命改変プログラム
世界樹の傘
燃え盛る本殿を叩き壊して、僕達は強引に結界で守られた部分だけを守る。その選択をした。それは極端な選択だったけど、結果的にはよかった筈だ。
この、今の光景を見る限りそう思える。無事に出会えたリア・レーゼの人々。それは良かったと思える光景だ。
「ぬあ!? ローレ様! ローレ様! なんか本殿が無くなってますよ!?」
「うるさい。こんな沢山の民衆の中でそんな事を言うな」
そんな声が聞こえて視線を向けると、メノウに抱えられてるローレともう一人、豪華な着物に身を包んだモブリがいた。あれは替え玉の子だね。メノウは思ってたけど人型っぽい。なんか黒いドレス身を包んでる。
てか、なんで他の人達は違うちょっと上から降りてるんだ? 二階にでも居たのかな? まあ無事で何より……と思ってるとさっきの替え玉の言葉を聞いた誰かが「ローレ様?」とポツリと言った。
それがキッカケであっと言う間にこの場にその一言が広がるよ。そしてモブリの人達はメノウの周りに集う。とうとうバレたか……まあいいんじゃないのかな? 別に隠す事でもないんじゃない? そう思う。
でもメノウの腕から下ろされようとしてるローレは、面倒そうな顔してるよ。なんでそこまで姿を隠したいんだろう? 不便だろうに。
「あわわ、どうしましょう……」
「ふん、こうなったらしょうがないわね」
そう言ってメノウの支えが無くなった時に、その綺麗な金髪の髪をかきあげるローレ。キラキラと光るその髪はやっぱり綺麗だな。
周りのモブリ達は、なんだか羨望の眼差し? 不満そうにしてるけど、きっと内心ではほくそ笑んでるなアイツ。そう言う奴だ。
「もう隠さないからよく聞きなさ――ってきゃ!?」
一斉に足下に集まってきてるモブリに驚くローレ。全く僕がなんだかんだで不満に思っても、やっぱりリア・レーゼの人々には絶大な人気があるんだな。
誰もアイツの本性知らないから……「ローレ様!」「ローレ様!」と無邪気に言ってる。
「ちょっと、落ち着きなさいアンタ達。私は別にもう逃げたり――」
「ちょっと退いてください!」
「――へ?」
なんだか様子がおかしいな。ローレは邪魔者みたいに集まってるモブリ達の輪から追い出されてる。そしてポカーンとしてる間に担ぎ上げられてるのは替え玉の方だ。
「ローレ様、ようやくその姿を……」
「ローレ様が守ってくれたんですね。ありがとうございます!」
そんな言葉をいっぱいかけられてる。そう言えば知らなければ向こうがローレに見えても仕方ないか。ローレ本人は普段着だしなどうみても。
それに比べて替え玉は十二単だ。みんなローレはモブリだと思ってるだろうし、勘違いは無理もない。ってか、そう言う風にしてきたのは紛れもなくローレ自身だしな。
だからその不満そうな顔を引っ込めろよ。替え玉の子が泣きそうだぞ。全然あの子悪くないのに、ローレの不機嫌を向けられて可愛そうだ。
僕は近くに行って肩をポンと叩いてやるよ。するとその大きな瞳でギロリと睨まれた。そして足の甲をおもいっきり踏みつけやがる。
「イッ!! お前な!」
「ふん、予定通りよ!」
いやいや、全然そうじゃないだろ。すっげーイライラしてるじゃんか。僕に当たるなよな。するとセラがローレの前に立ってこう言うよ。
「へぇーこんな子供が本物なのね。まあしょうがないんじゃない。威厳が見えないもの」
ピキッ――――そんな音がどこからか聞こえた気がする。ヤバいって、こいつ等は油と水だ。関わったって絶対にろくな事にならない。それが容易に分かる。
「メイド服着て、オバサンが幾ら若作りしたって私にはバレバレよ。昭和生まれの臭いがするわよ。あ~古くさい」
ビキッ――――どこからか再びそんな音が聞こえた気がする。てか、ローレの奴は一体何を言ってるのかよくわかんない。でもどうやらセラの奴には効果てきめんだったみたいだな。
「平成生まれがそんなに偉いのかあああああ!!」
訳が分からん事を叫んでる。なにかコンプレックスでもあるのか? 意味が分からない。
「偉いわね。新時代に生まれたってアドバンテージがあるじゃない。新世代に対して頭が高いわよ旧世代の遺物が!」
どんだけ暴言吐いてるんだよこいつ。見た目は本当にキラキラしてるのに、中身ドス黒いぜ。真っ黒過ぎる。ごめん、セラの方がまだ何倍も綺麗だったみたいだ。てか、普通に言い過ぎだろ。
「遺物って、そこまでヘバって無いわよ! 肌も髪もツヤツヤなんだから!」
「そうかしら? 強がりはそこまでにしときましょうよ。私にはわかるわ……リアルで、そんな事気にかけてるのアナタ?」
おいおい、どこまでバカにしたら気が済むんだコイツ。絶対に苛ついてるからってセラで憂さ晴らししようとしてるだろ。
でも普段のセラなら幾らローレにだって一方的にやられたりしないと思う……でも今はどうやら話題が悪いらしいな。リアルの事は言ってほしくないらしい。
てか、それがルールの筈だけど……
「私だって……一応女よ」
これまでに無いくらいに声が小さい。どうしたんだセラの奴。てか、何やってるんだろうコイツ等は。
「くんくん、女ねぇ~。負け女の臭いがするわ。私には考えられない、誰かの支えになろうとする女。そんなのは負け女なのよ。
自分に自信がないから、その程度の身の程しかないってわかってるから、前に出れないんでしょう? リアルでもそしてここでも、負け犬根性が染み着いてるのよ」
「おい、流石に言い過ぎ――って、うぉい!?」
何故かいきなりその腕を僕の首に回して抱きついてくるローレ。文句言おうとおもったのに、これじゃあちょっとその……ドキドキする。
くっそ……性格最悪の悪女なのに。悔しい、自分の男の部分がどうしても反応するのが悔しい。
「ふふ、そんな負け犬女にスオウはちょっと勿体無いって思うの。だから私がきっちり世話して上げる。まずは躾からして、私の下僕にするの。
支える事しか出来ないメイドじゃそれは出来ない事でしょ?」
おいおい、何で僕を巻き込むんだよ。超迷惑。それに誰が下僕なんかになるか。例えローレが裸で迫ってきても、それは断る!
「あらら、変なデータが漏れちゃいそう」
「それは!?」
ポケットから忍び出そうしてるそれは、僕が風呂でローレに裸で跨ってる写真じゃないか!! くっそ、まだ持ってたのか。端から見ると、どうみても僕は変態だ! この野郎……
「どうしたのスオウ? まさかそんな女に付くとか言わないわよね? そんな性悪女の下僕になりたいの?」
「んな訳あるか!」
「ええ~そうかしらぁ~」
チラチラと写真をちらつかせるローレ。この悪人……今すぐ天罰降れ。マジでそう願う。
「もっとあの女に教えてあげましょう。私達の進んだ関係……」
何意味深な感じで言ってるんだ。するとローレの奴は僕の体をそのしなやかな指でツツ~とナゾる。ゾワゾワって変な感覚が……
「スオウ……アンタって……アンタって……ロリコンだったのね!!」
ズガーーーンと言葉の暴力が僕の胸に突き刺さる。おい、なんで僕が一番ダメージを受けないといけないんだ?
「ロリコンが悪いんじゃないわ。そんなのアンタが一番わかってるんじゃなくて?」
僕に抱きついたままそう言うローレ。てか、そろそろ離れろよ。動きづらいんだ。するとセラは、グッと歯を喰い締めて、体をプルプル震わせてる。
「そんなに……そんなに年上じゃ駄目かあああああああああああああ!!」
そう叫んで、セラはサン・ジェルクの僧兵が頑張ってる方へ。そして闇雲に敵をブッたぎってるのか、空中にモンスター共が見えた。
セラの奴、キャラが壊れだしてるな。
「お前なぁ~」
「ふふ、ラッキーだったわね。私に抱きつかれて。ドキドキしたでしょ?」
「誰が……」
そう言ったけど、内心はドキドキしてたから、僕は顔を背けるよ。するとリルフィンがようやくローレに話しかける。
「主、遊んでる場合じゃないですよ。聖獣共は邪神の像と共に傘まで上りました。このままでは邪神が復活してしまいます!」
そんな話を聞いて、ローレは上を見上げる。
「邪神復活ね……本殿も無くなったし、更に私の街というか、いつか手に入れる世界を滅茶苦茶にされたくないわね」
世界はいずれローレの物になるのか? 邪神とどっちもどっちだな。
「アンタ達、まだいけるんでしょうね?」
そんな問いを僕達にしてくるローレ。直ぐに頷きたいけど、ローレに問われるとなんか反発したくなる不思議。でも意味ないか。
ここを落とされる訳には……ってあれ? 僕はここで大切なことに気付いたぞ。
「そう言えばクリエってどこにいるんだ?」
姿見えない。本殿に居るっててっきり思ってたんだけど……それなら真っ先に僕のところに来るはずだよなアイツなら。
でもどこにもその姿無いぞ。なんか……イヤな予感がする。するとローレの奴があっさりとこう言うよ。
「あの子なら上よ。まだまだ貴重な存在だし、万が一の為にって思ってたけど、裏目に出たわね。まあ、今更聖獣があの子に興味あるとも思えないんだけど」
「興味なくても見逃してくれる保証なんてないだろ?」
「まあ、確かにそうね」
他人事みたいな反応だな。救助も出来たし、急いで聖獣を追った方がいい。僕は外周の外側に突き出てる転送陣の方を見る。
「おい、あれは使えるんだよな?」
「壊れてさえなければ。だけど私の許可は必要。無断で上へ行くことは出来ないのよ」
「なら、さっさと許可しろ。てか一緒に来いよ。お前だって邪神復活は困るだろ」
「…………そうね」
なんだ今の変な間は? 何をコイツ考えてた? まさかまだ悪巧みを考えてるんじゃないだろうなコイツ。邪神の復活を利用する手だてがないか~とか。
僕がそんな不安を感じてると、テッケンさんがこういってくれる。
「大丈夫だよスオウ君。上にはノウイ君も居るんだ。もしも聖獣が襲ってきたとしても、彼がいれば無事で居てくれる筈だよ」
「そう……ですね」
ノウイか……そういえば全然姿見えないと思ってた。まあ戦闘じゃあんまり役にアイツ自身は立たないからな。気にしてなかったけど、クリエのお守りやらされてるのか。
確かにノウイなら聖獣に襲われてもどうにか出来るとは思う。逃げる部分ではね。でも僕的にはクリエ自身の行動にも不安があるんだよ。
アイツは子供で、自分が無力でもきっと気持ちが先行しちゃう……そんな奴だ。だから何も出来ないってわかってても、クリエの方から聖獣に近づく……そんな事をしかねないと思う。
だって聖獣の中にはアイツの最初の友達が居るんだ。どうしたって取り戻そうとするだろう。
「セラちゃ~~ん! 上に行くよ!!」
シルクちゃんがモンスターの相手をしてるセラに声をかける。モンスターをブッタ斬って少しは冷静になったのかな?
そう思ってセラを見てみると、自然に目があう。そして速攻逸らされた。酷い態度だな。僕に当たるなんてお門違いなのに。そして頭を伏せたままこちらと合流する。
「必ず聖獣は倒すわ!」
なんだか凄いやる気になってるセラ。
「そしてあの女に奴らの首を突きつけて言ってやるの。『ありがとうと言いなさい。頭を垂れて』って」
「その行動に何の意味が?」
ちょっと理解しがたいんですけど……
「自尊心の問題よ」
ああ、ね。ようはローレの奴をなんとしてでも見返したい訳か。かなり虐められてたもんな。やる気を出してくれるのはいいけど、なんだかちょっと心配だな。
やる気を出す理由は人それぞれでいいと思うけど、セラの動機はなんだか危ういような……まあ僕が言っても聞く奴でもないけど。
「まあ、どうでも良いけど、一人で突っ走るなよセラ。単独で倒せる程甘い奴らじゃないのは分かってるだろ?」
「ふん、そんなの当然分かってるわよ。だけど、私にとっては聖獣よりもローレの方が許せない敵なのよ」
拳に握りしめてとんでもない事を言ってるな。そこまでか。まあ僕もローレの性格は好きにはなれないけどね。他人を見下す事しかしない奴だからな。
そろそろ誰かがお灸を据えないといけないと思う。大きい夢も野望も結構だけど、もうちょっと人様を大事にしても良いと思うんだ。
沢山の人に支えられてる……それはローレだって分かってる筈だろうしな。煌めくその金髪を後ろから眺めながらそう思う。
そして僕たちは転送陣の場所へ。屋根とかなくなってボロボロだけど、下の陣事態は大丈夫っぽい。これならどうにかいけるんじゃないだろうか?
「シルク」
「あっ、はい!」
おい、シルクちゃんを顎で使うなんてなんて罰当たりな奴だ。しかもシルクちゃんも文句一つ言わないなんて……イヤな事はイヤって言っていいんだよ。
「大丈夫です。陣事態に問題ないですよローレ様」
「まあ、分かってたけどね」
分かってたのかよ。何の為にシルクちゃんを使ったんだ? 嫌がらせか。だけどそんな不満に思う僕たちとは打って変わってシルクちゃんはニコニコしながらこう言うよ。
「流石ですねローレ様」
するとローレは明らかにイラっときたのか、その眉がピクッと反応した。ローレって感情の起伏がとっても激しいから、それが直ぐに顔に出るんだよね。自分じゃポーカーフェイス気取ってるつもりみたいだけど、案外顔を見てると、色々と漏れてる。
「あれ? そういえば、メノウはどうしたんだローレ? 居なくなってね? 聖獣と戦うんなら、アイツの力は必要だろ」
正直、僕たちだけじゃ厳しい。こんな事言いたくないけど、事実だからしょうがない。リルフィンもなかなか本気だしてくれないし……
「メノウなら居るわよ。だけどあの子変わり者だから。契約もちょっと特殊だし、そもそも私の身の安全を守る役目を負うのがメノウだから。
戦闘向きじゃないわ」
そうかな? 精神と時を操るなんて、かなり戦闘向きな気もするけど……てか、ローレとそんな奴が組んでるって、どう考えてもヤバいと思う。なんか絶対に悪用してそう……
「何よその目は? 私に不満があるのなら、国の一つでも納める立場になって文句をいいなさい」
「どんだけだそれ!?」
そんなポンポンと国王とかになれるわけないだろ。てか、自分がどれだけ偉いと思ってるんだよ。自分だって一つの街の代表でしかないだろ。
僕の突っ込みは華麗に無視して、ローレは懐からお札を取り出す。あれで転送先を決めてるのかな? 普通にやると多分、別の所にいったりするんじゃないのかな?
だって最初にここに来たのは幽閉された場所からだったし、リア・レーゼはあのお札を使って、目的地を変えてるのかも。
でもそれの方が便利だよな。なんでサン・ジェルクは採用しないんだろう――――――って、仲が悪かったからか。リア・レーゼの手法を総本山であるサン・ジェルク側が真似るなんてとても出来た事じゃなかったのかもしれない。
お札に連動して光り出す魔法陣。するとモンスターの相手してる方からこんな声が。
「皆さん、頼みます!! ここは我らに任せてください!!」
「スオウ! あの子の事…………頼みます!」
それはノエインとアンダーソンだ。僕達は二人に力強く頷いて返事をした。そして光に包まれて上へと昇る。最後の戦場は……宇宙だな。
浮遊感が消えていく。足に地が付く感覚。でもなんだか変な感触が……何か乾いた物を踏みつけたみたいな感覚。耳に付くカサッて音。
「おい、なんだこれ?」
そんな鍛冶屋の声が聞こえた。周りをみると、それは前にここに来たときの風景とは違ってた。
「これは……まさか……主!」
「やってくれたわね。世界樹が枯れ掛けてる」
リルフィンとローレの言葉通り、世界樹はきっと枯れ掛けてる。下ではわからなかったけど、ここでは既にその前兆が出始めてるんだ。前に来たときはこんな事なかった……床一面を多い尽くす落ち葉なんてなかった。
そして今も降り注ぐ大量の葉。全てが緑で覆われてた頃には見えなかった部分が、葉がなくなって見えてる。
【主 星の祭壇 強大なエネルギー反応 有り】
星の祭壇? てか、この声はメノウか。僕はローレを見て、その視線の先を辿る。どうやらローレは世界樹の傘の部分の一番上を見てるみたいだ。
そういえばあそこにも何かあったな。確か建物と大きな魔法陣があったような……あそこに奴らが、すると天辺じゃない所で爆発が幾つか起こる。
「なんだ? 戦闘か?」
そう言った矢先に、階段から転げ落ちてくるノウイとクリエ。何やってるんだアイツ等は!
「おい!!」
僕達は二人に駆け寄る。すると枯れ葉に包まれた何かが上の方から飛び出してくる。そして水の固まりを吐き出してくる。この攻撃は!! 狙われてるのはノウイ達。僕はセラ・シルフィングで、その水弾を弾く。
小さな水滴になった水弾は倒れてたノウイ達の顔を当たる。
「あぷぷ……」
そんな声を出すのはクリエだ。なんだか久しぶりに見た気がするな。相変わらずちっこい奴だ。
「よう、無事かクリエ?」
「スオウ? スオウスオウスオウ!! 遅いよバカァ! ノウイじゃ頼りにならないもん!!」
「そ、それは酷いっすよ! 自分のおかげでここまで逃げれたんすよ!」
クリエの失礼な言葉に憤慨するノウイ。どうやら思った通り、クリエは無茶をやったみたいだな。頼りないって、ノウイがいなかったらほんと、もう会えなくなる所だったっての。
「よくやってくれたよノウイはさ。所で状況はどうなってんだ?」
「そうね、それは私も聞きたいわ。私の給仕達は無事なんでしょうね?」
僕の後ろからそういうのはローレだ。だけどノウイは頬を染めてポカンとしてる。そして一言こう言った。
「えっと……だれっすかこの美女?」
本人を前に良く恥ずかし気もなく美女とかいえるな。だけどその大胆さがよかったのか、ローレの奴はちょっと上機嫌になる。てか、そういえばノウイは知らないよな。
「あんたはなかなか見込みありそうだから、教えてあげる。私がこのリア・レーゼの代表で、星の御子――ローレよ」
「ええ!? ローレ様ってモブリだったんじゃないっすか?」
うんうん、当然の反応だね。誰もがそう思ってたよ。だけど現実は――するとローレが更に衝撃の事実を語る。
「私はこれでもモブリよ」
「「「「「えええええ!?」」」」」
一斉に僕と鍛冶屋、セラにノウイはそう叫んだよ。
「いやいやいや、お前のどこがモブリだよ!?」
僕は真っ先にそういいます。まさに掴み掛かる位の勢いで。だってどう見てもモブリじゃないじゃん。でもあっさりとローレは証拠を見せてくる。
「ほら、この耳見なさい。このフワフワモコモコはモブリのそれでしょ? なんだと思ってたのよ」
「いや、ただのファッションだと……お前服飾デザイナーなんだろ? なら、奇抜な事をしててもおかしくないし……」
マジでそう思ってました。その耳のフワフワはマジ物だったのかよ。
「でも……え? ちょっとあんた他のモブリと違いすぎでしょ」
セラの言うとおりだな。いくらフワフワあってもそう易々と信じれない。だけど何がおかしいのか良くわかってない……と言うか、そんなの小さな事だとでも思ってるのか、簡単にローレはこう言うよ。
「私とその他のモブリが違う事なんて、ある意味当然でしょ。なんせ私は特別だから。私が私で、その他モブリは文字通りその他大勢のくくりなの。わかる?」
「わかんねーよ!!」
どういう理屈だ。するとその時、後ろからこんな声が。
「やっぱり来たか。いいぜぇ、全員ぶっ殺す!!」
それはスレイプル聖獣だった。そして前には魚聖獣。どうやら僕達は挟まれたみたいだな。取り合えずはローレの事は後回しにするしかないようだ。僕達は全員それぞれの武器を構える。きっとここが、本当に最後の聖獣との戦場になる。
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