命改変プログラム

ファーストなサイコロ

民の心



「「大それた言葉、その思想は危険。神に等しき元老院への侮辱、許し難し。背信者に……死を」」




 そんな言葉を紡ぐと、作りあげた魔法を僧兵へと向かって放つ不気味な奴ら。黒い球体が勢い良く迫る。周りの明るさまで吸い込んでいるかの様なその魔法。
 僧兵はその場にただ固まってその魔法を見つめてる。


(アイツ、何やってんだ!?)
「避けろバカ!!」


 僕は必死にそう叫ぶ。だけど恐怖心のせいなのか僧兵は動けないらしい。さっきの威勢はどうしたんだよ。


「くっ、この魔法さえ解ければ……」


 すると僕の体の三カ所を縛ってる光の輪がボロボロと砕けてくじゃないか? 一体どうして? そう思ってると気づいたよ。僕の周りに極モブ達が集まって、魔法を中和させてるじゃないか。
 多分そんな事をやってるんだと思う。よくはわからないけど、それぞれ三カ所に分かれて、そこで数人係で何か唱えてる。
 なんて言ってるのかは極モブ達は普通の言葉言えないからわからないけど、少しずつ輪は確実に劣化して消えていく。
 僕は足の輪が消えた瞬間、床を蹴って僧兵を追い越して黒い球体にセラ・シルフィングを突き刺した。そして二対の剣をおもいっきり中心から外側へ広げて斬り裂く。
 形を歪に崩された魔法は、霧散して消えていく。


「たく、冷や冷やさせるなよな」
「お前……どうやって……」


 ガクブルと震えてた僧兵がそんな疑問を投げかけて来る。すると不気味な三人組も僕が動けてるのが信じれない様でこう言った。


「なぜ……アイツどうやって?」
「なんの知識も教養もない野蛮な猿には解けない筈」
「わからない。わからない」


 なんか真ん中の奴微妙にムカつくな。誰が知識も教養もないだ。ちゃんと教育課程過ごしてるんだぞ。人並みの知識も教養もあるっての。
 まあこいつらの言ってるのは魔法の……が前提なのかもしれないけど。そうなると確かに僕にはそんな物皆無だよ。
 でも猿って酷い。ふん、猿に自分達の魔法が破られたのがそんなに信じられないか。まあ実際僕じゃないけど、こんな奴らに教えてやる必要もないよな。


「今はそんな事どうだって良いだろ。今言えるのは、僕はとても良い拾い物を得たって事だ。それよりもお前さっきアイツ等に切りかかったし、倒して良いって事だよな」


 後ろから刺さないよな? そんな確認。


「仕方ない……それに一方的な奴らの言葉なんて聞けるかよ」
「そうこなくっちゃ!」


 僕は強い視線で奴らを見据える。


「てな、訳でおまえ達をぶっ倒す。覚悟しろよ」


 すると不気味な奴らは嘲る様に笑う。どうやらバカバカしみたいだな。倒せる物なら倒してみろ的な……そんな感じ。
 それなら遠慮なく!! 僕は飛び出して、そいつ等に切りかかる。だけど感触がない。どうやらさっき僧兵の一撃交わした時と同じ……


「けははは、無理無理、そんな攻撃――」
「――我々には通らない」
「さあ、もう一度大人しくしてて……てて」


 消えた三人。だけど声だけはしっかり聞こえてる。さっきと同じパターン。なら魔法の有効範囲内で距離を開けてまた現れる筈。そしてここはそこまで広くも無い一本通路。何故か三十メートル位もありそうな長い通路で先に扉があるだけの場所だ。
 ここはまだ上層階の触り部分なんだろう。あの扉の向こうが本当の意味での元老院の住処。その先に現れる筈はないから、この場所のどこかに必ず奴らはいる。
 聞こえる詠唱の声。僕はセラ・シルフィングに雷撃を纏わせる。


「二度も同じ手が通じると思うなよ!!」


 僕は二つのセラ・シルフィングをそれぞれ前と後ろに凪いだ。二つの刀身からは雷撃がそれぞれ前と後ろに放たれる。
 通路は一本道で、奴らが現れるとしたら前か後ろしかないんだから、これで問題解決だ! 完璧だろ。
 すると更に前の方、ドアの付近から「ぐぎゃあ!?」なる声が聞こえた。前を向くと、そこには一人の不気味な奴が煙を上げて固まってる。どうやら付加効果の痺れが丁度良いタイミングで発動したらしい。ナイスだよ。
 その左右には仲間の哀れな姿に驚く二人も見え出す。いつも三人固まってるから避けれないんだよ。僕は慌ててる二人に近づいて一気に剣劇を一線ずつ浴びせる。


「何の真似だ?」
「これだけで我らが倒れるとでも……」


 HPはまだまだ残ってるから余裕な事を言う二人。だけどプライド位は傷ついただろ。なにせ猿呼ばわりしてた奴に一閃浴びたわけだからね。それに悪いけど、ここまでだ。


「倒れるなんて思ってないし、命まで取る気も無い。でも悪いけど、ここで動けなくなって貰うけどな」


 僕はそう言うと、スキルを発動。その瞬間、奴らの切り傷から放たれるは青白い雷撃。断末魔の悲鳴が一瞬響いて、奴らもまた痺れ状態に陥った。
 やっぱり、思った通り何故かコイツ等痺れやすい。その装備のせいかな? 雷耐性が弱い装備なのかも。


「や、やったな!」


 喜び勇んで駆け寄ってくる僧兵。実際まだまだやった、なんて言えないけどな。


「喜ぶのには速いぞ。あの扉の向こうは常にこんな事があるって思った方が良い。だってここに来た瞬間にこれだもんな。もうバレてると見た方が――」


 そんな事を言ってると、いきなり耳障りなアラームがけたたましく鳴り響く。


「――なんだ?」


 そう思って転送陣の方を見ると、そこにはもう一人僧兵が居て、何かやってる……まさか――


「き、緊急事態です! 社内に危険思想をした人物が侵入。狙いは元老院方の命と思われます。至急応援を!!」


 まさに思った通りの事を……そう言えばあの三人が来てからすっかり存在を忘れてたけど、居たなアイツ。


「くっ――」


 僧兵は思わず武器を構えて奴の方へ行こうとする。おいおい、なんでお前がそんなに暴力的なんだよ。止める側じゃなかったのか? 
 そう思いつつ、僕は彼の腕を取る。


「待て待て、アイツをどうする気だよ。そんな事よりも、もうアラームは鳴らされた。囲まれる前に先に進むぞ」
「そう……だな」


 なんとかわかって貰えたか。武器を卸した事で、元老院側の僧兵は胸をなで下ろす。そしてこう言った。


「もう無理だよ。君達は我らの仲間に絶対に捕まる。やられるさ。それに元老院の方達にも伝わっただろうしね。
 終わりだよ。上層階全ての兵が君達を狙う。幾ら反抗したって、結局は無駄なんだよ。長い物には巻かれないとね」


 さっきまですっかり存在消してた割には饒舌に喋るじゃないか。長い物には巻かれろ……ね。こいつは元老院って言う長い権力者に魂売ってるって事だな。僕は極モブ達を回収しながら言ってやるよ。


「なら見てればいい。この戦いの結末をな。長い物に巻かれるのも悪くはないさ。だけどいつまでも同じままでは居られない。
 それが間違った奴らなら尚更だ。だからこそ、正しい奴がこうやって立ちふさがるんだろ」


 まあ僕は自分がどこまで正しいかとか知らないけどね。この場合は教皇の事を言ってます。アイツならもっとこの国を良くしてくれる。そんな気がする。
 何を思ってるのかわからないけど、僧兵は何も言わない。僕達は自動で開く両開きの襖の向こうに消えていく。




【綺麗事はそこまでにして貰いましょう教皇よ。今情報が入りました。随分社が騒がしいと思ったら、どうやら我らを殺す刺客を差し向けてらっしゃる様で。
 なんと困ったことか……シスカ教の教皇ともあろう方がまさかそんな事をとは。残念で仕方ありませんよ】




(なっに!?)


 通路を進みつつ、次々と沸いて出てくるモブリ共を相手にしながら、僕は衝撃を受ける。そうきたか元老院の奴ら。ここで教皇の不祥事をしらしめて、民衆の信頼を崩し、一気にこの事実で教皇の位を剥奪する気だな。厄介になった駒は必要ないから切り捨てる。
 そんな所だろう。




【彼らはそんなつもりではない……】




 絞り出したそんな声。だけどそれはそれで不味いような。いっそのこと知らぬ存ぜぬの方がまだ……




【おやおや、彼らとは誰の事でしょう? それは今まさに我らの命を脅かそうとしてるコイツと面識があるという証拠ですね】




 やっぱり、そうきたか。でも何がどうなってるか声だけじゃわかりづらい。そう思ってると髪の毛を引っ張って極モブの一人が何かを指さしてる。


「あれは……」


 なんだか不気味な目玉がこっちを見てるぞ。てか、あれは見覚えある。サウニー卿の旗艦で同じのを見た。どうやらこの映像が、向こうに出力されてる……そう言うことらしい。
 おいおい、不味いぞこれ。映像まで出てたら言い逃れが……しかも一回関わりを認めてるし、今からそれを否定するのは無理がある。それじゃあ民衆に灯った不信感は拭えないぞ。どうする?


「教皇様……俺たちのせいで……やっぱりあそこでアイツを倒しておけば……」


 そんな後悔を僧兵はする。だけどやっぱりそれは意味のない事だったと思う。アラーム発動した後じゃどのみち一緒だよ。




【否定はしない。私は民衆の前で、そして神の代理を請け負う教皇という立場である以上、嘘は言わない。私は彼らを知っている。
 だが、だからこそ、彼らの目的が貴方達の命ではないと断言出来ます】




 どうやら無駄な言い訳はしないみたいだな。毅然とした声で、ノエインは立ち向かう姿勢だ。うん、それで良いと思う。
 下手な言い訳は見苦しく見えるだけだ。




【断言とは強気な。でもそれをどうやって証明するのでしょうか? いやいや、そんなの証明するまでも無いでしょう。あの野蛮で暴力的な姿……それを見るだけで、誰しもにあの人間が危険人物だと分かる。
 そうでしょう皆さん!!】




 大手を振るう様な声で、民衆に問いかける元老院の一人。確かに、この映像が配信されるてるのは悪印象しか与えないかも……でもだからってここで武器を捨てるわけにもいかない。
 どうにかして逆転の一手を打たないと、このままじゃどんどん追いつめられていくぞ。下側とは違い、随所に豪華そうな装飾が施された上層部は、光を放つ咲き誇る花々があり、襖の模様も金が入ってるのか、キラキラしてる。
 教皇の部屋なんてこの廊下以下だと思えるよ。柱一つとっても、なんだか凝ってるし、天井と床の設置部は金の金具かなんかで装飾されつつ耐久性を確保してる。
 そして驚くは、お抱えの兵の多さでもある。まあ全体の割合的には数パーセントなんだろうけど、たった二人で相手にするにはやっぱり厳しい物がある。次から次へと沸いて出やがって……しかも向こうは躊躇い無く拘束魔法を使ってくるんだ。
 反撃しないわけには行かないじゃないか! ここで武器を捨てても元老院の思う壺。武器を捨てなくても元老院の思う壺……


「おい、どうするんだよ!?」
「どうするったっても……」


 僕は魔法を避けつつ、モブリに迫って至近距離で床に雷撃を撃ちつける。激しい衝撃でモブリ程度の大きさの奴らなら、これで十分転がってく。元々頭の大きさの割に足が小さい奴らだ。
 バランス悪いのは飛空挺で実感してる。まあ、見える範囲での魔法は極力潰せば良いとして、問題はこうやって反撃する事も、元老院の言いように利用されてるだけって事だ。現状では。
 一応傷つけないアピールの為に当ててないけど、あの目玉がそこを撮ってるのか僕達じゃ確認の使用もない。そもそも派手に襲い掛かった印象の方が強く出てる可能性が大きいかも……僕は頭を振るうよ。


「あ~~もう!! 戦闘中になんでもかんでも考えられるかよ!」


 僕は考えることをやめました。そして一度周りに雷撃を放ち、牽制しつつ、僕は目玉に向かって剣を突き立てる。


「よく聞けサン・ジェルクの奴ら。僕達は元老院を懲らしめたいのは山々だけど、でも今はしない。僕達は純粋にリア・レーゼを救いたいと思ってる。
 本当にただそれだけで、ここに来たのはまた別の目的があるからだ。決して誰かの命を奪いたい訳じゃない。だからこれを聞いてる元老院共は、直ぐにこいつらの攻撃をやめさせろ。そうすれば誰も傷つけなくて済む!」


 僕は一気にそんな風にまくし立てた。どうだ、逆に奴らの策を利用してやったぜ。映像が届いてるなら、音だって届いてるだろ。そう思って反論をぶつけてやったのだ。
 そう思ってたけど、僧兵がなんか意外な事を言ったよ。


「おい、その声はちゃんと向こうまで届いてるのか? 不用意に挑発的な姿はやめろよな」
「えっ……いや届いてるだろ。だって映像が流れてる訳だしさ」


 まさか映像しか出力してないの? でも飛空挺の時は確かこれが撮ってる映像と音声で連携を計ってただろ? その感覚のつもりだったんだけど……


「確かに音だってそれは拾える。だけどそれを出力するかしないかは術者が操作出来ることだ。それにさっきから元老院の声には戦闘音とか混じってない」


 むむ、そう言う事は早く……そう思ってるとムカつく声が響いてくるよ。




【おやおや、何か喚いてるみたいですね。なんと凶暴そうな顔を……武器をこちらに構えてなんと言ってるのか、とても皆さん興味がおありでしょうから、伝えましょう。
 これで教皇が何を企んで居たのか、ハッキリするでしょう。
 コホン、「よく聞け、サン・ジェルクの穀潰しの奴ら」】




 おい、出だしから罵倒に変わってるぞ。てか、そのまま僕の声の現物流せよ! なんでテメーが原始的に喋ってるんだ。そう思いつつ、改ざんされた言葉は読み上げられていく。




【「俺たちは元老院をぶっ殺す。そのために暴れ回ってるんだ。リア・レーゼ? ハッキリ言って、そんなのはどうでも良いこと。この街の全権を握る為にはそう言う事を建前で言わないとなんだよ!
 来るならこいよ。全力で潰してやるぜ。この街の全てを奪い尽くしてやる。聞いてるか元老院共? 首を洗って待ってろよ!!」だそうだ】




 誰がんな事を言った!? 捏造し過ぎだろ。流石に口と言葉があってないっての。捏造だと、勿論民衆は分かるだろ? 




【違う! 彼はそんな事を言ってないは――うお!?】




 続いて聞こえたノエインの声。だけど何かあったみたいだ。続けざまに【話を……話を聞いてください】と言う声が聞こえた。
 不味い……多分不味いと思う。




【これが民衆の答えですよ。彼らは既にどちらを信じるか決めたみたいです。これ以上の論争は意味を成さないでしょう】




 勝負は決した。そんな事を言ってるかの様な言葉。本当に民衆はノエインじゃなく元老院側を選んだのか? 僕の不用意な行動のせいで……くそ、やっぱり冷静さって大事だな。ごめんノエイン。
 幾ら後悔しても仕切れない……このままじゃサン・ジェルクに来た意味さえ無くなる。だけどここからじゃ奴らに反撃なんて出来ないし……いっその事本当に襲ってやろうか……とも思わなくもないな。
 でもそんな事したら、ノエインにも見放されるだろう。アイツはそこまでして勝ちたいとか思う人種じゃない。そもそもこれを勝負とか思って成さそうだしな。
 通じあえる相手ってのは、少なくとも心の扉を少しは覗かせてる奴だけだ。元から意図的にそんな気がサラサラ無い奴らには何を言ったって無駄。
 でもそれを言い出したら、教皇としてダメだともノエインは思うだろう。多分アイツは誰も見捨てたりしたくないんだろうし。




【違う……違うんだ。彼等はそんな事を思って行動なんかしてないんだ!】
【でも、彼らはその暴力をやめようとはしない。我々の声は届いてる筈なのに。その時点で明白ですよ。悪意を持って彼らは我らに迫ってる。見苦しいですよ教皇様】




 くっそ……好きな様に言いやがって。向こうが止めどなく襲いかかってくるからこっちは反撃しない訳には行かないのに、まるで僕達が喜んで襲ってるみたいな言い方。
 心の底からムカつく。こんな奴らと分かり合うなんて絶対に無理だと思うんだけど。余計な事を言わないように口を噤み、僕達はただただ転送陣を目指す。
 ノエインだけの言葉じゃ、反論にも限界がある。でもこちらの言葉は届かないしどうすれば……手を拱く事しか出来ないなんて悔しい。
 するととうとう、元老院が止めの一撃をノエインに突き立てる。




【ノエイン・バーン・エクスタンド、我らは貴方の教皇からの退任を宣言します】




「まさか……そんな!」


 隣を走る僧兵さんがヨロヨロとスピードを落としていく。そしてついには立ち止まってしまった。何やってるんだよこんな時に! 後ろからは元老院お抱えの屑共が追いかけて来てるんだぞ。
 僕は強引に彼を抱えて走り出す。


「やめてくれ……これ以上どうすると言うんだ。もう援軍は送れない。誰も教皇様の声に耳を傾けない」


 腕の中でそんな言葉を繰り返す僧兵。気持ちは分かる。だけど全てを投げ出してどうなるって言うんだ。それに僕はまだ諦めてないっての。


「おい、そんな簡単に言葉一つで教皇を退任出来る物なのかよ。アイツは教皇の印を受け継いてるんだろ? それが無くならない限り、なんと言われようが教皇じゃないか」
「確かにそうだが、印は強引に引き剥がす事が出来るんだ。退任要求されて、退任が決まれば魔法で強制的に印は取られる。
 そして退任要求がでた時点で、強行手段に出れるんだ。教皇様を拘束して、退任が決定されるまで幽閉される。退任の決定は民意だけど……今の状態じゃ直ぐにでも決定されるかも知れない……」


 成る程、退任要求を出したことで元老院は強行手段を教皇相手にも発動出来る様になったって事かよ。ここで教皇が拘束されて引きずり卸されたら本当に終わりだ。




【さて、では大人しく言うことを聞いて貰いましょうか。拘束した後、特例でこの場で判断を仰ごうじゃないか。折角民衆が集まってるのだから。自分の末路を、その目で確かめてみるがいい。――やれ】


 どうやら元老院は教皇を抑える気だ。一体どうするんだ? ここからじゃ何も出来ない。そして僕達を囲む奴らもそれぞれ魔法を発動使用としてる。しかも前面に障壁のバリアを張って、近づかせない様にしての魔法詠唱。
 流石に学習したか。一斉に放たれる色とりどりの魔法が迫る。


(避けられない!!)


 周りが閃光で染まり、音は衝撃で書き消える。だけど不思議と何の痛さも無かった。やられたから……とかじゃないこれは……




【すみませんが元老院の方々よ。それは受け入れ難い事です!! そろそろその嘘がお上手な口を閉じて貰いましょうか】
【神官共が……お前たちが神を冠する役職に就いてる事自体がおこがましいな。全員統べもってクビにしてやろう】




 頭に響く声。どうやら神官さん達は、最後までノエインの味方をしてくれる様だ。そしてこちらにも、まだ味方は居た。
 小さな小さな、愛らしい姿をした極小モブリ達だ。彼らの内四体が僕たちを守る障壁を張ってくれてた。


「「「まぁーまぁー」」」
「グリーン! パープル! オレンジ! ネーブル!」


 折角色で判別してたのに、名前を呼んだ奴らは、力を使い過ぎたのか消えていく。僕たちを守る為に……周りは魔法の起こした奮迅で向こうには僕達が無事なのはきっとバレてない。
 折角助けて貰った命だ。無駄になんかしない。僕は奮迅から一気に飛び出して、進路方向の敵をなぎ倒していく。奮迅が収まるまでは、他の通路の奴らにはきっと気づかれない。
 そしてようやく転送陣に入る。そして更に上へ。こうなったらどこまでだって行くしかない。どこかにきっと逆転の目はあるはずだ。

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