命改変プログラム

ファーストなサイコロ

友達だから



 伸ばされるイフリートの腕。時を遅く流されてる僕にはそれを避ける術がない。恐ろしき時を操る魔法。その力を僕は肌で感じてる。
 新しい力を得て浮かれてたのかも知れない。安易に攻撃を仕掛けた結果がこれだよ。一応、ローレの事は警戒してたつもりだったけど、どこかに今の僕ならどうにか出来る……そんな気持ちが有ったのは確かだ。
 それが慢心でなくてなんなんだ。ローレ相手に……いや、戦闘で一番やっちゃいけない事だった。幾ら後悔しても遅い。
 普段から僕なんてまだまだだな~なんて思ってるのに、一番やっちゃいけない所で調子づいた結果がこの様だよ。どうしようもない僕は、強く瞳を閉じる。するとその時だ。真っ暗になった視界の向こうで、激しい音が聞こえた。
 僕は恐る恐る目を開ける。すると目の前に白銀の毛が靡いてた。これは……リルフィン!


【貴様!! 主に逆らってまでそいつを守るか!!】
「ただ従うだけが、俺達じゃないだろうが!!」


 そう言ってリルフィンはその白銀の毛を逆立ててイフリートに向けて放つ。細い毛一本一本がアホな威力してるから、思わずイフリートも後ろへ押される。そしてそれを確認するとリルフィンは自身の持ってるその武器で僕の体を殴りやがった。
 僕は横に吹っ飛ばされるよ。


「いってえええええ!! 何するんだよ――って、動くぞ!」


 今の攻撃のおかげか、体が普通に動くようになってる。


「時魔法はデリケートだからな。自身じゃ何も出来なくても、範囲外からの攻撃には弱い。
 だがそれも、今のお前みたいに限定的な物ならば……だ。一定の範囲の時を丸ごと止められれば、当然外からは一切、干渉出来なくなるからな」


 それは知ってる。でもなんか時魔法にはバラツキがないか? 時魔法の特性が今のとその前のとじゃ違うように感じるぞ。


「それは術者の違いだ。ローレは契約してる召還獣の魔法を使用できる。だがそこには制限がある。人の身で我ら召還獣の魔法を完全に使いこなす事は出来ないからだ。
 だからローレが使う魔法と我らが放つ魔法は似て非なる特性を持つことがある」
「なるほど……じゃあ今のはローレが使った魔法か。感じた範囲だと、ローレ自身で操れる時は範囲が極端に狭いとかか?」


 僕がそんな考察してみると、リルフィンは首を振ったよ。


「知らんな」


 なんでだよ。ずっと一緒にいたんだろ? それでも全てを開かしたくないとかか? 大した忠誠心だな。


「ふん、ただ単にそこまで把握などしてない。召還獣事に違いがあるからな。だが、さっきのは少しおかしいがな」
「おかしい?」


 どういう事だ? 僕たちはローレ達と視線をぶつけながら、再び動き出すタイミングを見計らってる。今度はあんなヘマをしないためにも、ここは重要な部分だ。


「我らの力を使うのにも詠唱は必要だ。だが、今ローレはそれをしなかった」
「短縮技があるんだろ? それも知らないのかよ?」


 本当に信用されてたの? って言いたい位だよね。今のリルフィンの印象じゃさ。だって知らない事多過ぎだし、一人だけ召還獣で意見違うし……ローレは元からこんなリルフィンを信じてなかったんじゃないかと思える。
 そんな要素が一杯だ。


「いや、それは知ってる。だがそれを出す場面など俺はみてない」


 出す? 何かの物体なのか? 変に隠さなくて良いから、ズバッと言えよな。


「その物は何なんだよ?」
「それは――」


 するとここでローレが会話に割り込んできた。


「やめてよリルフィン。不用意に他人のプライバシーをバラす物じゃない。そうでしょ?」


 何がプライバシーだ。どの口が言ってんの? それにこれは戦闘に勝つために必要な物だ。それをプライバシー云々でやっぱり止めとこうとはならないからな。
 自分だって散々してる事だろう。それなのに、自分の秘密をバラされることはイヤとか、都合が良いんだよ!


「リルフィン、お前はもうローレに従う必要はないんだ。だから言っちまえ!」
「言わないわよねリルフィン。対立してても心は一緒だものね。私はアンタが離れてくなんて実は思ってないわ。だって長い付き合いですもの……そうでしょう?」
「ある……くっ」


 今一瞬、リルフィンの奴ローレの事を「主」って呼びかけたよな? こいつ、全然ローレ離れ出来てないじゃないか。
 まあわかってた事だけどな。こうやって対立してるのもローレの為なんだ。結局リルフィンはローレの元から離れる気なんかない。
 でも、今は僕の唯一の味方でもあるし、戦力でもある。ここで向こうに行かれちゃ、正直邪神復活の阻止は絶望的だ。まだまだ浄心水は溢れて来てるけど……それに伴って世界樹はどんどん黒く染まって行ってる。
 もうきっとヤバいんだ。モタモタなんてしてられない。


「リルフィン! いや、フィンリル! 迷うな! 今やらなきゃいけないことを思い出せ! 僕たちは邪神復活を阻止するんだろ!!」
「スオウ、ちょっと黙ってなさい」


 そう言って杖を床でカツンと鳴らすローレ。すると再び僕の時間が遅くなる。


(くっ――またか!? リルフィン!)


 僕は殴ってくださいと目で訴え掛ける。だけど奴の瞳は近づくローレに釘付けだ。


「リルフィン、貴方は忘れてるのよ。なんでかはわからないけど、この世界に落ちちゃって、その時にいろんな記憶も落としちゃってる。
 最初は言葉も自分が召還獣って存在だった事も忘れてたでしょう? だから貴方は邪神の事についても、忘れてる。
 本当は誰よりも知ってるはずなのに、言い伝えや伝承に影響されて、悪いところばかり思い出してる感じよ。肝心な部分を忘れたままなの。
 だから貴方は受け入れられない。私を信じなさいリルフィン。そして同じ存在の召還獣の事もね。彼らは別段、私の意見に反対はしてないわ。
 それこそが、貴方自身が重要な事を思い出してないって証拠じゃないかしら」
「それは……」


 ヤバい。直感でそう思った。このままローレに一方的に喋らせちゃいけない。アイツ言葉を操るのに長けてる。このままじゃリルフィンはきっと言いくるめられてしまうぞ。
 だってどっちかって言うと、リルフィンはそんな口数多い方じゃない。あの妙な自信と不遜な態度……それにデタラメな論法でローレはいろんな物を掌握してきたんだろう。
 リルフィンが口で勝てるなんて思えない。アイツには妙な事を言わずに、ぶつかるのが一番だ。


「俺は……一体何を忘れてる?」
「ふふ、思い出させてあげよっか? 本当は自然に回復するのが本人にとっても良いんだろうなって事であえてやらなかったけど、こうやってリルフィンと対立し続けるのは心苦しいから……私も辛いから……もう使っちゃって良いよね?
 ううん、使わせて。そしたらきっと、こんな馬鹿げた事しなくても良い。私たちはいつも通りの関係に戻れるわ」


 何が「私も辛い」だ!? わざとらしすぎて吐き気がしたわ。ダメだ、絶対にローレの奴そんな事思ってない。思い出せリルフィン。
 アイツお前と対立するとき、結構ノリノリだったぞ。


「なんだか隣の奴が何か言いたそうな顔してるわね。だけどこれは私たちの問題よねリルフィン。私たちの事を、昨日今日あったばかりの奴に言われたくない。
 それが例えスオウでも、私達が過ごしてきた時間には割り込めないわ」


 うぐ……確かにそれはそうかも知れない。それに実際、どんな扱いされても、リルフィンはローレを慕ってる。それにはそれだけの理由がきっとあるんだろう。この二人には、この二人にしかわからない……見えない糸が繋がってるのかも知れない。
 昨日今日会ったばかりの僕には、確かにその絆にはどうあっても割り込めないし、何を言う資格もないんだろう。僕はただ、リルフィンの選択を信じるしかない。


「主……」


 そう呟くリルフィン。主ってもう言わないんじゃないなかったのかああああああ!? って僕は心で叫んでた。だって「終わった」って思ったもん。
 それを呟いたって事は、やっぱりリルフィンが選んだのはローレ……って事だろう。


「ん? 心は決まったかしら? 全ての自分を取り戻す覚悟。どっちに転ぶにしても早くしたほうがいいわよ」


 余裕を見せるローレ。もう答えは決まってるみたいな態度だな。溢れてた黒い光が再び宇宙へと延びて、更に大きく成って行ってる。
 それはやっぱり世界樹の力の減衰と相反してる感じだ。確かに早くした方が良い。僕たちにはあまり時間が残されてない。
 響きわたる聖獣共の断末魔の叫びも少しずつ力が無くなっていってるみたいだし……限界も近いぞ。あれ? そう言えば、聖獣が全部の世界樹の力を請け負う前に死んだらこの場合はどうなるんだ? 
 もしかして邪神の復活は無いんじゃないか? その可能性は今更だけど有るよな。僕は必死に「早く死ね」と心で念じ続けるよ。


「主……私は……私はその申し出を断ります」


 その言葉を聞いてピクっと眉を動かすローレ。僕も思わず念じるのを止めちゃったよ。だって絶対に記憶を取り戻すと思った。そして納得して、ローレ側に行っちゃうんだろうなって……でも、今なんて言ったよ?


「おかしな事を言うわね。全てを思い出せば、納得できる筈なんだけど? それともアンタはただ私の邪魔をしたいだけなのかしら?」


 ローレはリルフィンに鋭い視線を向ける。あいつ自身もかなり予想外だったみたいだな。


「そんなまさか、私はいつでも主を慕ってます。主の事をいつも考えてる。主の事を思わない日はないといえる!」


 おいおい、愛の告白しだしたぞ。そんなリルフィンに流石のローレもちょっと「え?」ってな感じに成ってる。でもここで同様するわけにも行かないから、不遜に振る舞ってこう言うよ。


「じゃあ大人しく言うこと聞きなさい。それが至上の喜びでしょ」
「確かに、光栄至極な事です。だが私達の契約は主従関係ではない。覚えてますか主? 初めて私達が出会った時の事を――」
「覚えてるわよ。忘れる訳がないわ。私は自分の強さに合わないダンジョンの奥で迷って泣いて……そんな時に同じボロボロだったアンタに出会ったわね。
 パーティーの奴らが私だけ置いてさっさと逃げ出すからあんな事になって……本当に【死ね】と思ってた時に見つけたのよね」


 おい……途中からリルフィンの事じゃなく、そのパーティーメンバーへの恨みに成ってるじゃねぇか。印象薄いな。


「あの時の主は泣きながら呪いの呪詛を永遠と詠唱してましたね」


 なんだか昔を懐かしむ感じで語ってるけど、言ってる事は笑えないからね。何だよ呪いの呪詛って……超怖いよ。性格全然変わってないじゃないか。


「だってあれが初めてじゃなかったもの。アイツ等はその時よく組んでた奴らだったけど、私が止めるのも無視して変な冒険心を満たすために危険を求める。
 その癖、本気で不味くなったら直ぐに逃げ出すヘタレ。それでもあの時の私はまだ殊勝だったから付き合ってやってたけど、あの時に見限ったのよね。そんなバカな奴らに付き合って費やした自分の時間が不憫で泣いてたのよ」


 今のローレはそいつ等のヘタレさに嫌気が差したせいかよ。なんて化け物、生み出してくれてんだよ。僕もそいつ等をブン殴りたい。


「主はあの日、私と出会わなければ、こんな重荷を背負う事は無かったでしょうね。私はただずっと、貴方の後ろを付いて行くだけで良かったのに……」
「なにを勘違いしたのか知らないけど、ちっちゃなアンタは私に懐いたものね。同じ境遇にでも思えたのかしら?」
「主が優しかったからですよ。食べ物をくれました。モンスターから助けてくれました」
「あれはムシャクシャシてたからなのよねホントは。アンタの為じゃないわ」


 折角の綺麗な思い出を何故に怖そうとするかねローレは。だけどリルフィンはあんまり気にしてなさそう。


「そうだとしても、私は嬉しかった。それから私達はただ延々と森の出口を目指した。ただ黙々と……会話なんて無かったですが、何度も助けられて、自分も勇気を出して戦って……そんな事を繰り返す内に、後ろをトテトテついていく事に、不安なんて感じなく成ってましたよ」
「ふん、てか喋れるとか知らなかったし、私が慎重に移動してるのに、アンタが無防備にトコトコ付いてくるから倍大変だったわよ」


 結局気にしてるんじゃねーか。どうやら昔は普通の感情って奴を持ってたみたいだな。やっぱり権力を握った事が、ローレの変容の始まりなのかな?


「それは……返す言葉もありません。ですが、主は森を抜けた所で言ってくださいました。昇る朝日を背に受ける中で、優しく優しく……【結局ここまでついてきて、一体何がしたいのあんた? う~ん、部下って感じじゃないわよね。今の私は人でもないし、ペットってなんかヤだし。光栄に思いなさい、私からアンタに捧げる立場は友達って事にしておいてあげるわ。
 アンタならきっと裏切らないわよね? 誓えるなら一声鳴きなさい】
 と。その時、私達の契約は完了しました。私達の契約は友達という曖昧で拘束力なんて無いに等しい薄っぺらい物です。だけど……他のどの召還獣達よりも、強い物があると思ってます」


 するとローレは小さく「そうね」と答える。


「でも、それならどうして記憶を取り戻す事を拒絶するのかしら? 私達の間にある強い物を取り戻せるキッカケに出来るわ。
 アンタの納得できない事もきっと解決する。そうしたら今まで通りなのに」
「そうですね。本当は自分が間違ってると思ってるのかも知れません。主はいつだって正しかったですから。自分自身に自信なんて持てない。
 だけどただ……自分だけだと思うのです。こうやって主と対立出来る召還獣は。それに主はずっと一人でいらっしゃった。色々と溜まってる物があったはずです。
 いろんな責任を一人で背負ってたのですから」


 う~ん、リルフィンが何を言いたいのかいまいちわからん。だけどあんまり長く喋って貰っても困るよな。別に喋るのはいいけど、まずはこの状態を解いて欲しい。時間をかければ掛けるほどに、得をするのはローレ側だ。わかっってるよな……そこら辺?
 僕は心でそんな風に思うけど、当然リルフィンには届かない。てか、責任とか感じる玉かアイツ? 星の御子の役目とか、世界征服の足がかりにしか考えてなさそうだと思ったけど。


「それで? そんな責任に私が押しつぶされそうにでも見えたわけ? これは嫌気がさして、全部諸とも滅茶苦茶にしちゃおうとか思った私の強攻策とでも?
 それなら、的外れも良いところよリルフィン」
「まさか……主が全てを投げ出そうと思うなどあり得ない。主は誰よりも責任感が強く、期待に応えようとするお人だ。ですが私は、言いたいことがあるんです」
「言いたいこと?」


 首を傾げるローレ。するとリルフィンが力強くこう言った。


「私は貴方の僕じゃなく、友です。だからこそ、理屈や常識じゃない所で反対する。もう満足だからと、私的には思うんだ。
 友達だから、従うだけじゃなく、私は主の身を心配する。これ以上良いじゃないですかと苦言を呈する。誰も出来ない事を、私はやれる存在でありたい。
 それが私の存在意義だと……最近思い始めたんです。本当は邪神なんてどうでもいい、私は……私の存在価値を主の中で高めたい。本当はただ、それだけで反対してます。嫌いになんてならないでください。
 これでも私は主が大好きですから」


 なんだろう……これはひねくれた愛の告白か何かか? 体の時間が流れが遅くなってるからいまいち反応出来ないけどさ……なんかこう、もう滅茶苦茶だったな。
 ローレの奴が滅茶苦茶……ってだけじゃなく、十分リルフィンも滅茶苦茶じゃねーか。ようは何だ? 大好きなローレにもっと自分をみて欲しい……とかじゃないかコレって?
 だからこそ、論理的に納得してローレ側に付くのが嫌だから、記憶の復活も嫌ってことか? 今は思い出せないから、リルフィンは自分の心に素直にいれる――――のかも知れない。
 それを自分でわかってる? う~んやっぱり冷静なのか滅茶苦茶なのかわかんないな。これにどうローレが反応するか……もしかしたらキョトンとしてるかも。
 そう思ってると、どうやらローレは必死に笑いを堪えてる様だった。


「ぷっ……くくく……何よそれ? アンタの方がよっぽど滅茶苦茶じゃない。意味わかんないし、訳わかんない。それにアンタが私を大好きなのって周知の事実でしょ。知ってる。
 でも……そんな滅茶苦茶言うアンタは知らないわ。ずっとこっちに出てるから、人の感情の影響を受けたのかしらね?
 それにしてはここ数日で変わりすぎな気もするけど……強い影響を周りに与える奴でも居るのかしらね」


 そう呟いてローレは何故か僕の方をみる。なんだよ……リルフィンがおかしくなったのは僕のせいとでも言う気か? 関係ないね。
 ただ単にリルフィンは今まで押さえつけてた感情を吐露しただけだろ。自分のワガママを、自分とお前の関係を見返す事で出しても良いんだって気づいただけだ。
 いろんな事があったんだ……沢山誰もが考えたさ。リルフィンだけじゃきっとない。


「主……」
「やめなさいよ。今私達は喧嘩中でしょ? 主なんてやめて名前で呼びなさい。良いじゃないそのワガママ。面白いわ。
 喧嘩って実はあんまりやったこと無いのよね。友達同士なら時にはこういうのも悪くない。ただ幼い感情をぶつけ合う……怒って向かってきて良いわよ。
 ついさっきまで友達とか忘れてたわ。アンタが余りにも忠実な駄犬に成ってるからね。私の友達っていうなら、そうね……もっとこういうのがあった方が楽しいわ。
 ふふ、この分からず屋。ワクワクしてきたじゃない」
「――――――――ふう、それはこっちの台詞だな。この傲慢娘が! 少しは現状で満足して落ち着きを持て!!」


 リルフィンは一息ついて、心を整理して言った感じ。なんだかお互い悪口言いながらも楽しそうだね。しかもリルフィンの奴、その勢いで持って僕を殴るんだもん。魔法は解けたけど、なんか納得いかない。お前等、喧嘩したいだけだろ。


「スオウ、貴様ローレから貰った物は何かないか?」


 いきなり何を言い出すんだコイツ? そう思ってると、二人の会話の終わりと、僕の解放が戦闘再開の合図だったのか、イフリートとノームが動き出してた。
 そして更にメノウまで……僕達は迫ってきてた二体の攻撃をかわす。するとその後にメノウの腕に捕まれた。そして襲い来るは、頭に焼き付く苦しみのイメージ。


「っづ!? なんだこれ?」


 思わず床に膝が付く。頭に流れるイメージで心が蝕まれるみたいな……


「気を付けろ、メノウの精神干渉は危険だ。心から壊されるぞ!」


 くっそ……そう言う事はもっと早く言えよ。既に壊され掛けてるっての。僕はメノウの腕を切って逃れる。だけど直ぐに奴の腕は再生してた。
 すると再び僕の時が……ローレの奴!


「メノウ、どうせなら私に惚れるようにしてあげて。その方が都合いいから」
【了解】


 うおおおい! なんて怖い事をサラっと言ってんだ。最低だぞおまえ。すると再びリルフィンが僕を殴って解放してくれた。


「いやマジ助かった!」
「良いから何か奴に貰った物はないのか?」
「貰った物ね……アイツから何か貰うとか怖くて受け取る訳な――あっ! まさか!」


 思い出したぞ。そう言えば元老院の船でテッケンさんが持ってきてくれたお札……あれは確か、ローレからって。ローレにしては武器とか防具とか、僕のアイテムを全部まとめて収納させて持ってこさせるとか気が利きすぎとは思ったけど……僕はウインドウを開いて中のお札を取り出すよ。すると変な魔法陣が輝いてた。


「やっぱコレか!」
「あ~あ、バレちゃったわね。まあ元は、この問題が片づいた後に使うつもりで仕込んでたんだけど……色々とやっとくものよね」


 妖しい瞳をしてそう告げるローレ。僕は背筋にゾクッと寒気を感じたよ。

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