命改変プログラム

ファーストなサイコロ

飛空挺奪還作戦2



 テッケンさんの無茶でたどり着いたのは、飛空挺の最下層部分。ここには飛空挺の動力炉がある。青い光を放つエネルギー物質。
 クリエと最初に会った場所がそう言えばここだったよ。だけどその時とはまた大分印象が変わってる。あの時は臨界直前で危険な感じマックスだったけど、今回もある意味危険な感じは出てる。
 どうしてテッケンさんが似合わない無茶をしてここまで僕達を導いたのか……その理由がこれだ。確かに僕の疑問に一気に答えが出たな。
 最下層には木の根がビッチリと這ってた。そして動力炉にもそれはもう気持ち悪い位に絡んでる。しかも動力炉の直上に幹の根幹がある。


「これってつまり……あの木はこの飛空挺のエネルギーを吸収してるって事ですよね」
「そう言うことだね。思った通りだよ。あの宝石に亀裂が入ってるって事は無理してるって事だと思った。だけどそれで周りの成長が促されるのは、スオウ君の言うとおりおかしい。
 じゃあなぜそんな事が起きたのか……それは自身のエネルギーじゃないってのが僕の見方だった。じゃあ外部のエネルギーは? って所でここが飛空挺って事と奴の位置が気になったんだ。それに木だしね。
 そして一つの仮説がたった。もしかしたら外部のエネルギーってのは飛空挺の動力炉で、根からそのエネルギーを吸収してるんじゃないかってね」
「凄い! 流石テッケンさんです!!」


 尊敬します。あんな状況でそこまで精密に分析出来るなんて、しかもちゃんと答えにたどり着くのは凄いよ。大体敵が目の前に居たらそればっかり気にしちゃう物だけど、別の見方を出来るのは強みだよね。


「そんな……誰でも出来ることだよ。スオウ君だって良く気付くことがあるじゃないか。それが今回はたまたま僕だったってだけだ。そんな凄い事じゃない」


 またまた謙遜しちゃって。ほんとテッケンさんは威張ったりしないよね。そこがまた評価を高めてるよ。


「よし、早くこの根を動力路から切り離さそう。それでこの木のエネルギーは有限になる!」
「はい!」


 突破口は確かにあったな。無限で無茶苦茶に見えた力も、暴いてみたらこんな物……外部のエネルギー供給で弱点を補い、能力を強化した結果だったわけだ。
 種を知ると、確かに誰でも思いつきそうな事だ。けど、色々と切羽詰まってる中でそこまで冷静に考えられるって事が大事なんだけどね。
 僕たちはそのぞれの攻撃手段を駆使して木の根を動力路から引き剥がし始める。僧兵さん達は魔法を駆使し、僕たちはとりあえず周りの部分の根を次々と切っていく。
 間違って動力を傷つけると大変な事になるからな。ここは慎重に、だけど迅速にやらないとね。きっと根を傷つけた瞬間に、木の奴には気付かれた筈だ。
 自分の力の正体が僕たちにバレたって事。そして案の定、テッケンさんがあけた穴から次々とウッドールが落ちて来やがる。
 それだけじゃなく、この最下層に配置してあったウッドール共もこの動力炉に集いだしてる。穴から落ちてきたウッドールはギチギチ音を立てながら立ち上がり、その鎧の奥の瞳を赤く光らせる。
 それはモンスターの瞳の光。やる気満々だな。


「ど……どうします? 次々とやってきますよ」


 怯える様な僧兵さんの声。確かに次から次へと落ちてくる。なんだか動力炉の輝きも増してるし、更にエネルギーを吸い上げて、次々とウッドールを生み出してるみたいだな。


「どうするも何も、この根を動力炉から切り離さない事には、ウッドール共は無限に生産されるんだ。だから優先すべきは根を斬ること」
「だけどそれじゃあ、持たないよ!!」


 うう……確かにちょっとこの量は大変だな。流石に僧兵さん達だけでは防ぎきれないか。


「スオウ君、僕達がウッドールをくい止めるから、その間に根を斬ってくれ!」


 そう言ってテッケンさんが僧兵さん達の元へと駆けようとする。だけどそこで僕は待ったを掛けた。


「待ってくださいテッケンさん!」
「ど……どうしたんだい?」
「僕が行きますよ。テッケンさんよりも僕のイクシードの方が多人数を相手にするのは向いてます。ウネリを使えば一気に大量に潰せますし。
 だからテッケンさんに根の事は任せます!」


 テッケンさんは分身が出来るけど、だからって一気に相手に出来る人数は限られてる筈だ。その分イクシードのウネリなら、こんな密集した多人数戦には最適。
 これだけの人数じゃ、一体一体相手になんかしてられない。


「確かに、スオウ君のイクシードが最適かも知れないね。だけど僕の攻撃力で一番大きな根を切れるかどうかも問題だよ。
 幹につながる部分は結びあってかなり太くなってる。僕の心許ない刀身でアレを切断出来るとは断言出来ないよ」


 テッケンさんが不安がる気持ちも分かる。確かに幹に纏まる部分は根が絡み合ってかなり頑丈そうだ。アレをブッた斬るのは骨が折れそう。
 だけど、僕のイクシード以外にこのウッドールの大群は止めれないし、二人の僧兵さんにはそこまで鋭い攻撃が出来るとは思えない。
 それならテッケンさんにやってもらうしかないよ。僕がやっても直ぐに切れるとは限らないし、その間にみんながやられちゃ、意味なんてないんだ。
 そう考えてる間に「うああああ!」なる声が! どうやら僧兵さん達にウッドールが迫ってるみたいだ。僕はテッケンさんを追い越して駆け出す。


「頼みます! テッケンさんが根を切り離し終わるまではなんとしても生き残るから、だからやってみてください!! 大丈夫、テッケンさんなら絶対に出来ます。そう信じてます!!」
「スオウ君!!」


 僕はテッケンさんの言葉を背中に受けながらイクシードを宣言。二対のセラ・シルフィングの刀身に風のウネリが形成される。そしてそれを一気に僧兵さん達に迫るウッドールに向ける。
 三体のウッドールを吹き飛ばして更に今度は横に凪ぐことで奴らの進行を阻害する。


「大丈夫ですか?」
「ああ、なんとか……でもこんな大量に居たら押しつぶされるのも時間の問題だよ」


 あまりのウッドールの多さに弱気満点の僧兵さん達。まったくメンタル弱すぎだろ。良くそれでリア・レーゼを守ろうとしてるね。
 まずはもっと自信を付けた方がいいよ。しょうがないから、僕は無駄に自信をたっぷり見せてこう言うよ。


「大丈夫、なんとかなりますよ。テッケンさんが動力炉に絡みついてる根を根こそぎ切り取ってくれます。それまで僕達は奴らを彼に近づかせないようにする。
 それでこっちの勝利です!!」
「そんな……言うのは簡単だけど、この数相手にそれは……」


 弱気に押される僧兵さん達。だけど僕は迫ってたウッドールをウネリでケチらしてこう言うよ。


「やりもしなのに、出来ない事を考えても意味なんてない! 死にたくないのなら、死に物狂いのでやるんです!! 
 信じてください、彼は貴方達の同族ですよ。そして僕の仲間だ。だから僕は信じます。疑わず、信じきり、前だけを見る。
 そういう強引さも時には必要でしょう」


 振りおろされる刀をガードして、回転と共に腹に蹴りを入れて、更にウネリで叩き潰す。だけど直ぐに僕を狙って突き出てくる数本の刀。僕はジャンプして交わし両方のウネリを振るい上げる。


「うおおらああああああああああ!!」


 一気に数十体のウッドールが宙を舞う。だけどまだまだ数え切れない程にウッドール共は大挙してる。重低音の足音を響かせて、僕の着地場所を狙ってる奴らが見える。僕は振り上げたウネリを今度は床に当てて、体の向きを強引に変える。
 なんとか緊急回避にはなったな。だけど避けた先にも敵は居る。行き着く暇もなく、肘を入れて続けて後ろに頭を勢い良く振ってぶち当てる。
 けど兜もウッドールは被ってるし、こっちの方が痛い!? これは失敗だ。


「つっつつ」
「危ない!」


 痛がってる間にも攻撃は迫ってた。だけど僧兵さん達の魔法が僕を守ってくれる。ナイスだよ。


「あれだけ偉そうな事を言ったんだ。負けたりするなよな。ちゃんと勝て! サポートはしてやるから!」


 全く、震えながらなに言ってんだか。元から僕は負ける気なんか毛頭ないっての。だけど、向こうも覚悟が決まったみたいで良かった良かった。僕は周りのウッドール共をウネリで吹き飛ばしてこう言った。


「じゃあいっちょ、派手に行くぞ!!」


 全てのウッドールを引きつけるくらい、派手に大胆に僕達は暴れるんだ!! 


 凪いで砕いて吹き飛ばして、僕達はこれでもかって言うくらいに暴れてる。だけど幾ら倒しても倒しても、数が減った様に感じれない。
 流石に腕が重くなってきたな。そう思ってると、目の前数センチに迫る刀が見えた。僕はとっさに顔を傾けて避ける。だけど僅かに掠った。赤い血が流れる。しかもそのまま突進して来るウッドールが僕にぶつかり、上空に弾かれた。
 鎧に身を包んでるだけあって衝撃が凄かった。目がチカチカする。そう思ってると、重そうな体してるくせに僕を待ちかまえる様にジャンプしてる数体のウッドールが空中にいた。
 これは……まさに連携してる。だけど……


「舐めるな!!」


 僕は体を回転させて空中に居たウッドールをウネリで吹き飛ばす。まだだ……まだ倒れる訳には行かない。


「「うわわああああ!!」」


 僧兵さん達の叫び。視線を向けると、彼らの張る障壁にウッドール共が突撃してる。くっそ……流石に多すぎる。倒しても倒しても、全然減りやしない。
 向こうも必死になって攻めて来てるって事だろう。次から次へと飽きもせずに同じ奴を投入してきやがって……僕は着地の瞬間に、両のウネリを僧兵さん達の周りを囲むウッドール共へ向ける。
 だけど今度は周りのウッドール共がその先のウッドールを庇う様に、前に立ちふさがりやがった。


「なっ! ……くそ、どきやがれ!!」


 僕は前へ強く一歩を踏み出す。立ち塞がってた奴を力押しで吹き飛ばして、僧兵さん達を襲ってたウッドールの一角を崩す。


「早くこっちに!」


 僕の言葉を聞いていそいそと僧兵さん達はこちらに来る。だけどその道中もウッドール共は大量に居るのだ。小さな彼らを狙ってウッドール共はその刀を振り下ろしてる。
 助けたい所だけど、こっちはこっちでまだまだ大変だ。まだなのかテッケンさん。流石に僕の息も荒くなってきたよ。大量のウッドールに埋め尽くされた動力室で、僕は青く輝いてる動力炉をみるよ。
 そこには動き回るちっちゃな影が数体見える。頑張ってくれてるみたいだけど、まだ一番大きな部分には取りかかってないのかな?


(持つかな……)


 そんな不安が募ってくる。だけど僕はそんな思いを振り払うかのように頭を振るよ。


(ダメだ。そんなの考えても意味ない。信じるんだろ自分! ならそれまで一心不乱に戦ってろ!!)


 そんな思いで歯を喰い締めて、前を向く。血を拭って腕を振るう。それしか今の僕には出来ないんだ。


「不味いよ、アレを見るんだ!」


 そんな僧兵さんの声に動力炉に目を向けると、ウッドール共が根を伝って這い上がってるのが見える。どうやらテッケンさんの行動に気付いたらしい。
 これは不味い。彼には根を切る作業に没頭してもらわないといけない。ウッドール共の相手は僕達の担当だ。僕は直ぐに引き剥がしに向かう。だけどやっぱり有り余る数でとうせんぼしてきやがった。
 何回も倒されてきたのに、そんな事無駄だとそろそろ気づけよな。僕はウネリを前へと向ける。だけどその時、一斉に避けやがった。そして一気にこちら側に走ってくる。本体を直接狙って来たって事か。
 どうやら少しは学習してるようだ。だけど――


「まだまだ甘い!」


 セラ・シルフィングは二対でワンセットなんだよ。僕はもう一方のウネリを向けようとする。だけどその時、今度は別の方向から来たウッドール共が体を張ってそのウネリに自ら向かって来やがった。
 前の奴らを吹き飛ばす筈のウネリは身をていしたウッドールのせいで途中で阻まれる。その間にこっちに向かってきてた奴らが刀をまっすぐに向けて僕へと突撃してくる。


(ダメだ! これは避けられ――)


 体にめり込む複数の堅く冷たい感触、HPが一気に削られる。そして口からは大量の血がボトボトと落ちた。リアルならこれで終わってた……だけど、ここはLRO……まだだ……まだやれる!!
 僕は至近距離に居る奴らを戻したウネリで吹き飛ばす。だけど体には奴らの刀がぶっ刺さったままだ。かなりシュールな見た目になっちゃったよ。
 HPはまだレッドゾーンには届いてないのに、妙にフラフラする。どうして……いや、部位が悪いのかも。胴体串刺しって……前にも心臓をピンポイントで狙われた時、HPに関係なく死ぬなって思ったときがあった。
 まさかアレと同じ……僕はフラつきながら、そんな事を考える。どうやら僕の受けるダメージは少なからずリアルの体にも影響してるみたいだから、心臓や頭とか身体機能に多大な影響を与える所は設定以上のダメージを受けてるのかも……頭が朦朧とする中、今が好機だと思ったらしいウッドール共が攻め込んでくる。
 ぶっ刺さった刀のせいで避けづらい……そう思ってると、大きな火の玉が目の前のウッドールを焼き払う。


「うう……なにやってるんだ! もっとしっかりやれよ!」


 そんな事を言うのは一人の僧兵さん。助けて貰ってなんだけど、この状況でそれを言うか。そう思ってると、僕の体が光に包まれる。どうやらもう一人の僧兵さんが回復してくれてるみたいだ。
 だけど何故だろう、HPは回復してるのに、苦しさは消えないぞ。やっぱりこの刀が刺さったままは体的によくないって事か。
 僕は片方のセラ・シルフィングを鞘に納めて、体に刺さった刀を抜きにかかる。だけどあいも変わらずウッドール共は待ってくれない。今は僧兵の一人が魔法で応戦してくれてるけど、詠唱に時間がかかる魔法はこの状況じゃ使えないから威力が低いの頼みになってる。
 足止めくらいしか出来ないのが現状だな。僕は急いで刀を引き抜くよ。体の中が抉られてる感覚……おいおい、これ、想像以上に痛いぞ。
 だけど何とか一本目を引き抜いて床に落とす。


「はぁはぁはぁ……ごく……」


 既に冷や汗が凄いことに。残り二本もあるんですけど……僕が躊躇ってる間にも動力炉をよじ登る奴らは増えて、しかも僧兵さんの魔法を突破してくる奴らもいる。
 僕は刀の柄を握り、もう片方のセラ・シルフィングを凪ぐ。迷ってる時間もない。


「んぎぎぎぎぎいぎぎぎぎぎぐあ!!」


 力を込めて一気に引き抜く。体から血が溢れるけど、今は常時回復中だから、自然と止まるだろう。僕は引き抜いた刀をウッドールめがけ投げてやる。簡単に弾かれたけど、これで残り一本だ。
 わき腹に刺さってる奴だけになると、フラフラもしなくなった。やっぱり心臓に近かったのが不味かったのかな。僕は思いきって最後の一本も引き抜く、これで全快になれる筈だ。
 迫ってたウッドールの顔面にその刀を帰して、腰から納めてたセラ・シルフィングを抜く。刀身から再び発生するウネリ。そして気前良く、補助魔法が追加でかかった。力が沸く……そんな気がする魔法だ。
 僕は強く床を蹴って目の前のウッドールに迫る。そして両の腕を振るう。それに伴ってうなるウネリ。激しい風と共に、一気に大量のウッドールが宙へ舞って道が開けた。


「凄い……」


 なんだか威力が増してる気がする。これならまだまだいける! 僕はウネリを使って、動力炉をよじ登ってるウッドール共を次々と落としてく。
 動力炉を一周して、よじ登ってた奴を全て落とすと、上を見てみる。残りは多分、一番上の幹の部分につながる太い部分だけ。
 急いでくれよテッケンさん。もう少しこっちは粘ってみるよ。再び僧兵さん達と合流をして、動力炉を背に僕達は戦い出す。
 一分……三分……五分……チラチラと動力炉を見るけど変化はない? いや、そんな事はない筈だ。テッケンさんはやってくれる。やって……やって……


「「うわああ!!」」


 僧兵さん達の叫び。このままじゃまたピンチに陥りそうだ。今度も無事に切り抜けられるとは限らない。けど、僕達は目の前の事に集中するしか……その時一際大きく輝く動力炉。なんだ? また何か、木がエネルギーを大量に吸い上げてるのか?
 これ以上何をしようってんだ? そう思ってると、動力炉の上の方でもなんだか色違いの光が輝いてる様に見える。あれは一体? 
 すると動力炉の上の光が僅かに揺らめいた。その瞬間、動力炉に巻き付いてた根の幹部分が盛大にメキメキ言って砕け散る。その瞬間、動力炉の異常な輝きも収まりだした。


「やった?」
「ああ、やってくれた!」


 僧兵さん達の周りのウッドールをなぎ倒して、僕は興奮気味にそう答えたよ。ウッドール共も信じられない感じで呆然としてる。
 そんな中、動力炉から何かが転がり落ちてくる様な……あれは……テッケンさん!? 僕は慌てて動力炉に残った根の残骸を蹴って彼をキャッチする。


「テッケンさん! 大丈夫ですか?」


 なんだかかなり疲労してる様に見える。しかも異様に体が熱いような……一体上で何が?


「はは……大丈夫、ちょっと無理をしただけだよ。久々にやったから体の方がついていけなかった感じだよ。恥ずかしながらね。でもこれで……」
「ええ、これで木は障壁をこれ以上強くする事は出来ない。後は任せてください!!」


 僕は着地と同時にテッケンさんを僧兵さん達に預けるよ。そして周りのウッドールを大量に一掃する為に、ウネリを使って大回転!! トルネード並の風力で壁に叩きつける。
 そして見上げるは僕たちが落ちてきた穴だ。テッケンさんが強引にあけたその穴を見つめて、そしてテッケンさん達の方を見る。


「ここで待っててください。ちょっと行って決着つけて来ます」


 僕は意図的に弱くしたうねりを足下へそして徐々に強くしていきバネの要領で一気に跳ね上がる。わざわざ通路を走っていくなんてもどかしすぎる。この道がどう考えても最短だ!!
 大部屋に一気に到着する僕。そこにはやっぱりだけど、まだまだ大量のウッドール共が居る。僕が現れたと同時に、ウッドール共は僕を追って視線を向けてる。そしてその先には宝石を付けた木の幹が……無理な力を使いすぎて、その亀裂はかなり広がってる。
 赤黒い障気が今や全体から出てるぞ。僕は地面に着く前にこの宣言をする。


「イクシード2――一気に決めるぞ、セラ・シルフィング!!」


 ウネリが激しさを増す。僅かにあった雷の要素が消えて、風をより強く出す。左手を凪いで目の前のウッドールを壁際まで吹き飛ばす。
 これで道はあいた。僕は地面に足が着いた瞬間、一気に駆ける。イクシード2で風に近づいた僕の体は、これまでもよりも早く動く。まだまだ遠い所から、僕は右腕を突き出して障壁にウネリをぶつける。そしてそのまま近づいていくんだ。
 近づくにつれてウネリは僕と障壁の間で縮んでく。だけど僕は強引に進む。


「うぎぎぎぎぎぎんぎぎぎぎぎぎんぎ!!!」


 まだ……まだ……もっと近くに!! そしてたどり着くのは障壁に刀身が触れる位の距離。その頃には、ウネリは限界まで縮まって逆にその風圧でビチバチと電気を発生させてる。


「うおおおおおおおおおおらああああああああいっけええええええええええええ!!!」


 僕は耐えてた腕を前へとおもいっきり突き出す。それと同時にウネリは前へ前へとその方向性を示す。大きな亀裂が障壁に入る。そして激しい音と共にイクシードは障壁を突き破り、そのまま真っ直ぐに向かうは幹の宝石部分。強烈なウネリが、幹ごと宝石を打ち砕く!!

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