命改変プログラム

ファーストなサイコロ

使い道の模索



「甲板に居るリア・レーゼ側の僧兵……奴らを殺せ」


 そのサウニー卿の発言に僕もテッケンさんも一瞬で飛び出そうになった。だけど僕たちは互いに互いを見て、そんな自分達を押しとどめる。
 ダメだ。ここで僕たちの存在を知られる訳にはいかない。ここはこの旗艦の中でも特殊な空間らしいからな。きっと魔法技術を使って色々と加工されてる場所。
 いわばここは奴らの手のひらの中でも、更に奴らが安全を保障出来てる場所だ。それは逆に言うと、僕たちにはとても危ない場所。
 さっきも「居ればいい」発言してたし、この空間はサウニー卿の手の中にあるんだろう。魔法なんていわば何でも出来る訳だし、僕たちの存在を知れば、ここに閉じこめるなんて事も出来るかも知れない。
 それは困る。だから今は出ていけない。


「こ……殺すのですか? 奴らを捕らえて、人質として逃げ出した奴と、好き勝手にやった奴をいぶりだせばよくないですか?」


 おお、良い提案……じゃなくて、それはそれでやべーな。そうなると僕達は出ていかざる得ない。だってリア・レーゼの僧兵の皆さんは運悪くこの任務に選ばれただけ……なんだからな。
 それで殺されるなんて、ちょっと可哀想。


「ふん、まどろっこしい。見せしめに丁度良いではないか。数人いただろう? まずは一人を殺して、我らの本気と奴らのバカさを思い知らせてやるのだ。
 一人位殺さないと、冗談だと思われかねんからな。何、別にここを逃げ回ってる鼠に対して言うことなど何もない。それよりもこの状況だ。その僧兵の命は、もっとデカい物の取引に使おうではないか」


 そう言ってサウニー卿の野郎は、高笑いを響かせて指令室へと戻っていく。それに続く護衛は床に寝てる僧兵を端っこの方へ移動してる。しかも無造作に運ぶな~って感じだ。
 そして彼らも指令室へと戻ってく。僕達は完全に人気がなくなったのを確認して通路にでる。


「どういう事でしょう? アイツ、一体なにを企んでるだ?」


 どうせろくな事じゃないだろう事は確定してる。だけど全貌は見えないな。取りあえず僧兵の皆さんが危ない事は確定事項だろう。


「僕達を探す気はなかったみたいな発言だったね。デカいこと……というのは勿論僕達ではないだろう。鼠が僕達だろうからね」


 テッケンさんも今のサウニー卿の言葉から奴の目論見を推測する。ふむ……僕達以外であの僧兵の命が有効な場所……そしてこの状況。
 僕達が大ピンチってだけじゃなく、実際この艦隊も戦闘してるんだよな。それを加味するなら……


「あいつ、僧兵の命を盾にリア・レーゼを……ローレに協力を頼む気か? いや、この場合は脅しか」


 こいつらの命が惜しかったら、飛空挺で我らの援護をしろやオラアア!! だろ? その位しか、僧兵の命の使い方わからない。


「それだけじゃない、僕達の行いも当然問題にしてくるだろう。そして覚悟しとかないといけないのは、これは僕達にとっても罠だということだ」


 テッケンさんは神妙な面もちでそう言った。罠? アイツは僕達を無視してローレとの交渉を進める気なんじゃないのか?


「確かに僕達なんか小物の相手をしてる場合じゃない……そうも言ってたけど、君に利用価値があるかも知れない。その価値を判断出来るまではスオウ君をこの船からミスミス逃す訳がない。
 本当に奴らがほしがってるクリューエル様はリア・レーゼに居るんだしね」
「まあ確かに」


 今、僕を無視するのは不自然か。奴らの目的上、両方の神の力を宿す存在が必要なんだ。勿論それは崇める為とか、宗教上の為とかじゃない。奴らの糧の為にその存在が必要ってだけ。
 実際元老院はリア・レーゼの御子が代々世界樹の社に居座る事を良しと思ってないらしいしね。きっとあの高さが羨ましいんだと思う。
 上に居る奴らは、自分よりも上に居座ってる奴らが気になるんだよ。元々、聖院から派生した星羅が自分達の居る場所よりも高いところに居るってだけで気に入ってないよ。
 奴らをより高い位に昇格させる鍵が、二つの神の力。五種族は女神が、モンスターは邪神が創造したとされるこのLROの世界で、奴らはどうやらその境の位置に自分達の存在を天昇させたいみたいだ。
 そんな事を僕は聞いた。僕しか知らない、奴らの目的は……まあやっぱり神に近づく事……って事らしいな。だいたいそうじゃないかとは思ってた。
 それに利用できる存在……その候補として僕が居るのなら、手放すわけがない。


「でも罠って……」
「君の行動を読んでるんだと思う。だってスオウ君は、いろんな事を度外視して目の前の状況に身を投じる所がある。街一つを敵に回してまで、一人の女の子を助けたりね。
 だからサウニー卿は君は何もしなくても出てくる――とそう思ってるんだ。わざわざこっちを向かなくても、僕達は現れる。その確証があるから、僕達は放っておかれたんだろう」


 なるほど……テッケンさんの言葉は的を射てると思う。確かに放っておけるわけない。ノコノコと勝手に出てくる奴に構う時間を使って僕達の問題行動と僧兵を人質に取りローレへ挑もう。そう言う事ね。
 有利なカードは今度は自分達が握ってる……そう考えてるんだろう。だけどそれは……どうだろうか? 


「どうする? ここで僕達が甲板を目指すとなると、まさに奴らの思惑通りだ」
「だけど、僕達にはサウニー卿を倒すって選択肢もありませんよ。ローレはこの戦闘でどっちもが弱るのを期待してるんでしょう? それならこいつらには善戦してもらわないといけない。
 それなら僕達はなるべく早くここから離れた方がいい。それしかないです」
「でも、だからこそ甲板には敵が……」


 テッケンさんは難しい顔をしてる。このまま思惑通りに動くしかないのか……なんとか別の道を模索してるのかも知れない。でもここが敵の船って事だから、あんまりやりようないよね。それに実際僕達の為にそこまで人数割けないんじゃないかっても僕は思ってる。


「そうか、今は聖獣軍団との戦闘中。持ち場についてる僧兵は僕達に構う事なんかできない……か」
「ええ、上でこちら側の僧兵と合流できれば、ごり押しで脱出出きるかも知れません」


 相変わらず作戦とも呼べないお粗末な物だけど、だって今は仕方ない。僕達は敵地に居るんだ。そんな場所で生き残るには運が必要。今僕達は、この世界に必要とされてるか……それを試されてるんだと思う。


「荒事になりそうだね。それならどうにかしてスオウ君の怪我を回復させておきたい所……だけど」


 確かに荒事になるっていうか、もうなってるもんね。しかも甲板にはモンスター共が居てもおかしくない。このHPじゃ心許ないな。
 でもテッケンさんも回復薬とか持ってないみたいだし、どうすれば? これでやるしかないのかな? いや待てよ。僕はウインドウを開いてテッケンさんに見せる。


「そう言えば薬草だけは一杯持ってるんです。食堂の厨房から勝手に拝借して来たんですけど……」
「なんだ、それならそうと早く言ってくれれば――」


 僕のウインドウを見て、安心したようにしてるテッケンさん。だけど残念ながら、これは薬草の癖に役に立たないのだ。


「あっ、でもダメだったんです。厨房で食べて見たんですけど、HPとか全然回復しなくて……でも、もしかしたら役に立つときがくるかな~とか、薬草だし一応持ってるだけで安心感があるかなって思って持ってきたんですけど……」


 僕は意味のないことを説明する。うう、持ってても意味のない事を説明するってなんだかとっても無駄に感じるね。むなしいよ。
 アイテム欄に押し込めるだけ押し込んだのが逆に悲しくなる。だってアイテム欄にはズラーと薬草が並んでるんだもん。使い道のない薬草がさ。
 だけどテッケンさんはそうは思ってない様子。


「大丈夫だよ。これはちゃんと使える」
「ええ? でも本当に何もならなかったんです。きっと何か制限とかがついてるのかなって思うんですけど……」


 犯罪が横行しない様な何か。盗んだ物が普通に使えたら、そう言うズルをする奴が増えるだろうし、お金払うのバカらしくなるもんな。
 だからプロテクトみたいなのが掛かってるんじゃないのかな? 


「確かにプロテクトがNPCが売ってる物には掛かってるよ。それは支払いを終える事で解除される。だけどここはLRO。別に盗みが出来ない訳じゃない。そして盗んだ物を使う術もあるんだよ。
 まあその場合の代償はお金とかではなく、評判。NPC相手に犯罪行為をすると、それを行った街と相手で評判が落ちる。
 犯罪ばかりやってると、国家から指名手配されたりもするしね。だけどちゃんと使えるよ。それを気にしないのであれば、盗みも一つの手段ではある」


 なるほど、ちゃんと使える術はあるんだ。そして実害はお金じゃなく評判と言うのもリアルっぽいね。評判が悪くなったら、色々ときっと不便な事が起こるんだろう。
 だけど悪名が高くないと起きないイベント……ってのもありそうだよな。リアルでは生真面目委員長キャラが、ここでは羽目を外して社会に刃向かう。そんな事をしてる人が居てもおかしくない。


「それって、NPC相手だけ何ですよね? プレイヤー同士なら、ちゃんとした手順か何か踏まずに、奪った物は直接使える」
「勿論、その通り。PKは貴重なアイテムを他人から奪えるって所も魅力だからね。まあ荒っぽい人達はよくやってるよね。組織を組んでプレイヤーを襲えばリスクも減るし、何よりも自分たちで危険な場所まで行くリスクもない。
 ハッキリ言えば、NPCはあんまり狙い目じゃないよ。店にあるのはお金を出せば買える物だしね。店に出回らないアイテムこそ高値で売れるし、ある程度の所まで来たら街の武器・防具は買わない」
「だけどやってる奴らは居るんでしょ?」


 この広いLROだ。バカは居るだろ。


「ああ、専ら狙うのは消耗品とかだろうけどね。それらは小遣い稼ぎにはなるし、自分でも使える。丁度、スオウ君みたいな感じのアイテム欄とかと似通ってるよ思うよ」


 なるほどね。確かにどこでも買える武器防具とかより、消耗品は売れそうかな。需要って奴があるし、店で盗んだ物をオークションの方に出品したりするんだろうか? ん? そこで僕はあることに気付いたぞ。


「もしかして、この盗品を使える様にする裏技って、そいつ等が見つけたとかですか?」


 自分達が盗んだ物を売るために……考えられるよね。てか、一番あり得そう。だって使えないと、売り物になんか出来ない。
 盗品を必死に使える様にする術を模索する、どっかの誰かの顔が想像出来ます。きっと涙目だったと思うな。


「う~んどうだろうね? 確かにそうだったかも知れないけど……」


 なんだかテッケンさんの歯ぎりが悪い。まあ、そこまで知らなくても当然だよね。別に情報の元が誰なのか……なんて興味ないことだ。
 重要なのはその出回った情報が真実なのかどうかで、つまりこの裏技は真実だったから普通は誰でも知ってるみたいな、までに浸透してるんだろう。


「もう良いですよテッケンさん。そんな事よりも、早くこの薬草を使える術を教えてください」


 うん、余計な話をやってる場合じゃなかったよ。早く上を目指さないと、僧兵さん達が危ない。この場合の僧兵はリア・レーゼの僧兵さん達ね。
 このままじゃ確実に一人は殺されそうだし、それが自分のせいでもあるなんて、絶対にさせる訳にはいかないじゃないか。


「そうだね。だけどもうやることは実際ないよ。盗んだアイテムを一度アイテム欄に納める。それが使えるようにする条件なんだよ。
 だからその薬草はもうHP回復に使える筈だよ」


 な……まさかそんな簡単な方法だなんて。ちょっとビックリ……と言うか拍子抜けかなこの場合。テッケンさんの言葉を受けて、僕は薬草を一つ取り出す。そして一口口に入れて食べてみるよ。
 すると本当に薬草の効果は発揮された。


「うおお! 少しだけ体が楽になった気がする」


 ただの苦い草ではなくなった瞬間だね。これなら何とか食べれるぞ。なんてたって目的があるからね。ちゃんと回復してくれるならこの苦さも耐えられる。
 それこそ良薬口に苦しと思えるもん。ただの苦いだけの雑草だった今まではなんの価値もなかった。僕は更に薬草を取り出して両手一杯に持つよ。
 HPの二十パーセント位しか回復しないからな。しかもなんだかその回復量も量に依存してる様だし……つまりは薬草一つで同じ回復量を出せない時があると言うこと。
 だから一気に食えば常に一定の最大値二十パーセントで判定して、回復してくれるのではなかろうかという考えです。
 ただ単に、苦いのチマチマ食べててもイヤになるだけってのもあるけどね。一気に食べて一気に回復! 時間も惜しいし、それが一番だろ。
 だから両手に華……ならぬ、両手に草だ。流石に草だけを口に押し込むのは抵抗あるわけだけど、僕は唾を飲み込んで覚悟を決める。
 これもここを生き抜くため。青臭くなったってしょうがない。


「ちょっと待つんだスオウ君。それじゃあちょっと効率が悪い。それにこれだけ大量に薬草があるのなら、もったいない事はしたくないよ。
 シルクちゃんがいないここでは、回復出来る術は生命線だ」
「……確かに」


 でも、じゃあどうするのかな? って思ったら、僕の手からテッケンさんは薬草を数本取って、自分のウインドウを開く。そしていくつかの材料を出したら、最後に黄色い色のクリスタルを出す。
 そしてそのクリスタルが輝くと同時に、アイテムはその色に包まれてクリスタルの中へと吸い込まれる。次第に強くなる光。
 すると最後にクリスタルが砕け散って、中からそのクリスタルの色を受け継いだ瓶が現れた。中には液体が入ってる。
 しかも出来たのは一個じゃなく四個くらいあるんですけど……もしかしてそれは……


「回復薬完成だよ。四個はまあまあの数だね。さあこれを」


 そう言ってテッケンさんは回復薬を僕に渡すと、もう一方の手からも薬草を奪う。そして再び生成開始。僕はその間に瓶の蓋をキュポンとあけて、喉に流し込む。


「うん、全然飲み易さが違う」


 旨いし、回復量も多くて、しかも複数生産出来るとか、どう考えてもこっちの方がいいよね。そう思ってみてると、今度は二個しか生成出来てない。どうやら数はランダムっぽい。
 しかも一回の生成で薬草は二個使ってるから、回復薬が二個出来ればイーブンなのか。テッケンさんは次から次へと作って、あっというまに二ダース出来た。
 僕もその頃には完全回復完了です。手の傷も完璧に治ったよ。回復するまでは無闇に動かず、ここに居て正解だったかな。
 この通路には先の指令室以外に敵がいないからね。焦って出てたら、絶対に慌ただしく動いてる僧兵に見つかったと思う。そうなると、もうあんな状態でも甲板目指すしかなかっただろう。


「取りあえずこれだけあれば乗り切れるだろう。半分は君のだ」
「ありがとうございます!」


 僕達は出口の前で覚悟を決める。お札から取り出した、武器と装備を取り付けて、準備は万全だ。やっぱり両腰にかかるこの重さがあるとシックリ来る。受け取った回復薬はアイテム欄へとしまい、扉を開ける。
 するとその瞬間、大きな揺れが船全体を襲う。そして途切れる事なく聞こえてくる爆発音。激しい戦闘がまだ繰り広げられてる様だ。


「行こうスオウ君!!」
「はい!!」


 僕はテッケンさんの後ろを走る。彼の方が飛空艇とかには詳しいからね。実際僕はこの指令室に至る過程で、よくわかんなくなってたからね。
 テッケンさんはこの旗艦の構造をかなり把握してるのか、なんだかとってもスムーズに進む。本当に、助けに来てくれたり、目的を僕の代わりにしてくれたり、更には回復薬まで作れて、この船の事までわかってる……どこまで頼りになる人なんだ。
 テッケンさんに足を向けて寝れないね。そう思ってると、いきなり足下がおろそかになった。


「うお!?」


 壁にぶつかりそうなる所を腕でガード。なんだ一体?


「どうやら、大きく旋回してる様だね。旗艦であるこの船までここまで激しく動くとなると、押されてるんだろう」


 テッケンさんはそう行ってまた走り出す。僕も急いでその後に続く。てか、ここら辺はなんだか僧兵いないな。ちょっと前まではこの旗艦の中を余すことなく、僧兵達が駆け回ってた印象だったんだけど……どこかに集まってるのか?
 そんな事を思ってると、再び大きな振動が。さっきから直撃食らってるんじゃないのか? まあ確かこの船には強力な障壁があったはずだけど……それでも心配になる。
 だって旗艦が動いてるって事は、避けようとしてるって事だろ? 障壁が破られそうだから動き出してるんじゃないのか?
 どのみち、ここじゃ何もわからないか。内部を走ってる僕達には外の状況が掴めない。


「階段だ。上へ行くよ」


 僕達は一段飛ばして階段をかけあげる。すると上った所で僧兵達とバッタリ出くわした。


「げっ!?」
「お前達は!」


 こっちも向こうも一気に殺伐とした雰囲気に。だけど襲ってこないのは何でだ? 僕達が警戒してると、リーダー格の僧兵が隊を二つにわけて道を譲ってくれた。


「どういう罠だ?」
「罠ではない。別に今はお前達を捕まえろと言われてないしな。寧ろ逆だよ。だからさっさと行け。我らは貴様等と相対してる場合じゃない」


 確かに、こいつらはかなりボロボロしてるな。いや……こいつらだけじゃない。遠くに見える僧兵もそうだし、なんだかこの階に僧兵が溢れてないか? って位だよ。
 しかも誰もがHPを半分位に減らしてるし……慌ただしく動き回ってるのは衛生兵ですか? 回復魔法をかけて回ってる様に見えるな。
 なるほど、確かに僕達の相手をしてる場合じゃないようだ。他の僧兵達も僕達には気付いてそうだけど、何もしてこないしな。命令がない……というよりも、少しでも体を休ませたいって感じ。


「大丈夫だよスオウ君。彼らは誰も僕達を襲いはしないさ。寧ろ甲板に行かせたいんじゃないのかな? サウニー郷はおいかけっこには飽きたって言ってたしね。
 元が僕達を誘い出す目にも残りの僧兵を使う気だったんなら、これは思惑通りの状況なんだよ。
 寧ろ、止めるなって命令があったのかも知れない」


 確かにそれの方が自然か。このあっさり具合はそう考えた方が納得できる。だってついさっきまで必死に追いかけてたのに、その対象が目の前に現れてこの対応はおかしい。
 何か別の命令で上書きされたって事ね。


「そう言う事なら、ありがたい。僕達は既に覚悟を決めてる」


 僕の言葉にテッケンさんも頷いてくれる。僕達は開けられた道を罠と知って走り抜ける。そして再び階段を上り、大きな扉を開く。するとその時、甲板の少し上を炎の玉が通り抜けた。


「相変わらず、無茶苦茶撃って来てるな」


 大量のモンスターが無闇やたらに放ってるから、どこをみても炎が飛んでるぞ。そう思ってると、甲板に大きな羽を生やして黒い体のドラゴンに成り損ねた感じのモンスターが降り立った。
 長い首に、丸い頭。その頭の先端に一個の目玉。不気味な風貌のモンスターだ。そいつは僕たちを見つけて、口に炎を光らせる。


「スオウ君!!」
「はい!」


 僕とテッケンさんは同時に武器を抜く。その瞬間、甲板に直撃する炎。だけどその炎を斬り裂いて、僕達は飛び出した。テッケンさんの一撃でバランスを崩した奴の首を、僕はセラ・シルフィングで切り裂く。

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