命改変プログラム
力の形
そこかしこから響いてくる激しい音。猛々しい音。誰もが夢中で動いてるから、誰も気づいてないかも知れないけど……その瞬間ピタリと、雨が止んだ。
そして空に輝くは満点の月。不思議な事に、その月を中心にするように、厚い雲が円上に広がってた。
そして月の中央から、駆け降りてくる一体の召還獣。白と青の毛を靡かせて、力強い四肢で優雅に空を駆けるその姿……どっかの救世主が乗ってそうだな。
そう思ってると、魚聖獣がいち早く、リルフィンに向かって攻撃をしだす。水弾を一気に飛ばしまくってる。それをかわして回り込もうとするリルフィン。だけどデカい頭の割に、魚聖獣はあのリルフィンの速さについて言ってる。
するとその時、僕と魚聖獣の間に何かが落ちてきた。小さなその姿はモブリ……リア・レーゼのマークが入ったマントを翻してる。
次の瞬間、現れる魔法陣。まさかあのリルフィンはコイツをここに送り込む為のカモフラージュ?
「脆弱なモブリか――」
「脆弱な私達が、貴方たちに対抗する為の力―――それが魔法よ!!」
三つ叉を槍を向けられたその人。ってこの声はやっぱりミセス・アンダーソンか。迫る三つ叉の槍に彼女は臆す事なく立ち向かう。
「――潰す!!」
「出来るものならやってみなさい!! 【リドベージェ!!】」
その瞬間、何か強烈な物がぶつかったかの様に、僕と魚聖獣はそれぞれ別方向に勢いよく吹き飛んだ。クレーターみたいになってた穴の底にいた僕は、行き追いよく空へと投げ出されるよ。
「うおおおおおおおあああああああ!!」
何しやがるんだあのオバサン! 助けに来たんじゃないのかよ。そう持ってると、なんだかフカフカした物に受け止められた。月の光を受けて妖しく輝くこの毛は……リルフィンか。
「さ、サンキューな」
「随分と情けない姿だな。見てられん不甲斐無さだったぞ」
見てたのかよ。ならもっと早く助けに来てほしかった。って、待てよ。
「おい、アンダーソンを一人残したままでいいのかよ?どの位強いかと知らないけど、アイツじゃ聖獣は倒せないだろう」
一度僕にも負けてるんだぞ。まああれは全然本気とかじゃなかっただろうけど……それでもモブリ一人であの数は相手に出来ないだろ。
それなのにどうして加勢に行かないんだよ。
「確かに倒せはしないな。だが、あれだけのモンスターを相手にしつつ本命の聖獣を叩くのも厄介だろう。我らが傍に居ては、アイツが全力でその魔法を発動できん」
「アイツの魔法? それって今、僕を吹き飛ばした奴か?」
僕はリルフィンの背から顔を出して下を覗く。そういえば今の魔法は何だったんだろう? HPに影響はしてないけど……かなりの衝撃で吹き飛ばされたぞ。
一体何をしたんだ? そう思ってみてると、聖獣が指示を出して、周りのモンスターが一斉にアンダーソンへと襲いかかる。
今までは僕との一対一をやりたかったから、手出しさせてなかったみたいだけど、相手が変われば興味なんかないって事だろう。
直ぐに終わらせる為に周りの戦力で押しつぶす気だ。
「おい! 幾らなんでも後衛のアイツだけじゃ耐えきらないぞ!!」
だからって僕は今ボロボロ……でもリルフィンなら、そう思ってる訳だけど、こいつは優雅に周りの飛んでるモンスターを相手にしてる。
そんな雑魚よりも味方だろ。貴重な戦力だぞ!
「うるさい奴だ。人の心配をするよりもさっさとそこの箱に入ってる物を使え」
「いやいや、箱とかじゃなくこのままじゃアンダーソンが――」
そんな言葉を紡いでるとき……何故かアンダーソンに向かって行った屈強なモンスター共が、一斉に弾かれた様に後方へ飛んでた。
それはまさにさっきの僕と同じ……モンスター共は通路からはじき出されて、地面へと落ちていく。振り出しに戻る……だな。
「アンダーソンがなんだ? ピンピンしてるぞ」
リルフィンのそんな言葉に何か返さないと……と思いつつ、僕は呆気に取られて、口が上手く動かない。何をしたんだよアイツ? 魔法で吹き飛ばしたって感じだろうけど……あんな大量の敵を一辺に吹き飛ばす程の魔法って……かなり詠唱が長くなりそうな気がするけど。
でもアイツは僕を吹き飛ばした後、数分も間を空けずに、今のを撃ち放った。詠唱が長いとは思えない速さ。僕は取りあえず、近くにあった箱を開ける。するとそこには回復薬とか、補助効果のある薬とかが入ってた。助かる。
僕は速攻でそれらを全部飲むよ。体が癒される感覚の後に、体の奥が熱くなる感じ。まだいける。そう思ってると、何かがヒラヒラと前方を横切る。
「あれは!」
僕は立ち上がり腕を伸ばそうとした。だけど、何故か膝がカクンと折れて直ぐにリルフィンの背中に倒れ込む羽目に。くっそ……ダメージは回復したと思ってたけど、そんな甘くはないみたいだ。
疲労とか、精神的な消耗……それに僕の体はリアルと連動してる所もあるから、回復できても完全復活……とはいかないか。
「何を暴れてる? 降りる場所も出来たし、行くぞ!!」
「ちょっと待て!」
僕はようやくやる気を出してくれたリルフィンを止めるよ。
「助けに行けと言ったり待てと言ったり、貴様は本当にムカつくな」
「悪かったなムカつく奴で。でも、目的の物が空中を漂ってるんだ。あれを回収させてくれ!」
そう、今さっき目の前を横切ったのはエルフ聖獣の抜け殻だ。爆発の後どうなってたかわかんなかったけど、今このタイミングで空中を漂ってるってことは、今のアンダーソンの魔法で吹き飛んだって事か?
まあ理由はどうでもいいさ。重要なのは、アレが目の前にあるって事!
「なんだアレは? あんなゴミが必要なのか?」
疑わしい声を上げるリルフィン。確かにゴミだけど、あれは捨てちゃいけないゴミなんだよ!!
「頼むリルフィン!」
僕は必死扱いて頭を下げるよ。するとリルフィンは渋々ながらも漂ってる抜け殻の方へ行ってくれる。そして僕は腕を伸ばして、ようやくそれを掴む事が出来た。
「よし!」
これであの化け物を――そう思ってると、いきなりリルフィンが動き出した。しかもかなり乱暴だ。
「おい、一体どうしたんだ!?」
これじゃあまるで、何かに振り回されてる様な……
「何かが我の尾を握ってる!」
尾? そこからこんな風に振り回されてるのか。僕は後方の尻尾をみるよ。するとそこにはチラチラと毛の隙間から、なにやら緑色の物が見えた。
「まさか……あれは……」
僕はイヤな予感がした。てか、こんな無茶苦茶な事をする奴は、敵側でも心当たりは一人だけ……振り回すだけ振り回したら、今度は勢い良く、戦闘の行われれてる通路へと引っ張られる。
リルフィンを叩きつける気か?
「くっ、舐めるな!!」
リルフィンは輝きを増して尾を逆にこちら側に引っ張り返す。するとこっちに勢い良くその姿が見えた。それは緑色の姿に仮面をした、エルフ聖獣……やっぱり既に出てしまってたのか。
「コイツが我を言い様に振り回してた奴か! 身の程を教えてやろう!」
そう言ってリルフィンはその凶暴そうな口を大きくあける。まさか食ってしまおうとか考えてる? いやいや、どう考えても体に悪い――ってそうじゃなくて、リルフィンはアイツが聖獣だとわかってない。
それを伝えないと!
「おい、油断するな!! あんな形になってるけど、あれは聖獣だ!」
「何!? 聖獣だと?」
信じられないのも無理はない。だってどう見てもただのモンスターと化してるもん。だけど事実で、そして奴にはどんな攻撃だって通用しない。
そこまで言おうとしたけど、野生化した聖獣の動きは早かった。大きく口を開いてたリルフィンの牙を伸ばした腕で掴み、頭上に回り、そこから勢い良く両足を伸ばして、リルフィンの頭上を蹴った。
凄まじい音がして、落ち出すリルフィン。まさか今の一撃で気を失った? おいおい、打ち所が悪かったのか?
僕は足を戻して、頭に降りてきた聖獣に抜け殻をもって突撃した。これの中に奴が戻れば!! そんな思いで短い距離を、ダメージの残る足で走る。
「うおおおおおおお! 元に戻れえええええええええ!!」
そんな声を出しながら、走る僕を見て、聖獣は汚い緑色の液体を垂らしながら、薄ら笑ってる。不気味な奴。実際まともだった時も嫌いだったけど、この状態よりはまだマシだ。
すると僕がたどり着くよりも先に、奴は羽を広げて浮き上がる。それと同時に、リルフィンがビクンと動き、走ってた僕は落ちそうになった。
「グルルルル……」
とこっちも獣みたいな声を上げてるリルフィン。なんとかあのまま落ちる事は避けれたけど、どうやらさっきの一撃がかなり効いたから、頭に来てるようだ。
「おい、リルフィン落ち着け!!」
とにかく先ずは背中に戻してください! 側面の毛を掴んでどうにか耐えてるけど……これじゃ時間の問題だ! それに今の状態のアイツには何をやっても無駄……だからこそ、僕はこれを求めてたんだ。
「リルフィン!」
咆哮を上げて走り出すリルフィン。くっそ、マジで頭に来てるようだ。やめろって言ってるのに……聖獣は向かってくるリルフィンにその手を伸ばす。
どこまでも伸ばせるその腕が再び迫るけど、リルフィンは避けようとはしない。そして狼の雄叫びを空に響かせる。すると聖獣の腕は何かに阻まれたみたいに横に逸れて言った?
しかも前方の聖獣の様子もおかしい。固まってしまってるような……なんだ行けるのか? そんな錯覚をしてしまう。
そしてリルフィンは光を増して、固まってる聖獣へと突撃。聖獣の体は木っ端微塵に弾かれた。もしかしてこれなら……そう思えるほど、奴は原型を止めてない。
「やった……のか?」
「木っ端微塵、これが我ら召還獣の力だ」
月光の下で輝くリルフィンはなんとも格好良い。本当に月が似合う獣だな。フィンリルか……実際そっちの呼び名の方が格好良いんだけど、僕にはリルフィンが定着しちゃってるんだよね。
「取り合えず上がらせてくんないか?」
「自力で上がれ、まあ直ぐに下に行くし、別にそのままでも構わん気はするがな」
まあ確かに直ぐに下に行くのなら、別にこのままでも~
「ん?」
何かが周りで反射してないか? 月光を受けて、周りがキラキラと――――眼球に迫る細い細い針。
「うわ!?」
僕はとっさにセラ・シルフィングで防ぐ。だけど直ぐに別の所から痛みが走る。それにリルフィンの痛がる声も聞こえた。見てみると、全周囲から、細い針が延びてる。
しかもこの針……緑色してる!
(まさか!)
そう思った瞬間、針が勢いよく抜かれた。赤い血が抜かれた衝動につられて飛ぶ。針が戻った先を見ると、緑色の小さな水球が無数にある。
月光を反射してたのはこれか……緑色した水球は一カ所に集まっていき、その姿を成していく。その見たくもないモンスターの姿を再び表しやがった。そして両手でリルフィンの足を掴むと、盛大にスイングして投げ飛ばす。
「んんーーーーーー!」
ヤバいぞこれは、腕の握力がなくなってきたかも。しかも片腕にはセラ・シルフィングで、口には咥えたくもない、抜け殻……幾ら防御にセラ・シルフィングが必要だったとはいえ、吐きそうだ。
取り合えず何とかセラ・シルフィングを鞘に戻して、両腕でリルフィンに捕まるよ。でもこの風圧は……そう思ってると、リルフィンが止まってくれた。
一体コイツはどこを踏みしめてるんだろうか? と思ってるけど、今はそんな事どうでもいいか。大切なのは、やっぱり物理攻撃全般奴には通じないって事だ。
どんなにバラバラにしてもダメって……魔神ブ○かよ。その内吸収とかしだしたらどうしよう。そんなアホな想像してると、迫ってくる聖獣に対して、リルフィンが自分の毛を逆立てて発射する。
でもそれを聖獣は鋭い羽で撃墜するよ。あの羽もかなり厄介な代物になってしまってる。普通の時はただの羽だったのに……今や立派な武器だからな。
聖獣はその羽を伸ばして斬り刻みに掛かってくる。そのスピードたるや本当に目に見えないほどだ。だけどリルフィンは何とかかわしてくれる。
でもそれでも完璧じゃない。風斬り音の後には、リルフィンの体に傷が残ってる。完全にかわせてないんだ。
「リルフィン」
「大丈夫だ。黙ってろ」
ひど! 心配してるのに、そんな風に言わなくても良いじゃないか! それにこのままじゃどの道アイツは倒せない。
「今のアイツには物理も魔法も効かない。このままやってもじり貧になるだけだ。幾ら召還獣だからって攻撃の効かない相手には勝てないだろ?」
僕は黙らずにそういうよ。
「攻撃が効かない相手などいない。問題は奴の体の特性だ。それならば、今度はバラバラにした後に、かき消してやる!!」
そう言ってリルフィンは翼を交わしながら聖獣へと迫る。再び光が強くなるリルフィン。そして大きく息を吸い込み再び咆哮をかます。
だけどそれに併せて、聖獣も叫びを上げて、しかも翼を擦りあわせて不愉快な音を倍増させやがった。ぶつかり相殺しあう二つの叫び。
動きを封じる事が出来なかった聖獣が、その羽を交差させて、リルフィンの突撃を受け止める。だけどそれで終わらないリルフィン。
「食らえ!!」
無数の毛が聖獣目指して発射される。体が徐々に削り取られていく聖獣。行けるのか? だけどその時、下から上へガゴン!! と凄まじい音と共に、リルフィンの頭が跳ね上がる。
空に伸びる長い足……聖獣の野郎、体が削られていく中で、足を伸ばしてリルフィンの顎を打ち抜きやがったのか。
「ぬぐっ!!」
大きく体が傾くリルフィン。ヤバい、今ので脳を揺らされた。足下もオボツカナい状態になってる。その瞬間、聖獣の翼がリルフィンの背中部分に突き刺さる。
声にならない痛みを上げるリルフィン。さらに次々と体中が切り刻まれて行く。このままじゃリルフィンが……ふらふらとした足取りで、徐々に下に落ちていくリルフィン。僕は抜け殻を肩に抱いて、セラ・シルフィングを抜く。
そして酷だけど、僕はリルフィンにこういった。
「頼む、後一回で良い。お前の咆哮をかましてくれ!」
そんな声も上がらないかも知れない。だけど意識はまだあるんだ。それなら、一瞬でも隙を作ってもらいたい。そしたら後は僕がやる。
「このままやられるのはお前も癪だろリルフィン!」
そんな言葉の後、目を見開いたリルフィンは、力を振り絞って、最後の咆哮を上げる。次の攻撃が来てた羽が空中で停止した。
よし、今度はちゃんと効いてる! だけど声が萎んで行くと同時に、リルフィンの体がガクリと加速度的に落ちだした。気を失ったみたいだ。
僕はリルフィンの毛から手を離し、気を失ったリルフィンを踏み台に、聖獣へとジャンプする。
(ゴメンリルフィン、だけど後は任せろ!!)
届かない! けど、僕は奴の羽を掴んで引き寄せる。だけど少しだけ硬直が解けて来た聖獣が片側の羽をこちらに伸ばす。
僕はそれをセラ・シルフィングで一閃。切り落とした。だけど今度は奴の腕が僕の顔面を強力な力で掴む。握り潰す気か?
「この……野郎……」
僕は腕も切り落としてやろうと、セラ・シルフィングを振るおうとした。だけどその前に奴のもう一方の腕が掴んできてそれをさせない。
くっそこのままじゃ……聖獣も羽を片方なくして、もう片方は僕が掴んでる。飛ぶことが出来ないから、落ちてる訳だけど……こいつ僕を地面にこのまま叩きつける気か? 何とかしてこの肩にある抜け殻をコイツに……そう思ってると、下へ落ちる勢いで抜け殻が肩からふわりと浮いてしまう。
(ダメだ――行くな!!)
そう思ったけど、僕には止める術がなかった。下へ目指す勢いで軽い抜け殻は僕の肩から離れてく。そしてバサっと聖獣の顔へと飛んでった。
「んが?」
そんな疑問系の声を出したと思ったら、聖獣の血液の緑色が強く光りだした。これは……もしかしたら! そんな思いを抱いてると、顔に掛かる負荷が弱くなってる事に気づいた。それに腕を掴んでる方もなんだか弱くなってる。そして僕が掴んでた翼はなんだか消えて行ってる?
僕は顔を放して、腕も解放させる。地面はもう目前。先に落ちてるリルフィンの姿が見えた。真下にリルフィンがいるから、流石にそこに落ちる訳には……僕は風のウネリを使って、リルフィンを避けてそのウネリを通路にぶつける。
そして光ってる聖獣ごと、支えにしてるウネリとは反対側に落ちる。何とか今度は足から着地したけど、足先から頭の天辺まで衝撃が伝わる感じがキツい。
聖獣はゴロゴロと転がって行ってる。そして自然に止まった所で、ものスゴい雄叫びを上げまくる。その姿は既にどっちなのかわかんなくなってた。元のエルフ聖獣なのか、それともあの血液だけの獣なのか……だけど次第に、バキバキと言う音と共に、聖獣に色と体が戻ってく。干からびてた体が膨張して、そして萎んでく。
「ぬあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
そんな叫びと共に、溢れるばかりの衝撃派。目の前にいるのは紛れもない聖獣の姿。
「戻った……」
「みたいね。でも……あんまり嬉しくもないわ」
近くにいたセラがそんな事を言う。確かに……あんまり嬉しくはない。だってやっぱり強そうだ。腰に刺さる長い長刀。筋肉質の体に黒い肌。そして何故か緑色に変わってる髪の毛。更に大きな黒い翼。
あのゴツサは、強敵にしか見えない。
「悪い……」
ん? なんだ? 謝ってくれるのか? そう思ってると奴はこちらに向いてこう続けた。
「悪い夢を見ていたようだ。だがおかげで正気に戻れた。良い気分だ。良い気分で、お前たちを殺せそうだ」
その瞬間、こちらに腕を伸ばす。すると、奴の羽がセラの聖典を切り刻む。
一気に三機の聖典が炎に包まれる。
「なかなか使えるな」
なんだか感触を確かめるような言葉だな……エルフ聖獣は首をポキポキ鳴らして、柔軟をし始めた。
「ちょっと……アイツ今まであんな事出来た?」
「ついさっきまでは……でも、あの状態で羽をあんな風に使った事なんかない」
でも今……確かに奴は羽を武器に使った。まさか、さっきまでの経験が生きてるのか? そう思ってると、周りから他の聖獣共も集まってくる。
「なんだ戻ったんだ。つまんないな~」
「さっきまでのお前の方が、面白味があったんだがな」
「今の貴様とはやる気にならんな」
なんだか文句を言われてる?
「ふん、どうやら随分と迷惑をかけたらしい。だがよい経験だった。それよりも生き残ってるのはお前達だけか?」
「そうじゃないよ。だけど厄介な能力持ちがいてさ。他の奴らは軒並み下に吹き飛ばされたよ」
モブリ聖獣がそんな事を言う。そう言えば、随分通路が広くなったと思ってたら、モンスター共の姿がない。
「私の力で邪魔者は弾き飛ばしましたから」
そう言って出てきたのは、ミセス・アンダーソン。あれだけのモンスターを一人で弾き飛ばしたのか? どんな力だよ。スゴいなこのオバサン。
そしてそんなオバサンは臆せずに聖獣にこう言うよ。
「諦めなさい。ここよりは進むことは叶わない。それは十分わかった筈でしょう。大人しく森に帰り、バカな野望や捨てなさい」
流れる静かな時。するとエルフ聖獣がその長刀を抜き去った。
「譲れぬな。この思い早々と捨てる訳にはいかぬ!!」
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