命改変プログラム

ファーストなサイコロ

奇跡の資格

「どうオルカ? 死んでる?」
『ご冗談を。神である彼がこの程度で死ぬわけがないですよ。少し動揺してるようですね』
「神も動揺するのね。まあ、あんまり私達と変わらないものね」


 そう言ってローレはテトラを足蹴にしてる。おいおい大胆不敵にも程がある。一応それは神だからな。いや、完全に知っててやってるから言う意味もないけど……テトラの奴はその嵩の高い下駄で踏みつけられてるのに無反応だしな。
 さて、だけどこれは予想外に良い展開だ。僕が(なんでかわからないけど)テトラを圧倒して、実質ローレとタイマン的な状況。ローレは召喚獣を読んでるけど、一体は許容範囲内で、しかもアレをやった後に分かりやすくていいかも知れない。
 これ以上呼ばれるのは全力で阻止するけど、一体なら……テトラもあの状況ならそう難しい事じゃない。それにローレと距離を詰めると流石に岸に居る五種族連中は手が出せないみたいだしな。ローレにも時間停止の鉄壁の守りがあるわけだけど、それには欠点もあるからな。
 常に使っておける技じゃない。僕はローレに向き合いこう言うよ。


「ローレ、お前の狙いは分かってる。それが出来るのなら、確かに一番良い。そんな方法があるのなら、僕はお前に協力出来る」
「スオウ何を言ってるの?」


 背中に回ってるクリエが弱々しい声でそう言うよ。クリエは何も知らないからな。無理もない。クリエからみたら、ローレはただの裏切り者だもんな。だけどもしもローレが本当に、みんなの願いをまとめて叶える方法を探してたのだとしたら、ここで聞いておく必要があるだろう。
 それ次第では、争う事なんかしなくて良いんだし。ローレは僕の言葉の意味を正しく察してるように含み笑いを見せてこう言うよ。


「ふふ、私の狙いね。大方エアリーロがペラペラ喋ったんでしょう。やっぱりヒトシラとして繋がると心許せるって事かしらね? まあいいわ。それでスオウは私がその方法をつきとめてたら一緒に協力しようって懇願してるわけね」
「懇願はしてねぇよ」


 なんか言い方がムカつくな。まあ、常に上から目線なのはいつもの事だけどさ、こっちがお願いしてるみたいな言い方はちょっと……


「まあ確かにそんな方法があるのなら、私達は戦わなくたって別にいいわよね。協力出来る。だけどスオウ、この世界はそんなに貴方に優しかったかしら?」


 それは今までを含めてって事か? はっきり言おう、優しさの欠片もなかったな。常に厄介な事ばかりが迫って来るし、油断してると魂まで取りに来る始末だ。これで優しいなんて思えない。って事は……


「おい、それって結局……」
「ええ、そんな方法これっぽっちも確信ないわ」


 ズゴオオオオだよ。結構期待してたんだけどな。いろいろと動いてたんじゃないのかよ? 


「ねえスオウ、三者三様の願いを叶えるって奇跡みたいな物よね?」
「まあな。誰かの願いが叶う為には、誰かが損を引かなきゃ成らない様に出来てるのが世界だし、もしもぶつかり合ってる願いが、全部まとめて叶うのなら、それは奇跡と言えると思う」


 願いが叶う枠は当然に狭くて小さいんだ。そこを潜れる数には限りがあるし、険しい試練がいっぱい。自分がそこを潜りたいと思うのなら、他者を蹴落とす覚悟が必要。たくさんの人が……いや、願いを欲してない人なんていないんだから、そうなって当たり前。
 人は結局一人とか言うのもそこら辺があるかもね。世界の構造上、利害関係なしに築ける関係は稀有なんだ。僕は別に何も欲してない。ただクリエとサナの願いを叶えてやりたいと思ってる。利害関係なんてここにはないよ。
 それに僕を死なせたくないと思ってくれてる仲間達もそうだろう。純粋に余計な事なんかいれずに僕達は動いてる。だけどそれの方が見方としては珍しくて、一般的にはローレやテトラの関係が普通なんだって思う。
 ローレもテトラも自身の願いの為に、他者を利用してる。二人の関係はそれ以上でも以下でもきっとないだろう。ローレの態度を見てたらわかる。仲間と思う奴を足蹴にはしないだろう。この道の先の願いへの通路はこの二人が通るだけで精一杯。クリエの願いが通る隙間はない。特にテトラとクリエの関係上、どっちかしか願いを遂げられないんだ。
 それをどうにか出来るってのはやっぱり奇跡でも起きない限りは無理なのかも知れない。


「じゃあ聞くけどスオウは奇跡を起こす方程式を知ってるかしら?」
「なんだそれ? そんな物があるのかよ?」


 初耳だぞ。そんな物があるのなら、是非教えて貰いたい所だよ。それこそ奇跡のバーゲンセール状態になれる。


「まあ基本は自分を信じるってのがあるわね」
「なるほど、それはまあわかる気がする」


 諦めたらそこで試合終了だもんな。一番大切な事だと言っても良い。


「それと主人公補正、これで奇跡を舞い込む確率が九十九パーセントは上がるわね」
「おい……」


 なんだ主人公補正って。そんなもんどうしろって言うんだ。いきなりとんでもない方向に走ったな。つまりはネタ切れか。信じる以外の要素が思いつかなかったと……そういう事だろ。


「なによその冷めた目は? 主人公補正なんて誰も持ってないって言いたんでしょう? そんなのは漫画や映画の中でだけ適用されるご都合主義的な物だって言いたいんでしょう」
「別にそこまでは思ってないけど、まあ遠くはない」


 すると背中のクリエがこんな事をいってくる。


「クリエはわかってるよ。ようは皆に奇跡の種があるって事なんだよ。シスターが自分の人生の主役は自分だって言ってたもん……皆が主人公なんだよ」
「クリエ……」


 なるほど、純粋な考え方に胸がジーンと熱くなるな。


「生まれてただ生きてるだけで主人公になれるなんてふざけるな」


 おい、なんだ今の抑揚のない声は? 鼻で笑う方がまだマシと思える言い方だったぞ。まるで機械か何か感情のない物にバカにされたような……そんな感じだった。


「どういう事だローレ? クリエの言葉は正しいだろ。自分の人生の主役は自分だ。それは紛れもない事実の筈だろ」
「主役? 冗談やめて。そんなのはただのモブの生き方よ。普通に生まれて普通に学校に通って、普通に就職して普通に結婚して家族を持つ。それが悪い事だなんて言わないわ。それが一般的な『幸せ』でしょう。認めてあげる。
 だけどそれは世界のどこでも起こってる事で、カメラの中央には寄せられない当たり前なの。まあ普通に生きるってのも案外戦いなんでしょうけど、ボーッと生きてる奴もいるわ。そんなのまで主役の仲間入りさせると価値が下がるじゃない」


 なんだか主役や主人公って奴にすごいこだわりがあるんだろうな。まあこいつからみたら他全てがモブにしか見えなくても別段驚かないけど。


「ローレはおかしいよ。じゃあローレは自分の事を主人公だって思ってないの? 自分の人生なんだよ?」


 クリエが必死に声を出して訴えてる。シスターの残した言葉だもんな。否定なんてされたくないんだろう。それもよりによってローレなんかにさ。


「私? 私は当然ヒロインやってるわよ。そこらのモブと一緒にしないで」


 自信満々でそう言い切ったローレ。駄目だなこいつ。頭に何か湧いてんじゃないのか? マジそう思う。さっきのドヤ顔で言った言葉はどこ行った?


「勘違いしないでよ。私はちゃんと戦ってるわ。現状でなんか満足しない。私には大きな夢があって、それの為にいつだって戦ってるの。私はねクリエ。別にさっきの言葉を完全に否定したりはしないわ。誰にでもヒーローやヒロインになれる素養はある。
 ただ誰もがそれをやる事なく、出来る事なく世界と言う歯車の一部にされるだけ。そうなるともう、一人の主人公なんて呼べないでしょ? 歯車なんだもん。歯車は狂っちゃいけない。一人勝手にする事も出来ない。世界にとっては大切な存在。だけどそれは主人公じゃない。
 だからモブよ」


 ある意味「なるほど」と思ってしまった自分がいてビックリ。昔のヒネくれてた自分なら拍手喝采してたかも知れないな。こいつの無駄に自分に自信有り気な態度は人をその気にさせるのに一役買ってるよ。迷いがないって恐ろしいな。
 そしてまだまだローレの言葉は続く。


「さっき私は主人公補正って言って、スオウは冷たい目をしてたけど、私はそれを手にする術はあると思ってる」
「どうやってだよ? 世界は一人の語り手で紡がれてるわけじゃないぞ」


 映画や漫画の主人公はそいつに焦点を当てるからこそだろ。誰もがその一人の視点で物語を見るから、主人公と認識されるんだ。沢山の視点から一斉にいろんな感情や思惑が溢れてるLROやリアルじゃ、そんなの無理だろ。


「語らせればいいじゃない。こっちを見させれば良いのよ。より多く、より広くに。沢山の人が関心を持ってたった一人の動向を見守る。それって漫画や映画と同じじゃない? 条件下で、この世界でだって主人公になれる。
 そしてそうなった時、人は主人公補正を手に入れるのよ。そしてそれを今このLROで一番多く持ってるのが……アンタ」


 そう言ってローレは僕にその小さくしなやかな指を向ける。


「僕? どうしてそうなる?」


 確かに色々と注目されてる事はやって来たかも知れないけど、今はある意味ローレの方がそれに近いと思う。てか、いっぱい自分を注目させる様な事をやってたのは、そういう事なんじゃないのか?  自分を主人公にして主人公補正を手に入れる為に、ずっと隠してた姿まで晒したんじゃ? 
 そしてそれは結果的に成功したと僕には思えるんだけど。現にこいつが、これだけの人が集まる関心ごとにした様な物だ。僕はずっと振り回されてただけ。とても主人公なんて言えない。


「スオウは自分がどれだけ注目されてるのかわかってないのよ。アンフィリティクエストの事もあるし、それにアルテミナスの一見にも絡んでたじゃない。あれで沢山の人の関心を買ってたのよ。そして今度はノーヴィスで大きな事が起こり出した。
 そこにはまた……あんたの姿が見え隠れする。スオウというキーワードは今や世界を引っ掻き回す鍵みたいな物」
「いや、それはどっちかって言うとセツリだろ」


 うんうん、僕には別段特別な何かがあるわけじゃない。僕が持ってる特別なんてせいぜいこのセラ・シルフィングくらいだろ。自分自身には何もない……その筈だ。でもローレの奴はそんな僕の言葉を完全に否定する。
 空に向かって伸びる階段が、月が大きく映る水面に加わって……まるで空とこの場所の境界線があやふやで……そしてそんな場所で僕達は主人公補正なんて言うあやふやな物の会話をしてる。だけど言っとくと、僕達は至って真剣だ。それはマジ。ローレの奴も今この場で冗談話を引っ張って来たりしないだろ。
 本気でそれを手に入れる……そうした筈だ。


「セツリ? そんな名前だけ言われたってわかんない子は論外よ。確かにスオウ達からみたら、その子が出来事の中心なんでしょうね。でもあんた達意外から見ると、そんな子の存在は案外重要じゃない。
 周りはねスオウ、あんたを中心に見てここまでの出来事を追ってるのよ。それを理解しなさいよ」
「理解しろって……」


 正直言うと、そんな事を言われても……だよ。


「いつだって強敵に挑むのはあんたの役目でしょ? それが主人公の特性以外のなんだって言うの。それに私やテトラは第二・第三の主役候補ではあるけど、強過ぎるが故にって弊害があるのよね。その分あんただと、大抵のプレイヤーが自分を重ねやすいってのもあると思うわ。
 私やテトラは仰ぎ見る存在だけど、スオウは同じ目線で見れる存在なの。だからあんたがやっぱり主人公に相応しい。ここに集まった大多数の奴等もきっと、あんたの登場を期待してた筈よ。ノンセルスでの事は広まってるみたいだしね」
「……」


 どう返して良いのかわからない。なに? これって褒められてるの? それともバカにされてる? てかさり気に自慢もいれてたよな。主人公って……なんだよそれ。


「簡単に言うと奇跡を起こしやすい、起こしても良い位置に居る存在で、他人を惹きつける潜在力を持った者よ」
「他人を惹きつけるって……それこそ僕にはない筈だけどな」


 ほんと、これまでの人生で僕が他人を惹きつけた事があっただろうか? そもそも友達もあんまり多くないし、近くに他人を惹きつけるカリスマを持った奴が居るから、そんな風には全く持って思えない。それに僕は自分をそんなに良い奴とは思ってないしね。
 きっと腹の底の所には黒くてねっちょりとした物がグツグツと湧いてる……そんなやつだ。


「なにを言ってるのよ。あんたの仲間達はあんたを思って行動をしてたんでしょう? それをただの偽善とでも言いたいの? あんまり自分を下げない方が良いわよ。自分を謙虚に見せたいのか知らないけど、あんたがそんな風に言うと、周りの仲間まで下がるわよ。
 あんたがやらなきゃいけない事は、価値がないと自分を守る事じゃなく、そう本気で思ってるのなら、仲間の想いを無駄にしない位に大きな人物になる事よ。不遜で不動な、自分がここにありって誰もに見せつける事なの」


 ローレの言葉に僕は静かに柄を握る手に力を込める。確かにそう言う事もあるかもな。自分を必要以上に下げると、皆の想いを無駄にしてるみたいな感じになるのか。思われてる事に疑問があるのなら、思われてる事に疑問を感じない程の人に成れば良いと……そういう訳か。
 まあローレはそれを地で行ってるんだろうけど、僕はそこまで図々しくないんだよね。でもここまで一緒にやって来た仲間を下げる事もしたいわけじゃない。だから僕は、そろそろ自分の価値って奴を見つけないといけないのかもしれないな。


「僕の価値ってなんだよ?」
「主人公なとこ」


 やっぱそれかよ。するとローレはルンルンステップを踏んで割とアッサリと目前まで近づいてきた。あまりにも雰囲気が飲まれてたから、簡単に間合いにいれてしまったぞ。「しまった」そんな事が脳裏を過った瞬間にはもう遅い。


「さあ、奇跡を起こしなさい。私のお膳立ては既に大体整ってるわ。沢山の人が、ここで起きる出来事に注目してる。奇跡を起こす条件は既にあるでしょ?」
「そんなアッサリと起こせるのなら、苦労なんてしないだろ。お前の狙いのそれぞれの願いを全部叶えてってのは僕に起こさせる気だったのかよ?」
「だって私は主人公じゃないもの。そんな奇跡を起こすにはあんたしかないでしょ」


 だから主人公ってなんだよ。もうよくわからなくなってきた。すると背後からトプンと何かが湧いて出てくる。そして目の前のローレの瞳が鈍く光るのが見えた。


「まあ確かに予想外にテトラが仕事をしなかったから無理もないかもね。やっぱり奇跡を起こす条件に『ピンチ』は必要悪ってことね。オルカ」
『かしこまりました主』


 その瞬間、水が僕の体を包もうとしてくる。真っ先に足を飲まれたから、抜け出す事が出来ない。それになんだこの水? 異様に重く感じるぞ。僕はセラ・シルフィングを水面に叩きつけようとする。


『させない』


 だけど今度は腕にまで細長く伸びた水が水面から出てきてそれを阻止する。くっそ、一体ならどうにかなるとか甘かったか。やっぱり召喚獣は厄介だ。それになにより、ここはこのオルカの最も得意とする戦場ってのもある。周りは水だらけだしな。


(あれ? そういえば水が得意って他にも居た様な)


 するとバシャンバシャンと水が跳ねる音が聞こえる。視線を左右に動かすと、光に当てられた水の浅い所に動く何かが見える。しかもその数は結構多い? ぐるぐると僕達の周りを回ってる。


『主』
「うんそうね。別に私が手を下さなくても良いみたい」


 そんな言葉をローレが紡いだ瞬間、水飛沫を上げて水面に人魚が現れる。人魚……つまりはウンディーネだ。やっぱり水場での戦闘最強を唄われてるウンディーネはここを他の種族に譲る訳にはいかないよな。
 奴等の腕にはそれぞれ、水で作り出したみたいな弓が握られてて、そしてその照準は迷いなく僕には向けられてるよ。くっ、やばいな。動きを封じられてる僕には防ぐ術が……いや、ない訳でもないけど、自身から切り離して作れるウネリは一つ。左右から囲んで展開してるウンディーネ共を叩き落すのは無理がある。


「これ以上好き勝手にさせるな‼」


 そんな凛々しい声が後方で紡がれる。その瞬間ウンディーネ達は声を上げて一斉に矢を放つ。確かに体は拘束されてる。だけど背中側のウネリはまだ使える! 取り敢えず激しく動かして背後のオルカを牽制して、更に四本ある内の二本で、前方の水を打ち付けて水柱を立ち上げる。同時に背後でもそれをやる。これでなんとか全方位をカバーできただろう。
 そう思ってるとなんだかピリピリとしてくる。抽象的な表現で悪いけど、他に思い浮かばない。なんだか体の水分が奮い立ってる様な……実際水面も不自然にピチピチしてる。物体が動いて波紋を広げる−−って感じの動きじゃない。
 

「つっ!?」


 いきなり耳に走る激痛。僕は耳に手を当てる。すると手には赤い血がついてた。どういう……するとどんどん水面の飛沫が増して行く。立ち昇ってた水柱が落ち着くと、奴等がなにをしてたのかがわかった。
 ウンディーネは水面に顔を出して周囲を回りながら声を発してる。この微細な振動はきっとこの声に寄る物なんだ。やばい、なんだかクラクラしてくる。視界が霞む。


「人魚はその声で人を惑わすっていう物ね。本命はこっちだったのかも。やっぱり一人じゃ荷が重いわねスオウ」


 ローレの奴が気楽そうにそう言ってくるのがムカつく。てか音なんて全周囲に拡散する筈なのに、なんで平気そうなんだよ。やっぱりウンディーネが僕に向けて攻撃してる……からなのか? 体に登ってくる重い水のせいで湖に呑み込まれそうだ……気を抜くとこの声に意識を持っていかれそうになって本気でマズイ。
 音なんて対処方が……このままじゃ勇み足をどっちかが踏みそうだな。それだけは不味い。どうにか……どうにかしないと……するとその時、夜空を切り裂く黄金色の光が周囲のウンディーネに直撃する。そしてついでに僕の足元にもその光は炸裂して、オルカが操ってた水を弾き飛ばしてくれる。


(今の光は……まさか!)


 僕はそう思って空を見上げる。すると更に追い打ちを加える光線と共に、そいつの姿が見えた。二機の並走する聖典の上に乗って空を進んでくるメイド姿。そしてその周囲には六機の聖典が展開してる。


「散れ!」


 そんな声が聞こえると、僕達の周囲を囲んでたウンディーネ共が水中に消えて行く。流石に聖典の攻撃に耐えかねたのだろう。助かった。でも……


「セラ、お前なんで……」


 だけどそんな僕の言葉は届いてなかったのか、セラは僕を超えてローレを目指す。そして六機の聖典から伸ばす腕の先に光を収束させる。いきなりあれを撃つ気か!?


「一人じゃない。ここから先はあのバカ一人が相手じゃないって認識しなさい!!」


 その言葉と同時に、収束された黄金の光が突き進む。だけどその光以上に、僕の心にその言葉が深く沁みる。本当に……いつだってむちゃくちゃしてくる奴だけど……ここ一番の時は最高に頼りになる奴だよお前はさ!

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