命改変プログラム

ファーストなサイコロ

水中雑談

「はぁ〜」
「「「…………」」」
「はぁ〜」
「「「…………」」」
「はぁぁぁ〜」
「「「…………」」」


 真っ青に満たされてる水の中。小さな魚が時々通り過ぎ、水の中の植物が光合成でもしてるのか、時たま透明な泡を吐き出しては上の方へ昇ってく。とっても綺麗な水中で僕達はこの国で一番偉い筈のモブリに冷めた目線を向けてた。
 だってさっきからずっとあの調子だよ。思い出した筈なんだけど……昇る泡を見つめて、憂鬱状態だ。僕の方をチラチラ見ては「はぁ〜」と言ってるからこっちも気まずいよ。そして時々「欲しいな」って呟く。
 ハッキリ言ってその発言問題だからな。教皇が女の子の裸の写真を堂々と「欲しい」言うのは不味いだろ。


「どうして……どうして忘れてしまってたんだろう……こんなに胸が痛いのに。この痛さを忘れてたなんて……」
「なんだかロマンチックだね。ノーちんはローレが好きなんだ」
「すっ−−好きってそんな……クリエちゃんに分かるのかい?」
「クリエだって分かるよ。クリエはみんな好きだもん。ううん大好き!」
「はは……良い子だねクリエちゃんは」


 クリエの奴だけ何故かノエインやミセス・アンダーソンの方に移って会話してる。大切な存在だから? まあこの水牢もそれほど不便じゃないし、別に良いんだけど、水の中ってなかなか安心出来ないんだよな。
 あんまり良いイメージがなくて……


「クリエ、そいつの言ってる好きは、好きの種類が違うんだよ。お前にはわからんだろうがな」
「邪神のテトラには分かるの? それってテトラがお母さんの事を好きなのと同じでしょ? クリエもお母さん好きだもん」
「うっ……お前……」


 テトラの奴はクリエに普通の好きと恋の好きの違いを言いたかったみたいだけど、クリエの奴にシスカの事を好きとバラされて狼狽えてる。いや、みんな知ってるけどな。


「まあ否定はしないさ。俺は確かにシスカを好きだ。愛してると公言出来る」
「おお」


 開き直ったテトラ。そして何故かノエインが尊敬の眼差しでテトラを見つめ始めたぞ。良いのかそれで? 邪神はシスカ教の敵だろ。公には。まあ色々と誤解や齟齬、歴史の解釈の改悪とかのせいの結果だし、和解出来るのならしても良いんだろうけど……そこら辺どう思ってるのか分からないな。
 テトラの奴は別に邪神の肩書きを捨てるつもりも無いみたいだし、昔の事を全て清算するって気もなさそう。まあ元々、必要だと思ったからこそ、自身でその罪を背負ったんだもんな……最後まで背負う覚悟はもうずっと前にしてるんだろう。
 今ならノエインが公表すれば、本物の神として迎えられそうな気もするけど、僕が考えてる程、簡単じゃないのが宗教と言うものなのかも知れない。刷り込んでるからな……シスカ教での邪神は最大悪。それを覆すって事は、これまでの教えはなんだったんだ? って事に成りかねないリスクがある。
 テトラはこの世界を……と言うか、再び五種族が争って世界をメチャクチャにさせるとか、そんな事には成って欲しく無いんだろうし、共通敵として認識され続ける方が都合が良いと思ってるのかもね。それかもう直ぐこの世界ともおさらばだから、実際の所どうでも良いとか……テトラの奴は基本シスカの事しかみてないもんな。
 後は少しだけクリエを気にしてるくらい。


「愛ってなあに? 好きとは違うの?」
「クリエちゃん愛ってのは、好きよりも重いんだ」
「重い? 愛って重いの? 抱えなくちゃ行けないの? クリエじゃ持てないの?」


 質問攻めのクリエ。クリエは愛に形でもあると思ってるのか? すると質問を受けてるノエインが考え込む。


「う、う〜んクリエちゃんにも愛はきっと持てます。重いというのは感じ方次第ですからね。それこそ大きいと言っても、広いと言っても良い。愛にも形なんて無いのですからね。そして愛には国境も距離も関係無い!」


 遠くを見つめてそう宣言するノエイン。一体どこを見つめてるのか? もしかしてリアルに戻ってる筈のローレかな? 直前の言葉を考えるとそうっぽい。ローレの奴はリアルの姿が全然想像出来ないな。アイツも相当特殊な存在だし、あの歪んだ性格でリアルを普通に生きて行けてるのか物凄く不安だもんな。
 僕が言える筋合いも無いけど、自分を常に試してるみたいな奴だったからな……実は向上心の塊みたいな固い奴なのかも。職業は公務員だったりして? 似合わな過ぎるな。でも姿が若かったから、学生って線もあるにはあるけど……LROの姿なんか僕以外リアルの情報一個も持ってない場合が殆どだから宛にはならないか。
 性別だって自由に変えれるしな……でもそれは流石に言えない。もしも……だよ。もしもローレの奴が実は(男)だったりしたら幾らノエインがNPCと言う存在だとしても不憫だよ。
 まあ、ローレの奴のどこが良いのか、全然全く分からんけど……モブリは小さいから他の種族でも見た目幼い子が好みなのだろうか? モブリだから許されるけど、エルフとかの屈強な騎士がローレの事を好きとか言うと、犯罪だよな。幾ら中身が実際は違ったとしても、そいつはロリコン認定されるし……ノエインは自分がモブリで良かったと思うべきだなうん。


「ふん、一番小さな種族の癖に良い事を言うじゃないか。そう、愛には距離など、そして時間さえも関係無く超越出来る。そんな物だ」
「分かんないよ。テトラやノーちんの言葉じゃイマイチ分かり難い。だって聞いてると好きって事とあんまり変わらない様に思える。好きだって距離なんて関係無いよ。だってクリエは遠くに言ったシスターもシャナの事もずっとずっと大好きで居られる。その自信があるもん!」


 なるほど……クリエにしては物凄くマトモな事を言ってると思う。確かに好きって思いも大きくなれば愛と変わらないのかも知れない。そもそも僕自身もそんなに何が違うか分かってないしな。まだたったの十六年くらいしか生きてないし、親の愛情とか知らないし、小学校入る前まではマジで感情没落してた僕にも理解出来ないや。
 僕にとって大切な事は少しずつ日鞠と共有してきた事が全てだからな。


「好きと愛の区別は難しいね。クリエちゃんが言ってる事だって間違ってる訳じゃない。好きって感情は恥じる事では全然ないのだからね」
「でもでも、愛よりも軽いんだよね?」


 う〜ん、難し過ぎて僕には付いて行けなくなって来た。重い愛ってのも良い事じゃないよな? 重過ぎるって理由で別れるカップルが大多数いると言うのは良く聞く。贅沢だとも思うけどな。好きっていう感情がそもそも特別で、その特別の更に特別が愛という感情なら、もう途方も無い様な物に思えて全てが高尚な物に思えるけどそうでもないんだよな。
 病的になる人も居るし……好きでも恋でも愛でもさ……心が本当に繋がるってのは難しい物なんだと……知ったかふうに考えてみる。


「スオウ……」
(なんでこっちを見る?)


 クリエの奴が「クリエ間違ってる?」的な顔でこっちをみてる。だから分からないんだって。愛と好きの違いなんて知らない。でも折角頼られてる事だし、ナニかそれっぽい事を言いたいよな。う〜ん、ナニかないだろうか? 僕は必死に考える。
 実際こっちの人間関係って結構自分にとって貴重だからな。学校じゃ敵ばっかりだし……だからこう言う親しげな奴は無下にはしたくない。僕は何も求めない奴から、結構欲張りな奴にジョブチェンジしたから、色々と首を突っ込むのだ。


「そうだな〜聞いた話だけど、こんなのを知ってるぞ。好きって感情は一方通行らしい。だけど愛は双方向なんだってよ」
「どういう事?」
「さあ?」


 投げた。いや、言いたい事は分かってるし、伝えようとすれば多分伝えられると思う。だけどさ、自分が思う感じではどこかしっくりと来ない部分があるというか……だから詳しくはいえないって感じ。
 でもそれでクリエが納得出来る筈も無い。「ねぇねぇ! ねぇねぇ!」と向こうの水の膜をこっちにぶつけて言葉を求めてきやがる。するとこれまでなるべく話に入ってこようとしてなかったリルフィンの奴がなんだかぶっきらぼうにこう言った。


「様は、互いに求め合ってるかそうでないか……だと思うぞ。自分がその誰かを好きなのは勝手だが、相手もそうとは限らない。一方的なままでも突き進めるのが好きって……感情じゃないか? 愛は……一人では到達出来ない場所の様な……そんな気がする」
「「おお〜〜」」


 なんだ? リルフィンの奴どうしちゃったんだ? らしく無い!! ちょっとさっきの爆弾にやられて頭がおかしくなった? というか、ネジでも外れたか? 妙に顔を赤らめながら言ってるし……乙女かこいつは。
 いや、男が好きやら恋やら愛を語るのが恥ずかしいのは分かるけどね。なんだか自分の価値観を晒してる様で木っ端ずかしいものだ。


「犬の癖になかなか言うな。確かに愛は一人では得れない物だ。俺はシスカが好きで、シスカも俺を好きで居てくれた。互いの好きがこの世界を生んだと言っても良い。一人ではきっと完成し得なかったからな。
 愛とは大きく偉大な物だ。一度得ると、手放すなんて事は出来ない」
「「おお〜」」


 ノロケか! この邪神、邪神の癖にノロケかよ! なんか負けてるみたいな気分になるな。まあ実際負けてるけどさ。てかよくよく考えたら、僕ってアギトにも負けてるじゃないか。あいつ今や勝ち組だ。逆玉でお嬢様の彼女居るしな。
 なんか悔しい。どいつもこいつもズルいぞ。テトラの場合は神だからまあ良いけどさ、リアルの方で可愛い彼女をゲットするってなんだそれ!? だよな。
 普通こういうゲームでの落ちは、ゲームの美少女は実は男でしたって感じだろ! それか不細工って相場が決まってるじゃないか! メッチャ今更だけど、アイリが本当の美少女だったのが、悔しい。
 いや、初めて会ったときも実はちゃんとそう思ってたけどさ、そんなからかえる時じゃなかったしな。まあ幾ら妨害した所であの二人はくっついたんだろうけど! それも愛なのかも知れないな。それこそ巷で伝説的に言われてる「運命の赤い糸」とかで結ばれた……みたいな。
 テトラの奴もシスカと運命の糸で結ばれてたのかな? でもこいつの場合、それを結んだのは当夜さんなんだよな。やっぱりなんだか全てが盤上の上ってのは哀しい。道化みたいに見えるぞテトラ。


「確かに愛は世界に必要ね。だけど本当に一人では愛は得れないのかしら? 得る事は確かに出来ないかも知れないけど、私達は愛を広めようとしてる筈なのだけどね」
「そう言えば、シスカ教の精神は慈愛だったな」


 ミセス・アンダーソンの言葉に僕はそう返す。まあ聖職者ってのは分け隔て無く愛を注いで行く者……の筈だもんな。そうやって信者を増やす……のはリアルでは幻想だけど、LROはゲームなんだし妄想も許されるだろ。
 この世界には他に主要な宗教も無いみたいだし、対立する事もなく広まって来た筈だ。対立してるのもせいぜい自分の所の分派的な星羅ってオチだしな。リアルのキリスト教はかなりエグい事をして広まったのに比べれば、シスカ教はとっても平和的。
『隣人を愛しましょう』って言葉もシスカ教なら受け入れられるかも知れない。キリスト教は隣人を蹂躙して来た宗教だからな……正直そんな事言われても「ええ〜」としか思えないというか。キリスト様は違ったのかも知れないけどね。


「そう、シスカ教は慈愛を届ける。優しく出来る心は周りを愛する心。誰もが周りを愛せば、争いなど無くなる。そう言うふうにシスカ教では教えてるわ」
「幻想だがな、そんなのは」


 ピシッと空気に入る亀裂の様な音が僕には聞こえた。テトラの奴……一応お前が愛してる人の教えの筈だが? その言葉はシスカを否定してる様な物じゃないか? すると案の定クリエの奴が突っかかって行くよ。


「幻想って! テトラはお母さんの事を嘘つきって言うの!? お母さんの事を愛してるって言ったよ! クリエちゃんと聞いたもん」
「確かにそうだな。だがこれは感情論じゃないんだよ。俺は確かにシスカが何よりも大切だし、アイツの事を信じてる。だが俺達は同じ一つの個体じゃない。それぞれが違った部分を持った生命体なんだよ。
 譲れない物はある。それに実際、それが幻想なのはシスカも分かってるさ。だがそれでもアイツは信じた……それだけの事だ。否定はしよう。だが俺はアイツのその信じ続けた姿は認めてる。俺はアイツを愛してるからな」


 そう言ってテトラの奴はクリエに向かって微笑んだ。柔らかな微笑みだ。クリエの奴はどういう事か分からなくて困惑してる。まあこっちもだけどな。そんな事はあり得ないって考えは譲れないけど、それでも信じ続けたシスカの強さか優しさ−−みたいな物は信じてるってことだろうか? 
 複雑だな全く。


「お、お母さんが好きなら一緒に信じれば良いとクリエは思う。テトラはちょっとおかしいよ。一緒だったら何か変わってたかもしれない。二人で信じてたら、もっと良い方向に行ったかもしれないよ」
「…………そうかもな」


 おや、テトラの奴がまさか認めるとは。僕はてっきり−−


「そんなに世界は甘く無い。単純でもない。命は争う様に出来てしまってるんだよ」


 −−位言って来るかと思ったのに……普通にクリエの言葉を受け入れたぞ。思うんだけどさ……最近テトラの奴、クリエにデレるの早過ぎじゃね? 邪神としてのプライドどこ行った。いや、歩み寄ってくれるのは良いんだけど、もっと時間がかかると思ってた分、拍子抜けというか……正直そんな感じだ。
 おかげでクリエの奴も「う……ううん?」ってな感じで困惑してる。爽やかな笑顔も、自分を道具の様に扱ってた奴が向けて来てると考えると、なにか勘ぐってしまうよな。


「俺は信じるという事が苦手なんだよ。まあだが……今度ばかりは信じてみよう。本当の最後に成るだろうからな」


 そう言ってテトラは僕の方も見る。こいつの願いを叶えてこの世界から解放する。それは約束だからな。やってやるさ。


「私達五種族の歴史が、相容れない部分はあると証明して来てしまった。どんな存在とも分かり合う事は不可能だと……今の私達も実は証明してるのかもしれませんね。もしもそれが出来るのなら、種族事にバラバラになってる事も無いですしね。」


 ミセス・アンダーソンが残酷な事を言った。シスカ教だろ、もっと信じろよ。


「おい教皇、NO2があんな事を言い出してるぞ? いいの?」
「これだけで終わりじゃないと私は信じてますよ」


 ノエインの言葉に明らかに目を泳がせるミセス・アンダーソン。やっぱりあそこで終わってたんじゃ……するとなんとか絞り出してこう言った。


「も……勿論ですよ。確かに分かり合うのは難しい。それは誰もが分かってる。だけど私達シスカ教を信仰する民は、シスカ様の心を忘れる訳にはいかない。無駄だと諦める訳にはいかない。女神様の心を私達は受け継いでるのだから!」


 おお言いきった。最初は不安と見切り発車感が物凄く見えてたけど、言葉を紡ぐうちに、自信がついて来た感じだ。クリエなんか「おおーー!!」と唸ってる。流石は今までも信仰を広めて来た宣教師なだけあるな。場慣れしてるよこのおばさん。


「素晴らしい、流石ですミセス・アンダーソン」
「……いえいえ、それほどでもないです。勿体ないお言葉ですよ」


 ノエインも合格を出してくれたみたいで万々歳だな。するとテトラの奴がこう言うよ。


「口ではなんとでも言えるさ。具体的な事は何も示してない。信じるだけじゃ、誰も歩み寄りはしないぞ」


 この邪神はほんと、知った様な事ばかり……別にわざわざ言う事でもないだろうに。


「ちっ、要無神が……」
「ミセス・アンダーソン、舌打ちは行けないですよ!」
「ああ、すみません。つい」


 ホントあのおばさんも大概だな。腫れ物扱いされてたのも分かるよ。


「本当にシスカの意思を体現するのなら、分かり合ってみせるんだな。その慈愛の心とやらで。世界を今まさに改変させて意のままにしようとしてる奴等……そいつらと」
「邪神……あんたまさか外側の連中の事を言ってるのかしら?」
「他に誰が居る?」


 確かにテトラの言う通り、シクラ達と分かり合えるのなら、それは物凄い事だと思う。


「本気なのか? 何を企んでる邪神」


 そう言ってリルフィンの奴が鋭い視線をテトラへ向ける。だけどテトラはそんな視線を気にせずに言うよ。


「企んでるとは心外だな。言ったろ、信じてみる−−と。お前達の信じる先の物を俺は見てみたいからな。だから失望させるなよ。その位やるだろって提案だ」
「提案ってお前……」


 ついさっき交戦しといて良く言えるな。向こうが妥協するなんて事考えられないけどな。なんてたって圧倒的なんだからな。するとテトラは静かに……この湖にしみ込む様にこう言った。


「諦めるのは簡単だ。だが貴様等は違うんだろう。それなら見せてみろ。和解が出来なくても別に構わんさ。だが、何もやらずには何かが違うだろう?」


 テトラの言葉をミセス・アンダーソン達は返す事は出来ない。つまりはそう言う事だ。するとテトラはこちらを向くよ。


「スオウ、貴様はどうなんだ? 奴等とこのままやりあうつもりか? それで解決する事か?」


 テトラの奴は知らないんだろう。僕達はもう散々話したよ。そして決裂したんだ。実際あとはもう力づくしかないと思ってる。


「解決はしないかも知れないな。そんな簡単な事じゃない。だけど、僕が勝てばセツリの時間を伸ばせる。解決はさ、別にもっと後でも良いんだ。今はただ、あいつにこのまま死んで欲しく無いだけ。
 心が通じるのも、分かり合えるのも、難しいなんて当たり前だ。だから諦めるなんて論外だけど、急いても意味は無いだろ。諦めないからぶつかるんだよ。それでアイツの命を延ばせるんだ」


 その言葉を聞いてテトラは軽く笑った。その意味は分からないけど、納得はしてくれたのかな?


「所で僕達なんの話してるんだ? これからの為に考える事が沢山ある筈なのに、なんで好きや恋や愛から、ぶっ飛んだ所に行ってるんだよ」


 ホント何を話してたんだか……まあ大切な事ではあったけどね。諦めないから僕達はぶつかる訳だけど、テトラの言う様に、後一回位は腹を割って話してみたい気はするな。すっげー無謀だけど。


「そうだね。真面目に行こう真面目に。所でスオウ君。あの写真のコピーを真剣に私は欲しいんだが、幾らだろうか?」


 あれ? なんだか寒い。まるで周りの水が一気に凍った様に感じる。てかまだそれを考えてた事にビックリなんですけど。どれだけほしがってるんだよ。教皇様ともあろうお人が! ギャグだよね? ちょっと空気を変えようとして言っただけの心遣いだよね? 
 だけどノエインの笑顔と差し出された手はブレない。こいつ本気か!? そう思ってるとクリエがポツリと−−


「ノッちん最低」


 −−とボソッと言って涙ながらにノエインが今後の行動の方に話を移行した。まあ……なんだ。友達だし、後でコピー位渡してあげよう。僕はその涙を見て、ちょっと優しくなれた気がする。

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