命改変プログラム
千寿の瞳
『あんさんべっぴんさんやの〜、自分が後数十年若かったら入れたんやけどな〜。いや〜残念やわ〜。いやマジで』
「…………」
え? 何言ってんのこの目玉。てかなんで関西弁? つうかこの存在はなんぞや? しかも何幼女口説いてるんだよ。変態かこいつ。いや、見た目はまさに’変’態だけどね。これモンスターじゃねぇの?
「うわ〜うわ〜お目目が浮いてるよ! 浮いてるよ!」
『何やねん我? しっしあっちいきや。男になんか興味ないねん』
「うわ〜! うわ〜!」
なんかめっちゃテンション高く僕の姿をしたクリエは成ってるけど、スッゲー拒否られてるぞ。てか愛嬌も何もねえなこの目玉。
「なにその目玉? 気持ち悪い」
『ウッヒョーーー! 大人の女もいるやないけ! ガキのプリティ加減もええけど、やっぱ大人のボンキュボンも堪らんのう! ぐへへ』
「なんかこの目玉の瞳が不愉快なんだけど……」
「そうかな〜? 可愛いと思うけど?」
フランさんは敏感だな。クリエの奴は自分が拒否らてるのにまだ気付いてないけど……てか待てよ。
「二人共こいつの声聞こえてない?」
「ええ〜喋ってるのこのお目目? スオウだけズルい!」
「私達には何も聞こえないけど」
やっぱりか……このエロ目玉が喋ってること聞こえてたたら、こんな反応で済むはず無いよな。
『なんやなんや、嬢ちゃんにしか自分の声聞こえてへんのかいな? 超ショックやで。このダンディーな声聞こえへんて人生の大半損してるでぇ。なぁ嬢ちゃん?』
「しるか!」
頬ずりしてくる目玉をバシッと地面に叩きつける。何なんだこれ本当に? 多分錬金で作られた物で小人と同じような存在なんだろうけど……ビジュアルが猛烈に可愛くないな。性格も最悪だし……これは捨てられるわ。
『嬢ちゃん……なにすんねん……けど、嬢ちゃんみたいなお子様には自分のダンディーっぷりを理解するのは無理やんな。メンゴメンゴ』
こいつは一体いつの時代をベースに生み出されたんだ? メンゴなんて今時だれも言わないぞ。
「よし、何も見なかったことにして行こう!」
『ちょっ!? 嬢ちゃんそれは幾らなんでもごむたいや! 堪忍や堪忍! もう舐めまわしたいとか考えへんから!』
取り敢えずその言葉を吐いた瞬間に僕は地面からこっちを見上げてた目玉を容赦なく踏みつけてやった。舐め回したいって……さっきは大人の女最高! とかほざいてた癖に、どこまで守備範囲広いんだよ。
てか一応人が作ったんだからフランさんに欲情するのはまあ分かる。普通だろう。だけど何でモブリのクリエにまで欲情するんだよ。僕から見たらモブリ達とかマスコット以外のなんでもないぞ。欲情とかあり得ないんだけど……人が作ったからってその感性を受け継いでるって訳じゃないって事か? まあ目玉だしな。
「駄目〜! スオウのバカ! お目目さんが可哀想だよ!」
「クリエ……」
『けっ、どこぞの馬の骨がご褒美を邪魔しなさんな!』
よし、やっぱ今直ぐその目玉離せクリエ。おもいっきり今度は蹴り飛ばす。ご褒美って……今ご褒美ってそいつ言いやがった。ハッキリ言ってかなり引いた。なんかゾワゾワしたって言うか……身の危険を感じた時って女子はこんな感じに反応するんだなって思った。そしてこれが変態に対する普通の反応なんだと知ったよ。
嫌悪感って奴が沸々と沸き立ってる。
「おい子供になってるスオウ。そいつ喋ってるのなら、そいつに聞けば良いんじゃないか? 戻り方」
「ああ!」
目玉だからそんな思考に成らなかったけど、よく考えて見ればそうだな。こいつはさっきの奴の発明品かなんだろう。そしたら僕達よりも生み出した奴の事を知ってるはずだ!
「おい目玉」
『もっぺん踏んでくれるんかいな?』
こいつどうしようもない変態だな。どうしてこんな変態なんだ? 作る時に性格の設定とか間違ったのだろうか? それともこれを望んで作ったとか? でも捨てられてるんだよな。それを考えると、やっぱり失敗したんだろう。
それはこの性格なのか、それとも能力的な事なのか……僕はちょっと考えてニヤッと心の中で悪く笑う。
「うん、もっぺん踏んであげるから僕の質問に答えてよ」
『よっしゃあああ! バチコオオオオオオイ!』
気合入りすぎだろ。ちょっと可愛さを強調して言ってみただけでこれだよ。男ってほんと単純だな。女子がバカにするのも分かる気がする。まあ使えるのは愛らしい容姿を持つ奴か、綺麗な奴に限るけどね。
ようは予め天に与えられる物だけの特権て奴。モブリはどう作っても愛らしいから反則だけどね。
「じゃあまずはお前何?」
『自分か? 自分はインフラストラクチャ•テグメントのインテグちゃんじゃ。覚えとき』
インフラストラクチャ•テグメント? なんか聞いたことがある様なないような単語が組み合わさってるけど、どういう意味かまでは知らないな。そもそもリアルの意味が適合できるかも謎だしな。
「インテグは何出来るんだ?」
『なんか、さっきの甘い声とは違うのう。だけんどこれはこれでええもんやで! 自分はそうやな、こうみえても錬金の基本構築理論を生み出せるで!』
「ごめん、わからん」
魔法の仕組みも僕はわかってないんだよ。更に錬金までしるか。
「なんて言ってるの僕?」
「なんか錬金の基本構築理論を生み出せるとかなんとか……」
「へぇ〜この目玉にそんな事が? あれかしらね? 発明のアシストをする発明なのかもね」
なるほど、そういうことか。小難しい言葉を使うから分かりづらいんだ。でもなんだかあんまり大層な物じゃ無さそうだな。そもそも大層な物ならこんな所に捨てられる訳も無いけどさ。
そう思ってると、所長の奴が真剣に考えてこういった。
「だが助手よ、錬金の基本構築理論といえば魔鏡強啓の根本にも通じる筈の物じゃないか?
こいつはもしかしたら錬金という技術の全てを解明する為に生み出された物の可能性がある」
「そうなのか?」
『せやな。あんちゃんよう分かっとるやないか。まあそっちのべっぴんさんに言って欲しかったがの』
まさか所長のいうことが当たるなんて……でもそんな大層な物ならなんで捨てられてるんだよ。致命的な欠陥でも有るんじゃね? いや既に僕もそれを見つけてるか……この目玉の致命的欠陥はこのうざったい喋り方だろ。
まあ僕にしか聞こえてないみたいだけど……ん?
「思ったんだけどさインテグ」
『なんや嬢ちゃん? 抱かれたく成ったか?」
「死ね変態。そうじゃなくて、僕にしか聞こえないその声、どうやって他の奴に届けるんだ?」
重大な欠陥だよな。こいつ目玉だから外に向けて何も発信出来ない。目玉の親父の様に、口が無くても喋れるって訳じゃない。いくら大層な基本構築理論を生み出したり解明したり出来たとしても、それを伝える事が出来ないんじゃなんの意味もないじゃん。
パンドラの箱的に、どんな大層なものでも開けては行けません––って事か? 理論や知識を貯めておく為のデバイスなのかな?
「お前って……何なの?」
『偉大な偉大なインテグちゃんじゃ』
ご満悦そうにそういう目玉。気持ち悪いな。
『まあ真面目に返すんならな嬢ちゃん。別に喋れへんでも伝えることは出来るんやで。こうやっての』
すると目玉の目玉が光って文字を浮かび上がらせた。何が書いてあるのかは僕にはサッパリだ。
「ちょっとまって……これって……」
「まさか……いや、そんなバカな……」
なんだ? 所長とフランさんが戦々恐々としてるような。何が書いてあるんだろう。
「おい、なんなんだこれ?」
「これは……そうね……論文かな。魔鏡強啓や錬金に関しての事が記されてるわ。それに研究成果も……結構事細かに」
「こいつ等の錬金……研究の先……あの惨劇をまた繰り返す気か?」
惨劇? だから何が書かれてるんだよ? 二人だけでごちゃごちゃ言っててもこっちは何も把握できない。
「言わないわ」
「なんでだよ?」
「だってまだ確定情報じゃない。確かにこれを読む限り、第一研究所は危ない方向に向かってるのかも知れない。それこそこっちのマッドサイエンティストなんて笑いものに成る位の方向に向かってる」
「いや、既に笑い者だろ」
所長の事誰が本気でマッドサイエンティストなんかと思ってるよ。自称でしか無いじゃん。だけど第一の奴等がそっちに向かってるのってのはやばそうだよな。なんせ実力は折り紙付きなんだろ? そいつ等が一度危ない方向に向いたら、誰が止められるよ。
それこそ昔実証しただろう。変な装置を作って三種の神器を刺激して、この街諸共消し去ろうとしてた……流石に街全体が消え去るなんて想定してなかったんだろうけど、それを起こし得るのが第一の奴等なんだろう。
所長は大層な事を言ってても、結局はそれ以下しか起こせなさそうだから安心だけどさ、第一の連中は違うんだ。
「ふん、これくらいでマッドサイエンティストという称号を奪おうなどとは片腹痛いな。マッドサイエンティストの真似事はやめたほうが良いと奴等に分からせてやるべきの様だ」
自分のお株が奪われそうだから焦ってるのだろうか? けど実際、何が書いてあるのかは僕にはわからないから、何も言えないな。取り敢えずやばそうな研究でもしてるんだろうって事は想像付く。
そう思ってると、目玉が光を納めて元の状態に戻った。
『どや、自分凄いやろ!』
なんだか得意気にそう言ってる目玉の上部をガシっと僕は小さなクリエの手で掴む。
『ん?』
「貴様が知ってること、洗いざらい吐いてもらおうか?」
『ちょ……嬢ちゃん、確かに自分Mやけど、あんま激しいのは勘弁っつうか……な』
冷や汗を垂らしてる目玉に向けて僕は空いてる方の手の指を一本立てて見せる。
「やっぱり目玉に一番効くのは目潰しだよね♪」
『今までで一番可愛い声でなんて物騒な事を言う嬢ちゃんや! あかん自分ドMになりそうや!!』
脅したはずなのに、ハァハァと興奮しだす目玉。こいつホントどうしようもない変態だな。そんなにお望みなら––
「えい!」
『ぬあ!?』
「えや!」
『むっほ!』
「まだまだ!」
『うおおおおおおお! 止めんといてえええええええええ!』
完全に何かが目覚めてる。僕の体に入ってるクリエの奴が「やめたげて!」とか言ってきたけど、僕が言葉を返す前にこの目玉が僕にしか聞こえない声で「駄馬が! 引っ込んでろや!!」って叫んでたからな。
僕に厳しいなこいつ。まあ聞こえてないから、クリエの奴が傷付くことはないからいいけどね。考えれば、今は僕がクリエで良かったって事だよな。純粋なクリエにだけこの目玉の声が聞こえてたのかの思うと、寒気が走る。
この目玉の言ってることの半分もきっとクリエはわからないだろうし、下手したら丸め込まれてどんな事させられてたか……生粋の変態だからな。
「大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫、よくみろよ。すっごく気持ちよそうな表情してるだろ?」
「う〜〜〜〜〜ん、そうかな?」
僕の手のひらで恍惚の表情してるのに、まだクリエにはわからないかな。
「ほら、さっさとお前の知ってることを全部言え」
『はは……末恐ろしい嬢ちゃんやで。分かっとる。男に二言はないでぇ。けどや、自分の中のデータは膨大やで。嬢ちゃん達がここで何やっとるか知らんけど、そんな余裕有るんかいな?』
「それは……」
確かに考えたらそんな余裕ないな。それにこいつも一緒に外に連れ出せば良いだけだし、今は必要な情報だけを聞くか。
「よし、取り敢えず心を入れ替える蛇みたいなアイテムあるだろ。あれと同じの無いのか? もしくはそのアイテムの効果を無効化する奴とかさ」
『ふむふむ、【想心双頭の蛇】の事やな。ってつまりは嬢ちゃんまさか中身違うんかいな?』
今更か。本当に今更か––だ。子供の口調じゃないだろ。気付けよ。
『どうりで自分の要求を完璧に熟すと……子供にしちゃレベルが高いと思っとったわ』
そこかよ。この目玉は変態プレイの体性で子供か大人か判断しようとしてるんかい。だけどこれで僕が男だと分かったんだから、大人しく成るだろ。
『なんでや! なんで男やったら入れ替わった女の股をまさぐらんのや!』
「ふん!!」
近くにあったガラクタを手に取り、スパーンと思いっきり殴り飛ばしてやった。あんの目玉野郎、言っていいことと悪いことがあるって分からんのか。しかもこんな子供の体に何しようとしてるんだよ。
あの目玉は情報抜き取ったら粉々に消滅させるのが世のためだな。あんなのが存在してたら駄目だろ。そう決意をして目玉が飛んでった方を見ると、カンカンカンとバウンドする音がまだ聞こえてた。
そして最後に何故かボガン! という一層激しい音も聞こえた。
「なんか燃えてない?」
「「燃えてるな」」
フランさんのその言葉に所長とリルフィンの奴が同意する。確かに何かメラメラとオレンジ色の光が見えるし、それにちょっと焦げ臭い匂いもするような。僕達はその場に駆けつける。
するとそこには筒状のロボットみたいなのに、目玉の奴がめり込んでそこから炎と黒い煙が出てた。あちゃーだな。これは流石に目玉も無事でないかも。折角の貴重な情報が……そう思うんだけど、何故か顔は笑っちゃう。いい気味だと思ってしまう。
ある意味天罰じゃねこれ? 幼女の体をイヤラシイ目で見てた罰だろ。まあ取り敢えず引っこ抜くけどね。ボシュっと目玉の奴を機械から取り出す。
『ふへへへへへ、中身なんて知らん。外見が女なら全てがご褒美やで……』
かなりのダメージを食らった筈なのに、救出してやった目玉はそんな事を言ってた。筋金入りの変態だよ。それにいつの間にか僕と言う中身よりもクリエという外見を優先する事にしたようだ。半端ない奴。
本当ならもう一度投げ飛ばすか踏みつけるかしたい所だけど、本当に壊れても困るからな……このロボットみたいに。そう思ってると倒れてるロボットの頭部から、なんか小人が一体出てきてそいつの頭には体ほどのサイレンが着いてた。
赤く光って回り始めるそれと共に、『ブーブーブー!』と言い出す小人。なんか可愛いな。
「なんだこれ?」
『これ警備ロボやからな。そいつ今仲間呼んどるで』
「何!?」
すると通路の先からだけじゃなく、天井とかから、今度は青いランプを掲げてる小人達がワラワラと湧いてきやがった。
「「「侵入者です〜。侵入者です〜。タイホータイホータイホー」」」
変態目玉のせいで僕達は窮地に立たされる。隠密行動が原則だったのに、完璧にバレた。しかも大量の小人達の後ろからドズンドズンと腹に響く音が近づいて来てた。そして気のせいか、気のせいだと思いたいけど、なんだか通路が広がってるような……再び第一研究所の空間に変化が起こりだしてる?
『奴等が来るで。はよ逃げや!』
「奴等って?」
『良いから逃げるんや!!』
今までの変態の面はどこへやら。その真剣な言葉に僕は自然と皆を促して通路を逆走しだす。自分の体に抱えられた僕は一人後ろを伺う。すると黒光りする中型の恐竜みたいなのが姿を表した。
そいつ等は僕達を見つけると気持ち悪い鳴き声を上げて、一斉に追いかけてきやがった。
「…………」
え? 何言ってんのこの目玉。てかなんで関西弁? つうかこの存在はなんぞや? しかも何幼女口説いてるんだよ。変態かこいつ。いや、見た目はまさに’変’態だけどね。これモンスターじゃねぇの?
「うわ〜うわ〜お目目が浮いてるよ! 浮いてるよ!」
『何やねん我? しっしあっちいきや。男になんか興味ないねん』
「うわ〜! うわ〜!」
なんかめっちゃテンション高く僕の姿をしたクリエは成ってるけど、スッゲー拒否られてるぞ。てか愛嬌も何もねえなこの目玉。
「なにその目玉? 気持ち悪い」
『ウッヒョーーー! 大人の女もいるやないけ! ガキのプリティ加減もええけど、やっぱ大人のボンキュボンも堪らんのう! ぐへへ』
「なんかこの目玉の瞳が不愉快なんだけど……」
「そうかな〜? 可愛いと思うけど?」
フランさんは敏感だな。クリエの奴は自分が拒否らてるのにまだ気付いてないけど……てか待てよ。
「二人共こいつの声聞こえてない?」
「ええ〜喋ってるのこのお目目? スオウだけズルい!」
「私達には何も聞こえないけど」
やっぱりか……このエロ目玉が喋ってること聞こえてたたら、こんな反応で済むはず無いよな。
『なんやなんや、嬢ちゃんにしか自分の声聞こえてへんのかいな? 超ショックやで。このダンディーな声聞こえへんて人生の大半損してるでぇ。なぁ嬢ちゃん?』
「しるか!」
頬ずりしてくる目玉をバシッと地面に叩きつける。何なんだこれ本当に? 多分錬金で作られた物で小人と同じような存在なんだろうけど……ビジュアルが猛烈に可愛くないな。性格も最悪だし……これは捨てられるわ。
『嬢ちゃん……なにすんねん……けど、嬢ちゃんみたいなお子様には自分のダンディーっぷりを理解するのは無理やんな。メンゴメンゴ』
こいつは一体いつの時代をベースに生み出されたんだ? メンゴなんて今時だれも言わないぞ。
「よし、何も見なかったことにして行こう!」
『ちょっ!? 嬢ちゃんそれは幾らなんでもごむたいや! 堪忍や堪忍! もう舐めまわしたいとか考えへんから!』
取り敢えずその言葉を吐いた瞬間に僕は地面からこっちを見上げてた目玉を容赦なく踏みつけてやった。舐め回したいって……さっきは大人の女最高! とかほざいてた癖に、どこまで守備範囲広いんだよ。
てか一応人が作ったんだからフランさんに欲情するのはまあ分かる。普通だろう。だけど何でモブリのクリエにまで欲情するんだよ。僕から見たらモブリ達とかマスコット以外のなんでもないぞ。欲情とかあり得ないんだけど……人が作ったからってその感性を受け継いでるって訳じゃないって事か? まあ目玉だしな。
「駄目〜! スオウのバカ! お目目さんが可哀想だよ!」
「クリエ……」
『けっ、どこぞの馬の骨がご褒美を邪魔しなさんな!』
よし、やっぱ今直ぐその目玉離せクリエ。おもいっきり今度は蹴り飛ばす。ご褒美って……今ご褒美ってそいつ言いやがった。ハッキリ言ってかなり引いた。なんかゾワゾワしたって言うか……身の危険を感じた時って女子はこんな感じに反応するんだなって思った。そしてこれが変態に対する普通の反応なんだと知ったよ。
嫌悪感って奴が沸々と沸き立ってる。
「おい子供になってるスオウ。そいつ喋ってるのなら、そいつに聞けば良いんじゃないか? 戻り方」
「ああ!」
目玉だからそんな思考に成らなかったけど、よく考えて見ればそうだな。こいつはさっきの奴の発明品かなんだろう。そしたら僕達よりも生み出した奴の事を知ってるはずだ!
「おい目玉」
『もっぺん踏んでくれるんかいな?』
こいつどうしようもない変態だな。どうしてこんな変態なんだ? 作る時に性格の設定とか間違ったのだろうか? それともこれを望んで作ったとか? でも捨てられてるんだよな。それを考えると、やっぱり失敗したんだろう。
それはこの性格なのか、それとも能力的な事なのか……僕はちょっと考えてニヤッと心の中で悪く笑う。
「うん、もっぺん踏んであげるから僕の質問に答えてよ」
『よっしゃあああ! バチコオオオオオオイ!』
気合入りすぎだろ。ちょっと可愛さを強調して言ってみただけでこれだよ。男ってほんと単純だな。女子がバカにするのも分かる気がする。まあ使えるのは愛らしい容姿を持つ奴か、綺麗な奴に限るけどね。
ようは予め天に与えられる物だけの特権て奴。モブリはどう作っても愛らしいから反則だけどね。
「じゃあまずはお前何?」
『自分か? 自分はインフラストラクチャ•テグメントのインテグちゃんじゃ。覚えとき』
インフラストラクチャ•テグメント? なんか聞いたことがある様なないような単語が組み合わさってるけど、どういう意味かまでは知らないな。そもそもリアルの意味が適合できるかも謎だしな。
「インテグは何出来るんだ?」
『なんか、さっきの甘い声とは違うのう。だけんどこれはこれでええもんやで! 自分はそうやな、こうみえても錬金の基本構築理論を生み出せるで!』
「ごめん、わからん」
魔法の仕組みも僕はわかってないんだよ。更に錬金までしるか。
「なんて言ってるの僕?」
「なんか錬金の基本構築理論を生み出せるとかなんとか……」
「へぇ〜この目玉にそんな事が? あれかしらね? 発明のアシストをする発明なのかもね」
なるほど、そういうことか。小難しい言葉を使うから分かりづらいんだ。でもなんだかあんまり大層な物じゃ無さそうだな。そもそも大層な物ならこんな所に捨てられる訳も無いけどさ。
そう思ってると、所長の奴が真剣に考えてこういった。
「だが助手よ、錬金の基本構築理論といえば魔鏡強啓の根本にも通じる筈の物じゃないか?
こいつはもしかしたら錬金という技術の全てを解明する為に生み出された物の可能性がある」
「そうなのか?」
『せやな。あんちゃんよう分かっとるやないか。まあそっちのべっぴんさんに言って欲しかったがの』
まさか所長のいうことが当たるなんて……でもそんな大層な物ならなんで捨てられてるんだよ。致命的な欠陥でも有るんじゃね? いや既に僕もそれを見つけてるか……この目玉の致命的欠陥はこのうざったい喋り方だろ。
まあ僕にしか聞こえてないみたいだけど……ん?
「思ったんだけどさインテグ」
『なんや嬢ちゃん? 抱かれたく成ったか?」
「死ね変態。そうじゃなくて、僕にしか聞こえないその声、どうやって他の奴に届けるんだ?」
重大な欠陥だよな。こいつ目玉だから外に向けて何も発信出来ない。目玉の親父の様に、口が無くても喋れるって訳じゃない。いくら大層な基本構築理論を生み出したり解明したり出来たとしても、それを伝える事が出来ないんじゃなんの意味もないじゃん。
パンドラの箱的に、どんな大層なものでも開けては行けません––って事か? 理論や知識を貯めておく為のデバイスなのかな?
「お前って……何なの?」
『偉大な偉大なインテグちゃんじゃ』
ご満悦そうにそういう目玉。気持ち悪いな。
『まあ真面目に返すんならな嬢ちゃん。別に喋れへんでも伝えることは出来るんやで。こうやっての』
すると目玉の目玉が光って文字を浮かび上がらせた。何が書いてあるのかは僕にはサッパリだ。
「ちょっとまって……これって……」
「まさか……いや、そんなバカな……」
なんだ? 所長とフランさんが戦々恐々としてるような。何が書いてあるんだろう。
「おい、なんなんだこれ?」
「これは……そうね……論文かな。魔鏡強啓や錬金に関しての事が記されてるわ。それに研究成果も……結構事細かに」
「こいつ等の錬金……研究の先……あの惨劇をまた繰り返す気か?」
惨劇? だから何が書かれてるんだよ? 二人だけでごちゃごちゃ言っててもこっちは何も把握できない。
「言わないわ」
「なんでだよ?」
「だってまだ確定情報じゃない。確かにこれを読む限り、第一研究所は危ない方向に向かってるのかも知れない。それこそこっちのマッドサイエンティストなんて笑いものに成る位の方向に向かってる」
「いや、既に笑い者だろ」
所長の事誰が本気でマッドサイエンティストなんかと思ってるよ。自称でしか無いじゃん。だけど第一の奴等がそっちに向かってるのってのはやばそうだよな。なんせ実力は折り紙付きなんだろ? そいつ等が一度危ない方向に向いたら、誰が止められるよ。
それこそ昔実証しただろう。変な装置を作って三種の神器を刺激して、この街諸共消し去ろうとしてた……流石に街全体が消え去るなんて想定してなかったんだろうけど、それを起こし得るのが第一の奴等なんだろう。
所長は大層な事を言ってても、結局はそれ以下しか起こせなさそうだから安心だけどさ、第一の連中は違うんだ。
「ふん、これくらいでマッドサイエンティストという称号を奪おうなどとは片腹痛いな。マッドサイエンティストの真似事はやめたほうが良いと奴等に分からせてやるべきの様だ」
自分のお株が奪われそうだから焦ってるのだろうか? けど実際、何が書いてあるのかは僕にはわからないから、何も言えないな。取り敢えずやばそうな研究でもしてるんだろうって事は想像付く。
そう思ってると、目玉が光を納めて元の状態に戻った。
『どや、自分凄いやろ!』
なんだか得意気にそう言ってる目玉の上部をガシっと僕は小さなクリエの手で掴む。
『ん?』
「貴様が知ってること、洗いざらい吐いてもらおうか?」
『ちょ……嬢ちゃん、確かに自分Mやけど、あんま激しいのは勘弁っつうか……な』
冷や汗を垂らしてる目玉に向けて僕は空いてる方の手の指を一本立てて見せる。
「やっぱり目玉に一番効くのは目潰しだよね♪」
『今までで一番可愛い声でなんて物騒な事を言う嬢ちゃんや! あかん自分ドMになりそうや!!』
脅したはずなのに、ハァハァと興奮しだす目玉。こいつホントどうしようもない変態だな。そんなにお望みなら––
「えい!」
『ぬあ!?』
「えや!」
『むっほ!』
「まだまだ!」
『うおおおおおおお! 止めんといてえええええええええ!』
完全に何かが目覚めてる。僕の体に入ってるクリエの奴が「やめたげて!」とか言ってきたけど、僕が言葉を返す前にこの目玉が僕にしか聞こえない声で「駄馬が! 引っ込んでろや!!」って叫んでたからな。
僕に厳しいなこいつ。まあ聞こえてないから、クリエの奴が傷付くことはないからいいけどね。考えれば、今は僕がクリエで良かったって事だよな。純粋なクリエにだけこの目玉の声が聞こえてたのかの思うと、寒気が走る。
この目玉の言ってることの半分もきっとクリエはわからないだろうし、下手したら丸め込まれてどんな事させられてたか……生粋の変態だからな。
「大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫、よくみろよ。すっごく気持ちよそうな表情してるだろ?」
「う〜〜〜〜〜ん、そうかな?」
僕の手のひらで恍惚の表情してるのに、まだクリエにはわからないかな。
「ほら、さっさとお前の知ってることを全部言え」
『はは……末恐ろしい嬢ちゃんやで。分かっとる。男に二言はないでぇ。けどや、自分の中のデータは膨大やで。嬢ちゃん達がここで何やっとるか知らんけど、そんな余裕有るんかいな?』
「それは……」
確かに考えたらそんな余裕ないな。それにこいつも一緒に外に連れ出せば良いだけだし、今は必要な情報だけを聞くか。
「よし、取り敢えず心を入れ替える蛇みたいなアイテムあるだろ。あれと同じの無いのか? もしくはそのアイテムの効果を無効化する奴とかさ」
『ふむふむ、【想心双頭の蛇】の事やな。ってつまりは嬢ちゃんまさか中身違うんかいな?』
今更か。本当に今更か––だ。子供の口調じゃないだろ。気付けよ。
『どうりで自分の要求を完璧に熟すと……子供にしちゃレベルが高いと思っとったわ』
そこかよ。この目玉は変態プレイの体性で子供か大人か判断しようとしてるんかい。だけどこれで僕が男だと分かったんだから、大人しく成るだろ。
『なんでや! なんで男やったら入れ替わった女の股をまさぐらんのや!』
「ふん!!」
近くにあったガラクタを手に取り、スパーンと思いっきり殴り飛ばしてやった。あんの目玉野郎、言っていいことと悪いことがあるって分からんのか。しかもこんな子供の体に何しようとしてるんだよ。
あの目玉は情報抜き取ったら粉々に消滅させるのが世のためだな。あんなのが存在してたら駄目だろ。そう決意をして目玉が飛んでった方を見ると、カンカンカンとバウンドする音がまだ聞こえてた。
そして最後に何故かボガン! という一層激しい音も聞こえた。
「なんか燃えてない?」
「「燃えてるな」」
フランさんのその言葉に所長とリルフィンの奴が同意する。確かに何かメラメラとオレンジ色の光が見えるし、それにちょっと焦げ臭い匂いもするような。僕達はその場に駆けつける。
するとそこには筒状のロボットみたいなのに、目玉の奴がめり込んでそこから炎と黒い煙が出てた。あちゃーだな。これは流石に目玉も無事でないかも。折角の貴重な情報が……そう思うんだけど、何故か顔は笑っちゃう。いい気味だと思ってしまう。
ある意味天罰じゃねこれ? 幼女の体をイヤラシイ目で見てた罰だろ。まあ取り敢えず引っこ抜くけどね。ボシュっと目玉の奴を機械から取り出す。
『ふへへへへへ、中身なんて知らん。外見が女なら全てがご褒美やで……』
かなりのダメージを食らった筈なのに、救出してやった目玉はそんな事を言ってた。筋金入りの変態だよ。それにいつの間にか僕と言う中身よりもクリエという外見を優先する事にしたようだ。半端ない奴。
本当ならもう一度投げ飛ばすか踏みつけるかしたい所だけど、本当に壊れても困るからな……このロボットみたいに。そう思ってると倒れてるロボットの頭部から、なんか小人が一体出てきてそいつの頭には体ほどのサイレンが着いてた。
赤く光って回り始めるそれと共に、『ブーブーブー!』と言い出す小人。なんか可愛いな。
「なんだこれ?」
『これ警備ロボやからな。そいつ今仲間呼んどるで』
「何!?」
すると通路の先からだけじゃなく、天井とかから、今度は青いランプを掲げてる小人達がワラワラと湧いてきやがった。
「「「侵入者です〜。侵入者です〜。タイホータイホータイホー」」」
変態目玉のせいで僕達は窮地に立たされる。隠密行動が原則だったのに、完璧にバレた。しかも大量の小人達の後ろからドズンドズンと腹に響く音が近づいて来てた。そして気のせいか、気のせいだと思いたいけど、なんだか通路が広がってるような……再び第一研究所の空間に変化が起こりだしてる?
『奴等が来るで。はよ逃げや!』
「奴等って?」
『良いから逃げるんや!!』
今までの変態の面はどこへやら。その真剣な言葉に僕は自然と皆を促して通路を逆走しだす。自分の体に抱えられた僕は一人後ろを伺う。すると黒光りする中型の恐竜みたいなのが姿を表した。
そいつ等は僕達を見つけると気持ち悪い鳴き声を上げて、一斉に追いかけてきやがった。
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