命改変プログラム
油断大敵
エルフ聖獣は飛空挺艦隊が撃ち放つ光の柱にその身を焦がす。激しく夜空を彩る艦隊の攻撃。これは流石にただでは済まない筈だ。
盾があったのならこんな攻撃に意味なんてなかった。だけど今のエルフ聖獣は盾をなくしてる。防ぐ術はない。避ける事だって当然無理だった筈だ。
そう思ってると光の奥に影が見えた。そしてその中からボロボロの腕が伸びてくる。
「きい~さぁ~まぁ~らぁあああああああ!!」
そう言って徐々に手から腕……そして仮面の一部が顔を覗かせる。それはゾッとする光景だ。
「こいつ!」
【大丈夫ですよ】
僕は思わず腕を腰のセラ・シルフィングへと伸ばすけど、冷静にそう言ったエアリーロは、再び後ろへ少し下がった。するとそれと同時に、砲撃がまた聖獣を包み込む。
その瞬間見えた……砕けた仮面。それが光の中で無くなってく。
「ぐうおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! おのれえええええええええ!!!」
断末魔の叫び。それがエルフ聖獣の最後の言葉。最後までこの世界が憎たらしかったらしい奴は、光の中でその姿を溶かされて行った。
艦隊からの砲撃が止むと、変わらない夜天の空が広がってる。だけどそんな中に少しだけ見える小さな光。それが風の流れに逆らってこちらに来る。
でも……ただそれだけだった。何かが起こるわけでも、何かが聞こえる訳でもなかった。けど僕には分かったよ。今のはきっと【あの子】なんだ。
解放された【あの子】の欠片。きっとその筈。
【大丈夫ですか? 急いで回復して貰いましょう。まだ聖獣は残ってます】
「だな」
きっと艦隊やバトルシップの方は沸き立ってるだろうな。だけど僕達はもう一度気を引き締めて下の戦場を目指す。
降り立つは本殿外周だ。するとシルクちゃんの声が直ぐにした。
「スオウ君! エアリーロさんもやりましたね!」
「はは……実際僕はあんまりやってないけどね」
【そんな事はないでしょう。貴方が盾を破壊したから出来た事です】
「そうですよスオウ君。スオウ君もよくやりました。流石にボロボロですね。直ぐに回復します」
そんなやり取りをして詠唱を行ってくれるシルクちゃん。だけどそれを待たずにエアリーロは前を見る。その視線の先には魚聖獣とスレイプル聖獣の姿。
行きたいんだな――って僕は思ったよ。
「降ろしてくれて良いよエアリーロ。ここなら地に足着けて戦えるしね」
それに今のエアリーロは強力な戦力だ。直ぐにでも投入した方が良い。特にスレイプル聖獣を相手にしてるテッケンさんと鍛冶屋は見るからにヤバい。
僕はエアリーロの背から降りて、シルクちゃんの回復魔法を待つ。その間にエアリーロは羽を羽ばたかせて一気にスレイプル聖獣へと突撃する。
相変わらずのアホみたいな速さ。スレイプル聖獣が吹っ飛んでいく。勿論本殿側へ吹き飛ばすのが不味いと分かってるエアリーロはちょっと斜めにズラしてる。
「凄いね。これならきっと勝てるよね」
風帝姿のエアリーロの力を見て、そう呟くシルクちゃん。
「勿論。必ず勝つよ」
僕は迷いなくそう言う。だけどこれまでとはちょっと違う心持ちかも。今までは強がってた部分も一杯あった。だけど今は……確実にそう思える。聖獣もニ体も倒した。どうにかなるって思うじゃん。
それにもう、僕達はたった数人で戦ってた時とは違うんだ。今ここには、沢山の仲間が集ってくれてる。後ろから照らされる光、それはここまで降りてきた飛空挺艦隊の光だ。
エルフ聖獣は倒したし、その前に空を飛べるモンスターも倒したから、自由に動けるようになったんだな。そして飛空挺側から一斉に輝く魔法。
それらが世界樹を昇ってるモンスター共の背中へと降り注ぐ。今まで何とか防いでたその猛攻。でもこの数ならそれも容易だ。
そして響きわたるは、代表者の声だ。
『我らサン・ジェルクは貴方達リア・レーゼを見捨てはしません。安心してください。我らも共に戦いましょう』
それは聞き覚えのある声だった。まさかノエインが直々に来てるのか? すると光の中、飛空挺の先端に見える小さな姿。
『それぞれの思いや思惑……これまでのサン・ジェルクとリア・レーゼは決して良い関係を築けては居なかったかもしれない。でも……ここから変えていけると思うのです。
これからはもっと素直に、我々は手を手を取り合っていける。そうなりたい。
その為にもまずは……驚異を共に排除させてくださいローレ様』
輝く中でそう言うのは紛れもなくノエインだろう。さて、ローレの返事は聴くまでもないだろうけど、一応それを待つ。まあ万が一にでもここでノエインの言葉を拒否る……なんて事は幾らローレでもしないだろうけど、ちょっとドキドキだな。
もしもそうなったら、きっと今度はサン・ジェルクとリア・レーゼで戦争だよ。流石に付き合ってらんないよね、そうなったらさ。
そう思ってると、いち早くノエインの言葉に反応したのはローレじゃなかった。
「ふざけた事を!! 貴様等なんぞにこれ以上やられるかああああああ!!」
そんな叫びと共に、魚聖獣がノエインに向かって水弾を放つ。するとその時この場に響く声がもう一つ。
『エアリーロ!!』
その声の瞬間、エアリーロが船と水弾の間に入り、その風で水弾を消しとばす。今のエアリーロにはあの程度の攻撃を防ぐのは造作もないな。
けど今重要なのはノエインがやられなかった事じゃない。その指示を送った方が重要。今の声、きっとローレだろう。ノエインを守ったって事は、そういう事だよなきっと。
「ぐぬぬ……人に媚びを売る裏切り物共が!!」
【勘違いは止めて欲しい。私達召還獣は根本から貴方達とは違う。邪神だけから創造されたのがモンスターであり貴方達でしょう。
ですが、私達は双方の神によって世界の根幹の礎として同時に創造された存在。分かりますか? これはその格の違いなだけです】
おお、あんまり自慢をしないエアリーロが得意気に喋ってる。それだけ自分達を聖獣が同列に見てる事が嫌らしい。てか、召還獣ってそんな重要な存在だったのか……そういえばそんな事をローレか誰かが言ってた気もしなくもないかも。
「抜かせ!!」
更に攻撃を加えようとする魚聖獣。だけどそれら全てをその風で吹き飛ばす。
『ウルサい奴は少し黙らせておいてエアリーロ。お礼とか、言わないといけないでしょう。折角来てくれたのだから』
そんな声が響く。ローレの奴がお礼……ビックリのワードだけど普通か。あいつもそこまで常識知らない訳じゃないよな。
それにあいつは支配とか崇拝されたいけど、戦争をしたいわけじゃないもんな。ローレの指示を受けて、エアリーロは魚聖獣にも突っ込む。
スレイプル聖獣の姿を見てるからか、それを必死に防ごうと大量の水弾を一斉照射する魚聖獣。だけどそれらを華麗に交わして、更に前方にそのファンネルみたいな武器を円形状に展開させる。
するとその円の中には色が違う空間でも出来てるような……そこにエアリーロは突っ込むよ。その瞬間円から放たれる虹色の輝き。そしてその輝きを纏ったエアリーロは更に速く加速して、魚聖獣へと突っ込んだ。
逃れないそのスピードに魚聖獣は防ぐことも出来ずにぶつかった。そして今度は吹っ飛ばさずにそのまま奴と共に、本殿スレスレを通って上昇した。
そして大きく丸を描いたエアリーロはそのまま地面へと突っ込んだ。激しい音と立ち昇る噴煙。今のエアリーロは聖獣さえも止められないな。
『さて、邪魔者もとりあえずいなくなったし……ありがとう教皇猊下。今回の支援に心からの感謝を示します』
なんてこった……本当にマトモな事をローレの奴が言ってるよ。僕は一瞬耳がおかしくなったのかと思った。
『いやいや、そんな……当然の事……私達は同じ国の国民で同じ種族なんですからね。それにこれは私一つの意志ではありません。
サン・ジェルクの総意の行動です』
『そうですか、流石は信仰深いサン・ジェルクの皆さんです。まさかタダで――タダで、私達を救いたいと思ってくださるなんて……その心は本当に感謝します』
おい……なんか異常に『タダ』の部分を強調してなかったか? 本当に借りだけは作りたくないんだな。でも、これは流石にね……幾らタダを強調しても、感謝とかは忘れちゃいけないだろう。
それさえ無くすと、本当にただの最低野郎になるぞ。そう思ってると、外周の床がビキバキと音を立てて割れていく。
何が起こってるんだ? そう思ってると、下から何かが延びてくる? これは……枝? それらが沢山繋がって行ってる。まさか外周を引き落とす気か?
そう思ったけど、だけど違うようだ。外周に引っかかった枝はどんどん絡まって行って、大きな道になる。地面とここを直接繋ぐ道。
それを伝って一気にモンスター共が勢いよく昇ってくる。まだまだモンスター共はやる気十分な様だ。だけどそのモンスター共に向かって、放たれるは飛空挺艦隊からの砲撃。
一斉に放たれた砲撃で一気にその道が火の海に……だけどそれでもモンスター共は臆すことなく次々と突っ込んでくる。
「う……うわぁ……」
するとその勢いに押されてか、リア・レーゼ側の僧兵がちょっと後ずさりしてる。確かに何か奴らのガムシャラさは鬼気迫る物がある。
だけど臆する事はない。僕は立ち上がり、腰にあるニ本のセラ・シルフィングを抜き去るよ。回復も終わって体力全快だし、やる気が沸き上がってくるようだ。
『さて、ではここからは双方後腐れない協力関係で、と言うことで。こちらの駒もまだまだいけるようですし、サン・ジェルク側が協力体制を惜しまないでくれるのなら、いけますね』
『大丈夫です。何も惜し見はしません。約束しますよローレ様。やりましょう、共に危機を乗り切るのです!』
『ふっ……』
ん? 今ほくそ笑まなかったかローレの奴? 音だけで姿見えないからわかんないけど、なんかそんな声が聞こえたぞ。
てか、浮かんだ。
『さあ、まだまだ働きなさい。ローレからのお願いだぞ♪』
うぜっ……何でアイツだけノリが軽いんだよ……そう僕は思ってた。だけど何故か周りのリア・レーゼ側の奴らの反応は違った。
モンスターの勢いに恐怖を覚えてた筈の僧兵がいきなりこう言った。
「お願い……ローレ様からのお願いが下ったぞ! なんとありがたい!!」
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」
――ってな感じだ。おいおい、ローレの『お願い』にどんな意味があるんだ? こいつら完全に洗脳されてるよ。てかもしかして、ローレが言う駒には僕達も入ってるんじゃなかろうか?
なんか途端にやる気が削がれ……いやいや、ローレとか関係ないか。そう思ってると僕の周りに頼りになる仲間達が来る。
「全く、現場に出てこない奴は気楽で良いわね。引きずり出してやろうかしら?」
「はは、でも一応召還獣を出してくれてるし、何もやってない訳じゃない。彼女は彼女なりに色々と危惧してる筈だよ」
セラは文句を言いながら、テッケンさんはそんなローレをなだめながら現れる。二人ともかなりボロボロしてるな。セラなんかメイド服の肩部分がビリって破けてるから、なんかエロいし。
いや、セラだから別に見てもなんとも思わないけど、客観的に見て……って意味だよ。
「だが高見の見物感はぬぐえん。せめて姿を見せて鼓舞するとか出来るだろう。まあローレは姿を現さない主義らしいから、それも無理なんだろうが」
「ローレ様にはちょっとした事情があるんですよ。だけど姿を見せなくてもこれだけみんなをやる気に出来るって凄いです。
私達も今はリア・レーゼの一員みたいな物だし、一緒に頑張りましょう!」
鍛冶屋とシルクちゃんも更にそう言った。全くシルクちゃんは相変わらずだね。まあ僕的にシルクちゃんはずっとこのままで居て欲しい子だけど。
でもローレから直接嫌いとか言われてるのに、本当にめげないよな。案外一番芯が強いのはシルクちゃんなのかも。それか脳天気……は失礼か。
艦隊の砲撃を抜けて来てるモンスターが迫る。聖獣はエアリーロが吹っ飛ばしてくれたし、とりあえずはここでモンスター共を防ぐ事にしよう。
「ローレの言うことなんか関係ないけど、シルクちゃんの言う通りもう一踏ん張り……ここから先には行かせない!!」
僕達は走り出す。真っ先に飛び出して、目の前の獣タイプのモンスターとぶつかるよ。こいつらはどいつもこいつも一筋縄では行かない連中だから。油断せずに行こう!
激しく戦闘が続く。だけど既に僕達は数でもそう大差なくなってる。一斉に討って出れる程の数がもうある。今までの防戦とは違う。
サン・ジェルクの艦隊のいくつかは外周部分に外付けして僧兵を投入してくれる。大きな波が出来つつある気がしてた。
こちら側に傾く、大きな波だ。これを逃す手はない。召還獣の働きもやっぱりデカい。イフリートとエアリーロ、そしてリルフィンは単体で僕達の倍の働きをしてくれる。
だけどこれで終わる――訳もないのが聖獣だ。枝を組み併せて強引に作った道。その横を、巨大な槍が通り抜けて、飛空挺を貫く。
僧兵を下ろしてた飛空挺は炎上して下に落ちていくよ。
「この攻撃は――」
「奴か!!」
僕の言葉に鍛冶屋が素早く反応して当たりを見回す。だけど姿は確認できない。すると今度は上空で砲撃してる艦隊に向かってく槍が見えた。
だけどそれを召還獣がくい止める。一撃目は不意打ちだったから仕方ないけど、警戒してれば召還獣達が防げない訳がない。
特に今のエアリーロを出し抜ける早さの攻撃なんか早々ないだろうしね。
「おい、聖獣の位置はわからないのか?」
僕はそんな言葉を召還獣達に向ける。召還獣達もその宝石の様な瞳で探してくれてるんだろうけど、何故かその姿を見つけきれない。
【何か特殊なスキルを発動してるのかも知れません】
「って事は、何かをやってくるかも知れないな。奴らが諦めるとも思えないし……シルクちゃんの魔法で――って無理か」
シルクちゃんは回復魔法の回転でピクと共に大忙しだ。元々接近戦がそんな得意じゃないモブリが加わってるからね。どうしてもモブリのその手足の短さは近接戦闘ではネックになるよ。
体も小さいしね。テッケンさんはそこら辺の弱点となる部分を上手く利用して戦ってたんだなって、他のモブリを見て思った。
すると肌に当たる冷たい感触。これは……雨?
「ここで雨って、これ自然現象じゃないわよね?」
セラがそんな疑問を投げかける。確かにこのタイミングでまた雨っておかしい。雨雲は晴らした筈だ。しかもおかしいことに、雨は降ってるのに雲出てない。
夜天の空にはまだ丸い月が煌々と輝いてるぞ。どう見ても自然的に降り出した物じゃないな。
「雨を降らせてそれを力に変えられるのは魚聖獣しか居ない。きっと奴がこの雨を降らせてるんだよ」
テッケンさんがそんな意見をくれる。確かにその可能性が一番高いな。雨は魚聖獣の力に変わる。雨が降ってると異様に強いからなアイツ。
てか、考えたら奴の強さも雨中が限定の力なのかも。エルフ聖獣じゃ夜にその力を最も強めれてた。それが魚聖獣は雨中って事なのかも。
じゃあ後の聖獣にも……って他の奴らはあんまり関係なさそうだな。最初に倒したメドゥーサ聖獣とか、最初からチートだったしな。
奴の全包囲の無差別石化能力に比べると、今の聖獣どもはまだマシだ。それでも厄介な事に変わりないけど……するとリルフィンが変な事を言う。
【おい、この雨……何か臭うぞ】
「変態ね」
【貴様の匂いじゃない。雨だ! この雨、何かおかしい】
セラの言葉を否定して、雨に意識を向けるリルフィン。匂い? 僕達にはそれらしい異臭は全然感じないけどな。リルフィンの嗅覚は僕達の万倍位あるのかも知れない。
すると少しずつこの雨の異常に僕達は気づく事になる。ボコっと靴が抜ける感覚。何かにはまったような……枝や茎が絡んだ場所だから、隙間にでも挟まったか? とか思ったけど、いや違う。
何か動きがすこしずつ緩慢になってきてないか?
「ちょっ……これって……この雨――」
少しずつ体にまとわりついてきてる! セラの言葉に続くように僕はそう思う。まさか、これって魚聖獣の粘液? でもそれにしては最初はそんな感じ……
「!! ――気づかせない為に雨状にして降らせたのか!」
だけどおかしな事が一つ……これ、僕達以外にモンスターも当然の如くハマってるぞ。どういう事だよ。すると今度は空から降ってくる無数の武器。
なるほど……これのための伏線か! 逢いも変わらず聖獣はモンスター共を使い捨てるみたいだ。でも甘い。この程度の粘液じゃ動かなくならない奴らがこちらには居る。
召還獣三体が一斉に空から降ってくる武器を弾き飛ばす。だけど向こうも必死なのか、次々と武器と粘液雨を降り続けさせる。
でも、なにかおかしいような……奴ら聖獣にはもっと強力な攻撃があるだろう。それでも今の風帝武装を纏ったエアリーロにか効くかどうかはわからない。
けど、やらない手はないし、できない訳もない筈だ。それなのに僕達まで巻き込もうとする、欲のある範囲攻撃ばかり……まるで僕達を意図的に守らせてる様な……いや、ちょっと違う。
僕達を守らせる事で、三体の召還獣をこの場所に固定でもさせてるかの様な――その瞬間、僕達の後方……本殿が激しい音と共に炎を吹いた。
「「「「「「――――――――――――――っ!!!!!」」」」」」」」
この場所に居る僕達全員が振り返る。
「そんな、本殿の周りには結界があった筈です!」
シルクちゃんがそう叫ぶ。確かに本殿の周りは僧兵が絶えず結界を張ってた。そしてそれにはどこにも異常とかなかった様に見えてた……でも違ったんだ。
今、この瞳に映る光景が真実。抜かれてたんだ……結界を。
「誰にも気づかれずにこんな事が出来る……それは一人だけだろう……僕達と同類の聖獣だけ……」
テッケンさんが歯を喰い閉めながらそう言う。確かに奴しか考えられない。ずっと戦場で姿を見ないとは思ってた……だけど僕達はそれが当たり前だと、思ってしまってたんだ。
見えなくても虎視眈々と僕達の後ろを取ろうとしてる。そう思ってて、別段間違いではなかっただろう。でも、根本的に思惑を外してた。
奴はもっと大きい物を狙ってたんだ。
【主! ――くっ、すみません。どうやらここまでの様です】
そう言ったエアリーロは消えていく。そしてイフリートも。リルフィンだけは何故かその姿を人型に戻して下に落ちてくる。
「我らがついていながら……主!!」
リルフィンはすぐさま本殿の方へ走る。おいおい、この粘液どうにかしてくんない? すると聞こえる、無邪気な高笑い。
「あははははあはははは!! 星の御子も大したことないね。全然僕の侵入に気付かないんだもん。おかげで案外簡単だったよ。これを手に入れるの」
そんな言葉と共に、空中に姿を見せるモブリ聖獣。奴の手には自信よりも大きいテトラの像がある。
「やっぱり、あの像でテトラを復活させる気か」
「させるかあああああああ!!」
聖獣の姿を見つけるなり、そのトゲが付いた真っ白な武器を取りだして、リルフィンはモブリ聖獣へと突撃する。だけどモブリ聖獣はリルフィンの目の前でその指を一つ鳴らす。
それだけでリルフィンの目の前で起きる爆発。そして横から入ってきた影が、更に追い打ちを掛ける様に攻撃した。
「ぐはっ!?」
「「「リルフィン!!」」」
地面に叩きつけられるリルフィン。そして三体揃う聖獣。
「一人逝ってるね。だけどまあ問題はないか。僕が居ればテトラ様は復活できる。さあ行こう、コードはこの手にある」
そう言ってモブリ聖獣は更にもう一回指を鳴らす。そして現れる魔法陣に消えていく。
「行かせないわ!!」
セラが武器を組み替えて矢を放つ。疾風する黄金の矢。風を切る音が聞こえる。
「もう遅い、世界に闇が広がる時は直ぐそこだよ!」
その言葉と共に聖獣は光になって空を上った。奴らはあの場所へ……世界で一番高い場所へと昇ってく。
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