命改変プログラム
緑樹が濡れる
ピチョンピチョンと冷たい感触が肌に当たってる。激しく地面を打つ雨と、自分が逃げ込んだ残骸に雨が当たる音が聞こえてた。そして全身が底冷えするような震え……それと共に、僕は瞼をゆっくりあける。
(まだ……生きてる?)
そんな感想が真っ先に出てきました。いや、マジであのまま死ぬと思ったんだけど、どうやら僕が熱さに耐えかねて気絶した間に雨が激しさを増したのか、炎は消えたみたいだ。
HP残量は残り一桁……ギリギリのタイミングだったみたい。でも……だからこそあんな体験が出来た……のかも知れないな。
シャナ……じゃなくてサナか。あれは死の淵に見た幻なんかじゃない。彼女の答えでいろんな事が繋がったんだ。
(そうだ! こんな所で寝てる場合じゃ――――)
僕は思いだした様に立ち上がろうとする。だけど上に有った残骸に頭をぶつけた。
「――――いっつぅぅ……」
しかもその拍子にギリギリのタイミングで空間が空いてた場所が崩れるんだから大変だ。押しつぶされそう。僕はなんとか必死に顔を出す。すると誰かの足下が見えた。
なんか邪悪な黒光りするブーツ……これは……僕は上を見て速攻で顔を引っ込めた。
(まだ居たのかよアイツ)
どう見ても聖獣でした。今更顔を引っ込めても遅いだろうけど、せめて回復の時間を……てか、気絶してたからか、ちょっと体が動くな。ウインドウを開くこともアイテム欄を開くのもスムーズだ。
僕は急いで数本の回復役を取り出して口に含む。だけど炭酸に耐えてるときにちょっと思った。なんだか様子変だった様な……てか、まだ攻撃が来ないのもおかしいかも。
どう考えても今のを見落とす奴じゃないだろ。でもまだ何も音沙汰無い。僕は回復薬を飲みながらゴソゴソと外の様子を覗く。
どうやらさっきから別に変わってない。というか、元からちょっと様子おかしい? なんだかボケ~と突っ立ってるだけ……の様な。そう思ってると、なんだかいきなり思い出したように動き出す聖獣。
「はっ……ん? 我は一体何を……」
そう呟きながら辺りを一通り見回す聖獣。アイツも意識が飛んでたのか? なんで?
「火が消えてる……いつのまに……我の体に何が」
自分の手のひらを見つめてる聖獣。まさか、僕がサナと話せたのってアイツが近くに居たから? クリエの力の一部として一つになってたアイツは、聖獣に吸収された筈。だけど聖獣の中でこのタイミングを狙ってたとか。
聖獣の中に居るからこそわかる事もあるって言ってたしな。リア・レーゼの事は奴らの力の一部として吸収されたからこそ、状況がアイツにもわかってた。
僕にコンタクト取るために、一時的に聖獣の意識を乗っ取ってた……のか? やるなアイツ。そう思ってると、空からギャーギャー叫ぶ声が聞こえた。雑音にしか聞こえないそれを発してるのは、どうやらドラゴンになり損ねたみたいなモンスターだ。
「ふん……まあいい。我の体は我だけの物だ。もう二度と封じられたりはしない」
そんな言葉と共に、大きく羽を広げる。そして激しい風を起こして空へと飛び立つ。するとその後に続く様に待機してたのか大量のモンスターがその後に続いて行く。こうやって見ると圧巻だな。
てか、爆発音とかもう何も聞こえない辺りをみると、既に戦闘は終了したのか。サン・ジェルク艦隊はどうなったんだ? まさか……全滅? 残念だけどそれも考えられる。
僕は大量のモンスターが完全に見えなくなるまで待って、外に這い出る。改めて辺りを見ると……本当に酷い状況だ。燃えたり押しつぶされた木々。辺りに散った残骸。骨組みだけになった飛空挺が地面にブッ刺さってる。死んだ大量の僧兵の姿は見えないけど、消えたってことかな。僕だけしか生き残ってないのか?
僕は辺りを見回してテッケンさん達を探すよ。爆発を諸に受けた飛空挺の中の僧兵達はしょうがないかも知れないけど、外に居たテッケンさん達は僕と同じように助かってるかも知れない。
まあそれなら僕が気絶してる間にどっかに行っててもおかしくないかもだけど、向こうもきっと僕を捜してくれてると思うんだ。
だから僕もテッケンさん達は生きてるって信じて探す。あの人がこの程度で死ぬわけがないよ。僕が生きてるのは偶然だとしても、テッケンさんならその豊富なスキルでどうにでも出来ると思うんだ。
だからきっと……そう思ってると茂みがガサガサと蠢いた。まさかテッケンさん? 僕は一瞬心弾んだけど、すぐさま気を引き締める。
(いやいや、ここは敵地だぞ。安易に警戒心を解くのは不味い。モンスターかも知れないからな)
僕は腰にあるセラ・シルフィングを握る――あれ? なんか手がスカスカするんですけど……僕は腰を見てビックリ。セラ・シルフィングないじゃん!?
(そうだ!)
思い出したけど、セラ・シルフィングで飛空挺を丸々受け止めたまま落ちたんだ。僕はそれからセラ・シルフィングがどうなったのか知らない。順当に考えると、きっと爆発の衝撃でどこかに……くっそ、まさかまた敵地のど真ん中で武器を無くす羽目になるなんて……ついて無いにも程がある。
ガサガサと迫る何か。ヤバイヤバイヤバイ!! 僕はそこら辺に落ちてた棒を拾い上げて、しょうがないからそれで出てきた所をブッ叩く事に――――今だ!!
「でっせえええええい!!」
「どうりゃああああああああああ!!」
二つの叫びが重なる。だけど飛び出て来たその人を見てビックリ。多分それは向こうも同じ。僕たちは寸前で攻撃を止める。
「テッケンさん!」
「スオウ君!!」
同時にそれぞれの名前を呼ぶ僕たち。思わず抱きつきたくなったけど、その時、彼が持ってる武器に目が行った。
「それってセラ・シルフィング……」
「ああ、近くに落ちてたからね。回収してたんだ。そしたら、聖獣が放心状態だし、その後いきなり飛んで行くし、そしたらモンスターも付いて行くし、まあ丁度良いから、君を捜してたんだ」
「そうですか……でもよかったです。セラ・シルフィングの事もありがとうございます」
僕はそういってセラ・シルフィングを返して貰うよ。本当に良く無事だったなセラ・シルフィング。愛おしいよ。
「君も相当悪運強いね。遠くに飛ばされた僕と違って近くにいたんだろ? 聖獣に良く見つからなかったね」
「いや……まあ相当大変だった……って、そうだ! こんな所でのんびりやってる場合じゃないですよ!」
僕は思いだしたようにそう言うよ。
「どういう事だい?」
「聖獣達は既にリア・レーゼに攻めてる。これは確定情報です! 直ぐにでも戻らないと……」
「それは本当かい!?」
テッケンさんは僕の言葉にすぐさま反応するよ。僕の言葉を聞いて、テッケンさんはどうするかをすぐさま考え始めた。てか、これだけで信じてくれるんだね。
「当然だよ。この状況で嘘を付くなんてあり得ない。それに僕たちは仲間であり友達だよ。何を優先しても信じるさ」
ああ、もう本当に格好良いなこの人は。男なのにキュンキュンしちゃうよ。テッケンさんがモブリじゃなかったら危ない道に目覚めてたかもしれない。
まあそんな冗談はさておき、一体どうすれば。
「考えてる間にこの森を突っ切った方が良いんじゃないですか? どうやらこの森中のモンスター総出でリア・レーゼ攻めてるみたいだし、今ならモンスターを気にせずに突っ切れますよ」
さっきから随分と森が静かなんだよね。それに危険を感じないと言うか、きっとモンスターはいない。それなら一気に走り抜ける事が出来る。考えるよりもまず行動……ってのも良いと思うんだけど。
「確かに僕が君を捜してる間も地を歩くモンスターは一体も居なかった。だけど走り抜けると言ってもこの森は広大だ。数十分で抜けられれば言いけど、僕たちが落ちたのはリア・レーゼとは反対側の森の出入り口付近だ。
そこからじゃとても走って間に合うとは思えないよ」
うう……なるほど。確かにそうだな。サン・ジェルクの艦隊が待機してたのが森を通り過ぎた直ぐの所だったから、ここはリア・レーゼ側から見たら森の出口付近なんだ。ダメじゃん。一番遠い場所だよ。
「でも……じゃあどうすれば? このままじゃ付く頃にはリア・レーゼが落ちてるかもしれません。そうなったらみんなどうなってるか……」
最悪の想像が浮かんでくる。しかもさっきの聖獣とモンスターもリア・レーゼの方向へ向かったんじゃないのか? それなら更にピンチだ。一体ローレの奴はどういう判断してるんだろう……くっそ、小細工してる間に裏を掛かれたな。サン・ジェルクもリア・レーゼも……だから素直に手を取り合ってれば良い物を……って僕がそれを言えないか。
素直に手を取るなんて、僕だってきっと反対してた。だって元老院は信じれないもん。
「今は過去を悔やんでも仕方ないよ。どうやったらこの状況を切り抜けられるか……それを考えないと。大丈夫、きっとみんな頑張ってくれてる。ローレ様と仲間達を信じよう!」
「…………そうですね!」
僕はテッケンさんの言葉を力強く受け取るよ。みんなが早々やられるとは思えないし、ローレだってアイツの事だ。最悪の想定位してるだろう。
でもだからって、束になって襲いかかる聖獣軍団に勝てるとも思えない。それをローレはわかってるからこそ、サン・ジェルクを使おうとしてた訳だしな。
それにリア・レーゼで持った向こうの僧兵の印象は……やっぱちゃっと頼りないんだよな。サン・ジェルクの方の僧兵は例外も居るけど、キビキビ動いてて兵隊って感じだけど、リア・レーゼは兵隊って言うか自警団みたいなさ……そんな感じ。
結構緩いノリだな~って思ったもん。アルテミナスとかの印象が強かったせいなのか、やっぱりリア・レーゼが緩いのかはさておき、僕たちは急いで戻る必要がある。
「そういえば、僕たちが助けた僧兵さん達は無事なんですか? 見あたりませんけど」
思い出した様に僕はそんな事を聞く。だって折角助けれたのに、今のでやられてたらなんかなって感じだもん。
「大丈夫だよ。ちゃんと二人とも無事さ。それに激しく叩きつけられたおかげで目も覚めたんだ。今は傷を治療して、台座を直して貰ってるよ」
「そうですか。それは良かった」
ホッと胸をなで下ろす僕。だけどよく考えたら僕たちだけが無事ってのもスゴいよな。どんな偶然だ? やっぱり飛空挺の中じゃなくて、外に居たってのが大きいのかな。
それにぶつけられた物が大きすぎて、周りのモンスター共も逃げてたもんな。追い打ちをかけられずに済んだのも大きいのかもしれない。
サン・ジェルクの僧兵の一体何人がモンスター共の胃袋の中に入ったのか……考えたくもない事だな。って待てよ。そこで僕はハッと気づく。今テッケンさんは重要な事言ってたよな。
「テッケンさん、台座はまだ動くんですか?」
飛空挺丸ごとぶつけられたし、その後地面に激突した筈で、さらには飛空挺の爆発まで受けたのに大丈夫なのかな? 木っ端微塵になっててもおかしくないよね。
「大丈夫だよ。あの台座には障壁も張ってあるんだよ。狙撃対策とかにね。なんたって要人が使う代物なんだから、そこら辺は万全さ。
流石に無傷……なんて事は無理だったけど、何とか飛べるまでには彼らが直してくれる筈だ」
「そうですか……それなら!」
僕は暗い空を見上げるよ。激しい雨が落ちてきてる空。そこにはもう、一席の飛空挺の姿も見えない。だけど元からこの空域から離れてた僕たちが運ばれてきた飛空挺ならまだ……その希望を抱いて僕は言葉を続けるよ。
「リア・レーゼ側の飛空挺に向かいましょう。まだ生き残ってたら……ですけど、それでも今の僕たちにはそれしかありません」
「そうだね。取り合えず台座の所まで行こう。こっちだ」
僕たちは暗い森を進んで台座を目指す。
雨に打たれながら何やら色々と作業をしてる小さな僧兵の二人。元気に動いてる所をみると、なんか安心するな。一人救えなかったから心苦しくも有るけど、彼らはその事で僕を責めたりしなかった。
だけど少し冷たい眼差しだった様な……気のせいかな? 僕が勝手にそう思ってるだけかもしれない。でも……なんだかこのままあの一人の事をみんなが触れないのも、苦しいんだよね。
今、それで揉める訳には行かないって配慮なのかも知れないけど……忘れちゃいけないのに、今は触れちゃいけないってのが……彼の死を軽く流してる感じがして罪悪感が募ると言うか……いや、この二人が一心不乱に作業してるのは、これ以上ああ言うことが起きないようにってのも有るんだよな。
本当は辛くても、ここで止まってる訳には行かないから、手を動かしてる。そんな感じかな。
「どうだい? 動きそうかな?」
「そうですね。何とか動きますけど、リア・レーゼまでは無理ですよ。限界来てます」
修理中の僧兵さんの一人に話しかけるテッケンさん。なんだか彼は親し気だね。心なしか僕に向けられる視線とは違う感じがする。
まあきっと同じ種族だからだよね。そう思う事にしとこう。
「大丈夫、そこまで飛ばなくても良い。僕たちが乗ってきた飛空挺の位置はわかるかい? 落ちてなければ良いんだけど……」
「ちょっと待ってください」
そう言って僧兵さんはピコピコと何かをいじってる。ああ言うLRO特有の機械もその内使えるようになるのかな? 未来のコンピューターみたいな感じの……まあでもデバイスはお札でなんか古くさいけど、あれはここがノーヴィスだからだよな。
もしかしてノーヴィスが一番技術的に進んでるんじゃないのかな? アルテミナスではあんなの見たことない――というか、機械類があったかな? だよ。城には洋式のエレベーターがあったけど、あれくらいか?
原始だなアルテミナス。飛空挺もノーヴィス側で作ったって聞いたし、モブリって小さな体してる癖に案外凄い。いや、小さな体で肉体的アドバンテージがないからこそ、頭を使う魔法やそれを派生させた技術を徳化させてきたのか。
そんな事を端から思ってると、沢山のウインドウの一つに反応があった。
「飛空挺は健在です。だけど反応は返って来ません」
「それは君たちが眠ってる時からだからしょうがない。飛んでるのならそれでいいさ」
「いや、飛んでもいないようですけど……森から少し離れてます」
「何?」
離れてる……それはちょっと気にかかるな。でも確かにテッケンさんの言うとおり、まだ健在してるなれあそれでいい。僕はテッケンさんと視線を合わせて頷くよ。
「大丈夫、取りあえず向かってください」
「分かりました。それでは行きましょう」
ウインドウを閉じる僧兵さん。するとフラフラとだけど、ゆっくり台座が浮き上がる。なんとか修理出来たみたいだ。
僕たちはボロボロの台座に危なげに乗るよ。モブリのみんなは良いけど、僕が乗る時の揺れ幅の大きさと来たら……真ん中からパックリと割れるんじゃないかと思うほどだったよ。
だけどそんな事はなく、空に再び浮き上がる台座。邪魔な雨は僧兵さん個人の魔法で防いでます。どうやら墜ちた時にそこら辺の機能はオジャンになったらしい。そして今はそんな所まで直してる場合じゃなかった。
急ピッチで飛空機能だけを直した感じらしい。でもなんだかさっきよりも早くなってるように感じるぞ。歩く程度のスピードしか出てなかったのに、今は普通に人の全力疾走程度は出てる。
どういう事だ?
「機能を全て飛空機能に費やしたからです。はっきりって無茶させてます。だけど、今は一刻を争う時、ですから」
なるほどね。自己判断で耐久力無視してスピードを限界まで出してるわけか。ナイスだよ。
どうりでさっきから足下の台座がビキバキ言ってると思った。悲鳴を上げてる訳ね。だけど頼む。飛空挺までどうにか持ってくれ。
雨の中を進むこと数分。森から離れた岩場の上に飛空挺が着陸してるのが見えた。岩場の上に着陸出来るか! って言われそうだから言うと、でっかい岩が反りたってる様な地形の場所で、上の方はなんだか綺麗に平面です。
そんな岩がいっぱい群生してるんだ。その一つに飛空挺は降り立ってる。そしてその周りにはドラゴンになり損ねたみたいな残念なモンスターの姿がチラホラ。
やっぱり奴らの攻撃を受けてたのか。でもこの状況は一体?
「おかしくないですかテッケンさん。なんであいつ等はあの船だけは落としてないのか……」
「確かにおかいしいね。何か理由があるんだろうけど、僕達にはそれを判断出来ないね。それでも僕達には他に選択肢はない。だろ?」
「そうですね」
僕とテッケンさんは二人同時に武器を構えるよ。僕達はお互いの考えを理解してる。だけど、不安に怯える僧兵さん達はこんな事を聞いてくる。
「ど……どうするんですか?」
僕とテッケンさんは同時に台座から飛び出してこう言うよ。
「「このまま突っ込め! 僕達が道を開く!!」」
激しく降り続ける雨の中を飛空挺向けて落ちて行く僕ら。僕達の接近に気付いたモンスター共がその口から炎を吐いて攻撃を開始する。
赤い火の玉が迫ってくるけど、僕はセラ・シルフィングでそれを一刀両断。そのままモンスターに突っ込んで踏んづけてやる。「グギャ!?」ってな声をだして痛がるモンスター。そこに止めとばかりに剣を振り下してやったよ。
そしてソイツを踏み台にまた別のモンスターに僕は突っ込む。そんな事を繰り返して、飛空挺の甲板に降り立った。
すると少し後にテッケンさんも甲板に降りてきて、最後に台座と共に僧兵さんたちがフワリと降り立つ。なんとか持ったな。上出来上出来。
周りでは僕達が倒したモンスター共がエフェクト化して消えていってた。
「ふう、全員無事ですね」
「そのようだね」
僕達がそんな会話をしてると、近づいてきた僧兵さん達がポカーンとしてこう言ったよ。
「あなた達はおかしい」
どういう意味だよそれ。まあ確かに滅茶苦茶な戦い方だったけど、しょうがないじゃないか、僕達は飛べないんだ。
「いやいや、普通飛べないのにあんな危険な戦い方しませんよ! 一歩間違えれば死にますよ!!」
「まあ……確かにそうなんだけど、さっきはやれると思ったんだよ。ねえテッケンさん」
根拠はないけど。するとテッケンさんも笑顔で頷いてくれるよ。
「そうだね。根拠はないけど」
流石テッケンさん、僕の心の台詞に被せて来たよ。まあ言っちゃうと勢いでもあった。
「頭おかしいですね。それは女神様の加護ですよきっと。感謝をしたほうが良いです」
そう言って祈りを促す僧兵さん二人。だけどここでそんな事やってる場合でもないよ。それになんとなく……なんとなくやれる気がしたのは神様の加護なんかじゃないと思う。
前の戦闘で見てた奴らの動きやスピード、それらが分かってたからやれると僕達は思ったんだ。別に自殺しに行った訳じゃない。
「二人とも祈るのは後でやろう。何か奥から聞こえるよ」
そんなテッケンさんの指摘で僕達は内側へと続く扉を見つめる。するとその時、扉が勢い良く開いて中から大量のウッドール(強化版)が姿を現す。ヒョロヒョロした奴じゃなく、鎧に身を包んでる奴らだ。
「やっぱりこの船はモンスターに占領されてるようですね」
「だね。この船を奪い返すにはこいつらを全員倒さないといけない……そう言う事だろう」
厄介な事をしてくれる。これも時間稼ぎか? だけどそれなら壊す方が良いような……いや、聖獣にも何か狙いがあるのかも知れない。
世界樹の強奪だけじゃない何か……僕とかが関係してる訳じゃない……この飛空挺事態を必要としてるとか。でもこの飛空挺はここで取り戻させて貰おう!!
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