命改変プログラム

ファーストなサイコロ

宇宙の花



 黄金色が混じる風がモブリ聖獣へと迫る。


(いける!)


 そう思った。だってモブリ聖獣は何も出来ない。邪神復活に労力を使ってるから、こちらに構う力は限られてるんだ。そしてその程度の力じゃ、今の浄心水の力で限界突破をしてるイクシードのうねりは止められない!!
 だけどその時、地面に現れる黄土色の魔法陣。そこから姿を現したのは黄金に光る甲殻を持つアルマジロみたいな姿の召還獣ノームだ。
 ノームはその堅い甲殻でイクシードのうねりを受ける。拡散するうねり……強化されてる筈のウネリでも、奴の体には傷一つつけられないって事かよ!
 流石は防御の方が得意とか言ってただけの事はある。
すると頭にノームの声が……


【残念じゃよ。お前さん達とこうなるとはな。じゃが我らは召還獣。主の言葉には逆らえなん。これから儂はコイツを守るが、悪く思わんでくれよ】
「自分で止まる事は出来ないのかよ!?」


 僕はそんな事を言うノームに訴える。


【無理じゃよ。儂等はメノウやフィンリルとは違う。それに儂等とて、絶対反対な訳ではない。主がお主達を敵に回してもやれると確信してるのなら、本当にあの方を説得出来るやもしれん。
 そんな事を考えてしまうんじゃよ】
(やっぱりメノウだけじゃなく、他の召還獣もテトラの復活が絶対反対……な訳じゃない)


 ノームの魔法陣が幾つも直線に展開して、僕の所まで来たら、そこから尖った岩が生えて来やがった。


「くっ……」


 鋭い痛みが足に走る。だけどここで引くと、今度は防壁でも作りそう……それがノームだろう。引く選択肢が無いんなら――僕はもう一方のセラ・シルフィングで、突き出て来る岩を切って、平らになった部分を頼りに、この魔法を軸に一気にノームに迫る。


【儂の魔法を利用するか!】
「遠慮なんかしてらんねえぇぇぇぇんだよ!!」


 僕はウネリを一度ノームから外す。そして進みながら外したウネリを大きく回して、ノームの足下に回すんだ。地面の砂利とかを巻き上げながらウネリが進む。奴の甲殻は確かに堅い。その堅牢さは奴自身が城壁クラスと言えるだろう。
 だけどそれもその甲殻がある外側だけだ! 足や、内側はそうじゃない筈。そして奴の動きは他の召還獣と比べて緩慢。避けられやしない!!
 その狙い通り、ウネリは見事にノームの足に直撃した。


【ぬぐおおお!?】


 腕に伝わる激しい振動。進まない……重いとは思ってたけど……本当に滅茶苦茶重い。


「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 だけどここで引ける分けない。コイツの甲殻を削りきるまで攻撃なんてやってられない。てか、そこまできっとこのパワーアップは持たない。
 一分一秒を荒そう戦いをしてるんだ。召還獣なんか、正直構ってられない。だからこそ、ここでノームをひっくり返す!
 それをやれば、簡単に起きあがれない構造だろ。コイツの体は!!


「頑張れ、スオウウウウウウウウウ!!」


 肩に張り付いてるクリエのそんな言葉で気合いを入れ直す! 大きく息を吸って、顔を真っ赤にしながら更に叫ぶ。


「ぬうがああああああああああああああああああ!!」


 すると更に大きく強くウネる風。そのおかげかわかんないけど、足下で巻き起こってた風が僅かに後押ししてくれる。
 具体的にはその風の勢いで、ノームの足が少し浮いた感じ。その一瞬軽く成った瞬間に、僕は腕を振り抜く。それに連動してウネリが前と後ろの足を同時に払う。それに寄ってノームの体が回転して浮き上がる。


【なあに!?】
「よし!!」


 ズズゥゥゥンと世界樹全体が揺れる様な音と振動が伝わる。ひっくり返ったノームは結構滑稽だ。短い足をジタバタさせてる。


【ぬう、この儂を返すとは天晴れな力じゃ! さあどうする? 儂に止めを刺すか?】


 僕はノームの腹に降り立つ。だけど止まらない。


「これでもう邪魔出来ないだろ? それなら止めなんて必要ない。そもそも一撃で死ぬ玉かお前? 今はモブリ聖獣を止める事の方が大切だ!!」
【確かにそれが最善かもしれんのう。だが、儂を消さなかった事を後悔する羽目に成ると予言しよう】


 予言って……そんな事出来るのかよ。ノームの腹の中腹部分を駆ける中で、僕はこう言うよ。


「いつからローレの真似が出来るようになったんだよ? お前大地を司る召還獣だろ。それに後悔なんて考えて行動しない。
 いつだってそれをしなくて良い選択をしてるって今この瞬間は信じてるんだよ!」
【確かに……そう言う物じゃな】


 僕はノームの腹から一気に飛び降りる。これでたどり着くはモブリ聖獣の頭上だ! この距離はもう射程範囲内。僕は迷わずウネリを向ける。


「邪神復活なんてさせるかああああああ!!」
【――残念だが、早速後悔して貰おうかの。この状態で技は出せぬと思ったか?】


 その瞬間また黄土色の魔法陣が幾つも見えた。それはモブリ聖獣の周りに現れてる。そして魔法陣から生えるのはまた尖った岩だ。それらが一斉にモブリ聖獣を守る様に囲っていく。
 真っ直ぐじゃなく、斜めに出すことで、この岩を組み合わせて防壁を築いてるのか。だけど、今のイクシードのウネリならこれくらいの防壁……抜ける!!
 直撃したウネリが回転の力で強引に岩を砕いて中を目指す。だけど途中で進行が止まる。勢いがどうやら途中の岩で削られ過ぎたみたいだ。


「スオウ、どうしよう?」
「任せろ! 直ぐそこなのは間違いない! なら――」


 僕はウネリが削った部分に飛び込む。そしてそこから反対側の雷撃を纏う刀身を、真っ直ぐに突き刺す。殆ど抵抗も無く、深く刺さるセラ・シルフィング。


「――こっちで貫くだけだ」


 僕は刀身を僅かに動かす。感触がある。ついさっき同じ技をこの剣で斬ってたんだぞ。貫けない訳がない。そしてそこまで距離がないとわかってるのなら、きっとこれで届くと思ったさ!


「言ったろノーム。後悔をしない様に全力でやってるってな。全力で信じて突き進むってのはこういう事だ」


 更に僕はそこで雷撃を解放させる。するとモブリ聖獣の叫びと共に、黒い光の柱が出てる部分から、青い雷撃の光が漏れる。
 そして僕はセラ・シルフィングを抜き去る。するとそこには緑色の液体が付着してた。間違いない。確実に届いていた。


「スオウ、何か揺れてない?」
「ん? 確かに……なんか揺れてるかも……」


 すると黒い光の柱がグニャングニャン動いて細くなる。そして岩の透き間からまばゆいばかりの光が漏れ出す。


「なんだ!?」


 そう言った瞬間に、岩は内側から溢れ出す光の波に破壊される。まさか……これって……吸い上げてた世界樹の力じゃ? 一定量溢れだした光は、僕達を飲み込む。だけど苦しいとか痛いとか、流されるとかは無かった。僕達を通り抜けて、光は周りに流れていって、下へと落ちる。
 するとあの光が通った所だけは、綺麗に成ってた。全体が黒く染まってた世界樹だけど、元の色にあの光の波が触れた部分だけ戻ってる。


「スオウ、早く完全にこのジュツシキを破壊しなきゃ!」
「ああ、そうだな!!」


 クリエの言葉に促されて、僕は膝を付いてるモブリ聖獣に更に剣を向ける。ここで一気に決めるんだ! 次の一撃を入れたら、奴のHPが無くなるまで止まらない――その気概で腕を振るう。


「邪魔するな!!」


 パチンパチンと鳴り響く音。すると自分をも巻き込む程の近距離で二度の爆発が炸裂した。


「づっうううう!! 大丈夫かクリエ?」


 僕は肩に張り付いてるクリエの心配をする。


「だ……大丈夫だよ。耳がキ~~ンってするくらい」
「そうか、なら良かった」


 こっちは腕がズキズキするんだけどね。流石にあの近距離の魔法を完全に交わす事は出来なかった。でも、今の状態のおかげでそこまでヒドくもない。まだ行ける。
 けどやっぱりモブリ聖獣の指パッチン魔法は厄介だ。高速詠唱や、ストック魔法よりも高性能だろ。どっかの大佐みたいに炎しか出せないならまだしも、奴はパッチン一つで様々な魔法を発動出来る。


「やめろよ……楽しくない邪魔はするな!」


 そう言って指を連続で鳴らすモブリ聖獣。何が楽しくない邪魔はするな――だ。僕達は遊んでるんじゃないんだよ!!


「邪魔するに――決まってるんだろ!!」


 炸裂する爆炎の中から飛び出しながら僕はそう叫ぶ。そして雷撃を纏ってる方のセラ・シルフィングを振り抜く。だけど紙一重で避けられた。
 けど僕はその動きで確信したよ。モブリ聖獣はこの魔法陣の中心の僅かな部分から出たくない様だ。それはきっと三つの盾を配置してる部分の外側に出たら、この術式が崩れるとかそんな所だろう。
 なら、攻撃を当てなくても、この僅かな範囲からモブリ聖獣を押し出せれば!!


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 僕は間髪を入れずに、モブリ聖獣へセラ・シルフィングを向ける。手数の多さとこの近距離なら、モブリ聖獣に遅れはとらない。その自信がある!
 当てなくても――とか言ったけど、当てる気満々で振るうさ。だけどそこは流石聖獣か。追いつめられたモブリ聖獣は避ける事も受け止める事もやめて、受け流す事にしたみたいだ。
 そして奴の能力なら、二対の剣を駆使する僕の攻撃にもどうやら対応出来るらしい。指パッチンで奴が張るのは攻撃をズラす為の障壁だ。それに触れると、回転して攻撃してる僕の剣の軌道が僅かにズラされる。
 てかズラす様に障壁を斜めに配置しやがる。


「それなら!」


 僕は軸足で強引に回転を止めて、剣じゃなく足で真っ直ぐに蹴りをかます。それは予想外の動きだったのか、モブリ聖獣が障壁を張るよりも早く奴の仮面に届いた。
 直撃した蹴りの勢いのまま、後方へ飛ばされるモブリ聖獣。そしてついに奴はこの陣の中央部分から離れた。その瞬間、術者がいなくなったからか、魔法陣が消えていき黒い光の柱の放出も完全に止まる。
 だけど僕はこれで安心なんかしない。安心するのはモブリ聖獣を倒してからだ。そうでないと、何回でも発動出来るだろうしな。
 なんとか勢いを殺そうとしてるモブリ聖獣の頭上に一気に地面を蹴って迫る。


「終わらせる! ここで!!」


 僕は奴の仮面を狙う。その不気味な仮面ごと斬り裂いてやる! するとモブリ聖獣はその口を大きく開いて、そして突いた剣を噛みやがった。


「んな!?」


 そんなバカな!? だ。わざわざ口でなんて……いや、けどそれはモブリ聖獣の身を犠牲にした選択だったみたいだ。
 モブリサイズの奴は近接戦闘はどうあっても不利で苦手。そしてコイツは、自分の最大の武器をフリーで残して起きたかったって事だ。
 ガッチリと噛まれた刃。そして奴はその両の手を鳴らす。目の前が炎に包まれる。体中が焼ける感覚。だけどこのまま……逃がせるか!!
 僕はモブリ聖獣が噛んでる刀身側に雷撃を集中する。炎と雷の光……それらがお互いの場所で爆発する。そして互いに煙に包まれて、地面に倒れる。


「がはっ!! ……はぁ、大丈夫かクリエ?」
「熱くてヒリヒリするよ……」


 うるうるしながら、そういうクリエ。痛い思いをさせちゃったな……だけど、クリエを逐一心配してたら、一歩を踏み出せなくなる。
 戦場ではその一歩が勝負を決める時だってある……


「大丈夫だよスオウ……クリエ、頑張るもん!」


 僕の気持ちでも察したのか、辛そうなのに必死に笑顔を作るクリエ。クリエがこんなに頑張ってくれてるんなら、こっちだってもっともっと頑張らないとな。


「おう、二人で助けよう。サナをさ」
「うん!!」


 元気に返事をしてくれるクリエ。僕達は向かい側のモブリ聖獣を見つめる。


「はは……本当にお前たちってムカつくよな。劣等種族の癖して……おとなしくしてろ!!」


 更に指パッチンで魔法を放つモブリ聖獣。弾ける爆発をかわすして僕は走り出す。するとその時、足下がズボっと地面にはまった?


「なんだ?」


 土じゃないんだからこんなぬかるみあるわけ……そう思って下を見ると、黄土色の魔法陣が展開してる。そしてその中心にはまった僕の足は、抜かるんだ泥に飲み込まれて行ってる。


「これは……ノームか!」


 引っこ抜こうとしても深くはまった足は全然抜けない。
「はは、よくやったよ召還獣。ちょこまかとうざかったんだ。これで終わりだね」


 ちょこまかとかコイツだけには言われたくないな。今まで一番ちょこまかしてた奴だぞ。でもこれはやばい。


「折角だからその召還獣に見習って土系統の魔法で殺してやるよ」


 パチンと指を鳴らしたモブリ聖獣。すると上空に変な渦が現れて、そこから鉛色に輝く六角形の柱みたいなのが出てきた。
 おいおい……マジかよ。まさかアレが落ちてくるのか? 純粋な重さで潰されるわ! これはヤバい。迫る柱。僕はとっさに二つのセラ・シルフィングを合わせて、刀身を下に向ける。


「集え!!」


 すると刀身に集まる風のウネリ。そしてそれらが床にぶつかり激しい振動をこの腕に伝える。吹き荒れる風の中で僕は叫ぶ。


「飛べえええええええええええ!!」


 ウネリがバネの容量で地面との接地面で膨らむ。ビリビリと伝わる振動。少しずつ、足が上がる気がする。頭上から迫る鈍色の柱。
 ズズズズと浮く体。そして足が完全に抜けた瞬間に、一気にうねりが舞い上がる。蛇行して空へ上がる体。直ぐ側を通る柱が、地面に突き刺さり土煙を上げる。
 本当にギリギリだった……ある程度の高さまで行くと、僕はセラ・シルフィングを両腕に戻してウネリと共に広げる。二つのウネリが宇宙という空に羽の様に広がるよ。黄金色に輝く体と共に、今なら流星の様に成ってるかもしれない。
 トン、と僕は床に突き刺さった柱の上へ降り立つ。すると更に続けて聞こえる指パッチンの音。すると次々と異空間から柱が現れる。そして僕が乗ってた柱に突き刺さるんだ。
 だけどこんな遅い攻撃、動きを止めてたからこそ有効だったんだ。僕は突き刺さってくる柱を伝いながらウネリを聖獣へと向ける。だけどそれを阻むノームの魔法。


【すまぬな。やらせられんのじゃ】
「それなら!!」


 もう出し惜しみなんかしてられない。ノームが復活したことを良いことに、僕をノームに任せて再び術式を発動しようと聖獣はしてる。
 そんな事させるか!!


「イクシード2――――って、HPはまだあるか」


 しまった、イクシード2からはHPが赤に成ってるのが使用条件だった。幾つかダメージは受けたけど、諸にじゃないから、まだ案外残ってる。
 安心できて良いんだけど、爆発力を求める今はもどかしい。かといって無謀に突っ込んでHPを減らすのも愚の骨頂みたいだしな。


「スオウ、クリエもね、少しなら魔法使えるよ!」


 何の宣言だ? と思ったけど、もしかして手伝いたいって事だろうか? でもそれは危険な様な……


「スオウみてて!!」


 そう言って肩でグググ~と気合いを込める顔をするクリエ。こいつ本当に魔法使えるのかな? そんな事してる奴いないぞ。そして踏ん張りを外へ吐き出す様に「お願あああああああい!!」と叫ぶ。


「……なにやったんだ?」


 突き刺さって来た柱の一本の側面を走ってるけど、何も起きないぞ。てか魔法陣の一つも出ない時点で魔法じゃないよな? だけど何故かクリエは得意気だ。


「もうすぐ来るよ」


 その言葉の直ぐ後に、世界樹全体が揺れる? そして床の表面からキラキラ光る液体が染み出してきた。


「あれは……浄心水か?」
「ううああああああああああああああ!!」


 そんな事を口に出してると、聞こえる断末魔の叫び。僕達や召還獣には何の影響もない水。だけどどうやらこの世界樹の力で清められた水は、邪神の力を強く取り込んでる聖獣には毒みたいなものなのかも知れない。
 モブリ聖獣の体からは黒い煙が上がってる。


「世界樹がっ、悪あがきを!!」


 そう言って聖獣は魔法を発動させる。すると乱気流の様な激しい風がこの一帯に吹き荒れて、その風がぶつかり合うと、沸いて出てくる浄心水を巻き込んで竜巻みたいに成って空へ上がってく。


「聖獣の奴、浄心水を宇宙へ流す気か!」
「スオウ、折角世界樹に頑張って貰ったのに……」


 そう言ってシュンっとなるクリエ。やっぱりこれはクリエがやったのか? 世界と話せるクリエだから出来た事? でも本当なら、世界樹の御子であるローレがこの世界樹を守らないと行けないはずだ。なのにあの野郎……でも今はそんな事を言ってる場合じゃない。
 アイツは変わらない。自分の行く道を信じてる。僕達だってそうだ。だからこそぶつかる。


「まだだ!!」


 僕は残念そうにするクリエにそう言って、柱から飛ぶ。


「丁度良い、わざわざ風の魔法なんてな!」


 意志って奴がきっと必要なんだろうとは思う。渡す意志、受ける意志……だけど、奪うことが出来ない訳じゃない! 僕は両腕のウネリを伸ばして体を回す。
 するとこの場所の気流が集まってくる。セラ・シルフィングを……イクシードを頼りに風を集める。宇宙へと流れてた浄心水を含んだ風がウネリに加わる。


「そんな僕の魔法が何で!?」
「確かにこれはお前の魔法だ。だけど風を操る術は、僕の方が知ってる!!」


 浄心水を含む黒いモブリ聖獣の風は、イクシードのウネリに加わると、その浄心水の輝きが増してるのか、黒かった風に黄金の輝きが付いていく。
 そして風の気流の中、僕の体は落下から空中へと停滞に変わる。フワフワと浮いてる感じ。


「感じるよ、これはお前がくれた力だクリエ」
「!! …………うん、うん!! やっちゃおうスオウ!!」


 涙が溢れるクリエの瞳。その涙も今の状態なら下に落ちずにまさに宇宙空間にいるみたいに浮いてる。だけどいつまでもここで停滞してるわけには行かない。
 僕はクリエに頷き返して、二本のセラ・シルフィングを頭上で合わせる。合わさる黄金の風のウネリ。それは更に大きく強烈な風になる。激しいスパークがそんな黄金の風の中で、青い光を放ってる。


「いっけええええええええええええええええええええええええええ!!」


 両の剣を合わせたまま体をひとひねりして、勢いを加えウネリをモブリ聖獣へと向ける。巨大な風の渦が、黄金色の光を放ち聖獣へと向かう。


【させん!!】


 その瞬間再び現れる黄土色の魔法陣。そこから伸び上がるのは大地の結晶、ダイヤモンドの壁だ。やっぱりどこまでも邪魔するか。確かにぶっ倒しとけば良かったかも知れないとか思うけど……だけど貫く!!
 黄金の光がダイヤモンドの煌めきに反射する。そしてそんな二つの力が真っ正面からぶつかり合う。


「ダイヤモンドは世界で一番堅い鉱石? 永遠の輝き? 大層だけど、ぶち破る!!」


 巨大なウネリの回転がダイヤモンドの壁を削り剥がし、少しずつ砕いてく。ベキッからガキンッとその壁に大きな亀裂が入る。


【バカな!?】


 ノームは信じられないというような声を上げる。だけどこれが真実だ!! ウネリは遂に、ダイヤモンドの壁を突き破ってモブリ聖獣へと向かう。


「うああああああああああああああああああああああああああああ!?」


 そんな叫びと共に、モブリ聖獣は黄金色のウネリに飲み込まれる。床に着いた瞬間、その床を破壊して、ついでに枝も折りまくって、ウネリはどこまでも伸びる。
 そして伸びきった所で、次第に僕の元の風との結びつきが紐解かれていくように消えていく。残ったのは元のウネリだけ……そして僕とクリエは床に降り立つ。


「やった……のか?」


 いまいち実感がない。そう思ってると下から風が吹きすさんで一体の鳥がここまで来た。あれはエアリーロ。そしてその背に居るのは……ローレ!!

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