命改変プログラム

ファーストなサイコロ

木漏れ日の話し場

 神の料理で皆全快、元気一杯に成った所でこれからの事を話す事に。どうやら追っ手も無い様だし、ようやく落ち着ける。木漏れ日が適度に暖かく、木々の緑が目に優しい。そして小川のせせらぎが耳を癒してくれるそんな癒しの空間。
 なんだかとっても素敵な場所だよ。


「なんだっけここ? ルーガルフの森だったっけ? 良い場所だな」
「妖精の森と呼ばれる程だからな。その神秘的さと美しさに定評がある。まあ本当に妖精が居るかは知らんが」
「どうなんだそこら辺クリエ?」


 クリエはそこら中の自然と会話出来るだろ。普段は見えない妖精達とだってきっと喋れるだろう。だって俺は今まで四度位妖精と出会ってるけど、最初を除くとそこにはクリエが居た気がする。純粋な存在ってのが必要なのかも。
 そしてこういう綺麗な場所。何となく水辺が多い気もするな。


「う~んとね、妖精さん達は分かんない。それにちょっと怖がってるかも」
「怖がってる? それって何がだ?」
「この辺り全体の生き物がだよ。こんなに綺麗なのに、みんな震えてるよ」


 震えてるか。こっちは全然わかんないけどな。さわさわという音は耳を澄ませば聞こえるけどさ、それも相まってこの癒しの空間が出来てる気がしてた。けど実際は、この森が震えてる--それは怖がってるとかそう言う事なのかな?


「みんな不安なのかなってクリエは思うよ。クリエもどこかでザワザワしたの感じるもん」
「それってやっぱり……」
「シクラ達の影響だな」
「テトラ」


 ポリポリと自分だけ頻繁に靄の中に手を突っ込んではお菓子みたいなのを食べてるテトラ。神の威厳とか、邪神の恐ろしさみたいなのは一体どこにいったんだ? そんなの皆無な態度なんだけど。まあ僕達にはそんなの今更見せる必要もないって事なんだろうけどね。
 心を許された相手に成れたって事だろうか?


「結局俺のコードも取られたし、奴等はきっと動き出す。奴等が動いて来た影響はきっとこの世界に少しずつだが蓄積されてるだろう。そんなのを通して大地や木々達は不安を感じてるのかも知れないな」
「でもどうして大地とか自然が不安を感じる必要がある? だってシクラ達はこの世界を手にしたい訳だから、この世界自体を消滅させる--とかはしないと思うぞ」


 うんうん、大地とか自然はきっとそのままだと思うんだけどな。消える心配なんてそこら辺は無いだろ。まあ木々の一つ一つとかは、戦闘が起これば吹き飛ぶかも知れないけどさ。だけどテトラはこう言うよ。


「確かに地面やらが消える心配は無いだろう。だが何がどうなるか分からない事に不安を抱くのは仕方ない事だ。大地は今この風景が有るから今の大地であれるんだ。何かが少しでも変われば、この姿では居られないかも知れない。
 大地はそうそう終わりはしないが、その上に根を張る何かによって容易に姿を変えるからな」
「要は変化を恐れてるってことか」


 まあそれは分かる気がする。変化に不安はつきものだよな。引っ越した先には不安が有るし、まあもっと身近なら進級したては不安だよな。新しいクラスに馴染めるか……とか。まあそこら辺はとっくに僕は諦めてるんだけど。
 だって日鞠が居ると周りからいろんな目で既に見られるからな。第一印象をこっちの努力で与えられないってのはキツい物があるよ。新しいクラスなのに、既にいろんな噂でイメージを固められてるからな。
 しかも日鞠信者は聞く耳持たないし……まあホント不安だよな。僕は大地に手を置いて撫で撫でしてやるよ。


「所で、実際シクラ達はこれから何をしようとしてるんだ? それが分からんと止めようが無いぞ」


 リルフィンの奴がその自慢の白銀の毛をブラッシングしながら言ってる。なんかこいつらくつろいでるな。てかブラッシングとかちゃんとやってたんだな。こいつの性格的に無造作な感じが好きそうとか思ってたけど、案外几帳面な奴。


「奴等は最後にテトラのコードを必要としてたんだよな……そしてそれを手に入れた。今まで裏でこそこそやってた事をこれからはきっと表でやりだすんだろう」
「そもそも裏でやってた事ってなんだ?」
「それは……」


 僕は口ごもるよ。だって裏でやってたんだもん。知るか。まあ予想としてはコード集めをやってたんじゃないかな? そんな事言ってたろ。それにリアルでも昏睡被害が広がってたし……後はきっとNPCの覚醒。要は感情の芽生え。
 それが今までの行動だった筈。


「だがそれはもう十分やり尽くしたんじゃないのか? だからこそ、奴等は動き出した。これからは表舞台でもっと派手に動き出すだろう」
「もっと派手にね……そもそもどうやってマザーに辿り着くのかとか分かんないからな……どうなんだよテトラ? お前は神だろ」


 さっきからホントバリバリバリバリとうるさいぞ。一応自分が作ったと思ってる世界の事だぞ。それが別の奴等に乗っ取られようとしてるんだからもっと危機感持てよ。良いのかこのままで。するとリルフィンの奴がそもそもの質問をぶつけて来る。


「貴様等が当たり前にマザーマザー言うが、それはなんだ? 神はこいつだろ。こいつが倒されない限りは世界は大丈夫じゃないのか?」
「うっ……それは……」


 NPCであるリルフィンにはどう説明したら良いんだろうか? 変な風に言うと混乱するかも知れないよな。そう思って思案してるとテトラの奴が口を開く。


「マザーというのはこの世界を管理してる存在だ。言ったろ。俺やシスカは確かにこの世界を創った神だが、この世界には既に俺達は必要ないとな。それはマザーが居るからだ。世界は成熟すれば神を生む。この世界の神だ。それがマザー。分かるか犬?」
「犬は言うな。つまりは既にお前は神としての存在意義を失ってると言う事か。役目が終わった要無しの神」
「あっ?」


 ゴゴゴゴゴゴゴ--と背景に見える二人。全くホント仲悪いなこいつら。いつの間にかテトラとクリエの溝よりも深くなってるぞ。


「もう二人とも喧嘩はダメだよ! あのお姉さん達がこの世界をどうにかしようとしてるんだから止めないとでしょ!」
「「…………」」


 なんとここでクリエがマトモな事を! 二人もそうだけど僕も度肝抜かれて言葉が出ない。なんかちょっとしっかりしたな。


「返事は!?」
「「…………え、はい」」


 大の大人がちっちゃなクリエに言いくるめられてる絵はシュールな物があるな。しかもあいつら召還獣と邪神だからね。どっちもこの世界じゃ上位の存在だ。それを小さな……この世界でも一番小さな種族のクリエが叱ってるんだからシュール過ぎる。


「まあクリエの言う事は最もだよ。マザーの事も分かっただろうし、話進めよう。テトラ、マザーへのアクセスはどうするんだ?」


 それは知ってるのはお前だけだろ。だからこそシクラ達がテトラのコードを狙ったってのもある筈だ。まあ自分達の強化も有るだろうけどな。あいつ等コードを得る事で自分達の力に出来る様だしな。


「前も行ったがマザーへ交信する事位は普通に出来る。だが、向こうから反応が返って来る事はまず無い。それにこの世界からマザーへ干渉する方法も無い。あくまで干渉出来るのは向こう側からだけだ。そういう仕様なんだよ」


 テトラのさっきの説明ではテトラとマザーは同等みたいな扱いだったけど、実際は違うからな。マザーはこのLRO全てを管理してる存在だ。一端末であるテトラの意見は聞いても指図はされない様になってるんだろう。
 それに干渉出来ない様になってるってのも理解は出来る。だってこういうゲームでは自分が有利に進めたいからって悪意を持ってシステムに干渉しようとする奴だっているだろう。そんな奴等対策に、LROとは切り離されてるんだろう。
 だけどここでポイントなのはきっとテトラには交信の権利が与えられてるってことじゃないだろうか? だって普通のプレイヤーである僕達にだってそんな権限は無い。そのチャンネルを持ってるのはこの世界でもテトラだけ……それはどんなに細く脆い線でも、この世界から確実に伸びるマザーへのチャンネル。
 ここで僕はある疑問をぶつけるよ。


「なあ、そもそもシクラ達が集める『コード』って何なんだ?」


 いや、前の戦いで聞いたよ。確か個人の情報が詰まったデータみたいな物だとシクラが言ってた筈だ。


「コードは自身で、自身はコードだ。コードはこの世界の全てを記憶してる。自分自身も、そして世界その物もだ」
「世界そのものってのはどういう事だ? 一人一人にある物だろ?」


 テトラの説明じゃこの世界自体がコードの塊の様な……


「世界自体がコードの塊と言うか、コードに刻まれていく時が世界になる」
「ますます分かんないよ?」


 クリエの言う通りますます分からんわ。どういう事だ? テトラの奴は説明が億劫なのか大量のお菓子を一掴みにして口に放り込む。そしてバリバリムシャムシャと食いながら話し出す。


「だからだな、お前が知ってる通り一人一人の全てをコードは知ってるし、そのコードが全て合わさればどんな些細な事でも記憶してる大きな世界のコードになれるだろ。世界とは記憶が無いと有ったとしても無いのと同じだ。だからコードがそれを記憶するんだよ」
「要はアカシックレコードみたいな物がコードって事か? 世界の全てを記録してる--みたいな?」
「そう言ってるだろ」


 コードは一人一人の経験の全てを記録して、そしてそれが集まれば世界その物の記録になる。世界の全てを余す事無く記録する為のシステムがコードとして組み込まれてるって事なのか? そしてシクラ達はその記録を抜き取って自身の物に出来る……


「コードにそいつの全部が記憶されてるのなら、抜かれたコードを使えば複製とか出来るのか?」
「出来ない事は無いかもな」


 こわっ、なんだそれ。ドッペルゲンガーが出来上がっちゃうな。まあそんな面倒な事はしないと思うけどな。シクラ達はコード自身を得て力に変えれるんだからな。やっぱりテトラのコードを欲した理由はマザーへのチャンネル確保しか……でも待てよ。


(確かあいつ等、別にテトラがこの世界から居なくなるのを止めようとはしなかったな)


 そうだよ……それっておかしいよな。だってテトラが居ないとテトラのコードは取れない。そうなるとあいつ等にはマザーへのチャンネルが無くなるだろ。あいつ等はこのLROをセツリの為の世界にしたいんだ。その為にはマザーを掌握する必要がある。だからこそ、ずっとコソコソとコードを集めたりしてマザーへの道を探ってた筈だろ?
 それなのにわざわざ見つけた貴重なチャンネルを持つ存在のテトラがもしかしたらこの世界から居なくなるって時に動かなかったのは何でだ? 僕達を信じてた? 


(いや、流石にそれは……ないな)


 信じてたとかシクラ的に考えられない。不確定な事も好きな奴だけど、目的の為にはどんな物だって利用して手段だって選ばない……それに本当に重要な物は逃しはしないだろ。いつだって遊び感覚だけど、アイツは遊び感覚で目的の物をかっさらう奴だからな。
 それで法の書も取られたしな。あれもマザーへのアクセスの為に必要って言ってたよな。システム干渉型のアイテムだっけ? 詳細を見る前に取られたからな。


「おい、コードを取られたって事は、次からは更に奴等は強くなってるって事じゃないのか?」


 リルフィンの奴が気付いてしまったみたいにそう言った。いや、誰もが気付いてる事だけどなそれ。今更だ。今回はまだ取り入れてなかったから良かったけど、きっと次にやる時はシクラ達はテトラの力を手に入れてしまってるだろう。


「どうしたらいいんだ? 主も主要な国の代表も、そして兵さえも居なくなってるんだぞ。こちらの戦力は九割型無くなったも同然だ。それなのに向こうは元から規格外の強さを持ってて、しかも今度は神の力までも手に入れた……しかもそれが一人じゃなく複数だ。
 誰が……一体どうやって……止められるって言うんだ?」


 リルフィンの言葉に僕達は沈黙する。九割型ってのは大袈裟じゃない。実際その通りだろう。あアルテミナスなんて軍の構成はほぼプレイヤーだったんだ。既にない様な物だ。まあ少しはNPCの兵は居るんだろうけど……主力はプレイヤーだったからな。ノーヴィスや他の国は実際似た様な物じゃないだろうか?
 NPCの兵は居るだろうけど、実際外に出てまで戦うのはプレイヤーだろう。ローレには自由に動かせるNPCの兵が結構居たけど、そのローレがいないしな。モブリとスレイプル以外は、代表がプレイヤーだったから、そもそも軍と呼べる物を動かせない。連携も取れそうにない……真っ先にプレイヤーを閉め出したのは、正しい判断だった様だな。


「確かに直接対決では勝てる気はしないかもな……テトラはどうなんだ?」
「ふん、あんな奴等楽勝--と言いたい所だが、奴等は既にかなりのコードを奪って力を付けてた。それに俺の力までも加わるとなるとそうだな……相打ちに持って行ければ上出来だな」
「そうなるよな……」


 邪神テトラでさえ、相打ちか……いや妥当だけどな。でもそれってさ--


「その相打ちってお前一人とシクラ達全員か? それとも一対一の場合どっちだ?」
「そんなの決まってるだろ--」


 そう言ってようやく喰い足りたのか靄を引っ込めるテトラ。そして僅かに笑ってこう言うよ。


「--一対一で」
「やっぱりか」


 僕達は期待はずれの目でテトラを見つめる。いや、分かってたけどな。流石に自身の力をもたれたチート集団には勝てないよな。一対一が限度ってのは現実的だ。


「でもでもテトラでもそうなら、この世界はどうなっちゃうの? クリエも戦った方が良いのかな?」
「いや……その気持ちは嬉しいけど、クリエじゃ戦力には成りそうもないかも」
「くっ、クリエだって魔法使えるもん!」


 そう言ってその場で踏ん張り出すクリエ。すると足下に白い魔方陣--いや、黒くなったり白くなったりしてる魔方陣が現れる。


「クリエだってクリエだってクリエだって--」
「おい、分かったから落ち着けクリエ。なんだかヤバそうだぞ」
「いや! 証明するんだもん! クリエだって戦えるんだから!」


 どんどん強くなる光。そして遂にはボカーーーンと大爆発を起こして僕達はその衝撃と共に吹き飛ばされた。目の前が爆煙と土埃で何も見えない。折角回復したのに、ダメージ認定されてるし……落ちきってるから、痛さが激しくなってる気もする。
 激しくというか、リアルにか? でもあれだけ近くで大爆発したら、リアルなら木っ端微塵だよな。HPという制度が肉体と自分を守ってくれては居るのかもな……まだ。もしかしたらその内HP表示自体なくなったり……とかしないよな?
 セツリの奴にそんな事なかったから無いとは思うけど……結構不安だな。もしもHP表示がなくなったら、本当にリアルと同じ様に殺されそうじゃん。致命傷一発であの世逝き……なんて事に成りかねないからな。
 そんな事を考えながら、僕は体を持ち上げる。爆発の影響で一緒に吹き飛んだ土や小石や枝葉などが体から落ちた。全く、なんて事をしてくれるんだ。折角綺麗な場所だったのに……爆煙や土埃が晴れて行くと、横倒しになった木々とかが目に入って来る。可哀想な事をしちゃったよな。そしてようやくクリエの姿が目に入る。


 元の場所で小さくなってるクリエ。あれはきっと泣いてるな。僕は立ちあがって服の汚れを落とす。そしてクリエの元に行こうと前を見ると、一足先にテトラが居た。なんと意外だな。アイツが進んでクリエの傍になんて……それになんだか言ってるみたいだ。目線をなるべく併せようと腰も落としてる。
 案外テトラはクリエには歩み寄ろうとしてるよな。リルフィンには全くだけど……一体何を言ってるのか興味が有る。慰めてるのかな? そう思ってると手をクリエの頭に置いて撫で撫でしてる! 衝撃映像だ! スクリーンショットして残しておくか。
 僕は左右の人差し指と親指を併せて、カメラを作る。その中に二人を納めて--と、後は撮影と言えば写真がとれる。まあここら辺は色々と設定で変えられるっぽいけど、僕の設定はデフォルトのままだからね。


「よしよし、さつえ--ん?」


 写真を撮る前にクリエが立ち上がってこちらに走って来る。そしてそのまま足に飛び込んで来た。折角貴重な絵面だったのに……残念。てか、一体どうしたんだ?


「クリエ?」
「テトラの馬鹿!  バカバカバカアアアアア」


 う~ん会話に成らないな。ホント何言ったんだよ? 的な顔でテトラを見る。するとテトラは少し落ち込んだ表情で立ち上がる。


「少しアドバイスしただけだ」
「お母さんはもっと優しかったもん!」


 要は言い方が不味かったのか。テトラはクリエの為にって思って発言したんだけど、上手に伝える事が出来なかったんだろう。クリエの事に関しては不器用だもんなこいつ。てか、子供に接し成れてないから、どういう風に扱ったら良いか分かんないって感じだよな。
 まあ僕だって成れてる訳じゃないけど……


「クリエ、許してやれよ。悪気があった訳じゃないんだし。お前だってテトラがクリエの為に言ってくれたって事位は分かってるだろ」
「……でも、お母さんはもっと上手だったもん。優しかったもん」


 口をすぼめてそう言うクリエ。お母さんってのはきっとシスカの事なんだよな。なんだかテトラの奴がバツの悪そうな顔してるよ。「あいつと比べるんじゃ無い」って所か。


「それを言ってやるなよ。テトラなんだからさ。邪神だからちょっと配慮に足りない部分があるのは仕方ない。欠点なんだよ。クリエが余裕もって「まったくしょうがないなぁ」位の心で思いながら聞いとけば良いだろ?」
「クリエ、そんな余裕無いよ」
「お母さんみたいに成りたいんなら、余裕を持てる様に努力するべきだろ。子供だからって何も出来ない訳じゃない。それを証明したいんだろ?」


 さっきの行動だってそう言うことだろうしな。クリエは小さく頷くよ。


「クリエの事、何も出来ないなんて思ってない。だけど、あいつ等は危険過ぎる。規格外なんて物じゃなく、次元が違うんだ。だからまだ幼いクリエをさ、いつまでも一緒に連れ回すってのはな……」
「嫌だよ! クリエはスオウと一緒に居るもん!」


 そう言って足に必死にしがみつくクリエ。参ったな……実際クリエの力は貴重だとは思う。自在に使えれば対抗出来るかも知れない。でもこんな小さなクリエに期待をかけるのもどうかなって思うんだ。まずは僕達がやらないとだろ。
 どうすれば良いかは分かんないけど……


「全く……酷い目にあったぞ全く」


 そう言いつつ合流するリルフィン。折角のくつろぎスペースがボロボロに成っちゃったな。


「丁度いい、そろそろ出発するか。話は移動中にだって出来るしな」
「どこを目指すんだ?」
「どこがここから一番近い?」


 そもそもこの森ってどこら辺に有るんだよ? 僕は地図を表示させる。まだまだ全然埋まってない地図だけど、位置位はわかる。どうやらここはノーヴィス領の西南の端っこ側だな。サン・ジェルクかリア・レーゼどちらとも遠い。


「近くに村とかないのか?」
「村に行く事に意味が有るか? サン・ジェルクくらいまで急いで行った方が現状が分かる気がするが?」
「確かにそうだけど、飛空挺とか……」


 出てる訳ないか。あれって基本大都市間のを結ぶ物だしな。確かにそれなら小さな村に寄るよりも一刻も早くデカい街まで言った方が良いのかも。でもこの距離は……走って行くのならかなり時間がかかるよな。


「貴様は俺の本来の姿を忘れたか?」


 そう言うリルフィンはは自信満々だ。まさか戻れる様になったのか? いや、全快した筈で、もう制約もないし、少しの間戻れるのは当然か。


「それじゃあ目的地はサン・ジェルクだ。ノエインやミセス・アンダーソンは居るだろうからな」


 なるべくお偉い奴が協力してくれた方が良いからな。誰も反対意見は無い様だし、決まりってことで。


「よし!」


 青い光を放つリルフィンが大きな狼へとその姿を変える。こうなるとほんとカッコイイ奴だ。僕達はその背に早速乗り込む。そして一気に駆け出したリルフィンは空に上がって、風を裂く様に進み始める。

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