命改変プログラム

ファーストなサイコロ

要無神は認めれない

 なんとは無しに始めたしりとり。それがまさかこんな事になるなんて……今二つの水牢の中で死者が浮いて行る。一人はリルフィン。まあこいつは案外どうでも良い。一緒に頑張って来た仲間だけど、それほど思い入れがないって言うか……まあその内輝いてくれる事を期待しとくよ。
 そしてもう一人はクリエ。「あばばばば……」とか意味不明な言葉を発しながら水牢の中を漂ってる。まあこの水牢、別に中に水がある訳じゃないんだけど、そう言う事も出来る……みたいだ。でもクリエだから良いけど、僕達じゃ流石に手狭だけどね。漂うにはさ。


「ふっ、後は貴様だけだなスオウ」
「お前さ、随分楽しんでるけど、リスクデカ過ぎだろ。たかがしりとりで」
「怖じ気づいたか?」


 全くこの邪神は……どんだけ楽しんでるだよっていう……実際前述した二人がこうなったのは、この邪神ことテトラのせいだ。まあ僕もリルフィンもクリエも、この中じゃ何にも出来ないし、自由が利くのはテトラだけだから、必然的にこいつの独壇場に成るのは当然なんだけど……もう少し冷静に対処するべきだった。
 たかがしりとり……けど神が絡むとされどしりとりでした。この邪神、自分の力を僕達それぞれの場所に置いてるからって、リスク背負わせやがった。まあ切っ掛けはいつも通りのテトラとリルフィンの対立だった訳だ。
 最初は本当にお遊びだった。テトラの奴は「こんな言葉を続けてくだけのお遊びで一喜一憂出来るとは、人間は簡単だな」とか言ってた。まあでも反論は出来ないよ。しりとりなんてホントただのお遊びだもんな。
 実際こんなやる事がどうしてもない時くらいしかやらない。それに厳密なルールなんてお遊び程度じゃ設けないしね。ゆるゆるのルール上はいくらやったって遊びの範疇から出る事はない。当然だけど。
 だけど……いやだからこそ、ここでリルフィンの奴が一石を投じたんだ。何をしたかと言うと、それは簡単な嫌がらせ。しりとりでもっとも相手を苛つかせる行為はナニか……それを考えてもらうとわかりやすいと思う。
 ようは同じ言葉で終わる単語を続ける事だ。しかも使用頻度が低い奴でね。例えば「る」とか「ら」とかラ行は狙い目だよね。あれはそれから始まる言葉がパッと出てこないもん。しかも丁度リルフィンの後にテトラだったからな。テトラの後はクリエね。そして僕って感じで成ってたから僕はとっても楽だった。
 だってクリエは簡単なのしか言わないしね。単語をただ言うのが楽しいってな感じ。僕も別に普通の言葉を適当に言ってただけだけど、リルフィンの奴はそれを良い事に同じ言葉で終わる物を言いまくってたよ。そしてテトラが考え込む度に--


「残り時間十秒だぞ邪神。はいい~ち--」


 とか


「おいおい思いつかないなら負けって事で良いよな? 邪神ともあろう神がただの精霊に負けってことで良いよな? まあ頭下げるならもう十秒くれてやっても良いぞ。ほれほれ、どっちの汚名をとるか決めろよ」


 とか言ってた。多分、テトラへの嫌がらせが死ぬ程楽しかったんだろう。テトラの奴はクリエが楽しそうにしてるから知らんけど、やめるとかは言わなかったけど、我慢は限界に来てた。順番替えの提案はあったけど、それを言うとリルフィンが「逃げるのか?」って言うんだ。
 そしてテトラには邪神のプライドがあるからな。乗っかって来るという……そしてまた嫌がらせが続くという負の連鎖。だけどその調子に乗った結果……しりとりで死者が出る事になったんだ。反省して欲しい。
 なんでまたテトラと向かい合って冷や汗を垂らす事に成ってんだよ。遊びで良かったのに……僕の後ろには黒い爆弾の形をした変なのが「残り二十秒です。十九……十八……」とカウントダウンしてる。
 これはテトラの靄が変化したものだ。適当なルール上じゃ自分にとっていつまでも不利だから、公平制を期す為にルールを決めてった。回答を答える時間は三十秒以内とか、歴史上の人物以外の名前での回答は禁止とか、やる度にルールが定まって行った。
 だけどそれを自分達で判断してちゃ意味が無い。だからテトラがその万能の力で作り出したのがこの爆弾みたいな審判だ。爆弾の形をしてるのはテトラが邪神という物騒な存在だから、その影響だろう。
 つまりは脱落した二人はこの爆弾に吹き飛ばされたわけ。くっそ……なんでたかがしりとりで痛い思いをしなきゃいけないんだ。


「さあ、どうしたスオウ? 貴様もここまでか?」


 テトラの奴……目的は達したんだからもう良いと思うんだけど、既に勝利しか見えなくなってるな。リルフィンのせいで負けっぱなしだったから勝ちたいんだろう。基本負けず嫌いだもんな。後ろの爆弾がとうとう十のカウントを切って来た……くっそ同じ言葉は二度言えないし、てきとうな言葉じゃこの爆弾は誤摩化せないからな。
 流石にラ行のバリエーションに限界が……スキル名なら良いからあり得そうなのを言ってみるしか無いかな? リアルで使う言葉ではそうそうなくても、ファンタジー系の言葉なら結構あったりするからな。それに期待。


「る……る……」
「無いやってるのよアンタ達?」


 突如聞こえたそんな声。助かった--と僕は思った。上から一つの水球が下りて来る。それにはミセス・アンダーソンの姿があるよ。そしてもう一つの小さな姿も見える。アレは多分……


「時間切れです。さようなら」
「へ?」


 機械的な抑揚の無い声が背後から聞こえた瞬間カッと輝く光。そして視界と聴力が奪われて、体に走る凄まじいしょう--撃は無いけど、頭がグワングワンと揺さぶられる感覚が襲う。一応安全仕様みたいだけど、なるほど、だから二人とも転がってるのか。納得。これは体の外側じゃなく内側に効く仕様の様だ。


「ちょっ!? なんなの一体?」
「だ、大丈夫かい君!?」


 ミセス・アンダーソンとノエインの声がキーーーンと鳴ってる音の遠くの方で聞こえる。やっとで待ち人が来たってのにこれは無いだろう……フラフラするけど、ここは頑張って耐えるんだ。取りあえず言う事がある……


「ノエイン……僕の事……分かる……か?」


 必死にそう紡いだ僕。さっきの強烈な閃光で視界もおかしいからノエインを見れてないかも知れないな。だけどまあ、言葉は問題なく聞き取れるだろうし、どこ向いてたって別にいいよな。アホみたいなだけ。


「えっと……君達の事はアンダーソンから聞いてる。聞いてる……けど……」


 どうやらその言葉を聞く限りやっぱり覚えてないみたいだな。ここにはミセス・アンダーソンの説得で来たって感じが強そうだ。


「君達の遊びは過激だね……」


 周りを見てそういうノエイン。僕もこんなしりとりは初めてだっての。すると一人勝ち誇るテトラの奴がこう言った。


「違うな。これは遊びなんて生易しいものじゃねーよ。一種の戦いだったんだ。人生なんだって戦いなんだよ」
「戦いか……君はナニかどこか見た事ある様な容姿をしてるね」


 テトラの言葉を受けてそう返したノエイン。そりゃあまあ……見た事ある様な気はするだろうね! 真実を知ったら側頭しそうだな。僕が言ってやりたいけど、それだけの元気がない。するとミセス・アンダーソンがぽそっと言った。


「そりゃあ邪神ですもの」


 ってね。だけど伝説上の神様が目の前に……しかも牢屋に居れられてるって早々簡単に信じれる物でもない。だからノエインは「ははっ」っと笑ってこう言った。


「流石アンダーソン。面白い冗談だ。なんだか今日は面白い事を一杯言いますね」
「まあ忘れてしまわれてるのだから仕方ありませんが……これはマジですよ。良くそいつを見てくださいノエイン様」


 そいつって……ミセス・アンダーソンの言葉は神に向ける物じゃないな。まあ邪神だし間違っちゃいないけど。


「黒い長髪、白地に金の装飾が施された衣装、そしてナニか感じるこの圧迫感……なんだろう何故か知らないけど、後ろめたい気持ちになるよ。恐ろしいって感情が呼び起こされる様な……そんな感じがしないでもない……かもしれないね。いや、なんかごめんなさい」


 教皇が頭下げてるぞオイ。邪神の雰囲気におもわずか? 何したアイツ?


「まあ、これが格の違いという奴だな」


 更に満足気になって鼻高々なテトラ。するとミセス・アンダーソンがこう言った。


「止めてくださいノエイン様。そんな存在に頭を下げる必要はありません。なんせいらない神らしいので」
「いらない言うな貴様」
「要無神でしょ?」


 ん?? 一瞬ミセス・アンダーソンの言葉を理解出来なかった。でもああ、要無しに神をくっつけて「ようなしん」って言ってるんだな。上手くねーぞ。あれ?


「ような……ようなしん−−ブフッ」


 何バカにされて受けてるんだよあの邪神は。だけど少し時間が経った事でダメージが和らいで来たかも。耳鳴りも収まって来たし、視界はもう随分とまともになった。すると別方向からこんな声が。


「おい要無神、教皇は主と同じ位の立場だぞ。頭が高い」
「死ね。ただの犬から負け犬に成り下がった奴の言葉など知るか」


 復活してたリルフィンの言葉を無下に叩き返すテトラ。ただの犬から負け犬か……否定は出来ないな。でも早速要無神を使うとは……アイツも気に入ったのか? 


「うう〜耳がキンキンするよ〜」
「クリエも気付いたのか」
「結局どうなったの?」
「要無神が勝ったよ」
「ようなしん?」


 クリエは何の事か分かってないみたいだな。まあ今しがた出来た言葉だから仕方ない。これから広めて行こう。




「要無神ってのはいらない神を皮肉った言い方なんだ。だからテトラに向かって使うのが正しい使い方何だよ」
「なるほど〜」


 クリエは何度も頷いてる。本当に分かってるのか? 理解してるかの様に振る舞う自分、賢い! って感じでやってる様にも見えなくも無い。いや、まあこれは別に理解しなくても良いんだけどな。


「貴様、ガキにいらん知識を刷り込むな。それしか使わなくなるだろうが」
「ようなしんがナニか言ってるよスオウ」
「ほらな、これだから頭悪いガキはたまらん」


 テトラが嫌そうにこっちを見て来る。そんなに要無神は不満らしい。受けてた癖に。


「クリエはクリエは頭悪く無いもん。テトラは要無神なんでしょ? いらない神って自分で言ってたじゃん」
「確かに言ったが、俺が神である事に変わりはない。神としての格が落ちた訳じゃない。分かるかクリエ?」
「わかんない」


 はぁ〜とため息をつくテトラ。まあクリエには分かんないだろう。するとノエインが不思議そうにこう言う。


「なんでクリエちゃんまでここに?」
「スオウが今の保護者だからですよ。言ったでしょうノエイン様。良く一から記憶を辿ってみてください。継ぎ接ぎの部分が見えて来る筈です」
「う……う〜ん」


 ミセス・アンダーソンに言われてノエインは記憶を辿り出したのか、考え込む。そう言えばノエインに思い出させるのが目的だったな。アンダーソンの奴が要無神なんて言葉を作ったせいで、変な寄り道をしたじゃないか。


「一つ気になる事があるんだけど……」
「なんですか? 記憶の綻びですか?」


 まさかこんなに早く切っ掛けが掴めるとはね。流石は教皇様。ナニか作りが違うのかも知れない。ノエインも記憶が戻ればノーヴィスは味方についた様な物だ。心強さが違う。まあ五種族連合でこの要無神ことテトラとやっとでやりあえる……程度だったわけだし、一国だけじゃシクラ達あの姉妹に挑めるとは流石に思えないけどね。
 でもどこにも味方が居ないよりはマシだ。どこもリーダー不在してる所は多いんだし、上手くやれば他の国だって使える様になるかも知れない。だからこの一歩は大事。ノーヴィス攻略は僕達のこれからの為には絶対必要案件だ。
 さあ、思い出してくれノエイン。友情と言う名の絆で繋がった僕達の事を!!


「いや、本当に彼が邪神なのかい?」
「まだそれかよ!!」


 突っ込んじゃったじゃないか。ついつい突っ込んじゃったじゃないか! いや、確かにまだ証明してないけどノエインの関心事はまだそこだったのかよ。まあシスカ教の教皇として邪神という存在が気になるのはしょうがないんだけどな。


「確かに彼は言い伝えにある邪神の姿その物だよ。だけどつい先日邪神は連合軍で討伐した筈です。こんな所でしりとりをしてる訳が無い」


 ほほ〜そういう事に成ってるのか。プレイヤーの存在は消えて、あくまでNPC達だけでって事に成ってるのかな? まあしりとりしてるわけないってのは同意出来るけどな。邪神がんなのしてるなんて……流石に目の前で見ても信じれる物じゃないのかも知れない。


「俺が五種族の連合軍程度に倒されたか……随分と優しいじゃないか俺は。そんな記憶は一切ないがな。言葉で言っても拉致が無いのなら……その身で確かめてみるか?」


 そう言ってテトラは黒い靄を漂わせる。いやいや流石にノエイン自身に力をぶつけるのは不味いだろ。様はその力を見せつければ良いんだから、やりようはいくらだってある筈だ。


「止めろよ要無神。ノエイン自身を傷つけたら本末転倒だろ」
「そうだよ要無神。直ぐに乱暴しようとする所が要無神の悪いとこだよね」
「はは、要無神……とにかく死ね」


 その瞬間、テトラがリルフィンの水牢に大量の球体を放った。そして靄を手の周りに集めて、それを振るうと、水が切断されて水中で変な流れが起きる。泳いでた魚とかがその影響でそこに吸い込まれたりしてた。


「おいおい、リルフィンの奴死んだんじゃないのか?」


 少なくともただでは済まないだろ今の。てか絶対に不満のはけ口にしたよな? まあリルフィンの言い方も悪かったけど……テトラの奴は自身の水牢を破壊して既に水中に出てる。だけど自身の体から出る靄で同じ様な膜を作ってるから、不便は無い様だ。
 マジ万能な力だな。


「今の力……本当に邪神の……くっ」


 テトラの力を目の当たりにしてノエインが頭を抱え出す。本物の力を見た事で、何かが刺激されたのかも知れない。リルフィンの死は無駄じゃなかった!


「リルフィンありがとう。クリエは忘れないよ」
「ああ、アイツはわざとテトラを挑発してその身を犠牲にしたんだ。その気持ちを忘れちゃいけない」
「ふん、犬にしてやられたな。俺とした事が」


 なんだかちょっといい雰囲気。尊い犠牲の後なんだ、ぎすぎすなんかしてられないよな。


「頼むノエイン! 思い出してくれ! でないとリルフィンが浮かばれない!!」
「くっ……君の事を私は……知って……る?」


 ノエインの記憶が戻りかけてる。後もう一息だ! だけど今のを越えるインパクトってそうそうないぞ。頭に直接響く様なインパクトがあれば、記憶が漏れ出すみたいだけど、一体どうすれば良いのか……ミセス・アンダーソンの時は沸騰しすぎて思わず上書きされた記憶が剥がれたって感じだったよな……沸騰か。
 頭が沸騰する事って他に何かあるか? かなりの衝撃と記憶の齟齬を付く事でノエインに上書きされた記憶は剥がれかかってるのは事実だ。それを完全に引っ剝がす為の最後の一手……それは一体……


「ある………一つだけ」
「リルフィン?」


 何故か狼型に戻ってる。水牢をぶっ壊されたから力を使える様になったのかも。しかも本来の姿なら水中とか関係ないっぽい。流石精霊。傷もダメージも見えないのは、実はテトラの奴が上手くやってたって事か?
 まあそれよりは今はもっと重要な事がある。ノエインが錯乱しないうちに記憶を正しく繋げないとだろ。


「一つだけある物ってなんだ?」
「簡単だ。執着してた物程記憶というもの強く残る筈だろう。それを示せば良い」


 簡単にいうけど、そんなのが簡単に見つかれば苦労は……


「あるだろう。教皇が執着してて、だがそれは消さざる得なかった存在。この世で最も強く残る思い。それは……愛や恋と言う類いの物だ」
「貴様がその姿で言って一番似合わない言葉だなそれは」


 リルフィンが本来の姿で格好よく決めたのは分かるけど、これはテトラの言葉に賛成だ。ごめんだけど、姿と言葉があってない。人形で言えばまだマシだったけどさ、狼の格好で愛や恋は聞きたく無かったかも。いや、これがエアリーロならまだ許せたけどな。フィンリルってのがね。無駄にかっこいいんだもん。
 でも印象はともかく、言ってる事は正しいかも。強烈に残ってる部分はやっぱりそうなるのかも。ってことはだ……


「それならノエイン様の記憶を呼び起こすキーワードは、アンタの主って事?」
「そう成るな」


 なるほどね。確かにノエインはローレにご執心だった。でも社には一回ローレの使者みたいな感じで入らなかったか? 覚えてたり……矛盾するけど。


「いや、あの時は主の名前は出してない。リア・レーゼの使者として自分の名前を告げたんだ」
「そうか……それならリルフィンの存在はあってもローレの存在は覚えられてないって可能性はある。アンダーソンはどうなんだ?」


 僕のその言葉に思案するミセス・アンダーソン。


「そうね、良く覚えてないわ。今なら普通に思い出せるけど、その時がどうだったのか確証がない」


 記憶が元に戻ったから貼付けてた曖昧な物は曖昧なまま消えてったって事か。それなら直接ノエインに聴こう。


「ノエイン、お前ローレを覚えてるか?」
「ローレ? それは……一体?」


 やっぱり覚えてないのか。するとクリエが横から印象をズバズバ言うよ。


「ローレはね。可愛いんだけど、ズルくて賢くて、そして嫌な奴なの!」
「なんだか……最低な人ですね」


 そう成るよね。今の聞いたらそうなるよな。それじゃあダメだろクリエ。ノエインは恋してたんだ。ようは盲目だったんだ。真実なんか意味ない。もっと普通の情報で良い。


「ローレってのはリア・レーゼの星の御子だ。人の子供の様な見た目で、髪は金髪で、容姿だけなら誰もが見惚れる様な奴だ。性格はまあクリエが言った通りだけどさ、それでも人気者だった。お前はアイツの事を知ってる筈だ! 忘れるわけない!!」
「星の御子……ローレ……私は……」


 言葉だけじゃ足りないのか? 思い出しそうだけど、言葉だけじゃ押しが弱いのも事実。くそ……ナニか無いか? ローレに関する何か……そうだ!


(いや、でもこれは……僕の尊厳か……)


 ハッキリ言ったら出したく無い。でも……きっと役に立つ場面は今を置いて他にはないだろう。ない……だろうな。ウインドウを開いて、写真の一覧を表示する。その中の一枚を選択。手元に現れる一枚の写真。
 こ……これで僕達を思い出してくれるなら……恥なんて甘んじて受け入れよう!!


「ノエイン! これを……これを見ろ!! これがローレだ!!」
「……………………これは!!」


 ノエインの瞳の中に映る写真には、裸の僕が、裸の少女ローレを押し倒してる決定的な瞬間がバッチリ映ってましたとさ。はめられた写真だけど、ここだけ切り取ったら僕は間違いなく変態だ。封印すると決めてたのに……けど、仕方なかった。
 ここまでしたんだ……さあ! 思い出せノエイン! お前の惚れた女の全裸だぞ!! これで頭が沸騰しない男なんていない!!

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