命改変プログラム

ファーストなサイコロ

終わりへの進軍

 思考停止してるクリエに、金髪ロリ少女を押し倒してる邪神である俺事テトラ。この状況は邪神という肩書きに相応しいのか? そうじゃないのか? おかしな思考が頭で回る。いや、邪神らしく対応した方がいいのかどうかを考えてるんだ。
 ここで対応を間違えたら、なんか毛嫌いされそうだしな。まあ既に結構嫌われてる訳で、こいつに情を流す事もしたくないから、それでいいんだが……変態と思われるのはプライドが許さないと言うか……


「ふ……二人は朝から何をしてるの?」


 当然の質問が来た。ここで黙って出ていかない所が子供だな。気を利かせるって事をしない。いや、それはそれで気まずいけどな。


「どうしてる様に見える?」


 面白がってローレの奴が面倒そうな事を言いやがる。やめろよな、そんな煽る様な事を言うな。そしてそんな事を言われたクリエは必死に俺とローレを何度も見て、こういった。


「えっと……え〜と……テトラがローレを襲ってる様に見える!」
「だって♡」


 「だって♡」じゃねーよ。まさに見たままの感想じゃねーか。すると更に疑問におもった事をクリエは口にする。


「なんでローレは裸なの?」
「それはこいつが変態−−」
「−−に脱がされたからよ」
「おい!」


 人の言葉に勝手に繋げるんじゃねーよ。しかも今のじゃ「こいつが変態−−に脱がされたから」ってなる……ってちゃんと言葉になってるじゃねーか!? その場合変態は俺って事だよな。うまい事やる奴だな本当に。


「変態……」


 待て待て、変態と呟きながらこっちを見るな。地味に傷付くぞそれ。このままじゃ本当に邪神じゃなく変態と思われそうだ。


「誤解してるぞクリエ。良く聞け。俺はこいつを脱がしてなどいない。こいつは元からこの格好だったんだ」
「じゃあなんで押し倒してるの???」


  子供とは思えない的確な指摘だった。ぐうの音も出ないとはこの事か。確かに裸なのは俺のせいじゃないが、押し倒してるのは言い訳出来んな。子供って時々真理を突く。


「テトラは裸のローレを押し倒して何をしようとしてるの? 裸のローレを押し倒して」
「何故に二回言った?」


 変態をそんなに強調したいか? だけど言っとくけど、別に何かをするために押し倒したわけじゃない。これは寧ろ、ローレの奴がそう仕向けた感じだ。でもそれも言い訳っぽいよな。こいつがそれを認めないとダメだし……どうすれば。
 いや、下手に言い訳しても邪神の名を汚すだけか。もう変に言葉を付け加えるのはやめるか。誤解は態度で覆す。


「さて、どうしよっか?」


 面白がってそう呟いてるローレ。お前のオモチャになる気はない。俺は俺の髪を掴んでるローレの手に重ねて、その手を解く。


「好きな様に思えばいい。別にやましい事は何もしてないしな」
「あっ、逃げるんだ?」


 ローレから退いたら、すかさずクリエの奴がそう言って来た。こいつも悪い方向でローレの影響を受けてないか? だけど無視無視。ここで言い返したら意味がない。俺は常備されてるコーヒーメーカーへ向かう。


「変態……じゃないのかな?」
「ふふ、まあ変態ではないんじゃない。確かに裸なのは私の意思だからね」
「変態はこっちか」
「何よその目は」


 クリエにまで引かれてるローレ。てか、あいつもまだ素っ裸だからな。ほんと、目のやり場に困る’。


「クリエはおこちゃまだからわからないでしょうけど、女は見られる事で綺麗になれるのよ。まあモブリには関係ないかもだけど」
「どうして?」
「だって男も女も同じ体型じゃない。モブリの男どもはどこで興奮してるのよ? 私はこの姿だからわかるけど、他じゃ無理でしょ」
「そんなのクリエは知らないよ」


 確かにクリエはそんなの知らないだろうな。てか子供に何を言ってるんだか。


「しかもいつまで裸で居る気なの? 本当にそれじゃ変態だよ」
「全くどいつもこいつも変態って、失礼しちゃうわね」


 そう言いながら、ローレはタオルを拾い上げる。それを今度はちゃんと体を隠す様に巻く。最初からそうしてろと言いたいな。俺はカップに注いだコーヒーを啜る。やはりこっちの方が水よりも頭にくるな。冴える感じがする。
 まあ、既にどっかの変態のせいで十分に冴えてはいるんだけどな。本当に全く……あの女は困った奴だ。ここまで気さくに俺に接してくる奴は実際シスカ意外には居なかったからな。スオウの奴も俺の事を神扱いなんてしてないが、あいつとは結局距離を感じる位置から壁を隔てての関係でしかないからな。
 それに比べて、ローレの奴は今や一番近くに居る存在だ。それでこの態度なんだから、新鮮と言うかなんというか、面白い……とは言えるな。まあそう俺が思ってるからこそ、調子来いてる部分がありそうでもある。


「今のローレを見たら変態以外には言いようがないよ」
「ちゃんとタオル巻いたじゃない。まあそろそろ確かに服を来てもいいかもね。だけど今日は来るべき日な訳だし、服だって自分で作った特別なのを用意してるのよ。だからこそ、身を清めてたわけだしね」
「腐り切ってる心は洗えないよ?」


 ぶっ!?−−と思わずコーヒーを吹いたじゃないか。クリエの奴、なかなかやりやがるな。するとローレにクリエは頭を鷲掴みにされて、グリグリ回される。


「誰の心が腐り切ってるって? 言っとくけど、私程素直な子っていないと思うの」
「(自分に)って見えるから〜」


 グリグリされながらもクリエは必死にそういった。的確だな。確かにローレは素直だろう。自分の心に素直だ。周りを巻き込む事をいとわないし、それを絶対に良い方向にさせてやるって思ってる。まあその良い方向も、ローレが思い描く良い事−−なわけだ。
 言っちゃうとありがた迷惑というか、ただの押し売りみたいな……感じがしなくもない。平和は確かに誰もが望んでるだろう。だけど俺は知ってる。その平和を真っ先に壊したのは五種族だと。敵が敵で無くなれば、平和になるって事じゃない。
 お前達は敵が居なければ、敵を作ろうとまたするだけだ。


「なによ、悪いの? 私はね、自分が不幸になってまで誰かを助けたいなんて、毛程も思わないわ。だけど自分が登る過程で、周りが感謝する展開になるのは、やぶさかじゃない。それも私の実力だしね」
「やっぱりなんだかローレは曲がってると思うよ!」


 なんとか掴まれた腕から脱出して、そう叫ぶクリエ。そしてそのまま出口の方へかけて行く。また逃げる気か? そう思ったけど、慌てる必要はない。何故なら−−


「ぷぎゃ!?」


 出口の扉に手を掛けた瞬間に、クリエは迸る電流に弾き飛ばされる。でもまあ迸るって言ってもそれ程強力なわけじゃ無い。静電気の四倍位の電撃が体を襲うだけだ。そしてそんな電撃に弾かれたクリエは体をビクビクさせて縮こまってる。


「うう……」
「昨晩言ったじゃない。あんたはこの部屋から許可なく出る事は出来無いのよ。忘れてたの?」


 まあそういう事だ。逃げられ無い様にそんな対策をしたわけだ。縛ってた方が楽だが、流石にそれはどうかと思ってな。こいつだってあと少ししかこの世界と繋がっていられないんだ。俺がこいつの中にある力を使い切れば、役目の終わりと共に、きっともうクリエと言う存在は産まれる事はなくなるだろう。
 世界の力の流れも変わるんだ。世界樹双方が溜め込んでた力の結晶は、きっと更に効率化された世界の中では生まれない。だからこいつにとっても、今日と言う日が自分の存在の最後だ。それを考えると、流石に縛ったままじゃ……な。
 俺はやっぱり邪神なんて言えないな。甘すぎる。ここで残酷になってこそ、邪神なんだろうが、実際この小さなモブリは、五種族の姿をしてるがそうじゃ無い。俺の憎むべき存在じゃないからな。俺は基本五種族の奴らは嫌いだ。
 邪魔をしようものなら、兵器で滅ぼせる位には嫌いなんだよ。俺には恨みもあるしな。だがシスカの願いもあるから、自分からは早々手を出す事は無い。だが基本嫌いだ。これは変わらん。
 でもクリエはその存在が根本的に五種族とは違う。こいつは俺とシスカの力が合わさって生まれた結晶みたいなものだ。言うなれば子供と言ってもおかしくない。シスカの奴はこの世界の全てにそういうだろうが、俺はそんな寛大じゃ無いからな。自身の力が干渉してない連中にまで情は移さん。
 

「忘れてない……けど、トイレはどうするの? クリエ漏らしちゃうかもだよ!」


 一瞬だけの電撃だからか案外元気そうだ。トイレはそういえば中にないんだよな。風呂もあるのに、トイレは別っておかしな話だ。まあ扉を出た向かいに直ぐあるんだが、一体どんなこだわりなのか理解出来ない。
 そのせいで、クリエは好きな時に直ぐにトイレにいけないもんな。だけどそんな問題にローレはあっさりと解決法を提示する。


「オムツでも履いてればいいじゃない」
「そんなの! 絶対! 嫌だよ!!」


 相当嫌なのか、わざわざ三箇所も区切って叫びやがった。でもまあオムツは確かに……って思ったが、モブリって普通に履いてるパンツがオムツっぽくないか? だって尻がでかくて、足が短いからな……普通の格好でもオムツに見える。オシャレオムツに見える。


「モブリの体型ならなんだってオムツと一緒じゃない」
「そ、そんな事ないもん! 実際にオムツしちゃうのとは全然違うもん!」


 ローレの奴が俺と同じ様な事を言ってたな。だけどそれにはクリエは全否定だ。まあ一応選んでる格好がオムツとか言われたら嫌だろうな。だが、見えるんだよな〜。スカートとかなら違うんだろうけど、ズボンは全部オムツに見える。これはマジだ。


「ええ〜でもあんたがトイレの度に付き合わされるのはちょっと嫌なのよね。面倒だし。オムツでいいじゃ無い、どうせしててもおかしく無い年でしょ?」
「違うよ! クリエはとっくに卒業しちゃってるもん!」


 そう言ってジタバタしてるクリエ。もうヤバイのかもしれないな。


「うう〜良いからトイレに活かせてよ〜限界だよ〜」
「しょうがないわね。アヒルさんで良い?」


 やれやれという顔で持って来たのはアヒルトイレだ。どこにあったんだよそれ? まさかアイテムとして持ち歩いてるとか? 冒険中に用を足したくなった時のために? 野糞なんて高貴なローレはお断りか。
 だけどそんな気遣いもこの一言で無駄に終わる。


「良くないよ! なんでこの場でさせたがるの? やっぱり変態なんだぁ〜」
「別に私は他人の排泄物なんて見たくないわよ。そんなスカトロ趣味は無いわ。どうせだから遊んでるだけ」
「この鬼畜〜〜」


 眉を寄せて瞼を硬く閉じながらそう言い捨てるクリエ。股に手をやって足をジタバタ……本当にヤバそうだぞ。


「んん〜!!」
「おいローレ」
「全く、手を煩わせないでよね」


 そう言って、ローレはクリエを引っ張りながら扉を開ける。そしてそのまま外に出て−−ってちょっと待て!


「おい、お前のその格好もマズイだろ!」


 部屋の中だから百歩譲ってたけどな、通路はもう外部だぞ。プライベート空間じゃ無い。そこにタオル一枚で出る気か? 痴女だろもう。


「着替えてる暇なんてないわ。それにこっちには私達しか居ないから平気よ」


 ローレは堂々とタオル一枚で通路に出てった。まあ、俺が心配する事でもないか。どうせなら、恥ずかしい写真の一枚でも取られた方が堪えるかもしれないしな。そう思ってると、奴らが出てった扉の向こうからこんな声が聞こえて来た。


「ちょっと、もう良いよローレ!」
「何言ってるのよ。漏らしそうなんでしょ? だから手伝ってあげようってしてるんじゃ無い。大人しくパンツを下ろしなさい」
「変態変態〜〜〜〜!!」
「うるさいわね。ほら、さっさとしっかり狙いを定めて出しちゃいなさいよ。汚さない様に見ててあげる」
「こんな格好でなんて出せないよ! クリエは一人で出来るから降ろしてよ!」
「ええ〜それじゃあつまら……こほん、良いからさっさと出しちゃいなさい。グダグダ言ってると、弄って無理矢理出させるわよ?」
「うぅ……」




 そしてトイレの扉も閉めてないせいか、ジャバジャバジャバとなんだか恥ずかしい音が聞こえてくる。なんだろう、コーヒーが途端に不味くなったな。どう考えても今のは変態だろ。誰がどう解釈しても正真正銘の変態だ。スカトロ趣味はないんじゃなかったのか?
 きっと誰も反論しないと思う。それだけの変態行為だろ今のは。トイレを無理矢理させるって……しかもその様を見てるって変態以外の何者でもない。まああいつにとっては面倒な事をやった分の代償みたいな感じなんだろうか? でも放尿させてそれでご満悦になれるのなら、ヤッパリ変態な訳で、マジであいつには頭抱えるな。


 ガチャっと扉が開いて戻ってきた二人は、対象的な顔をしてる。ローレの奴はなんだか愉悦そうな顔してるのに対してクリエは涙目だ。


「嬉しそうだなお前」
「そう? やっぱり誰かの屈辱的な表情ってゾクゾクするわよね」


 なんて事をなんて嬉しそうにいうんだろう。俺よりもよっぽど邪神だよこいつ。でもまあ、クリエの放尿に満足したわけじゃ無いのか。良かった良かった。屈辱を受けたクリエの表情に満足したんだな。


「ローレのバカ! 変態! あんな事するなんて信じられないよ!」


 クリエの奴が堪忍袋の緒が切れたみたいに怒り出す。いや、怒って良いだけの事はされたよな。寧ろあれを怒らないのはだめだよな。普通の反応だ。だがローレの奴は悪びれた様子がまったくない。寧ろ、こんな事を言う奴だ。


「そう? 結構気持ち良さそうな表情でオシッコしてたじゃない。それに寧ろ、漏らさせずにトイレまで連れて行った事に感謝しなさいよ。それがあんたの立場でしょ? 理解しときなさい」
「も…もっと大切に扱え!! クリエは大切な筈でしょ!」


  人質からの必死の要求が来た。まあ確かに、大切な存在だな。だけどそれだけじゃ弱いんだよ。人質を宝物みたいに扱うにはクリエは元気ハツラツだからな。


「確かに大切だけど、殺すわけじゃ無いもの。死なない程度に、本当はもっと酷い事だって出来るのよ? それをこんなじゃれ合いで仲良く済ましてるんだから、頭を下げて感謝するべきなのはあんたの方よ」
「納得いかない!」
「納得いかなくても、それが事実でしょう。あんたの役目は、今日の夜、儀式が始まるまで生きてる事。生きてればどんな状態だって良いのよ。良かったわね、私が優しくて」


 そう言って微笑むこいつが怖い。なんだって出来るけど、これだけにしてやってると脅してるぞ。しかも自分よりもずっと小さい子供を。するとクリエは涙を拭って、強い目で俺とローレを見据えて拳を握りしめてこう言った。


「クリエは絶対に、このまま消えたりしないもん! バーカバーか! ローレの意地悪!!」


 まさに子供っぽい悪口を捲し立てて、クリエの奴は部屋に戻って行った。全く、なんで俺まで……虐めてたのはローレだろうが。俺はあんまり酷い事を直接やってはないぞ。ただ、スオウを殺そうとした事で、完全に嫌われてはいるけどな。
  

「全く、ガキなんだから。さて、そろそろ食事ね」
「いや、まずは着替えろ」


 順番おかしいだろ。いつまでそんな格好で居る気だ。もう何回も同じ事を思ってるぞ。


「言ったでしょ。今日の服は特別なの、食事中に汚したら嫌だし、別の服を着て、また着替えるのは面倒なのよ。だからまずは食事。異論は認めないわ」


 そう言うとローレの奴は手をパンパンと叩く。すると、扉が開いて、次々と給仕モブリの面々が料理を運んで来やがった。どこで待機してたんだよ。次々に料理をテーブルに並べて行く給仕モブリ。するとその中の一人が盛大に転んでフォークやスプーンが入ってた入れ物を零した。


「あわわ! ご、ごめんなさい!」


 そう言って慌てて拾い集める。だけど誰も気にしちゃいない様だ。ローレだけが「まったくも〜」とか言いながら近くの奴を拾ってあげてた。ローレの奴はあの給仕モブリの一人にだけは妙に優しいからな。
 でもそれが気に入らないのか、他の同僚の目が冷たい気がする。そもそも何故かナイフとフォークや箸は別の奴も持ってたみたいだしな。全然信用されてない? まさか料理を運ばせなかったのも、これを見越してたからではないか? 
 ドジを見透かされるドジって哀れだな。まあ俺が気にする事でもないな。全ての料理と俺とローレそしてクリエの分の食器を用意し終わった給仕モブリ達はそそくさと退室していく。俺もローレもクリエを無視して料理に勤しむ。
 朝食にしては多い気がする料理だ。一言で言えば豪華な料理だな。まあ世界を手玉にとってる俺達には当たり前か。そう思ってると、奥の部屋の扉が開く。その隙間から、小さなモブリの姿が……どうやら臭いに反応した様だ。


「なにやってるのよ? 食べたいんなら食べれば良いわ」


 珍しく普通の事を言ったローレ。だけどクリエはきっとさっきの事を根に持ってるから、素直に成れない。


「ふ、ふん! 別に食べたくなんかないもん。クリエ、お腹減ってないし」
「あっそ。じゃあ引っ込んでなさいよ。目障りだから」


 やっぱこいつは酷いな。トゲがある事をサクッと軽く言いやがる。するとどこかからか、キュルルウてな音が。


「誰よ変な音を鳴らしてるのは? 耳障りでもあるから、食べれば?」
「ち、違うもん! クリエじゃないもん!」
「ふ〜ん、じゃあ全部食べちゃおっと」


 そう言って皿の上の料理を独占し出すローレ。俺の食べる分まで取るなよな。


「酷い! シスターとかなら、後でちゃんと残してたのを持って来てくれるのに、そんな風に絶対に思えない!」
「私がそんな良い奴だっていつから錯覚してたのよ? この世は弱肉強食。食わない奴に施す情なんてないわね」
「ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん! うみゃあああああああああああああああ!!」


 奇声を発したクリエは口へ運んでたシクラの料理を奪い取る。そしてムシャムシャゴックンした。そしてそこからはバトルみたいな食事が始まった。それは、こいつら本当は結構仲が良いんじゃ? と思える光景だった。まあ気のせいだろうけどな。


 食事も終わり、太陽も高さをましてる。広場の方には、五種族の代表とその取り巻き共が集められてた。どうやら、そろそろ出発するみたいだ。てか、かれこれローレとクリエが着替えに同じ部屋に入って軽く一時間は超えてるぞ。いつまでかかってるんだ? 
 外の連中は待たされすぎてざわめいてるぞ。そう思ってると、ようやく扉が開く。そして出て来たのは見事に装飾された二人だ。


「お待たせテトラ」
「お……おう。てか遅すぎだろ」
「ちょっと手間取っちゃって。これみればわかるでしょ?」


 そう言って腕を広げて一回転するローレ。自身で作り上げたらしいその服は、確かに着るのが大変そうだ。特殊な編み込みと生地を組み合わせて、カラフルな感じの和装になってるが、決して品が無いわけじゃ無い。透明な布が幾つも地面にたれ無い程度にながされてるし、自慢の金髪は丁寧に櫛でとかされててしかも髪にも服と同じ素材の物でいくつかまとめて束ねてある。
 和装なのに膝丈のスカートで足元は底が高い黒い下駄? テカってる。そして構えるのはもちろん、こいつの最大の武器だ。それとも良くあってる。


「見た目だけじゃ無いわよ。これは性能も一級品よ。私の持ってる技術を駆使したからね。じゃあいってくるわ。クリエをよろしく」


 さっそうとテラスに向かって歩き出すローレ。一歩を踏む度に、カランと下駄の音が立つ。その横顔も背中も自信に満ち溢れてるのがわかる。クリエはどうやらローレと同じ格好だ。だけどこっちは少し不安気な顔だ。それはそうだろうな。ここから向かうのは、自らが生贄となる場所だ。嬉しそうに出来るわけ無い。


 テラスに出たローレはしばらく何も言わずにただ見据える。そして静かになったところで、その杖で音を立てた。


「おはよう皆さん。昨夜は良く眠れたかしら? 今日、この世界は変わる。それを皆さんにも見せてあげる。今日の事はきっと語り継がれるわ。そしてその役目を担うのが、あなた達。
 だからその魂に刻みつけなさい。私達がなすべき事を、世界が変わる瞬間を」
 

 

  空へと飛びたつ五隻の飛空艇と一隻のバトルシップ。飛空艇で来てない種族にも割り振って、バトルシップは俺達専用だ。これは門出。だから祝福も盛大に。飛び立つ飛空艇の先には大量のモンスター。そして山の様にでかい奴も起き上がる。
 大量のモンスター達はぎゃあぎゃあと言葉にならない声で叫び続ける。


「全く、派手にやるわね」


 機長席に座ってるローレの奴がご満悦そうにそう呟く。飛空艇とバトルシップの後ろについて、大量のモンスター達までも行進し出す。空が揺れる。世界が揺れる音が聞こえ出す。


「さあ、ゆっくりと目指しましょうか。世界と世界を架ける橋がある場所へ。出発よ!」


 俺達は進み出す。終わりの場所へ。

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