてたって命を扱う職場だからな。変に邪魔しちゃいけないって思考が働いたりする。
 だがこれだけガラガラならいつもよりも暇を持て余してそうだから、踏み込みやすいと思うんだ。てな訳で俺は天堂さんのその言葉にこう返す。


「そうっすね。向こうにも余裕がある方が色々と聞けそうですからね」
「余裕ね。実際あるのかなって感じじゃない?」
「どういう事だよ日鞠? このガラガラ感だぞ?」


 俺は手を広げて周りの広大な駐車スペースの空きっぷりをアピールして見せた。縦横無尽に走るくらい訳ないぞ。まあ流石にそんな事はしないが、一目見れば分かることだろ。まじでこれでいつも以上に大変とか––んなバカな。ないない。
 だけど日鞠の奴は意味深で重大そうに声のトーンを落としてこういう。


「確かにガラガラね。でもね秋徒、いつもと違う…それには理由があるって思うのが普通でしょ? そしてその理由がこの状況を招く物だとしたら、病院関係者はてんてこ舞いな状況ってのもあり得なくはないと思わない?」
「……そういう物か?」


 俺にはいまいちピンと来ないがな。でもまあ営業できないことが起きてるってことなのかもって事だよな? 確かにあり得なくはないのかも。なんせここ調査委員会が強制的に乗り込んで匿ってた患者を連れ去った後、営業してたみたいだしな。
 あんな異常事態があったら、普通はその日くらいは混乱を納める為にも休んだりする物だろ? それなのに午後くらいには通常営業に戻ってたみたいだからな……恐ろしい。マスコミとか煩わしいだろうによくやったよ。
 でもだからこそ、あの前例があるのに、今はこの状態ってのが––って事なんだよな。確かに今更休むか? って気もするよな。定休日位あってもいいけどさ、救急もやってるここは24時間態勢だろう。ガラッガラってのはおかしいよな。
 それに普通にここまで入れたってことはだ……外来は休みかも知れないけど、それ以外には開放してるかもしれないって事だよな? それならここには入院患者も多数居るわけで、その人達のお見舞いとかがやっぱり居なければおかしい。少なくともここまでガラッガラってのはないわな。
 なんか日鞠の奴が変な事を言うせいで不安になってきたじゃないか。一体何がこの病院で起きてるって言うんだ。青空の下に堂々と建ってる赤十字を掲げた立派な建物が、いきなり魔の冷気を放つ魔宮に見え出したぞ。


「どんな事が起きてるか……可能性くらいわかってるんだろ?」
「う〜ん、そうだね〜」


 なんだその言い方? 別に勿体付ける事でもないだろうに。それともやっぱりただなんとなく言ってみただけか? まあだが、行けば分かることだろう。中に入れば嫌でも状況はきっと分かる。俺は日鞠の言葉を待つこと無く歩き出す。


「あれれ? 秋徒聞かなくていいの?」
「別に良いだろ。答えは直ぐそこにある。それに無駄に話してる時間も勿体ないしな」
「それもそうだね」


 そう言って日鞠の奴も付いてくる。そして天道さんも……だけど何故かメカブの奴だけがその場で止まってる。どうしたんだ? まさか今更自分の恥ずかしい格好に気付いた……とか? それか流石に病院という潔白のイメージがある場所には相応しくないと思ったとか? どっちも無さそうだな。
 まず俺達とは価値観がズレてるからな。自分を否定しないあいつがそんな殊勝な考えに至るわけ無い。寧ろ「人間に合わせる必要がどこにあるの?」って位普通に言うだろ。そんな奴がなんで糞熱い中、一人立ち止まってるんだ?


「どうしたのメカブ? 大丈夫恥ずかしくないよ?」
「う……ん?」


 日鞠の言葉に違和感を覚えたメカブは首を傾げた。今の言葉の悪意に気付いたか。でも流石に気付くよな? てか、日鞠の奴さり気に何いってんだよ。余りにもナチュラル過ぎて、俺も一瞬スルーしたが、脳がいきなりその部分を引っ張りあげてきたぞ。
「恥ずかしくない」って、日鞠的には「恥ずかしい」って感覚が出ちゃってるから口に出る言葉だろ。まあメカブのあの格好を恥ずかしいかはともかく、「派手」とは大抵の人は捉えると思うけどな。それか痛い……とか痛々しい……とか見てられないとか? 


「なんだか凄く残念そうな視線を感じるんだけど……」


 俺はバッと視線を逸らして鳴ってないのに口笛を吹くような動作で白をきることに。アホな癖に、妙に勘が鋭い時あるよなアイツ。まあ女って生き物が共通してそう言う所が有るような気がしないでもないけどな。


「てか今の発言は何よ日鞠? 私のどこに恥ずかしい要素があるのよ? そもそも人間風情に理解されなくても問題ないし」
(あ、やっぱ言ったな)


 自分の予想してた言葉が聞こえたぞ。やっぱ分かりやすい思考してるな。メカブの奴は他人に理解されにくそうな印象を与えるが、それって大体第一印象でしか無いんだよな。付き合っていくと案外早く、こいつの単純さがわかっていくというか……大体インフィニットアートって奴を持ち出したいと考えとけばオーケーだ。
 無駄にその設定を絡めたいらしいから、ある意味で単純なんだよな。とにかくそこにメカブの思考は帰結すると思っとけば、なんとなくだけど受け入れれる部分は広がるだろう。優しい目できっと見れる様になると思う。呆れた目でもあるかもしれないけどな。俺の場合は後者だ。
 すると日鞠の奴は、メカブのその言葉に優しい目をしてこう返す。


「そうだね。メカブには恥ずかしい所なんか無いね。私はそれでいいよ」


 そりゃあ俺達はいいけどな……もうメカブの事はこういう奴だと納得してる……と言うか諦めてるしな。だけどつい数十分前にあったばかりの天道さんは実際余りメカブには関わろうとしてないからな、これが世間一般の通常の反応なんだよ。それに気付け。無理だろうけどさ。
 メカブの奴は特殊であろうと自らしてるからな。はっきり言えば気づいちゃいるけど、それがそもそもの目的なんだから、直す必要なんてメカブには無いんだよな。ただそれだけだろう。


「なんか含みのある言い方ね。しょうがないからここらではっきりさせておいたほうがいいのかな? 日鞠も秋徒も勘違いしてるようだし」
「「勘違い?」」


 俺と日鞠の声が重なった。勘違いって一体何を? 勘違いも何も、メカブがどういう奴かってのは俺たち共通してると思うんだが……


「本当はこの問題が終わってからでもいいかな〜って思ってんだけど、二人共ちょっとインフィニットアートに対する理解が出来てないようだからしょうがないわ」
「またそれか……」


 正直聞き飽きたんですけど。理解できなくて当然だろう。そんなものはこの世界には無いんだからな。LROならまだしも、リアルにはそんな夢の力なんてないんだよ。本当はわかってるだろう……お前だって。
 俺は目でそう訴える。だけどやっぱ届くわけはないよな。


「またそれって何よ? これはね世界の真実に繋がる事よ!」
「真実ねぇ……」


 あんまり興味ないな。真実よりも今が大事だしな。それに別に真実知らなくても生きていけてるし……真実なんてのは別に舞台裏でもいいんだよ。それでこの世界は問題なく回ってるんだからな。
 真実が必要になる時は、きっと世界がやばくなった時だけ。その時に生きてる奴に任せよう。別に今無理に知る必要ないと思うんだ。もしも無理に真実って奴に触れて、それこそ世界のバランスが崩れたりしたら大変だろう。
 触らぬ神に祟りなしって言うしな。でも既にメカブの奴は尊大にその大きな胸を反らして、私のお言葉をありがたく受け取りなさいのポーズしてるから……面倒。すると日鞠の奴が一歩を踏んでメカブに声を掛ける。


「メカブ、私達はインフィニットアートを別に否定なんかしてないよ。でもね、考えてみてよ。そういうのは喚いて信じて貰えるってものじゃないと思う。インフィニットアートを知らしめる事に必要なのは行動だけだよ。
 タンちゃんはそれをきっとわかってる。そんな気がするな。メカブはどうなの? 声を大にして届いたことが有る? 色んな説明だけをしたってピンとは来ないんだよね。だから今のメカブに必要なのは言葉じゃなくて行動じゃないかな?
 誰かよりも優れた人ってのは男女問わず背中で語るって思うんだよね」
「背中で……」


 そう呟いてメカブは自分の背中に目を向ける。日鞠の言葉は中々俺的には納得いったけど、それは俺がこいつの背中を見てたからだよな。実際メカブにそれが出来るとは思えないし……まあ日鞠の奴もそんなの期待してないと思うんだが。
 ただ単にこの話しをこれ以上させないためだろう。マジでインフィニットアートとか別にどうでもいいからな。だけどタンちゃんが口で多くを語らなくて、その行動で示してるってのは分かる。
 メカブの奴は口を開いて二言目にはインフィニットアートを持ち出すが、タンちゃんはそうじゃないからな。自分の実力でそれを証明しようとしてるって訳か。どうりで中々格好いい奴な訳だ。まああの安っぽい仮面はダサいけど……でもメカブよりはよっぽどインフィニットアートって奴を考えてそうだよな。
 いくら叫んでも、実際それを理解できる奴も、しようとする奴も居ないだろ。妄言なんだからな。特にメカブが言うレベルじゃ、中二病を発病した女子の戯言以上でも以下でもない。
 背中で語れなんて少年漫画的な主役か主人公の最大のライバルにしか出来なさそうなことまでは求めないが、もっと行動で示すべきとは思うな。そこは同意だ。メカブはインフィニットアートは凄いんだ! って事しか言わないからな。
 それって「このツボはとってもお買い得ですよ」って言ってくる詐欺業者となんら変わらない。だけどよくわかってなくてアホなメカブはこう言って来る。


「私の背中って既に語ってない?」
「アホさは物語ってるかもな」


 後ろ姿見ただけで「あっ、この人には関わらないでおこう」って思うくらいに語ってると思う。


「何よそれ? じゃあ背中で語るって何? 言ってみて」
「俺にそれを聞くか?」


 接近してきてギロリと睨んでくるメカブ。まったく、なんで背中で語ることを語らないと行けないんだよ。矛盾してるだろ。言葉で説明するなってことなのに、説明を求める時点で間違ってるって気付いてほしい。
 だけどそうだな……このまま睨まれ続けるのは嫌だからとりあえず日鞠の名前を言ってみた。


「日鞠背中見せて」
「うん。私はまだ背中で語るとか無いと思うけど……」


 謙遜か! お前学校中の生徒だけじゃなく教師だって従えてるだろ。それだけで数百人をその背中で引っ張ってきてるってことだぞ。そこらの学校の生徒会長とは訳がちがうだろう。
 めっちゃ語ってる筈……


「う〜ん、日鞠って無駄な脂肪付いてないよね。でもこれじゃあただの女の子の背中の様な……肉付きに差はあるけど、ほら私胸あるし」
「どういう意味それ!?」


 自分の胸を下から持ち上げるようにしたメカブに突っ込む日鞠。まあ日鞠はペッタンコだからな。これで脂肪だけ無駄に至る所に付いてたら悲惨だろ。言ってやるなよ。


「秋徒のせいで胸をバカにされた!」
「ええ!?」
「そうよ。何もかも秋徒が悪い!」
「なんでそうなる!?」


 俺に恨みを向けるな。おかしいだろ。そもそも日鞠の胸が小さいのは俺のせいじゃないし、日鞠の背中がただの女子のそれに見えるのはメカブが全然こいつを知らないからだ。俺なら日鞠の背中が語る様を見て取れるっての。


「よし、じゃあ取り敢えず日鞠は背中をこっちに見せろ。胸はどうにも出来ないけど、俺ならメカブじゃ感じれない日鞠の背中の声が聞こえるんだ」
「それがアンタのインフィニットアートって訳ね。上等」
「だからそれを止めろっての」


 さっきからそういうのをなくせって言ってるのにこのアホはまるで理解しないな。どこに学習機能を置き忘れたんだ? 取り敢えず俺達が睨み合ってる間に、ぶつくさ言いながらも日鞠の奴が背中を向けてくれた。
 俺はその背中を見つめる。ジジーッと見つめる。ジジジーっと更に見つめる。いつもの三つ編みのおかげでうなじがハッキリ見えてるのがなんかエロいよな。てかなんかこんな華奢だったっけ? とも思う。
 なんか無駄に大きかった気もするが……よくよく考えたらこんな物だな。この病院の空になったスオウの病室で泣いてた日鞠と一緒なんだから当然だ。物理的に大きくなるとかないからな……いつもは頼もしくて、生き生きしてて、誰からも持ち上げられてるイメージが強いからきっとこの背中が通常の1.2倍程度には見えてたんだと思う。
 普通の空の下で冷静に成ってみると、確かにメカブが言ったとおりに華奢で守ってやりたく成るような背中だ。肩幅も狭いし、腕も足も同学年の女子よりも一回り細いかも。よくよく考えたら日鞠って決して体大きくないしな。
 てかそれを最近感じた筈なのに、なんでまた俺はこいつに頼りっきりに成ってるんだよ。日鞠だけに無茶させない為にここまで付き合ってるのに、殆ど役になんて立ててない。なんんか日鞠のデカさを実感する以前に、自分の小ささを知ってしまったかも知れない。


「どう? もういい?」
「ん? ああ」
「それでどうなの秋徒? 日鞠は背中で何を語ってたのよ?」
「それは……」


 なんて言うか……そもそも何も聞こえて来なかったしな。俺がずっと見てた日鞠の背中は、俺が自ら作り上げた偶像だったのかも知れない。本当は女子の中でも華奢な体の女の子なんだよな。
 まあスペック的にはこの体でなんでもこなせる化け物なんだが……俺も実際わかんなくなってきた。さてどうしたらこのメカブの期待を裏切らずに収めれるか……難題だな。


「そ––そうだ! まあ口で説明する物でもないし、感じれないんならもっと感じやすい人を見るべきだと思うんだ。日鞠は凄い奴だが、なんせまだ若いし、溢れ出る物ってのは感じにくいのかも。
 だからそうだな〜この場にラオウさんが居てくれれば完璧だったんだがな〜」
「なるほど。確かにラオウさんなら背中で語ってるかもね。ちょっとわかるかも」


 フムフムするメカブ。分かってくれたか。まああの人は背中というか、全身から物凄いオーラを放ってるからな。


「でも私あんなゴツく成る気無いな」
「お前、その台詞ラオウさんに殺されるぞ」
「ふん、天道さんじゃ駄目なの? こういう感じの方が私には合ってると思うんだけど」
「私!?」


 いきなり話に出させられてビックリする天道さん。合ってるって、実はこういう女性に憧れてるって事か? 無理じゃね? だけど否定しても面倒だしな。とにかく持ち上げとくか。


「まあ確かに天道さんも良いかもな。格好良いし、大人の女性の魅力あるって感じだし、地位もあるし、その背中は何かを語ってるかもな」
「でしょでしょ。まあちょっとは参考にしてもいいかも」
「はぁ……」


 何が何やら分からないが、いつの間にか認められた天道さん。良かったのか……な。別にいいよな。天道さんにはその資格があると思うよ。ガンバだ。


「よく分からないけど、早く行くわよ。当夜と摂理ちゃんの使ってた手文字が分かれば、私の記憶と照らしあわせてどういう意味の暗号なのか解けるかもしれないんだからね。いつまでもこんな暑い中グズグズはしてられないわ」
「そうですね……まあ、時間調整の意味もあったんですけど」


 そう言って日鞠の奴はずっと握るスマホに視線を落としてる。調整……まさかラオウさん側と動向を合わせようとしてたのか。無駄に話しを引っ張ったのもそのせいか。なるべく自然に会話を広げて、行動を遅らせた……実際良い事なのかは微妙だろうけどなそれ。
 でも日鞠的には足並みを揃えてやりたいんだろうな。こっちがジェスチャーコードを手に入れる時と、人質救出を同時にとか。それが理想的なんだろう。そうなればこっちの切り札であるジェスチャーコードの情報を向こうに渡すこともなくなるしな。
 だが今から手に入りそうなジェスチャーコードと、今から行動を始める人質救出では隔たりがありすぎるよな。じゃあ一体何を調整してるのか……


「そう言えば、どうしてメカブは病院に行くの躊躇ってたの?」
「え? ああ……それね」


 ん? そう言えば、最初の会話の始まりってそれだったな。こいつが何故か病院に行こうとしないからこんな日差しの強い中、俺達は立ち止まってたんだ。理由くらいは聞きたい。
 するとメカブの奴は左右の人差し指を胸の辺りでクルクル回しながらこういった。


「私考えたの……東京でも有数の大病院がガラガラ………これってやっぱり良くない事が起きてるからじゃないかって……」


 なんかセミの声とメカブの異様に落ちた声が変なアンバランスさで不気味さを演出してるな。太陽燦々なのに、眩しすぎて逆に白昼夢の様な錯覚に陥ると言うか……なんだ? こんな変な迫力が有るやつだったか?
 するとメカブは目を見開いて病院を指さしこういった。


「バイオハザード! それがあの病院で起きてるに違いない!!」


 その瞬間なんかやっぱ世界はいつも通りに見えた。だから俺たち三人は病院を指さしたままのメカブを放ったまま建物の方向へ歩き出す。まあ、なんだその……勝手に言ってろ。

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