命改変プログラム

ファーストなサイコロ

ぶつかる空戦



 迫りくる聖獣から放たれた黒い攻撃。僕はそれをセラ・シルフィングでいなし、叩き、弾きとばす。すると一気に懐に入ってきた聖獣の刀が目の前に迫ってた。


「くっ」


 最初からこれ狙いか。僕は一度の絶対回避スキルを発動。僕の色が薄くなり、ブレた写真の様になる。そして僕の体にめり込む聖獣の黒い何かを帯びた刀の刀身。
 だけど僕はその時、既にそんな事気にせず動き出す。この時も僕の姿はブレたまま。そしてそのまま勢い良く聖獣の刀は横に流された。


「なに!?」


 だけどここで何か違和感でも感じたらしい聖獣。まあ、当然だな。今の攻撃で奴に僕を斬った感触はきっとない。僕の体にはくっきりと斬られた後があるけど、その僕は直ぐに空気に溶ける様に消えていくんだ。
 あれは影。スキルを発動すると、一度だけ攻撃を代わりに受けてくれる分身。影が消えると、僕のブレも色の薄さも通常に戻る。一度きりのスキルは使った。
 これで後一分は発動出来ない。だけど、この一撃を乗り越えた事が大きいんだ!!
 僕は懐に居る聖獣に向かって武器を振りおろす。


「くらええええ!!」


 甲高い音がこの場に響く。完全に決まったと思った攻撃。だけどそれは奴の左腕に装備された盾に阻まれた。


「そういえば……厄介な盾を持ってたな」
「ああ、だが我は他の奴等とこの盾を持つ意味が違う!!」


 そう言って聖獣は盾で僕を弾き、反対側の手に持つ長刀を返してきた。


「なに……がっ――」


 僕は片方のセラ・シリフィングを奴の長刀の下からぶつけて、軌道を変えると同時に滑らせる。


「――意味が違う――だ!!」


 そのまま体がぶつかるかと思える位の至近距離まで近づき、もう一本のセラ・シルフィングを聖獣の体めがけて突き刺す!
 これなら盾も間に合わない。確実に決まる!! だけどその時、奴の体は霧散するように目の前から消えた。


「何!?」


 そして後方から聞こえる声。


「影を使えるのが自分だけ……などと思うなよ! それは我の専門だ!!」


 後ろからの攻撃。僕は体をひねりを加えて回転させる。空中を回った僕の直ぐ下を黒い何かを宿す刀が通り過ぎる。あっぶな……奴が縦攻撃してたらやられてた。
 山張ってその場で回転してなかったら今頃、上半身と下半身が分かれてる所だ。僕は回転途中に向きを変えて、奴と対面する様に着地する。回転の勢いもあって、膝をついて少し後ろに下がる格好に……しかもちょっと目が回ってる。
 見た目よりも結構ピンチかも。僕はふらつかないように、体をしっかり支える。弱みを見せたら、一気に攻められそうだからな。
 だけど聖獣は攻めてこない。なんだか、腕を掲げてる。まだ勝利宣言には早いぞ。そう思ってるとキモい事を口ずさんでた。


「ああ、これだ……この感触。我の攻撃を凌ぎまだその闘志を向ける存在。実に……実に楽しいではないか!!」
「楽しい?」


 おいおい、何言ってるんだこいつ? てか、僕は仇だろ。しかも仇討ちしに来たんだろ。何楽しんでるんだよ。色々とおかしいぞ。


「貴様は心が震えぬか? この魂が揺さぶられる高揚感。命のやりとりをギリギリの一戦で繰り広げた時にしか味わえぬこの感覚。
 我はこの感覚がたまらなく好きだ。礼を言おう人間。この久しい感覚をくれてな」


 おいおい、とうとう礼まで言われたぞ。やりづらく成るな。


「お礼なんて言ってどうするんだ? 僕はお前の敵で同胞の仇なんだろ」


 僕は目の廻りも収まって来たから立ち上がる。まあ、ここで無駄な会話を振ってくれたのはある意味助かった感じだな。
 でもやっぱり、今のお礼は気持ち悪い。聖獣と普通に会話してるけど、こいつらの声ってなんか変なんだよな。なんだか声が二重・三重に重なって聞こえると言うか……そもそもクリエから奪った力で得た物だと思うと、いい気になんか成らないか。
 僕の言葉を受けて、目の前の聖獣はその掲げた手を力強く握りしめていく。まるで何かを揉み潰してるかのようだな……


「心配するな、仇は打つ。何せ、この高揚が最高潮に達するのはまさに勝利の瞬間なのだからな! 仇も打ち、我は貴様の死体の上で勝利の充実感を得る。だからその礼だ」
「僕が負ける事は決定事項だとでも言いたいらしいな。そう簡単にはやられない!」


 僕は体を斜めに向けて、前に出した方のセラ・シルフィングを聖獣に突き立てる。頭と顔の半分を多い隠す仮面を被る聖獣。目の所に目玉は無く、こいつもその奥に淡い光がいくつか見える。
 実際……こいつらの存在って何なんだろう? そもそも聖獣って名前間違ってる様な気がするんですけど。どうみても聖獣って感じじゃないもん。
 そう思ってると、顔の下半分の見えてる口部分がニヤッて感じにつり上がる。


「そうでないと困る。手強い敵を倒したときこそ、我の心は充実感に満たされるのだからな!!」


 そう言った瞬間、奴の体から黒い風の様な物が吹き荒れた。それは吹き飛ばされそうな程の勢い。僕は腕で風を遮り、片目を閉じて前を見る。だけど――


「いなっ――っつ!?」


 一瞬にして消えた聖獣は左右でも後ろでもない、今度は上に現れた。黒い何かが視界の端に見えて、僕はそれに気づいたよ。
 てか、本能というか第六感だったかも。危険を察知した……ともいえるし、聖獣の大きな存在感を感じた気もした。
 頭上に現れた聖獣は、今度は僕に向かって真っ直ぐにその長刀を突き立てる。突きなら攻撃範囲は一点だけ。僕は紙一重でその攻撃をかわし、反撃の為に落ちてくる聖獣に一気に迫ろうとした。落ちてくるのを待つのももどかしい。
 だから、そう思って上を目指そうと両のセラ・シルフィングへと力を込める……その時だ。左足の足裏から突き抜ける痛みが走ったのは。


「ぐっあああ!」


 思わずそんな声があがる。だけど僕は口を噤んで、足を退けて後退する。だけどその先でガクっと床に膝を付く。一体どういう事だ? 確かに僕は奴の攻撃を避けた筈だ。なのに何で……
 そう思って前を向くと、丁度聖獣の野郎が床に降りて来てた。僕は奴が握る長刀に視線を向ける。僕が避けて床に突き刺さった筈の長刀。だけど長刀の刀身は途中でどこかに消えてる?
 なんだか空中にできた黒い物の中へと消えてる様な……そしてその黒いのはもう一個出来てる。それが僕の足があった場所に……そう言う事か。


「我の攻撃は避けるのが難しいぞ!!」


 そう言って、聖獣はその黒い部分から武器を抜いて迫ってくる。


「ちっ」


 僕はウインドウから回復薬を取り出して、後方に下がりながらそれを口に含もうとする。足のハンデはきつい。僕は早さと手数を売りにしてるんだからな。
 その強みがなくなることは必然的に勝利が遠のく。するとその時、思ってもない所からの攻撃で取り出した回復薬の瓶が破壊される。


「なっ――に?」


 空中に出現してるのは黒い物を纏った刀身……聖獣の攻撃か。それがまた、黒い靄みたいな物から飛び出してる。どうやらどこにだって出せるらしいな。なんて厄介な。だけど同じ様な攻撃をする奴が居たような気もしなくもない……って、そんな場合じゃない。
 聖獣の奴は真っ直ぐにこちらに向かってくる。


「くっそ!」


 僕は斬られて中身がなくなった瓶の先端部分を投げ捨てる。そして応戦態勢に入る。もう回復を済ませる時間もない。
 足が痛むせいで、こちらから仕掛けるって事が出来ない。真っ先に足をやられたのはやっぱり痛い。


「随分と余裕がなくなった表情をしてるぞ!!」


 そんな言葉と共に、大きく長刀を振りおろす聖獣。僕はそれをセラ・シルフィングでガードするのが精一杯。そしてここぞとばかりにラッシュを掛けて攻めてくる聖獣。
 一撃一撃は防げる。足は動かなくても、奴の攻撃スピードはそこまで早い訳じゃない。だけど……僕は自分の腕の感覚が麻痺していく事に気づいてる。


(このままじゃやばい。防げるけど……この一撃一撃の重たさ……HPは減ってないのにダメージを蓄積されてる)


 こちらが反撃しないのを良いことに、大振りばっかりやってるのもこの威力の原因かも……調子乗って来たみたいだし、そろそろこちらも動くか。
 素早い動きを今の僕は連続で出せないし、この足じゃそれを長く持続も出来ない。でも……まだ瞬間に位ならやれる。だからこそ、一生懸命耐えてるんだ。無駄な攻撃なんかしない。確実に大ダメージを与える部位を狙う。


「こんな物か!? 貴様はこんな物では無かろう!! もっと我を楽しませろ人間!!」


 そう言って大きく長刀を後ろに下げる聖獣。ここしかないと思った。僕は無事な方の足で一気に床を蹴って、奴に迫る。この一瞬――狙うは顔……と言いたい所だけど、こいつらの仮面の下は何もない。だからその下の首にする。
 心臓でも良いけど、もしかしたら複数あるかも知れないし、ないかもしれない。それに胸には防具があるし――なら狙うはむき出しのそこしかない。
 僕はゼロから一気にトップスピードに乗って、二本のセラ・シルフィングをクロスさせて迫る。交差したセラ・シルフィングを開く、その間に聖獣の首を入れてその胴体から切り離す!!
 だけどその時、今度は腹にグサリと感じるおかしな感触がした。体の勢いが止まる。


「自分から刺さりにくるとは親切な奴だな」


 そんな……僕がこの瞬間に動いたからこんな事に成ったって言いたいのか? そんな訳……ある訳ないだろ。こいつ僕の策を読んでて……今のは誘いか……視線を下に向けると、黒い靄から出てきてる刀身が僕の腹に見事に刺さってる。
 そしてその刀身に伝う赤い液体……


「おいおい、これで終わりだなどと言うなよ。もっと我を楽しませろ。このままでは貴様に倒された奴も哀れなだけだ」


 あれだけの攻撃をして息一つ切らさずに、随分余裕しゃくしゃくな奴だ。正直言って勘に障る。僕はお前を楽しませる為に戦ってるんじゃない。
 その余裕をなくさせるまでは、死んでも死にきれないな。いや、死ぬ気なんか無いけど……まずは一矢報いる!


「はぁはぁはぁはぁはぁ……」


 小粒の雨がパラパラと落ちている。僕は荒い息を強引に押しとどめて、片腕をぶっ刺さってる長刀に置く。


「立つのもやっとか? そう言えば我が他とこの盾を持つ意味が意味が違うと言った理由を言ってなかったな。
 我は防御の為にこの盾を持ってるわけじゃない。これがあれば接近戦を仕掛けるしか出来ないだろう。だからこそだ。心震える戦闘の為に、我はこの盾を所持してる訳だ。だからまだ死ぬなよ。
 ようやっと我が楽しめる相手だと言うのに、これじゃあ期待はずれだぞ」


 言葉を得たからって饒舌に聞いても無いことベラベラ喋りやがって……うるさい奴。そんなに戦いたいのかよ。その減らず口、少しはこれで静まるかな? 僕はチラリと視線を動かし、合図を送る。
 そしてこう言うよ。


「うるせぇ……お前の都合も知ったこっちゃないし、そんな心配しなくても、お前等聖獣はちゃんと全員始末してやるよ」
「ふふははは! その位の大口をまだまだ叩いてもらわんと面白味に欠ける!」


 そう言って腹に刺さった長刀をグリグリしやがる聖獣。僕の口からも血が垂れてくる。この野郎……エグい事しやがって……だけどまだ、繋がっててくれないと困る。
 僕は自分の血が伝ってるその刀身の峰の部分を手前から奥へと添えた腕でなぞる。その腕の先に映るのは黒い影――と言うか霧と言うか靄というか……取り合えずそんな物だ。


「何してる? いや、何かしろ。結局口だけか? このままだと貴様の腹に風穴があくぞ」


 そう言って更に長刀を押し込んでくる聖獣。血液がボタボタと流れ出す感覚に、全身が冷たくなっていく様な錯覚がする。まだ生きてる筈なんだけど、どこかに呼ばれてる様な……そんなおかしな感覚。
 だけど僕がその声に答える事はない。何故なら死なないからだ!


「その心配はない。それよりもこれって……ちゃんとお前まで繋がってるんだよな」
「当然だ。我の影は繋がってるからな」
「そうか……なら、このまま食らえ!!」


 その瞬間、僕は全身から青い電流を解き放つ。辺りが青い光に照らされる程のマックスパワーで雷撃を解放する。そして当然それは僕の体内にぶっ刺さってる長刀を通して聖獣にも届く。
 だから甲板の二カ所で同時に同じ光が光ってた。


「ぬおおおおお!! 貴様……だが、この程度の攻撃……」


 マックスパワーの電流でも聖獣の奴はまだ喋る余裕がある……か。分かってた事だ。僕の雷撃に奴を倒すだけのパワーはない。だけど一瞬でも怯んだのなら十分! 自分の過信を後悔しやがれ。


「テッケンさん!!」


 僕はそう言って、強引に長刀を腹から抜く。僕との繋がりが無くなったことで、聖獣への電撃の流れも絶たれる。だけどそこに迫るは一人の……いや、複数に分かれたテッケンさんだ。
 彼はまず、後ろに向けて変な態勢になってる長刀を奴の腕から弾きとばす。


「ぐぬ!? 小賢しい真似を!!」


 複数のテッケンさんを同時に殴ろうとでもしてるのか、聖獣は反対側の拳を向ける。だけどそれに複数のテッケンさんは上手く対処する。
 まずは一人が飛び出して聖獣の顔面に張り付いた。それで視界を奪い、同時に足を弾く係りが奴を転ばせる。そして残りが一斉に聖獣の周りでボコスカやる。
 スゴい、圧倒してる!! だけど次の瞬間、奴の背中に集まった行く黒い霧が羽を作りあげる。そしてそれを操り周りのテッケンさんたちを弾きとばす。


「チビが! ちょこまかとしおって!!」


 怒り満点に立ち上がる聖獣。羽が生えた事でなんだか今まで異常に強力そうに見えるな。だけど……


「テッケンさん」


 僕は飛ばされてきたテッケンさんに視線を送る。すると彼はコクンと頷き、こう言った。


「準備は出来たよサウニー郷。指示を頼む!!」
『ふん、ヒヤヒヤしたわ! 全員魔法を解放しろ!!』


 その場に響くサウニー卿の声。僕が戦ってる間に何があったかは正直わかんないけど、僕はテッケンさんの視線を見逃さなかったのだ。
 まあ実際は「ちょっ……救援求む!」の視線を送ってた訳だけどね。どうやらこれの為で今まで動けなかった様だ。
 サウニー卿から指示が出た僧兵達は用意してたらしい魔法を解放する。マジでいつの間にか分からないけど、特定の位置に僧兵は配置されてる。
 聖獣を囲む様な配置。僧兵を結んで紡がれる魔法陣。だけど聖獣は余裕だ。


「ふん、バカか貴様等! 我には魔法は効かん!! 何故ならこの盾があるから……」


 饒舌に喋ってる所悪いけど、言ってやれテッケンさん!


「どうしたんだい聖獣? もしかしてその盾ってこれの事かな?」


 そう言って、テッケンさんはさっきちゃっかり盗んでた盾を聖獣に見せつける。てか、最初から目的はこれだったけどね。まあここまでの展開は予想外だけど、聖獣の持つ盾は卑怯すぎる。だからチャンスがあるなら、奪い取るを考えるのは上策だろ。


「「「我らが聖獣を滅する!! ライジング・フォース!!!」」」


 そんな僧兵の気合いの入った魔法。盾を奪われた聖獣はその中で、イカレた表情をしてこう叫ぶ。


「きさっまああああああああ!!」


 伸ばした腕が……その姿が光に遮られる。魔法陣の中に何回も円上の光が走りそれは例外無く、中心に配された聖獣へと集っていき。そこで収束。一気に天を突き破る程に昇った。
 激しい衝撃と光。この赤暗くなってた空域に、真っ白な光の柱が撃ち立つ。


「スゴい……やったのか?」


 聖獣は一緒にあの中で吹き飛んだ様に見えたけど……どうなったかまではわかんない。てか……まさかここまでの事を用意してるとは思わなかった。僕が実際合図を出したときは、一瞬怯ませますから、後は頼みます――程度の事しか願ってなかったもん。
 まあ武器と盾はどうにかして欲しいよね。とも願ってたし、それは期待してたけど、正直期待以上の事を成してくれた。


「やったかは分からないね。防げはしてないだろうけど、この程度でやられる奴でも無いだろう。それよりも早く回復を」


 そう言ってテッケンさんは自分の回復薬をくれるよ。僕はそれをありがたく貰い受け、口に運ぶ。するとHP回復と同時に、腹の出血が止まるよ。ふう、血が止まるだけで大分安心感が違うな。
 よし、早く全回復しよう。そう思って自分のウインドウを開くと同時に、雲を突き抜けてる光の柱が掻き消えた。


「そ……そんな!」
「まさか……」


 いろいろな言葉が僧兵達から聞こえてる。この魔法が破られるなんて……大体そんな感じだ。確かにかなり強力な魔法だった様に見えた。それを聖獣は我が身一つでかき消しやがった。
 だけどダメージが無い訳じゃない。光から解放された聖獣の体からはプスプスと煙が上がってる。魔法はちゃんと通ったんだ。


『くっ……化け物め。あれでも死なないとは』
「そんな甘い相手じゃないと、ちゃんと僕は言いましたよ。分かりますか? これが後数体で世界樹を狙ってるんです。
 それがどれだけの驚異か……実感できたでしょう?」


 テッケンさんはどうやらサウニー卿と会話してる様だけど……奴はどこに? そう思ってると気づいた。テッケンさんはベルトに板の欠片みたいなの刺してる。その板にちょっと破れてるお札がある。
 聖獣が降りて来た時にぶっ壊れた樽の破片でも拾ったのかな? そして僕が戦ってる間に、聖獣の危険性を説いて、一時的な協力を取り付けた……そんな所だろう。
 ついでに自分達の争いがどれだけ無駄か、それも教えてあげようと言う、テッケンさんの親切心だね。


『ふん、どれだけの驚異でも我らは負けん。それにまだだ。まだ判断するには早かろう。我らの力も見せてやるわ!!』


 そう言ったサウニー卿。すると二機のバトルシップが下左右から、聖獣めがけて攻撃をしだす。激しい音が聖獣を巻き込んで爆発する。
 おお、これは効くんじゃないか? 大きさが違う攻撃は強力だ。どうやらサウニー卿の言う力って奴はバトルシップの事らしい。
 でも一機は難なく落とされたよな。


『それは不意打ちだったからだ。奴の攻撃もバトルシップには当たらん』


 そう言ってると、聖獣が爆発の中から飛び出して来た。そして空中を必死に、攻撃を避けながら飛ぶよ。だけどどうやら振り切れないらしい。
 聖獣も速い筈だけど、バトルシップは更に速いって訳か。単体で飛んでる聖獣よりもあの大きさの物体が速いって……マジで革命物の発明してるよなアレ。
 確かにバトルシップが大量にあれば、世界を取れそうだ。そう思ってみてると、聖獣が逃げるのを止めてバトルシップに向かう。
 どうやら攻撃を仕掛ける気みたいだ。武器がない聖獣は自身の拳にその黒い影を宿してる様に見える。だけどバトルシップは聖獣の攻撃が炸裂する前に、機体を回転させて素早く避ける。
 そしてもう一機が別方向から聖獣を狙い撃つ。弾ける爆音。直撃だ。周りのモンスター共も、援護をしようとしてるみたいだけど、いかんせんバトルシップの速さは段違いだ。それに周りの飛空挺がモンスター共に砲撃を続けてるから、そう簡単に近づけもしない。
 聖獣は今や、一番高い部分に居る。その下にサン・ジェルク艦隊。そしてモンスター共だから、完全に孤立した状態でもある。
 これは一気に立った逆転フラグかも……


『ふふはははは! 見ろ! バトルシップに手も足も出ないではないか!! 我らこそ神の威光を受けるべき種族なのだ!! 怖い物など何もない!!』


 ヤバい、サウニー卿が調子乗ってる。なんとなく嫌な予感がする。雨も少しだけ強く成ってる気がする。

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