命改変プログラム

ファーストなサイコロ

神の国



【ありがとう……】


 そんな言葉に少し安心しつつ、僕たちは前へ進む。この社の上層部にまで響く幾つもの爆発音。それは聞こえて来てた言葉から、砲撃じゃなく打ち上げられた花火だとわかる。


「くっそーーーーー! 外側へ出る道はどこだああああ!!」


 そんな風に叫びながら僧兵の奴は走り回ってる。どうやら外へ出て、こいつも花火を打ち上げたいらしい。てか、この街の人たちはすべからく花火打ち上げられるのかよ。


「花火なんて初歩の初歩の魔法だ。火を起こすのの発展系だからな。まあ複雑な凝った花火にしようと思ったら難しいけど、小さい奴なら、子供にだって打てる」


 そういう物らしい。全く、つまり一度も魔法を使った事ない僕は子供以下と……そう言うことか。本当は超使いたいよ。だけど他の武器を使う機会なんか僕にはないんだ。
 だから魔法系のスキルを覚えようもない……武器じゃなくても防具とかに凝れば良いんだろうけど、そこまでお金もないのが現状。


「おいおい、どうなっちまうんだ俺たち……いや、元老院は……」


 そんな不安の声が襲いかかって来てた奴らから聞こえる。不安は攻撃にも影響を与えてるのか、動作に切れがない。丁度良いから、ここで一気に突破しよう。そろそろ本当にうざいからな。
 しかもここの所、攻め方を変えて来やがったし……奴ら、自分達の安全を確保しつつ、遠くからの遠距離攻撃しかしやがらない。通路に展開して障壁を張りつつの攻撃。厄介たらありゃしない。


「逃げ出したいのなら逃げれば良い。別に追ってまで倒そうとなんか思わない! だからさっさとそこをどけ!!」
「「「うあああああああうああああああ!!」」」


 迫る魔法を避けて障壁に迫る。そして雷撃を纏わせたセラ、シルフィングを一閃――見立てが甘かった障壁は紙の様に切れる。


「そんなバカな!?」
「いつも上から見てるから見誤る。僕の剣はこの程度の障壁じゃ防ぐ事なんか出来ない!!」


 消えていく障壁に、青い雷撃を背負って迫る僕。そんな様を見てか小さなモブリ達は堅く目を閉じる。それはまさに敗者の姿。
 圧倒的に有利で、仲間も沢山居る状況だ。なのに、自分達に刃が届く距離にくると途端にこれか? バカバカしくなるな。
 僕は雷撃纏う剣を横に振るう。激しく光るその雷撃は壁や床に激しい焦げ後を焼き付かせる。だけど恐る恐る目を開けた奴らは自分の状況に疑問を持つ顔。


「元々、僕達はお前達を倒す気なんかない。欲しいのは道だけだ」
「ああ、その通り。お前達みたいな奴でも、俺たちは手に掛けたりしない。同じ同胞だから。だけどまだ邪魔をするのなら……致し方ないかもな」


 そう言ってモブリサイズの玩具みたいな剣をチラツかせる僧兵。だけどそれは効果抜群だった。震え上がった元老院のお抱え共は慌てて、道を開けて仲間の障壁へと走り出す。
 大衆の総意が元老院からノエインに移りつつある今、ここの奴等も迷いというか、どうすればいいのかわからなくなってる様子。
 ここで下手に攻撃して、自分の身を危険に晒したくない奴等は、もう魔法を打ち放つ事さえしなくなってる。本当に、元老院の行ってたとおり。こいつらにとって一番大切なのは自分の命――だな。


「行くぞ。もうあいつ等に戦闘の意欲はない」
「分かってる。先を急ぐぞ。もうすぐだ」


 僕達は元老院お抱えの兵隊共に背を向けて走り出す。どうにかできそうで、少しだけ希望が見える。だからこの足もグイグイ進む。
 僕達は過度な装飾に無駄に豪華な部屋群を通り過ぎ。更に転送陣へ。


 転送陣から出ると風が一陣吹き抜けた。どうやらまた外側らしい。だけどそれも今回は良いかな……と思える光景。それが観れた。
 サン・ジェルクの空を彩る花火が大量に咲き誇る。一つ一つがキラキラと、花火が消えるまもなく息をつかずに繋がってる。これはスゴい……素直にそう思える光景だ。


「チビ達にも見せたかった光景だな。本当に……アイツ等がいなかったらどうなってたかわかんないよ」


 僕は花火を見つめつつそう紡ぐ。すると僧兵が武器をしまいながらこう言った。


「案外本当に役に立ったな。最初は邪魔でしかないって思ったけど、お前の判断は正しかったよ」


 まあ僕もマジで役に立つとは思ってなかった。ただ、超可愛かったから連れて行っただけだ。でも結果的には、あの極モブがいなかったら、こんな光景を見ることは出来なかったと思う。
 残った極モブのレッド・ブルー・イエローで、捕まえた目玉みたいな奴に干渉させて、それでこちらの声を届かせれる様にして貰ったんだ。
 そしてその役目を終えると、最後の三体も…………どうやらあのチビ共は、一定量の魔法を使うと消えてしまうみたいな感じだ。
 LROに魔法の制限はないと思ってたけど、チビ共は多分魔法で生み出された存在。だからその身に宿してる魔法も有限だったのだろう。
 全く……惜しい奴等を無くしてしまった。この儚く散る花火を見てると、自然とチビ共の顔が浮かんでくる様だ。だけどそんな感傷に浸ってる場合でもないよな。この先の部屋が長が眠るその部屋だ。
 空にかなり近くて、街からは大分遠い。こんな所で、ただ一度起きて一週間眠る……そんなサイクルを繰り返してるのか。
 そんなんだから何も分からなくなるんだよ。ただ無駄に生きてるだけなんて、そんなの意味なんてない。僕はずっと開いてた地図を閉じる。
 ここまで来たらもう地図なんていらない。邪魔する奴がこれないように、僧兵が少し転送陣をイジる。万が一元老院の奴等が来たら厄介だからな。
 まあ外の情勢が不利に成りつつある今、僕を狙って来るかもしれない事は、十分あり得る。その為にも必要な事だな。


「よし、これでしばらくは使えない筈だ」
「じゃあ、行くぞ」


 僕達は通路を駆ける。すると半分位緩やかに進むと再び外側から中心に行く道が見えた。だけど奥に見えるのは今は転送陣じゃない。
 扉がある。古ぼけた感じの年期の入った扉だ。そしてその直ぐ前には、まるでとうせんぼをするみたいに一人のモブリが正座して座ってる。しかも床には、何故か白い紙の上に置かれた一つのナイフ……というかあれは脇差かな――があった。
 とうせんぼしてる割に、僕達を見つけても動こうとしない。逆に姿勢を正して深く大きく息を吸って吐く動作を繰り返す。
 襲ってこない……けど、なんだか妙なプレッシャーをあのモブリからは感じる。それは随分、覚悟の入った顔をしてるからかも。
 上層階であんな顔をしてる奴を見るのは初めてだ。そう思ってると正座して座ってるそのモブリは、床の脇差に手を伸ばす。覚悟の入った顔してるけど、実は緊張しまくってるのか、かなり手が震えてる
 そして震える声でこう言った。


「わ……わわた……私は騙されたりしない! あなた方は結局、武器を捨てずにここまで来た。どんな事を口にしても私から見ればそれが絶対の事実!
 狙いは元老院の長のお爺ちゃんですか? 来るなら来てみなさい! あなた方がここを通ると言うのなら、私は切腹してこの命を絶って、あなた方の行動に意を唱えて見せます!!」
「なに!?」
「切腹!?」


 僕と僧兵は揃ってそんな声を出す。なるほどだから白装束なのか。でも切腹って……何か行動を間違ってないか?


「落ち着け。僕達は本当に何もしない」
「信じれません! 本当に何もしないのですか?」
「それは……まあ、やることはやるけど……」
「ほらやっぱり!!」


 しまった……ついつい正直に答えてしまったぞ。死に装束みたいな彼女はプルプルと震える腕で握った脇差をわき腹当たりに持っていく。


「お、おいやめろ!」
「動かないで!」


 激しく叫ぶ彼女。ヤバいなあんまり刺激しない方が良いかも……でもここまで来てグズグズなんてしてられない。外はもう決着ついたみたいな物だろうし、こっちも急がないといけない。


「おい、どうする? てか、誰だあれ?」
「言葉から察するに、長の孫とかじゃないか? 親類だろ。だから元老院に敵対してる俺達を信じる事なんか出来ない」


 確かに……そう言う感じだな。身内の為にその命を張るか。まともな奴もいるんだな。いや、それもあの長の関係者だからか……他の元老院の関係者じゃこんな事しないと思う。
 でも唯一まともなだけに、真面目に僕達を阻んでるってのが皮肉だな。なれない事してるからテンパってて、話もまともに聞いてくれないし……なんとかしないとな。
 取りあえず武器を取り上げれたら良いんだけど……この微妙な距離感じゃな。走り出しても一瞬では距離が縮めれない。
 何かの拍子でドスっと刺してもらっても困るしな。


「そう……そのままジッとしててくださいね。大人しくしててくれたら、私も安心です……」


 自分の命を盾にしてそう言う彼女。安心してる割にはかなり尋常じゃない程の汗を掻いておられるようで。まあ僕達が無視して動き出したら、彼女には止める術が実際ないんだろうな。
 だからこそあんな無茶を……実際僕達だからなんとか通じてるけど、普通はそんなやり方じゃ敵は止まらないぞ。


「そんな事分かってる。だけど貴方達は争いに来た訳じゃないとかのたまわってるんでしょう? 民衆を味方に付けるために。それならば不味いでしょう……私が死ぬと」


 肌から染み出してる汗の一つが額から顎へと流れてく。精一杯気を張って喋ってるんだろう。でも、今言ったことにはミスがある。僕はそれを指摘してやろう。


「確かに不味いな。だけど自分で腹切って死ぬとか、自殺じゃん。僕達別に何もしてないし……そもそも君が今腹を斬って死んだとして、それを誰がいつ見つける? 
 きっとその時には僕達はサン・ジェルクにいないと思う。しかも死体を片づけるかもしれないじゃん」


 うんうん、誰も彼女の死に気づかなかったら、意味ないよね。誰も僕達を犯人だなんて思えないし、やっぱり自殺はどうだろう?
 確かに後から他殺に見せかける事は出来るだろうけど、死ぬ人にそんな事出来ないもんな。そして今この階に居るのは僕達だけ……どう考えても意味の無い死にしか成らないぞ。


「ふふ、それはどうでしょうか? お忘れですか? 私達モブリは誰もが魔法を使えます。私だってこの映像と声を届ける事くらい……死ぬ間際にだってやって見せましょう。
 そして訴えるんです。信じないでと、私は貴方によって斬られたと、民衆に訴えかけます。それで万事解決です。どうですか?」


 むむむ、それなりにちゃんと考えてるじゃないか。確かにそれなら……自分の死を無駄にはしないかも……自分で腹斬って中継までするなんて誰も思わないだろうしな。
 死に逝く者の言葉には誰もが耳を傾けるかも……そうなると折角纏まり掛けてる大衆に再び疑惑が募るのは必死。そのまま死んだら、僕達が幾ら弁明しても意味ないような気もする。
 死人に口なしで、物言わぬ死体と成られたら、こいつから弁明させる事も不可能だしな。考えてみればなんて厄介な事を考えてやがるんだ。困るじゃないか!


「確かにそれは……」


 僕は苦い顔して言葉を紡ぐ。だけど途中で思いついた。


「ちょっと待てよ。お前、腹を切っても即死じゃないんだよな?」
「後戻りは出来ないけど、そうね」


 なるほどね。さっきからピタリとわき腹に脇差しの刃を持っていってる彼女。でもそれなら……


「おい、何か方法があるのか?」


 僧兵が、何か考えがあるような僕にそう聞いてくる。


「そうだな。あるっちゃある。結構荒いやり方だけど、一気にこの状況を打破出来るかも」


 刻々と過ぎる一分一秒がもったいない今の状況だ。荒療治でも直ぐに解決出来るのならと、僧兵は頷くよ。


「何? その何かやってやるぞ的な目は……わ、私は本気なんだからね!!」
「なら……刺せば良いさ。気が遠くなる激痛に顔を歪ませる事に成るし、きっと民衆の顔も最後に焼き付くアンタの顔はさぞ悲惨で凄惨なものに成るだろうけど、そこまでの覚悟があるのなら仕方ない。やればいい。
 生憎こっちはリア・レーゼの人々の命が掛かってるんだ。グズグズなんてやってられない」


 僕はそう言って動き出す。一歩を踏み出し、同時にウインドウを表示させる。


「ちょっ!? ちょっとまさか本気? 本当に来ちゃうの? 本当に刺しちゃうんだからね!」
「だから刺せば良いって言ってるだろ」
「わ……私、死ぬんだよ! アンタ私が死んでも良いっての!?」


 なんだよさっきからギャーギャーうるさいな。こいつ絶対に覚悟無いだろ。それならそれで、こっちとしてはやりやすいから良いけど。
 僕は念のためにアイテム欄からアイテムを取り出して、更にスピードを上げて駆けだした。


「安心しろ。例え刺しても即死じゃないなら、ちゃんと回復薬を飲ましてやる」
「んなっ!? この鬼畜!! そんなもの絶対に飲まない! そんな施し受けるくらいなら、潔く死ぬわ!!」


 なんだよ、結局刺すのか? どうやら僕の言葉にカチンと来たらしいな。死ぬ覚悟なのに死ねなかったら恥とか……そんな感覚?
 それとももっと違う展開を希望してたのか? だけど往々に思い通りになんか世の中行かないっての。それを元老院の身内に知って貰うのは悪い事じゃないよな。


「言っとくけど、絶対に死なせたりしない。無理矢理にでも飲ませるから、刺すのなら覚悟しとけよ!」


 なんだか立場とセリフがあってないような……ま、いっか。


「む、無理矢理ってどうやってよ!?」


 甲高い声を上げてそう叫ぶ彼女。彼女は刺すか刺さないかの狭間で心が乱れてるみたいだ。ふふふ、それならこれで止めと行こうじゃないか!


「どうやって……教えてやるよ。それは勿論口移しでだ!! ――――――――――アイツがな!!」


 そう言って僕は後ろで待機してる僧兵を指さした。すると数秒「…………」←こんな感じになった僧兵は、次の瞬間「なんだってええええええええええええ!?」と叫んだ。


「そんなの絶対にイヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 そして二人の目があった瞬間の次に彼女があげた声がコレでした。相当お気に召さないようで……おいおい、流石に僧兵がショック受けてるぞ。なんて事言ってくれるんだ。


「くっ……こうなったら即死でもいいっ――てそれじゃあ意味がないし、どどどどどうすれば――はっ!」


 彼女が苦悩してる間に到達した僕。彼女は僕を見上げて口をパクパクしてる。


「残念。時間切れだ!」


 僕はそう言って彼女の持つ脇差しの刀身部分だけをへし折った。折れた刀身がいきおいよく回転して壁にぶっささる。
 そしてそんな刀身へ目を移し、途端に全ての力が抜けたように崩れ落ちる彼女。これはもう負けを認めたって事でいいのかな? 戦意は既に消え失せてるな。


「お、おのれ~この野蛮人め~」


 ボソボソとそんな恨めしい言葉を吐いてる彼女。だけども何も出来ないだろうから無視していこう。


「さてと」


 そう締めて、僕は扉を見据える。ようやくだ。全く、一つの建物の中なのに随分長く感じたよ。でもここが目的地だ。


「よし、行く――か?」


 振り返ってみると、そこには僧兵があれだけ言われたのに、彼女に優しく声を掛ける姿が!? 僕は予想外の事にちょっと驚いた。


「こ……この犯罪者共が……私の手を握れる事で改心しろ」


 なんだか無茶苦茶な事を言ってるけど、ちゃんと手を差し出してる彼女。無様な格好のままで居たくないってだけなのか……それとも予想外の奴に優しくされたから、照れ隠しなのか……いずれにせよ、なんだか僕は邪魔者っぽい雰囲気。


「全く、戦いの最中では何が起きるかわからないな……」
「なっ、なんの事だよ?」


 顔を少し赤くしながら不満気な言葉を漏らす僧兵。何の事ってコイツ……しょうがないからちゃんと空気を読んであげるさ。
 それにもう僧兵は必要無いだろうし。


「お前は彼女を見てろよ。もしかしたらまだ自殺するかもだし(まあ、そんな事ないだろうけど)、元老院に連絡とかされても面倒だ。監視しとけ。
 ここから先は僕一人で十分だ」


 それらしい適当な理由を付けて、僧兵をこの場に残す。僕ってなんて優しいんだろう。さて、僕は木製のスライド式ドアを横に開いて、部屋の中へ。
 彼女のことは僧兵がしっかり説得してくれてた。




 中はなんだかシックな感じの家具で統一された部屋でした。しかも畳じゃなくフローリング。これは結構意外です。本棚には古ぼけた本が大量に収まってて、不思議な事にさっきまで起きてたかの様にテーブルには剥きかけのミカンとかある。
 どういう事だ? いや、あれは彼女がしたのか? だけどテーブルの二カ所にあるんだよね。部屋には他に人なんていないのに、どうなってるんだろう?
 起きてたままにしてるとか? なんの為に? よくわからないけど、取りあえず僕は長を捜す。すると案外早く見つかった。
 隣の襖を開けるとそこに横たわってる長の姿が。そこはやっぱり畳の部屋。それに長を包む様に何かの魔法が施されてる。緑色の半球体の中心に長様はお眠りだ。
 僕は武器をしまい、代わりに杖を取り出す。国宝級の杖。僕は取りあえず杖を掲げて、この杖に宿るスキルの名称を叫ぶ。


「『夢幻』――――発動!!」


 すると杖は自身で浮き、その身の回りに魔法陣を展開させる。赤紫色したその陣は、足下に進み、広がってく。そして次の瞬間、目映い光が部屋全体を包み込む。




「くっ……」


 うっすらと目を開けるとそこはさっきまで居た部屋じゃなくなってた。なんだか何も無い空間。白くて足下には霧みたいなのがモヤモヤしてる。
 どこだここ? どうなったんだ? が、素直な感想です。僕は少し歩いてみる事に。するとこの空間に一本だけ聳える何かが見えた。モヤーとした感じで見えるそれに近づくと、その柱には下半身を埋められた長の姿があった。


(どどどどどどど、どういう事だこれ?)


 そう思ってると、天井から杖が降ってくる。術者の元に戻ってきたって事はちゃんと魔法は発動したって事か。じゃあこんな格好に成ってるのも、この夢幻とか言う魔法のせいか。
 そう言えば精神系の魔法だとかなんとか言ってた様な……もしかして精神支配とかができる奴か? それってなんかヤバくね? 素人が使って大丈夫なのか不安だぞ。
 だけどある意味それなら嘘を付かれる事も無いのかも。僕は意を決して長に向き合う。


「アンタに聞きたいことがある。元老院の長で、何百年も生きてるアンタなら知ってるかも知れない。『金魂水』そのアイテムの事で知ってることはないか?」


 なかなかアルテミナス側から連絡こないし、こうなったら神を崇めてる所の偉い奴に聞くのが一番。そう思ったんだ。それにこれを逃すと、もうチャンスないかもだし。すると言葉の終わりに、杖が不気味に光る。
 そしてその色と同じ色に瞳が変わり、長は感情の起伏無く、まるで機械が喋ってるかの様に話し出す。


「金魂水……それは神の落とした涙の粒。あらゆる病を治し、不老長寿を与える伝説のアイテム――と言われておる。一般的には……」


 一般的には? じゃあ他に隠し要素があるのか。てか、そこまではアイテム欄でみれたよ。その先を教えろ。


「金魂水の本来の役割は、薬や不老長寿ではなく、神の国への橋立への鍵と伝えられておる。シスカ様が帰られた神の国への橋を建てる唯一の鍵。
 それが金魂水じゃ。間違って伝わったのは、金魂水の強力な力によるものじゃな。金魂水はどんな願いも一つ叶える。だからこそ、手にした物の願いだけ、伝説があるのじゃよ」


 神の国への橋渡し……僕はその神の国を聞いみる。


「どこだそれは?」
「神の国……それは―――――――――」


 見上げる瞳の先を僕も見つめる。するといつの間にか黄金色の光が天井からさしてた。そして白い霧の中から顔を覗かせる巨大な球体。まさかこれが……神の国。


「――――――――月。あの黄金色に輝く星にシスカ様は帰ったんじゃ」

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